2020/05/25 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にエラさんが現れました。
■エラ > ――――昼夜を問わず響く喧噪、馬の嘶きや女の悲鳴、そんなものから逃れるように。
今夜も一通の書簡を携え、己は城壁近くの暗い袋小路へ向かう。
昼間のうちに幾人かの娘たちを治療した為、既に魔力は枯渇していると言って良く。
己に科せられる役割のうち、ひとつは今宵、もう打ち止めであると知らせてあるからか、
定められた塒を抜け出すのは意外と容易であり。
もうひとつの、もっと気の進まぬ役割の方は―――恐らく先刻帰還した兵士たちの、
目新しい獲物たちが引き受けてくれているだろう。
其の事に生々しい罪悪感を抱くには擦れ切っている、と思っていたが、
勿論、愉快では無いので――――其れ等の騒がしさからも、己は逃げようとしていた。
あと数歩ほどで辿り着く、あの建物の角。
其処を曲がればもう直ぐに、己の姿は闇に紛れられる筈、と、
古びた木靴に包まれた足がやや早足になった。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にホースディックさんが現れました。
■ホースディック > (周辺の警戒を終えて、戻って来た城塞内
自らの褥へと戻るより前に、本日仲間が携えて来たと言う金目の品を
確かめるべく倉庫へと向かって居た
中には呪いの品も在るだろうし、罠が在るとも限らぬ
知らぬ内に掴まされて、困った事になっても問題が出る
――主に、自分の安全に、だ。
ただ、其の途中で、ふと視界の端に見咎めたのは
本来ならば、この場所に居るとは思えない人影、だった
何処へ行くのか、其の後を追いかける様にしてついて行けば
或いは、その人影が向かう先――建物の狭間、袋小路へと、ついて行く事になるだろう
そうして――きっと、其の背後より声を掛ける筈だ
他に誰も居ない、其の場所で。)
「―――――……其処で何をしてる?」
■エラ > 己が殊更、鈍い方だ、とは思わない。
しかし、常に其の気配を隠す事、紛れさせる事に長けている相手であれば、
所詮ただの女に過ぎぬ己が、相手の視線、足取り、近づく気配に気づく事など出来る筈も無い。
長い裾を翻して角を曲がり、暗がりの中に身を沈めようとした、丁度其の時。
背後から掛かる男の声に、細い双肩が目に見えて大きく震えた。
月夜に煌めく銀糸の髪を翻し、振り返った白い貌には、怯懦の欠片も滲まなかったが。
「………御役目は、きちんと果たして参りました。
城門を越えようとした訳じゃ無し、……眠る前の散策ぐらい、
いつも、御目溢し頂いておりますけれど」
蒼褪めた月の光が、其の男の姿を照らし出している。
女が口にするには余りにも品の無い、彼の二つ名を直ぐ思い出したが、
――――此の場に在るのは互いのみ、となれば、名を呼ぶ必要も感じない。
つらつらと述べた台詞の真偽すら、表情からも、声色からも窺い知れまい。
■ホースディック > (元より己の役目は、誰かを追いかける事
己が巨躯で其れを成す事が出来る術を持つ以上
もし、唯の奴隷に気取られたらなら、色々と考えなければならぬ
目前に居るのは、奴隷として捕らえられて居た女
驚き此方を振り返りながらも、僅かも怯まぬ瞳が己に向き直れば
ゆっくりと、其方に向けて歩み寄って行きながら
相手の言葉を気にも止めぬ様に、其の手に携えられた何かへと視線を落とし。)
「……逃げられるとは思って居ないが、万が一も在る
余り人目の無い所へ行くな、要らん疑いを掛けられるぞ。」
(女が置かれた状況は己も解っているし、現実に他の奴隷も
時折の散策程度ならば赦されて居ると知って居る。
――とはいえ、其れはその場に居た仲間の気まぐれに似た物だ
捕えられた捕虜や、敵対心を隠さぬ者がそうであるとも限らず
逃走や外部との密通を疑われたものが、自由すら奪われる事も儘在る事
故に、忠告めいて一言を零せば
女の前へと歩み寄り、其の肩に、片掌を伸べて。)
「―――手紙すら届かなくなるぞ。」
(――其れを。 忠告と取るか脅しと取るかは、女次第だ
だが、片から緩やかに統べる指先が、きっと
其の顎先を、緩やかに上へと持ち上げるだろう)。
■エラ > 年の頃ならば、恐らく己の夫よりも若いだろう。
きちんと問うた事など無いが、或いは己自身よりも。
――――けれど此の男は己の知る限り、骨の髄まで奪う側に染まり切っている。
奪われた側、此れからも搾取される側に過ぎない己にとって、
気を許せる相手には、到底成り得ない男だった。
だから何処までも硬く、冷たく整った貌で、ひたと男を見据え続け。
「―――――疑われて困る肚なんて、とうに擦り切れて無くなっております。
其れに、………そう、」
文字通り、手を伸ばせば触れられる距離にまで。
近づいた男の掌が肩に触れるのへも、当然のように頤を捉え持ち上げるのへも、
抗いも、咎めも、怯えもすまい。
けれども、まるで立場にそぐわぬ傲岸さすら滲ませた上目遣いに、
ほんの刹那のみ、昏い焔が過ったやも知れぬ。
「……手紙すら届かなくなったなら、私が此処にこうして居る意味も、
無くなる、という事ですわね。
