2020/05/04 のログ
ティアフェル >  コボルトに何か手渡す様子を不思議そうに眺めつつ、彼が声を発すればそちらに顔を向けて。

「ま、その変わったところに今回は助けられたわけだし、何も文句はないわよ。
 だけど、物品も援助してもらってるのに………これから? 何を、しようとしているの? オーベさん?」

 ギルドが渋い顔をするようなことをしようとしてるのか、一体何を、と見当もつかずに伺うように視座を真っ直ぐに置いて尋ねた。
 頭を下げる彼にこちらも会釈を返して、改めて黒い瞳を見据え。
 光る頬の刺青に一度、ぱたりと目を瞬き。

「ま、従軍医には見えないわよね。ご明察です。一介のヒーラーでございます。
 国も冒険者の手を借りたいならギルドを使うってね。国の騎士団と違って流れ者の使い潰せる戦力でもあるから。報酬さえ弾んでおけばこうしてほいほいやってきちゃうわたしみたいな輩も多いし。手頃な駒よ。
 ………あー。もう。帰りたくなってきたァー。わたしはずっと詰めてる訳でもないけど、早々と心が折れるわ。ってか増援遅すぎ……。どっかでやられてなきゃいんだけど。
 ……ちなみにここに来る途中殲滅されてる救援隊とか…見なかった……?」

 見た、と云われれば、それがここに来る予定の隊なら、地獄を見る羽目になる。来るんじゃなかった、と非国民なことを感じながら増えていく負傷者戦死者を思うと憂鬱になってきて、特殊なアホ毛が萎れていた。

オーベ > やいのやいの、と不思議な言語で互いに会話するコボルトが出ていってしまう
しばらくすれば、外からコボルトを見て驚いたような声が聞こえてくる

「勝手にやっている事だし、感謝する事もないよ。結局、自己満足だからね
 ……――ん?ああ、城壁の中にも医療品を届けようかと思って
 外でこれだけ不足しているのなら中はもっと酷いだろうしね、困っている人もいるだろうし」

さらりとこれからしようとしている事を述べると、神官や治癒師たちに緊張が走った…ように見える
しかし、そんな事にはお構いなし、と言った様子でサラリと言葉にし笑みを浮かべる

「まあ、あちらにもこちらにも、戦場を抱えていればそうなるだろうね
 大抵のものはお金で手に入るけれど、生命はお金で取り戻す事は出来ないから…よくよく考えないと」

帰りたくなってきた、と口にする彼女を見ればクツクツと喉を鳴らして笑い

「さあ、どうだろうか?なるべく軍人さんとかち合わないように街道を迂回して森の中を来たからなあ…
 ……でも、思うに初動で動ける部隊は大抵、この周辺に集まっているのではないかな?
 後は第二陣をどうするかだろうけど、方々に戦線を抱えているし、良い案が出るまで時間が掛かりそうだね?」

対魔族やシェンヤン方面と言った所が思い浮かぶであろうか?
あくまで予想を口にしつつ視線は萎れるアホ毛に向けられており、面白いなあ…と内心思うのである

ティアフェル >  自分には理解できない言語で話しながら外へ出るコボルトの様子に「大丈夫かな……」事情を知らない冒険者たちに攻撃されないか心配して、いいのあれ、と表を指差した。

「そーかもだけど。もらえる物はもらっておけばいーのに。
 ……なるほど、困ってる相手には平等にって訳……まるで神さまみたいだね?
 ………参ったな……。でも、あなたのしてること別に間違ってるとも思わないかなー……」

 隠さず告げられた事実に、一度溜息をついて悩まし気に頬を掻き。
 表情を強張らせる、他の治療班には無言で首を振って見せる。
 どうしようもなさそうだよ、これ、と肩を竦めて。
 自分もヒーラーとして時には敵味方無視して動くこともある。怪我人は平等なのだ。

