2018/06/10 のログ
■ルシアン > この場所がどんな所だったかは知らない。
廃墟のように残る痕跡で、恐らくミレー辺りの隠れ里だったのでは、程度の推測ができるだけ。
それ故に、天に昇っていく光が何か、など推しはかる事も出来ないのだけど――
ただ、それがとても美しくて。最後の一つが空の向こうへ消えるまで、静かに見守り続けた。
「……え?っと……」
まだ暫し、余韻に浸っていたのか少し反応が遅れたけれど。
不意にその存在が声をかけたのが、自分へだと理解すれば少し気まずげな表情でゆっくりと木陰から姿を現す。
念のため、と手にしていた短剣は腰へと戻し、開けた両の手は軽く上に上げる。
敵意は無い、と示しつつ。
「…祈り、か?もしかしたら邪魔をしただろうか。だとしたら、謝る。
……君は、いったい…?」
改めて、その存在が何者だろう。ほんの僅かに警戒心はまだ残しているのだけど。
それ以上に、興味と好奇心が先に立つ。翼をもった少女のようなその姿へ、問いかけをしてみたりして。
■ラフェル > 魂から感じる色彩で大雑把ではあるが相手の感情は理解する。
先程迄は好奇心と興味、そして次に見えるのは戸惑い。
慣れればそれだけの情報でもある程度の予想は出来るもので。
「すいません、若しかして待った方が宜しかったのでしょうか?」
此方から声を掛けた事でそうしてしまったのだろうとの予想をする。
少し困った様な表情を浮かべ乍、相手へとそう伝えて。
心配をする事も無く少女は相手に対しての警戒心は持っていなかった、不要だと理解しているから。
「はい…此処でも色々と在ったみたいですので。
でも、邪魔にはなっていませんので御安心下さいね?」
物悲しげに目を伏せてその理由を、流石に内容までも細かく伝えたりは出来なかったが。
そして、続ける言葉にそれが本心からなのだと伝える様に柔らかな笑顔を相手へと向ける。
「私はラフェル、見ての通り…と言いたい処なのですが、天使見習いです」
相手へと見せる様に一度だけ翼をはためかせてみせた。
■ルシアン > 「いや、そんな事は…」
待っていた方が、などとはとんでもない話だ。
邪魔ではないと言われたものの、やはり少し遠慮がちに首を横に振りつつ。
あまりに幻想的な今の光景の余韻がまだ少し残っているのだけど、一つ大きく息を付いて何とか落ち着こうと。
「なら、良いんだ。…いろいろ、あった…か。
…なるほどね。だから、天使様が降りてきて祈りを捧げてくださってる、ってわけか」
まだ少しぼんやりとしつつ、なんとなく思い浮かんだとりとめない言葉を口にしてみて。
…だけども、彼女の物悲しげに目を伏せた姿に、はっと口を噤む。
不謹慎な軽口だっただろうか。今度は、罪悪感まで湧いてきて。
色んな感情がごちゃ混ぜになったような感覚。くしゃくしゃ、と自分の髪の毛を書き上げるようにして誤魔化しつつ。
「ラフェル、ね。僕はルシアン…ルシアン・エヴァリーフ。見ての通りの狩人だ。
…獲物の代わりに、天使様を見つけるなんてね。森で迷ってどうしようかと思ってたけど…実は随分と運が良かったらしい」
ぱたり、とはためかせられる大きな翼に興味深そうに眼をやりながら。
少女の笑顔に答えるよう、やっと緊張も解けたか安心したような笑みを返す。
■ラフェル > 「そうですか…それなら良かったです」
相手の顔色を伺う様に、そんな感じに見えるだろうか遠慮がちに見詰めて。
後は相手が落ち着くのを待つかの様に静かに佇んでいた。
「あ、いえ…その…私がこうして祈りを捧げているのは私情からでして…
此処で起こった事で何か切っ掛けが在った訳ではないんです」
全ての天使達が自分と同じ事をするのかと問われれば、はっきりとした答えが出せない。
中には種の間に起こる仕方の無い出来事と捉える考え方も在るからだ。
だからこそ、それが自分にとっては悲しい事で…こうして自分に出来る限りの祈りを捧げていたりしていた。
きっと今の自分の感情は、今の相手と同じで入り混じった色彩を浮かべる事だろう。
「ルシアン様ですか…なるほど、それでこの様な場所にいらっしゃったのですね。
私を見付けた処で何の得も在りませんし、どちらかと考えるならば運が悪かったと思うのですが…
取り敢えず、この付近はミレーの隠れ里が点々としている森の深き場所なので、離れた方が良いと思います」
胸元に右手を添えて小さく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
そして落ち着いた処で付近についての説明を簡単にしておいた。
■ルシアン > 少しの会話の中で、この天使様が随分と穏やかな性格だとは分かってきた。
返事を聞けば少しだけ不思議そうに首を傾げ、その後にくすりと笑ってみる。
「私情、ね。…ここらに眠ってるのがどんな人たちか、面識もないし知っても居ないけど…
それでも、その人たちもきっとその気持ちは嬉しく思ってるだろうさ。
何せ天使様のお祈りだ。間違いなく天国に行けるだろうしね」
今度こそ素直な気持ちでそんな言葉を。義務や職務であれば、そんな事は言わないのだけど。
―――人や種族の間の争いなんかはごまんとある。それも知った上での話。
そのまっすぐな気持ちは、とても貴重な物だろう。裏も無く感心してしまう。
「ああ、いや。別に運がいいってそういう事を言ったんじゃないよ。
ご加護に預かろうとかそういう事も無いから安心して?それに、森には慣れてる。
得があるって言うなら…ラフェルみたいな天使様と会えたこと自体が、十分すぎる得だしね」
楽しそうに、冗談っぽく、言葉を紡ぎつつ。
辺りを軽く見渡し、雨風しのげそうな屋根の下に背負った荷物を置いて。
荷物から取り出したのは、火打ち石やら何やら。
「天使様は、人の食べる様なごはんとかは食べるの?夜になったら眠ったりも?