そうなればいっそ清々しい気持ちで、―――――首輪も鎖も、断ち切ってしまいましょうか」
成功する訳が無い、逃げ出せる筈が無い。
其の先に待つものを、恐らく、正確に頭の中へ描き出しながら、
口唇にはごく淡く、笑みのようなものすら刷いてみせた。
■ホースディック > (奪う側でしかない――奪う以外の事を知らぬ
其れは、きっと間違いの無い事だろう
城塞より居なくなったと思えば、翌日には何らかの盗品を携えて戻って来る
金へと変わり、食料へと変わり、明日を生きる為に必要な物を
他者から奪い続けてきた、其れが、盗賊たる己が生き方だ。
だからこそ、女の、何処か侮蔑を含んだ様な眼差しも気に留めぬ
そんな物は、もう、向けられる事に慣れ切って仕舞ったのだから。)
「―――――其れは困るな。」
(この場へと留まり続ける理由すらも失せた、女の行く先
其れを伝えられれば、随分と素直に、困ると零した。
奴隷であるならば、生きて居て貰わねば困る、と
肩を竦め、そして、僅かも揺るがぬ其の瞳の、奥底へ揺らぐ炎に
僅かばかり、覗き込んで、そして、ふ、と笑みを向け。)
「其の気概を、生きる力に向けて居ろ。
今よりはマシに為るかも知れん。 ――会いたいのだろう?」
(叶うならば、手紙だけではなく、生きて、再び。
違うのかと、そう問いかければ、奴隷と言うには高貴さすら滲ませる、其の美しい貌を見下ろしながら
頬を撫ぜ、そして、一度指を離し。)
「―――――覗き見はしない、読みたければ読め。
但し…其の後は、付き合って貰う。」
(――生きる糧を、邪魔はしない。
けれど、この場において女に、拒む選択肢なぞ存在はしない
故に――其の後の事は、判って居るな、と)。
■エラ > 何処までも奪う側でしか無いだろう男を、半ば無意識に蔑みながら。
己自身も決して、単なる被害者では無い事を知っている。
現に今宵とて、手を差し伸べればひと時なりと庇えたかも知れぬ娘を、
其の涙も悲鳴も、黙殺して通り過ぎてきた身である。
けれどもだからこそ、同族嫌悪にも似た憎しみが、此の胸から消える事も無く。
「……貴方の困り顔なんて、想像がつきませんわね、
見せて頂けるなら、今直ぐ、此処から逃げ出してみましょうか」
間違い無く、数歩のうちに潰えるであろう脱走計画。
或いは男が気紛れを起こしたなら、とも思うが―――――
生きる力、等と、いつか会えるかも知れぬ未来を、等と。
奪う側に過ぎぬ男の口から聞けば、己はますます笑みを誘われる。
其れは、美しく華やぐような綻びとは真逆の、仄暗く醜悪な歪みであり。
「可笑しいわ、……貴方、本気で仰ってるのかしら。
私が、あの子にまた会える未来が、……本当に、来ると思ってらっしゃるの?」
胸元へ携えていた書簡に、ぐっと皺が寄る程。
きつく、きつく押し付けて、握り締めて、爪を立てた。
目を伏せて俯き、細く震える息を吐き出してから、
再び、今度は己の意思で、男の顔を真っ直ぐに見つめ返し。
「―――――貴方に見られながら、夢を見られるとは思えないわ。
大体、奴隷の都合なんて、考える必要も無いでしょう、
………今直ぐ、貴方の好きなようになされば良いじゃないの」
何処へなりと攫えば良い、或いは此処で獣のように挑みかかられたところで、
己はきっと受け容れるだろう。
ただ、儚く甘い夢を刹那味わった直後には―――――正気で居られる、自信が無かった。
だからこそ、今、と訴える己の心情を、男が汲み取ってくれるかどうか。
■ホースディック > 「なら、せめて逃げられるだけの術を身に着けろ。
例え付け焼刃でも、無いよりはマシだ。」
(――恐らく、この場で女が逃げたとて。
其れは数歩分の逃走にしかなり得ない
其れは女自身だって良く分かって居るだろう
この場で己が見逃した所で、直ぐに気付いたほかの仲間が
容赦なく其の身を引き戻し、そして、希望すらも奪われる、と
だが、其れを否定はすまい
奪われた相手が、自由を求めて逃れ様とするのは当然だからだ
己が前に花開く、毒華の様な笑みに向けて、あっさりと告げ返せば
――夢なぞ視る前に、と、訴えた女に、双眸を細め。)
「―――――奪われたと嘆くだけなら、永遠に訪れはしないだろうな。
誰も助けてはくれん、生き延びる為に必要なのは、自分の力だけだ
奪われたなら、奪い返す。 ……此処に居るのは、其れを判って居る連中ばかりだ。」
(其れは――己だけではない。
初めから奪い取る側に居た人間など極一部だけ
盗賊に身をやつし、誰かを貶め生きて来た人間の大多数は
奪われると言う事が、如何言う事なのかを誰よりも知って居る。
故に、常に奪う側たれと願うのだ。
奪われぬ様に、奪い去り続けるのだ。
――女の頬から一度は離れた指先が、今度は再び、其の腰へと回される
熟れた女の体躯を抱き寄せ、其の体躯に己が雄としての身体を重ねながら。)
「――――なら、付き合え。
幸い俺の寝所は近い、此の儘攫ってやる。 ……手紙は、落とすなよ。」
(落としたならば、其の行方に保証はしない、と
そう、一言忠告を掛けた後で。 ――其の身体を抱え上げた。
袋小路を出て、然程歩かぬ場所にこそ、己が寝所が割り当てられている
攫うのは其の場所、簡素な寝台と、僅かな家具しか無い部屋の中)。