2017/02/09 のログ
ご案内:「無名遺跡」にオーベさんが現れました。
■オーベ > 彼女が追い詰められるほんの少し前の事
十重二十重、と彼女に群がるウッドゴーレムの包囲の外縁辺り、物珍しげにウッドゴーレムを眺めながら、
ほう…と関心したような、新たな発見でもしたかのような声を上げた人影が、そっ、とゴーレムに触れる
職人が作品の出来を確かめるような手つきで触れ、意識を集中させれば服の袖から見える肌に施された
紋様が淡く輝いて触れられたゴーレムは身体を引き攣らせて崩れた
「……失敗、失敗。俺が作ったわけではないから…」
脇から男を見上げる老犬にそんな言い訳をすれば、フードを被り、脇にいた老犬に待っていよ、と一声
何やら呪文を口ずさみながら、ウッドゴーレムの群れに割って入っていく
不思議なことにウッドゴーレムは割り入ってくる男に気がつくこともなく包囲されている少女に殺到する
ようやく、包囲の最前線にまでたどり着けば、今まさに腕が振り下ろされようとしている場面に遭遇する
杖を掲げ、『動きを止めよ』と腕を振り上げたウッドゴーレムに命じる
大体の性能は先程触れた時に理解しているつもりであるから、古代語で唱えられた呪文も通用するはずである
……――もっとも、最初に触れたウッドゴーレムは壊してしまったので、なんとも言い兼ねるのだが
■エリミア > 「…っ!……?……あれっ?おーい?」
結局は罠を踏んだ相手にストックの限り攻めかかる単純なトラップの装置でしかないウッドゴーレムたちは、魔術師の紡いだ呪文によってその動きを止める。
そのことに気づかない少女は、近づいてくる拳、それはすごく痛いだろうが我慢して耐えて反撃しようとそれを睨み付けていて、何時まで経っても痛みが来ないことにまず怪訝そうに眉を顰める。
そして、その拳はおろか、周囲を取り囲むように動いていたウッドゴーレムたちが静止していることに気づいてきょとんとする。
そして目の前で斧を跨いでいるウッドゴーレムの顔をべちべちと叩きながら声をかけるものの、やはり反応はなく。
「ん、これおにーさんがやってるの?」
一通り試してゴーレムが動かないことを理解した少女は、その群れの中に立ち、杖を掲げている男を見つける。
そして、跨いでいるウッドゴーレムを蹴飛ばしながら巨斧を威嚇するように振り上げて構えながら問いかけ。
どこか茫洋とした赤黒い瞳で相手の背格好などを眺めて、魔術師らしいとわかれば、あからさまに警戒の様子を見せる。
■オーベ > 振り上げられたウッドゴーレムの拳はどうやら呪文が通用したらしく動きを止める
誤算だったのは存外に命令する呪文が効きすぎたのか、周辺のゴーレムまで一斉に動きを止めたことであった
やれやれ、少々格好が付かないなあ、と思いながら立ち上がり此方へ意識を少女が向ければ、
掲げた杖を下ろし、何か言葉を紡ごうとする彼女へ向かって、しーっ、と人差し指を一本立ててみせる
自分が歩いてきた方へ視線を向け、ぴーっ、と指笛を吹き鳴らせば、止まったゴーレムの脚や股の間を縫うように
狼混じりの老犬がやってきて、それを確認すれば、フードを下ろして少女へ視線を向けた
「そういう事…だが、要らぬ世話だったかもしれないな…」
少女の風貌を見れば自分では到底、扱えぬような無骨な斧に手の甲を覆う防具とも武器とも見える装備
戦士の類であることは明白であった…1人、遺跡に潜るほどの腕前の戦士であれば、これくらいの危機は
自分で脱していたであろう、と思える
……あまりマジマジと見すぎたか、助けたタイミングが良すぎたか、自分では判断の付きかねる所であるが、
明らかに警戒されれば微苦笑を浮かべて
「……そんなに警戒せんでもゴーレムをけしかけた黒幕だったり、恩着せがましく強請ったりはしないから」
と、言葉にして数歩、後ずさるように彼女から離れれば、くるり、と背を向けて
立ったままのゴーレムの1つに手を伸ばし、再び観察を始めた
