2021/05/09 のログ
ご案内:「無名遺跡」にミシェルさんが現れました。
■ミシェル > 「ん~ふ~ふ~んん~♪」
無駄に美声の鼻歌を歌いながら、遺跡を進むのは宮廷魔術師の女男爵。
新たな発見を探しに、いつも通り探検に来たのだ。
鼻歌を歌いながら杖を振って歩けば、道行く先のトラップ、障害物、哀れな魔物はミシェルに何もできずに吹き飛んでいく。
まだまだ序の口。彼女のレベルなら楽に進んでいける。
「と、ここからかな…」
目の前に現れた扉の前で、女男爵は立ち止まる。
何やら古代語が書かれている、明らかに古い扉。
大抵の場合、こういう扉の先は危険度がはるかに増す。
そして、見つかる宝の価値も。
「さてさて、冒険者なんかに先を越されてなければいいのだけどね」
何か見るべきものが見つかるのを期待しつつ、ミシェルは躊躇なく扉を開いた。
ご案内:「無名遺跡」にネメシスさんが現れました。
■ネメシス > いつも着ているものとは別の黒い革鎧に身を包み、一冒険者としてお忍びの冒険に繰り出したネメシス。
遺跡の途中で普段身を守っている団員達とは別れると、単身で無名遺跡の一つに足を踏み入れる。
騎士団に護られているばかりではどうしても味わえない経験がある、と誰かに教わったことがあるからである。
「う~~ん…。」
遺跡に入った瞬間、唇を歪ませる。
破壊されたトラップ、まだ温かい魔物の死体、散らかれた破片。
どうみても誰かが遠慮なく破壊活動を繰り広げた後である。
これはひょっとすると攻略されきった直後かも知れない。
つまり、手ぶらで帰ることになる可能性がある。
それでも入った以上はと、何者かが壊した後を辿っていく。
運がよければ多少の取りこぼしなどがあるかも知れないと僅かな期待を寄せて。
本来は慎重に進まざるを得ない遺跡内を駆け抜ける。
通る度に何者かが通った後を見つけ、それを目印にしていく。
やがて、埃を被った扉を開こうとしている一人の後姿が目に入る。
相手が何者か見定めるべく、少し離れた位置の壁に身を隠すことにした。
■ミシェル > ミシェルは尾行にまるで気付く気配も無く、遺跡の攻略を進めていく。
慎重にトラップを解除し、ホブゴブリンやオークの群れを追い散らし、
魔法とロープで底なし沼を渡り、番人のごとく立ちふさがるはぐれ魔族をボコボコにし。
そしてたどり着いた場所にあったのは…壁。
「う~む行き止まり…いや違うな、これは」
宮廷魔術師の指先が、壁に付着した泥や汚れを払うと、そこにあるのは古代文字。
そして、壁に掘られた魔法陣。
ミシェルは手帳片手に文字の解読を進めていく。
「なるほどね…」
そして、おもむろに古代言語を唱えながら、魔法陣のあちこちを杖で叩く。
すると、魔法陣に光が走り、その中央が割れ始める。
適切に魔力を注ぐことで操作可能な、古代の扉だ。
そしてその先にあったのは…。
「金庫か倉庫だったのかな、ここは」
手つかずの金銀財宝と、その他様々な物品だった。
ミシェルは、部屋の中に進んでいく。
■ネメシス > 意外にも先行する冒険者は単独であった。
基本的に非常時を想定してパーティを組むことが多いだけに、目の前の相手は余程の腕自慢なのかと警戒する。
部下たちを連れて来なかったことに少し後悔するも、とりあえずコバンザメのような尾行を続けた。
見慣れない文字で装飾された壁すらも目の前で突破されていく。
普段ならばここで団員達と待ち伏せ、戻って来た処を捕らえるのだが今日はその手は使えない。
仕方がないとばかりに、自らも少しタイミングをずらしてから部屋へと足を踏み入れる。
「へえ~、この遺跡にこんな所があったのね。」
まるで今しがた到達したとばかりに視線を巡らすネメシス。
骨董品などに知識のないネメシスが見ても高価そうな品が並んでいた。
そして、奥へと向かう後姿も。
■ミシェル > 奥に向かった人影をネメシスが追いかけようとすれば、既にその姿は見えず、
進んだ先から感嘆したような声が聞こえてくるだろう。
だが、しばらくすると、何かを動かしたようなガコンという振動と、「げっ!」という声。
