2020/06/05 のログ
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ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 真っ黒な帳が降りた空に欠けた月が浮かぶ夜。

城塞都市を囲む緑深い森の一角、太い幹を持つ木々の合間にぽつねんと佇む女がひとり。
肩に獲物たるヌンチャクの鎖をひっかけて、葉擦れの音を聞きながらふわあっと大あくびをひとつ。
頭上の梢に遮られて月明りもまばらにしか届かないが、細い目の黒い瞳は特に不自由しないようで、辺りをつら―――っと眺めてはちょっと移動して、を繰り返している。

王都の冒険者ギルドで見付けた依頼。
城塞都市の方から来る者であれば、問答無用でぶちのめして良いと言われ―――兎に角そう受け取っている。
流石に王都の騎士の証とかぶら下げていたら手加減するつもりではあるものの、取り敢えず出会ったやつは喧嘩を売っても怒られない、筈。
しかしこう広大な森の中では中々出会えないものらしい。
時折気配を探っては見るものの、どれも森の動物のものばかりで…

(…―――いっそ、熊でもいいから出ないかなァ…)

その騒ぎで肝心の依頼をすっぽかすことになりかねないが
兎に角女は紅い唇を尖らせながら、深夜の森を軽い足取りうろうろと彷徨っていた。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」に芒槌さんが現れました。
芒槌 > 風も吹いていないのに少し離れた大樹の枝が蠢く。
木の葉が擦れる音に混ざる様に、太い木の枝を蹴る様にして枝から枝へ。飛び移る様にして移動している影が一つあった。
細い枝ではなく、太い枝を目指して、飛んで、飛んで。
脚が枝を蹴る時に枝が撓り、その結果が木の葉が騒めく様な音が鳴り響く。
方角的には、丁度アスピダの方角から聞こえてくる形だった。

「いやぁ………ありゃぁ。無理無理。」

数が多すぎて潜入どころではない。
速やかに退却を決め込み、木の枝を飛びながら、丁度アスピダ方面からの直線に彼女の足取りが重なるくらいの場所までもう少し。
猿の様に身軽な反面、熊の様な力強さは見えない男の姿がそこにあった。

ホアジャオ > 「――…ン?」

鳥獣の類とは違う気配。
梢を揺らし時折葉を散らして、上の方を移動して―――来る。『向こう』から。
にまーと女の紅い唇は三日月を描く。
肩にヌンチャクを担いだそのまますうと少し、腰を落として。

「―――…ッ!」

無言の気合ひとつ。
たん、と軽く地を蹴ると次に樹の幹の間を三角に駆けて、駆け上がって―――
程なく木の枝の上を進む男の目の前、下の枝葉を突き抜けて

「見つけたァ!」

ざん!という葉擦れの音と共に現れた女。
まずは一閃、担いでいたヌンチャクの一撃を進んできた気配に横凪ぎに振るう!

芒槌 > 「唖?」

枝から枝へ飛び移る際の鉄則。
枝が動かない、或いは動いても風で穏やかな揺れを見せる程度までが限界でもある。
激しく枝が動けば、足を滑らせる危険性も高くなる。
まして今はやや薄暗い欠けた月の明りすら木の葉に遮られてしまう悪視界。

前方、僅かに木の葉が揺れたと思えば激しく枝が揺れ、進行方向。
見た目美人だが明らかに普通の人間ではなく、しかも色々と知られると拙いシェンヤン地方の衣服。
二重の意味で拙い!しかもその女は。問答無用とばかりにヌンチャクを振舞ってくる。

「――――問答無用カ!」

進行方向から相手が飛び出てきたのだ。方向転換しようにも周りの枝を探す暇はない。
袖から縄を飛ばし、自分の足をかけている枝の1本下に巻き付けて飛び降りる。
ギリギリ、ヌンチャクの先端が自分の頭に風圧を残す様にして通り過ぎた感触。
そのまま、縄を短く手繰り寄せて一本下の枝から相手。襲撃者。女。

それを細い糸目が睨み据え――けれど売られた喧嘩だ。
沸点が低い男は、糸目を金色に。……そして今縄を飛ばしたのとは逆の袖からもう1本の縄を出し、それを鞭の様に撓らせる事で下から上に。縄による鞭打を狙い振り上げる。
狙いは脚。当たれば痛みよりも、ダメージよりも巻き付く縄が動きを制限する事が明白。

「喧嘩を売られてニコニコ出来る程、お人好しではないんダ!」

ホアジャオ > 一閃した獲物に手ごたえなし。
相手の姿が下へと消えたのは目で追っている。
ぐん、と一蹴してくるヌンチャクをぱしと反対側で受けつつ

「哈哈(はッはぁ)!アタシに見つかったのが運の尽きだよ!」

元々長く着地する気もない。
間髪入れず相手を追う様に下の枝へと落ちるように身を躍らせると、向かってくる縄をヌンチャクを放した方の手にばし!と打ち付けて巻き取ってぐい、と引く。
打ち付けた腕はみしりと小さく悲鳴を上げるが女の紅い唇は三日月型を描いたままだ。

ぶぉん、と次のヌンチャクの一閃。
避けたとしても―――その後すぐろ、次には女の蹴りが、男の首を目掛けて迫って――ー

芒槌 > 縄は彼女が身を躍らせた後で空を切る、と見えたが相手の手に捉えられた。
幾ら身体強化の魔法を使っても、三日月程度の力では心もとない。
否。
自分より若干力強いとさえ思える引かれ方。自分の足が釣られた魚の様に枝から離れ、相手の方に引き寄せられていく。
腕に縄が当たった感触はある、が決定的な打撃にならず、しかも自分の方が動きを阻害される最悪の展開。