■エリミア > ウッドゴーレムたちは、トラップの命令一つでその全てが行動するように作られており、ゴーレム1つ1つは破壊されても影響はないが、魔術的な手段で止められたことで、その命令が全ての個体に伝播していた。
男の呪文によって全てのウッドゴーレムはそのすべてが最初からそこにあった飾りのように動きを止めている。
「……そっか、危ないとこを助けてくれてありがと、えっと、おにー…さん?」
男が杖を下ろして、何やら犬を呼んでいる様子に、少女は警戒心を削がれて、問いかけを相手が肯定すると、小さく吐息を漏らしながら構えを解いた。
やや脱力気味に腕を下ろしたせいで、巨斧の柄が大きな音を立てて床に叩きつけられて、静かになった遺跡に響いていく。
フードを下ろした男の顔から読み取れる年齢に、ほんの少し首を傾げながら呼び方を戸惑い気味になって。
「それはありがと…あっ、待ってよ…って、何してるの?」
苦笑する相手の言に、少しバツの悪そうな態度で返していた少女は、相手が背を向けて歩き出すとそれを追おうとする。
そして、立ったまま動かないゴーレムを観察している相手には、犬のいない反対側へと足元に散らばる薪を避けて歩いて回っていく。
ウッドゴーレムは人間の形をしているというよりも、木組みのパーツを組み合わせてそれらしい大雑把な人型を取っている。
そして頭に相当する部分には、仮初の魂を込める輝石が埋め込まれており、それは全てが黄色の光を放っていた。
■オーベ > 「ん…?観察…古い遺跡を調べるのが趣味みたいなもんでね」
ウッドゴーレムに触れながらふむふむ、と頷きながら満足げに頷いていく
新しいものに触れる好奇心と知的欲求が満たされるのが満足な様子であった
頭部にある輝石を取り外せば、それを手に取り、す、とそれを懐へとしまい込む
「君はこんな所で何をしていたんだ?
見たところ、君は戦士のようだから財宝探しに腕試しといった辺りかな?」
再び彼女の方へと振り返る
首を傾げて尋ねたかと思えば、その場にしゃがみ込んで彼女がバラバラにしたであろう、ウッドゴーレムの
四肢を拾い集める…ベルトに吊ったポーチから白石を取り出しては、石畳の床に方陣を書き、
その上に、拾い集めたウッドゴーレムのパーツを元あった形に並べる
「……ウッドゴーレムを相手にするには少々、大袈裟な武器だな、それ」
竜種や巨獣とでも戦うかのような武器だ、と冗談交じりに彼女の巨斧を眺めながら告げると、
手に持っていた杖の先で地面を軽く叩き、呪文を唱え始める。身体に施した刺青が淡く光り、
白石で床に書いた方陣が同調するように輝けば、ウッドゴーレムが破損箇所を修復されながら、むくり、と
起き上がった…頭部に輝いていた輝石は無く、それでもどうやら稼働する
「…では、仲間の残骸を片付けるように…
それが済めば君も仲間と眠るといい」
命令を告げればウッドゴーレムはぎこちなく動き始める
仲間の残骸を拾い、立ったままのものを担ぎ、邪魔にならないよう何処かへ片付けるよう動き始める
■エリミア > 「へえぇ…?お宝が欲しいとか、そういうんじゃないんだ?」
男の趣味という動機には、一般的にこういう場所に来る冒険者と違うものを感じて少女は関心する。
男に輝石を取り除かれたウッドゴーレムはその場でバランスを崩して倒れていった。
部品を組んだ時点で最低限人型を保つように作られているのか、その場でバラバラに砕けることもなかった。
「え?えーっと、うん、そう、財宝探しと腕試し…こんなのばっか相手にするって思ってなかったけど…。
おにーさん、それどうするの?」
相手の問いかけは半分は間違っていなかったため、変に否定して藪蛇になりたくない少女は、曖昧に頷く。
それでも、最後に漏らす言葉は実感と疲労を色濃く映していた。
そして、相手が薪になったウッドゴーレムを集めて何事かしていると興味深そうにそれを覗き込んで。
「いつも使ってる武器は修理に出しちゃったから、ここに来る前の部屋にいたデッカイ牛の頭した奴からもらった。
おぉ、おにーさんゴーレム止めたときも思ったけど、魔法使いなんだ?うーん……」