そして、悲鳴と戦闘音。さらには、何かが走ってくる音。それも大量に。
「やばいやばいやばいやばい!!!!」
はたして先の方から、リュックに何かをたっぷり詰め込み、
明らかに焦った様子で走ってくるミシェルの姿が見えるだろう。
彼女はネメシスの姿に驚きの顔を見せ、一瞬止まる。
「…あー、逃げたほうがいいよ仔猫ちゃん!!」
そしてまた部屋の入口目指し駆け出す。すると、彼女を追って、こちらに向かってくる存在に気付くだろう。
それは金属で出来た蜘蛛を模したような人工物らしき怪物。
その手は回転するノコギリとなっており、そして口からは次々火炎魔法を発射している。
それが、赤い瞳を光らせ大量にネメシスのほうに向かってきていた。
■ネメシス > 随分と足の速い冒険者だと、遥か遠くにある後姿を見てネメシスは思っていた。
腕に自信があるのか、何事にも迷いがないかの様だ。
ただ、そんな風に落ち着いていられる時間もすぐに終わった。
先攻していた冒険者が慌てた様子でこちらに駆け寄り、互いの姿を始めてまともに拝み合うことになる。
「子猫ちゃん?」
あまり経験したことのない呼び方に口の端が伸びるが、直ぐに表情が強張る。
「…あ~~~、そう言うこと。」
金属製の蜘蛛らしきものが吐き出した火球から逃げるように部屋の入口へと走る。
元々火に対して多少心得があるだけにこの時点では左程慌てることは無った。
両手に魔力を蓄え、左右の財宝の山に電撃を加える。
衝撃で崩れた財宝が崩れ落ち、蜘蛛達との間に障害物を構築した。
但し、怒り狂った蜘蛛たちが財宝のことなどおかまいなしに暴れまわった場合、そう長持ちはしないだろうが。
「全く、とんでもない事になったわね。」
先に駆け出した冒険者の後を追うように駆け出すネメシス。
蜘蛛たちの追跡が途切れる迄、ひたすら逃げることになるだろう。
■ミシェル > 「おおい!こっちだ仔猫ちゃん!!」
来た道を戻って行けば、扉の先でミシェルが手を振っているのがわかるだろう。
あの、最初に開けた古代語の書かれた扉。
ネメシスの背後からは、躊躇なく財宝の山を蹴散らした鋼鉄の蜘蛛の怪物達が、侵入者を抹殺しようと追いかけてくる。
「早く!早く!!」
ネメシスが扉を通れば、ミシェルはすぐさまそれを閉じて、杖を当てて呪文を唱える。
すると、その扉の古代文字が光り、鍵が閉まるような音がするだろう。
その直後、扉に何かが激突する音。明らかにあの蜘蛛が体当たりしている音。
だが、蜘蛛たちは扉を破壊することも、開けることも出来ないようであった。
「はぁ…助かった」
ミシェルはリュックを下ろすと、壁にもたれかかり、そのままずるずると地面に座った。
■ネメシス > 「うわわわわわ。」
ネメシスは日頃では見せない程に目を見開き、顔中汗まみれになっていた。
頭の中に一瞬、こんな経験も面白いかもなどと冷静に判断している己も居たが。
とにかく、冒険者が誘導する通りに扉を潜り抜け。
無事に扉が閉められ、蜘蛛たちをやり過ごすことが出来た所で全身の力が抜けていく。
「ほんと、命拾いしたわ。」
壁の窪みに腰を落とし、肩を揺らし浅い呼吸を繰り返す。
乱れた呼吸を整えている間、相手のことをじっくりと観察する。
線の細さからどことなく女性らしさを感じさせる相手。
特に声に聞き覚えがあった。
しかし、それがどこだったかまでは思い出せず。
城にあまり用事のないネメシスだけに、顔を合わせた機会もほとんど無いだけに無理からぬことだが。
■ミシェル > 「いやぁ本当に…次に来る時はもっと人を集めるべきか…」
肩で息をしながらも、男装の女男爵はネメシスに笑いかけた。
そして、自らのリュックの中身を確かめる。
「うん、目ぼしい物は持ち出せたかな…?」
一見すれば、それはあそこにあった金銀財宝とは到底比べられない、
錆だらけのガラクタにしか見えないだろう。
ミシェルはそれを大切そうに抱えては、くるくると回しながら壊れていないか確かめている。
「よしよし、まぁあんなハプニングがあったにしては上々だろうかな…」