「……帰ろーかな……尻尾巻いて。速やかに。ズラかりたい」

 命はひとつ大切に。まったくその通りだ。後方支援だからといって死なない保証は何もない。ここが狙われてしまったら一気に危うくなる。それはまっぴらと、他の治療班が色めき立つようなぼやきを零し。怒られる前に「じょーだんじょーだん…」と空笑いして見せた。

「そっか……見てないならいいわ。遅れてても到着する方に望みを持つ。
 さあ……どうかしら。あなたがスパイでもそうじゃなくっても、拠点の情報は流せないわよ。城壁にも補給に行っちゃうことだし。
 ――ね、ちょっと……出ない?」

 他の面子の耳があると彼との会話には弊害があると感じた。少なくとも彼は最初からずっと事実だけを述べていると思われたので、くい、と親指でゴブリンの出て行った扉の方を示し首を傾げた。
 彼の黒い瞳の向けられたアホ毛も、指と一緒に扉を指していた。

オーベ > コボルトを心配する様子の彼女に気がつけば、平気だよと黒い瞳が物語る
粗末な鎧を身につけてはいるもののコボルト達は武器の類は持っていない
何かあれば何処からか小さな礫が飛んできて危害を与えようとした物に警告するであろう

「お金に困っている訳ではないしね…稼ぎがある訳でもないのだけど…
 神様ではないし聖人でもないよ。
 さっきも言ったけれど自己満足、傍で誰かが困っているなら手を差し伸べたいと言うだけの話
 それが人であっても、ミレー族であっても、魔族であってもね」

結局は自分がそうしたいからするだけ、と簡潔に述べる
誰かに強く肩入れするわけでもないけれど、困っている人を見捨てる程、冷淡でもないというだけの事
呆れて肩を竦める彼ら彼女らに気がつけば、性分だからね、と付け足し笑って

「良いんじゃない?ティアフェルは軍属というわけではないのだろうし
 逃げ出したって誰も強くは咎められないさ。あとはまあ、気持ち次第だろうね」

ちらりと、彼女から横たわる負傷者達に視線が流れる。ぼやく彼女に少々意地悪な物言いだったかもしれない
治療班がどう思うかはそれぞれなのだろうが、空笑いする彼女に対しては変わらず笑みを浮かべ

「構わないよ。僕が入り込めるくらいだからね…重要な区画はさも知らず、
 間諜がそこいらには出入りしていそうだし…向こうも高台の城塞だからね…
 僕が情報を流さずともある程度は筒抜けだろうさ」

彼女と彼女のアホ毛に促されれば、判った、と頷いて
彼女と一緒に廃屋を後にする…傍に来た彼女のアホ毛をしげしげと眺め、魔法生物かなにかだろうか?と
僅かばかりか首を傾げる…そうして、廃屋を後にすれば軽く伸びをして、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んだ

ティアフェル >  ……なんだか、コボルトが退室してから表が騒がしい。魔物が出たと思って攻撃して返り討ちに遭っているのだろうか。目で話されて、思わず外の喧噪の方に顔を向け『あんまだいじょーぶじゃないよーな…』若干冷や汗を伝わせた。

「お金だけが総てじゃないけどないと不便な物って云うけどねえ…。
 平等なところが神さまだと思うわよ。誰にも肩入れしないてとこだけ。
 ……めっちゃ面倒な人だなー。せめてどっかに肩入れしてくれれば話は早いのになー」

 誰であっても困っている相手を助けるという言葉に、やはり大きく嘆息して後頭部をかしかしと掻いた。じゃあいっそ、一番困っている人にでも肩入れしたらどうかと思う。

「そーゆう訳にいかないわよ……こんだけ人手が足りてないんだし、信用問題にも関わるしね。決められた日数まではいるしかないわ」

 一応仕事で来ている身。仕事とは金銭を得る手段には間違いないが、それこそお金だけの問題でもないのだ。責任や信用をないがしろにしてはそれこそくいっぱぐれだし回復屋としてのプライドだってある。あ~あ、と嘆くように天井を仰いでいた。