相手に指摘されて、巨斧をその場で掲げながら、少女はあっけからんと言う。
その斧を持ち上げている右手のセスタスのみ、木くずに交じって何か赤いものがこべりついているのが見えるだろう。
当然、もらったとは少女の言葉通りのことではない。
そして、男の作ったウッドゴーレムが動き出して、他の同胞を片づけ始めると、少女は少し目を光らせる。
一方的に消耗を強いられた戦いで、その身体の魔力も減少していた。
それを回復するに、魔法を操る相手はうってつけであるが、恩人に襲いかかるのもはばかられ、さてどうしたものかと腕を組んで考え始める。
■オーベ > 「俺が降りて来られるような階層にお宝が残っているとは思えないしなあ…」
ははは、と彼女の言葉に笑いながら返す
古代の遺跡、とはいえこれまで幾多の冒険者が探索したことであろう
当然、過去には腕のたつ冒険者の一党がこの遺跡を探索したであろうし、ひ弱な魔術師1人に出来る事などは
とうに過去の英雄などと呼ばれた冒険者たちがやったに違いない
ウッドゴーレムを再起動する過程を横から覗き込む彼女の視線を受けながら、テキパキと作業をしていく
そうしてウッドゴーレムが再び起き上がり、仲間の片付けを始めれば、まあ、こんなもんだろう。と
動き出すゴーレムを見送った
「…牛頭か…へぇ、この国にもいるのだなあ…
出来れば見てみたかったけど、その言い草じゃあ、もう生きてはいまいな…
―――、一応ね。オーベという…お嬢さんは?」
手についた白石の粉をはたき落としながら彼女の方へと向き直る
しばらく、彼女へ視線を送っていたようだが、思い出したようにそうだ、と零し、ポーチから革袋を取り出し、
彼女に投げて渡す
「お節介ついでだ、自家製の薬草で作った膏薬だけど良ければ……
―――人間用だから果たして君に効果があるかは怪しいが」
へらり、と笑い老犬を呼びつければわしゃ、と頭を撫でてやり。懐から小さな固形食のような物を
取り出せば老犬に手ずから与えてやる
■エリミア > 「そっか、もうみんな取り尽くされちゃってるかもしれないんだね」
笑う男に、少女も納得したように頷いた。
番人のようなものには何度も遭遇したものの、宝らしいものは見つけられず、手元に残っているのが大斧だけであることが、
なんとなく男の言うことを証明しているような気がして。
ウッドゴーレムがもはや脅威ではなく、片づける召使のように動いていると少女も警戒を解いて斧を杖のように突く。
「うん、これ残してなんか光になって消えたよ。
おにーさんはオーベ、って言うんだ、えと、わたしはエリミア」
牛頭の魔人の末路についてもあっけからんとした答えを少女は返して、男の自己紹介に自分も名乗り返していく。
そして、ポーチを漁りだす相手には怪訝そうな表情でそれを見つめていて。
「あ、ありがと……えぇっ?お、とととっ…え、エルフには効きが悪い~…とか?」
男がポーチから取り出す革袋が傷薬と知って、それを何気なく受け取ろうとし、続く相手の言葉に露骨に動揺を示す。
魔術師の者は、探知に優れていることもあって割と正体を看破されやすく、
かえって少女は相手の言葉に過敏に反応してしまっていて。
投げ渡された革袋を何度か取り落としそうになりながら受け取ると、少女はおずおずといった風に、
ぷるぷると震えながら冷や汗を浮かべながら取り繕うような問いかけを男へと返していく。
実際、少女の身体に目立った外傷はなく、多少の傷は問題にならないからこその防具すら身に着けない恰好なのだった。
■オーベ > そうだ、と言うように彼女の言葉に頷く
しかし、遺跡そのものが神秘の塊のようなものであるから、自分にとっては財宝の取り尽くされた遺跡や
ダンジョンであっても潜るだけの価値は十分にあった。記された歴史以前のものであれば尚の事である
「消えたか…死体でも残っていれば調べてみたくはあったが…
消えた、となると誰かが召喚したりしたものだったかな…しかし、そうなるとなぜ、斧が…」