もし良かったら、今夜は話し相手になってくれると嬉しい。保存食位なら有るしね。どうだろう?」
今あったばかりの、それも天の使いにそんな事を。
簡単な野営の準備をてきぱきと始めてしまいながら、どうかな?なんて声をかけて見たりする
ご案内:「ミレーの隠れ里」からルシアンさんが去りました。
■ラフェル > 【本日はこれにて中断致します】
ご案内:「ミレーの隠れ里」からラフェルさんが去りました。
ご案内:「ミレーの隠れ里」にレイカさんが現れました。
■レイカ > 困ったことになった。
私は昨日受け取った『降伏状』の中身を見ながら、深いため息をついていた。
王国にしてみたら、この里は間違いなく星の聖猫派の拠点として認知されているはず。
だとしたら、近いうちに討伐隊が組織されてここに攻めてくるのは間違いないだろう。
ドリアードたちに事情を話したら、森の迷路を完成させてくれている。
大部隊であっても、かなりの時間が稼げるらしい。
毎日、森の中で組み替えられる迷路を抜けるのは、相当難しいだろう。
「……………。」
だが、ドリアードが動くということは私の負担も大きくなる。
ほぼ一日、里の中の私の居住で瞑想を続けている。
防衛に関しては、傭兵団と彼女がずっといてくれているから…心配はない。
あとはこの里を……そう、この里をどうするかだけだ。
「……何を迷っているんだ、レイカ…。
決めたじゃないか、なりふり構わないって……ここにいる皆を守りたいんだろ…?」
私は目を開けて、自嘲気味に笑った。
迷うことなんてない、皆を守るためならばなんだってする…そう覚悟を決めたじゃないか。
だから、何が攻めてきてもみんなの命だけは守り抜く。
だから、一つの答えを導きだした。
■レイカ > そもそも、私は一つ勘違いをしていた。
私が護りたいのは里じゃない、この里はただの箱だ。
この里がどうなろうと知ったことじゃないが、育てている野菜や食糧の問題がある。
まだ踏ん切りはつかないし、準備をしている間に攻め込まれる可能性だってある。
だから私は、もうなりふり構わない。
ここに常駐している彼女が、その証だ。
(…王国騎士団と戦って勝ち目はない。
何より、戦ってここに攻め込む口実を与えるわけにもいかない。
彼らだって、騎士団長やメッセンジャーを無事に帰したから攻める口実はまだないはず…。)
もっとも、その証拠をでっちあげる事なんか造作もない。
それを考えれば、もしかしたら時間は限りなく少ないのかもしれない。
だから私は、昨日のうちに考えをまとめ、それを早朝に傭兵団のみんなに伝えた。
今、里は着々と引っ越しの準備を進めている……。
私の導き出した答え、それは『里の破棄』だった。
この広い九頭竜山脈、どこにミレー族の拠点があってもおかしくない。
結界ははれずとも、彼らはもう無知のミレー族じゃない。
野菜の育て方、狩りの仕方、木工細工の作り方。
いろんな知識を持っているから…みんなでなら、きっとやっていける。
(……あの親子には、何とかして伝えないといけませんね…。)
自嘲気味に笑う私は、少しだけ笑みを深めた。
ご案内:「ミレーの隠れ里」にミリーディアさんが現れました。
■ミリーディア > 其処には何も無かった空間から不意に魔法陣が浮かび上がる。
直ぐに魔法陣は消えるのだが、その場に居なかった筈の少女が一人佇んでいた。
自分の着いた場所を把握し切っていないのだろう事は、現れたその場所を確認する様に見回しているので分かるか。
「見ているだけの役立たず共め、本当に自分で動く事を知らんものだ…」
独り言を呟く原因は先日の出来事だ。
最近王城内を賑わせてくれている、星の聖猫派等とミレー族のテロ集団。
其れと、九頭龍山脈に隠れ里を持つミレー族との関わりを懸念する話が持ち上がっていた。
現にどこぞの師団が里を一つ滅ぼしたとか如何とか、そんな話もあった。
ミレーの隠れ里は、基本的に隠匿の魔法に依って隠されている。
其れの看破に第二師団を借り出す話まで出てきたのだ。
そんなものに第二師団を動かす訳にはいかない。
自分が里を回り確認に向かう、其れを条件に断る事となった。