「無様――カ!」

相手の表情が崩れない、ノーダメージだと判断が出来てしまう。
それなら一撃。そう、一撃と引き換えに少し距離を取りなおすべきか。
ヌンチャクの先端が空を切る音が響く。ただ、その向こう側に見えるのは相手の予備動作。
それでもヌンチャクの方が痛い、と判断した結果。ヌンチャクは縄を引き寄せられながらも、袖から長さを増してまた頭上を通り過ぎていく。

所詮、女の脚力なのだ。
片方の腕に、ローブの袖の中。魔法で作った縄を巻き付けて防護効果を増し、そして相手の蹴りを待ち受ける。
そう。所詮、女の脚力なの――

「ダ―――――!?」

右腕が軋む、と言うより、明白に骨に直通で打撃が浸透してくる。
自分を引き寄せる腕力を今見せていたではないか、何故甘く見たのか。
右腕1本で受けたが、その腕を弾き飛ばし。幾分か勢いを落としたが相手の蹴りが首から僅かにそれるが、頬の部分に命中した。

腕の痺れに頬を強く打ちぬかれた結果、幾分視界が揺らぐ。
左腕から伸ばしている、彼女の腕に捉われている縄は袖口の仕込み刃だけで切り捨てる。
2本の脚、とはいかず、左右の腕も使って4点着陸。
右腕には結構な打撃を受けており、今はまだ視界もふらつくくらいいい一撃を受けてしまった。

「莫迦力かヨ!」

奥歯が砕けたりはしないが、口の中に血の味が広がっている。
口の中が切れているのもあるが、それより視界がぐらつく方が拙い。
相手は近距離戦が得意な様に見える。だから飛び降りてくるだろうと狙いをつける。
ただ、まだ回復に時間がかかる為。1手時間稼ぎの手を打つ事にした。

地面に降りた時に、本来は逃走用の煙幕弾を足元に。ぼふ、と。
周囲を煙が満たし、少しの間視界を不自由にさせる。自分も見えにくいが、上から降りてくる相手も幾分以上に見えにくい筈だ。
そして少し、脇にずれる。狙っているのは、相手が着地した時の音。そして隙。
降りてこないならば、ゆっくり回復は出来る。だが、降りてくれば。地面に降りる、落ちる音はするはずだ。

その音で狙いを付けて。今度は自分が先手を取る為の準備を始める。

「哈哈哈哈っ!大した事、無ェナ!」

安い安い挑発の言葉だ。逃げていない事を示す様に、上空に向けて一声放つ。

ホアジャオ > 読み通り、といってもいい。
ヌンチャクはまたも空を切っていくが、脚の方には確実に打ち抜いた感触。
狙い直撃ではなかったが、少なくとも相手が驚いたのは確かで、そのことに悪戯が成功したかにまた女は笑みを深くする。
たん、と枝に着地する間に片腕に巻き付けた縄の先の感触が失せ、相手の姿がまた下へと落ちるなら―――当然、女は間髪入れず追い駆けるように身を躍らせている。
ので

「哎呀(わぁ)!?」

ばふっと煙幕が上がったのは女の着地とほぼ時を同じくしてだったろう。
細い目を目いっぱい開いて思いっきり吸い込んでむせそうになるのを―――相手の挑発に眉吊り上げてふんぬと堪えて、代わりに鼻息を盛大に漏らす

「ふぬぅ――ー、ッ!!」

その鼻息の気合と共に声のした方へと一歩、ざん!と足を踏み出す
同時
一緒に身体を捻るようにして、先に巻き付けた男の縄をぶん!と横凪ぎに。
男がそれから身を躱すなら
女がそのまま真っ直ぐ向かってくる音が
すぐ、間近に

芒槌 > 薬の類は仕込まれておらず、小麦粉とかの目の細かな粉が舞い散る。
薄れて消えるまでに掛かる時間は数秒。10秒は必要としない。
思いの外相手の挙動が速い。早いというか野生の獣染みた行動速度と判断だった。
音はそう遠くない箇所に。
そして土を蹴った、すぐ大地を踏みしめた音。
距離は近く、機会は1度。これまでで分かったが相手の方が力が強い。
もう少し月が満ちていればとは思うが、其れもまた天運。相手が天に愛されていただけの話だ。

「(3歩――!)」

先程のヌンチャクからの連携による蹴りがまだ頭に残っている。3歩先にいる相手が地面を踏みしめた音が聞こえたなら。
ヌンチャクの打撃が頭に浮かぶ。
先程から、しゃがむ、低姿勢で回避が続いた事もあって相手が先読みして、低い箇所を狙う可能性は低くない。

だから、飛んだ。地を蹴る音を追いかける様にして、縄は自分の足元を通り抜ける音。
自分は垂直に飛び、踵落としの要領で。靴底に仕込んである合金の硬さと、足を振り下ろす力。それと地面に落ちる力を借りての、渾身の踵落とし。

脳天に決まれば猛獣位なら昏倒させる事も容易な一撃、だが。
当たらなければ、空を切れば相手からすれば格好の攻撃目標になるだろう。
何せ、飛び上がった後。落ちてくるという動きは一連の、どうしようもない動きなのだから。
そして体重をかける以上、それ以上のフェイントは出来ない。
腕は両腰に付けるようにして、足を落とすときに最も力の入る形を取った。
威力と速度の両立は、防御と回避を疎かにしてしまう。

「寝て――ロ!」

ゴ、と。先程まで彼女の専売特許だった、空を切る音。
この一発が決まるかどうかで勝敗は判れる。
お互いの距離以上に、決着の時間は近くなっていた。