ぶつぶつ、と思考の世界に耽入ってしまいそうになるも、軽く頭を振り現実の世界に舞い戻る
彼女の名前を聞いたような気がしてこほん、と咳払いをすれば、よろしく、エリミアと返事を返した
「―――エルフだったのか?それにしては…その、何ていうか…」
彼女の言葉に口籠る
動揺する彼女へ視線を向けながらも思案の表情を浮かべた。自身の感じでは、どうも彼女はエルフのようには
思えず、かと言って人間でもなく……彼女と似たような気配を感じたことがあるのだが、上手く説明できない
「…魔族…と、いうか俺の連れ合い…吸魔に近いような気配だったんだが…ううん…」
……結局、上手く言語化はできなかった
うんうん、ぶつぶつ、と独り言を繰り返していたが、わかりやすく彼女は動揺しているし、
眼の前の彼女が人間だろうが、魔族だろうが、果ては古代人の生き残りであっても、自分は構わないし、
エルフ、と誤魔化すくらいだから詮索されたくないのだろう、とスッパリと思案を辞め
「いや、エルフであっても一定の効果はあるだろうがね…
傷口を直に治すんでなく毒素を除く類の薬草だから…前に出て戦うスタイルだし、持っていて損は無いさ」
固形食を食べ終えた老犬の頭をぽふ、と軽く撫でれば立ち上がり、フードを被り直す
ぽんぽん、と衣服の埃を落とせば、よし、と小さく呟いて
「では、エリミア、俺は往くぞ?
君の倒した牛頭、というのに少し興味があるからその部屋に言ってみようと思う…
君も先に進むのであれば気をつけるといい……――」
彼女に背を向ければ老犬とともに歩き出す
数歩、進んだ所で、そうだ、と足を止めれば独り言のように呟いた
「……そう言えば少し戻った所にウッドゴーレムの頭にあった輝石とよく似た魔力を生じる鉱石の坑道があったな
そちらへ向かえば、大きな鉱石も見つかるかもしれないし、無駄骨になるかもしれない…」
最後のお節介―――
彼女が、もし吸魔の類であれば魔力を帯びた鉱石から幾らかは魔力を補充できるかもしれない
それだけポツリと呟けば、行こう、と老犬に声を掛けて暗い遺跡の闇に混じって消えていくのだった…。
ご案内:「無名遺跡」からオーベさんが去りました。
■エリミア > 「おにーさんって、没頭すると脇目もふらなくなる人なのかな?」
名前は聞いてなお継続する呼び名の中、少女は男が考え事をするように呟く様子を見て、
少し首を傾げて苦笑いしながらその様子を評した。
「う、うん……エルフ……っ!?」
男の思わしくない反応に、ダラダラと脂汗をかきながら少女は取り繕う言葉を重ねる。
男が何か考え込むような態度になっていると、ひょっとして誤魔化せたのではという楽観的な考えが少女の頭に浮かびかける。
しかし続く魔族、という言葉に図星な少女はビクゥと身体を跳ねさせて、相手の一挙一動をおそるおそる見守っていた。
正体がばれて、かつ退治、というような態度に出られると、恩人に手を出さねばならない状況になってしまうからで。
「そ、そっか……ありがとっ、大事に使うね」
やがて、恐らく感づいていたであろうに詮索せずにいてくれる男に少女はほっと息を吐きながら、
受け取った薬草の込められた革袋を大事そうに握り締めて少女は笑顔で返す。
「わかった、まだ先に進んでみるよ。
来る途中の魔物は全部倒したけど、気を付けてねー?」
そして、戻るという男を手を振りながら、来た道について少女は言及する。
一緒に去っていく犬に、触ってみればよかったかと少し後悔をしつつその尻尾が揺れる様を見ていて。
「ホント?ありがとー!
うぅん、けど魔力のこもった石って、おいしいのかな?」
去り際の男の助言に、正体を看破されかけたことも忘れて少女は表情を輝かせ、ぶんぶんと大きく手を振りながら見送っていく。
そしてその後、考えたことも試したこともない食事方法に首を傾げて、物は試しとウッドゴーレムの輝石から
吸ってみようと思って振り返ると、そこはきれいさっぱり片づけられた広場だけが残っていた。
ご案内:「無名遺跡」からエリミアさんが去りました。