問題になったのは、その魔法の掛かっていない隠れ里。
挙がっていた色んな話を纏め上げ、位置を大雑把に出して転移してきたのだ。
■レイカ > ざわ、と何かが頭の中でざわめく。
ドリアードたちが感じ取ったのは、人の気配じゃない。
魔力の流れ、それが自分たちの包囲網を破って里に来たと。
「………魔力そのものが……?王国軍……なのか?」
私の知っている情報の中ではそんな部隊は……。
いや、ある。
確か第二師団が魔法を専門に扱っている魔法師団だったはず。
本当に、国の犬というのはどこまでも鼻が利くらしい。
まだ引っ越しの準備は遠い、だからこそまた相手をしなければならない。
今度は…もう戦いは避けられない可能性もある。
弓と、そして朱色の笛と髪飾りを付けて、私はゆっくりと、私の居住から外へ出た。
里の皆が私を見て、何事かと騒いでいるけれども…もう、今は私が出ることがどういうことかわかっているようだ。
ただ一言…気を付けて、というだけで。
「………………。」
誰か、というのももう疲れた。
私はただ、入り口の前で…その少女と対峙するだけだ。
■ミリーディア > 周囲を見渡してみれば、間違いなく普通の森では無いのは理解出来た。
其の原因が精霊に因るものである事も。
「なるほど、迷いの森か…知らん連中から色々と話が出る訳だ。
そうなると…」
呟く言葉を続け乍、視線を森から下げ…現れた存在へと向ける。
此れを造り上げた精霊使いへと。
然し、其の相手が見えた処で不思議そうに首を傾げた。
初対面ではない、相手の姿には覚えがあったのだ。
「君は…見覚えが在るな。確か……そうだ、今は無き第十七師団だったか?
こんな所で何をしているのか、なんて質問は大丈夫かね?」
長く居るだけに少女は王城の関係者で知らない者は居ない。
特に人間の多い騎士団、更に其の中でも師団長で種の違いが在れば尚更だ。
間違いなく、王都の為に動いている訳では無いだろう。
■レイカ > 「………っ!?」
まさか……いきなり言い当てられた?
確かに王都の中では、私の記録…レイカリオだった時の私の記録は残っている可能性はある。
そのことは、里の皆も知っていることだが…それをあっさりと言い当てられた。
……いや、知っていて当然か…。
私が騎士団に在籍していた時の期間はとても短い。
その短い期間で、何度か顔を合わせたこともある相手だ。
まさか……彼女まで敵に回ってしまうことになるのかと…。
「その質問はとても野暮だな…。王国軍に話すつもりはないよ。
騎士団であった時の私のことを知っているみたいだが…あいにく、その彼女はすでに亡くなっている。
今の私は…名前のない、ただの偽善者だよ。」
自嘲気味な笑みが消えない…まったく、ここのところ心配事ばかりだ。
できればもっと、平穏に暮らしたかったのに…。
やっぱり、私は疫病神なのかなと少しだけ、苦笑が漏れそうになる。
「こっちからも質問を投げたい。ここには何をしに来た。
魔法に長けた第二師団の師団長補佐が直々に来るんだ…きっと何か用事でもあるんだろう?」
■ミリーディア > 記憶に間違いは無いらしい、言葉に対する反応で理解出来た。
尤も、だから何だと云う訳ではないのだが。
王国から離れた人間…否、エルフなのだから何処に居ようと彼女の勝手なのだ。
だが、状況が状況故に只此処に居るでは済まない。
「まあ、君が何者かについては此の際どうでも良いだろう。
元師団長だったとしても、森を彷徨う偽善者で在ろうとな。
儂は面倒だがやる事をやらないといけないんでね」
非協力的なのは理解している、立場上で自分達と関わるなんてそうしたくもないだろうとも。
だが、伝えた通りやらなければならない事がある。
丁度相手から、それに対する質問が投げ掛けられたが。
「酷く個人的な理由だから詳細は省こう。
此処がミレーの隠れ里の一つなんだろう?取り仕切っている者に会いに来たのさ。
一つだけ、質問をしにね」
心底面倒そうな表情を浮かべ乍、彼女に答える。
こんな緊張感の漂いそうな雰囲気の中であっても、少女はさっさとやる事を終えて帰りたいと思っているのだ。