ミシェルはそれらを大切にリュックにしまい直すと、それからネメシスのほうを向いて、白い歯をきらりと見せながら微笑みかけた。
「怪我は無いかい?仔猫ちゃん?」
■ネメシス > 「むしろ単独で遺跡に来るのが凄いわよ…。」
汗ばんだ顔に手で扇ぎつつ、ため息を吐く。
リュックの中が見えると、視線の端を向けるが一瞥した程度で価値が分かる様な品は見つからなかった。
ひょっとしたらひと手間加えることで貴重な道具や素材になるのかも知れないが、ネメシスにそんな知識は無い。
「そう、良かったわね。」
漸く呼吸も落ち着いたところで、冒険者がこちらに笑みを浮かべてくる。
じっくりと顔と観察し、声色から女性であろうと推測。
「お陰様でないわ、冒険者さん。」
■ミシェル > 「いやいや、君だって単独じゃないか」
そう言ってミシェルは、はははと笑う。
ミシェル自身は、上位の冒険者と比較しても遜色ない程の冒険技能を有しているのだが。
「や、申し遅れた。僕の名前はミシェル・エタンダル。
エタンダル男爵家の現当主にして宮廷魔術師を務めている。
だから冒険者というのは違うかな」
普通なら専門の冒険者を雇うところを、目の前の女男爵は自分で出向いているらしい。
「ここには魔導機械の発掘に来て、今しがた上々の戦果を得た。
あの蜘蛛も調べたいけど、それは倒せる人間を連れてきてからの話になるかな」
どうも、先ほどの錆だらけのガラクタは魔導機械らしい。
■ネメシス > 「私は良いのよ、訓練のつもりで来たから。」
とんだ訓練になったなと、今は静かになった扉に視線を向ける。
そして、名前を聞いたことで漸くネメシスは出そうで出てこなかった相手のことを思い出す。
王城内で顔だけは見たことのある相手の一人であったのだ。
ただ、王城内は人が多い為じっくりと話した相手でもないとなかなか覚えることは難しいのだが。
一人で納得した表情を浮かべると、改めて口を開く。
「貴女がミシェルね。
私はネメシス・フォン・マクスウェルよ。
で、今日の所は城に戻るのかしら?」
多少なりと計算し、交誼を結んでおいた方がよいだろうと判断。
人心地ついたのでようやく腰を上げる。
■ミシェル > 「あー…そりゃ悪いことしたかな。
ここに来るまで何もなかったろう?」
自分が丁寧に罠やら魔物やらを駆逐したので、訓練にはならなかっただろうと、ミシェルは謝る。
挙句、自分でも対処が難しい魔物に遭遇し、逃げ惑う羽目になり。
目当てのものを手に入れたミシェルと違い、戦果もあまり無いように見える。
「ネメシスと言うんだね?よろしく。
ん?フォン・マクスウェル…マクスウェル…あぁ、
戦働きで侯爵になった…つまり僕より爵位が上か。まぁいいや」
明らかに良くは無いのだが、この宮廷魔術師に社交界の常識は通用しないようだった。
「んー、目の前にこんな麗しい仔猫ちゃんがいるのに惜しいことだけど、
一刻も早くこれを持って帰って研究したい気持ちが強いね」
ミシェルもリュックを背負い、立ち上がる。
走り回った割には、足腰はしっかりしていた。
■ネメシス > 「そうねえ…貴女が壊したトラップと魔物の死体が転がっていたくらいかしら。
でも単独で来たのならああなるのは仕方ないわ。
私が逆でも同じことしたかもしれないし。」
謝意を述べるミシェルに対し、笑って受け流すネメシス。
結局目立った収穫は無かったのだが、遺跡巡りではこんなことはよくあることなので気にすることもなかった。
「まあそうよ。
だからって態度を改めなくても良いわ。
貴方の方が年上なんですし。」
今更畏まられても対応に困る。
ネメシスの微妙な表情にはそんな思いが込められていた。
「それなら入り口までは送るわよ。
また今度時間がある時にお茶でもしましょう。」
その後は特に何も問題も起きず、遺跡の外へと向かった事だろう。
別れる時も静かに分かれたことだろうが、
宮廷魔術師の一人と誼が出来たことで内心喜んでいるのであった。
ご案内:「無名遺跡」からミシェルさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からネメシスさんが去りました。