「まー。そうは云ってもね、さっきも云ったように信用問題だから。
 わたしには答えられないことは部外者に云いませんよ」

 見ただけで分かる情報だったとしても、それを自分がわざわざバラす訳にもいかないし。そもそも細かい情報は元より知らされてはいない。
 一旦外に出ると、ちょうど爽やかな草の香りを含んだ風が通り過ぎる。はあ…とやっと緊張を解いたように力を抜いて、建物の陰になっていて死角になり、声も届かないような場所を選んで止まり。

「――で、旅団に味方されるとわたし達はとおっても困る訳よ。
 困っている人に味方をするっていうのはいんだけど……あなたのすることって結局困った人を増やすだけだとは思わない?」

 腕組みをして建物の壁を背にし、あまり感情を含まず淡々と口にして黒瞳をじっと見据えた。

オーベ > 夜警の兵士とコボルト達が何やら悶着しているらしい声が聞こえてくる
槍の穂先を向けられてもコボルトはスーンとすましているだけであった

「平等ではないさ、ここの陣地の負傷者は助かったけれど、他所の陣地はきっとそうじゃあ無いはずだよ
 僕が助けられるのは僕の目が届く範囲だけだからね…僕は無神論者のつもりだけれど、
 神様であるのなら平等に全員を助けられるはずさ」

流石にそれは無理、とぶんぶんと手をふって見せる
彼女が結局、居残ることを選んだのであれば、怪我人を見捨てて逃げるわけにはいかないものね、と続けて
言葉を交わしつつ、外に出れば一先ず、夜警の兵士にコボルトたちの事情を説明し、
それからコボルト達に森へ帰るように伝えれば彼女に続いた
建物の影で彼女の歩みが止まればそれに合わせて自分も足を止め、彼女との距離を保つ

彼女の言葉を聞き、向けられる緑柱石色の瞳を見つめ返すと確かに彼女の言葉も正しく思えた
そうだね、と苦笑を浮かべて頷いて返せば、言葉を紡ぐ

「彼らには彼らの言い分があるのだろうけど、流石に加勢しようというつもりはないよ
 それくらいの分別は僕にもある。確かに僕のする事で困る人もいるかも知れないけど、
 それはティアフェルやさっきの治癒術士や神官だって同じ事が言えると思わない?
 軽傷の兵士が戦線に復帰すれば誰かを傷つけるのではないかな…」

兵士や戦士、盗賊や山賊が傷つくというのは当然といえば当然なのだろうけれど

「さっきも言ったけれど盗賊やクシフォス某に味方するわけではないから…
 中には取り残された人もいると言うからね…まあ、なんと言われようとも僕は行くよ
 ―――あ、ちなみに僕は僕に肩入れはするよ。誰が何と言おうと自分のやりたいようにする
 魔術師なんて多かれ少なかれ、みんなこんなものだろうけれどね」

ティアフェル >  あーらら、と外で揉めているコボルトと傭兵に溜息を吐いたが……コボルトの主がほっとく気なのだからどうしようもない。

「神様が全員助けられるっていうのなら戦死はないわね――だから、きっと神様とやらもあなたみたいに、出来る範囲でやってるんじゃない? 全員助けるのが平等じゃないわ。分け隔てをしないのが公平なのよ」

 ふ、と小さく喉声で笑って。信仰者からするととんでもない自論を呟いた。そして、揉めていたコボルト問題を解決させてくれればほっとした。兵士は怪訝な表情ではあったようだが。コボルトが大人しく去ったのだから問題はここまでだ。

 どこか挑むように見据えた黒瞳。何を考えているのか推し量るように反らさずに。

「同じように魔力や物資を補給するなら、それは加勢よ。今はこっちに加勢して明日は向こうに加勢しにいく。平等にね。
 そうよ。それがなんなの? わたしは困った人を平等に助けに来たんじゃないわ。王国側の人間として冒険者ギルドの依頼を受けてここに仕事しに来たの。王国側の人間だけを癒すって。復帰したら全力で戦って傷つけて殺してもらう」

 敵対すると云うのはそう云うことで、別に彼のようにボランティアに来たのではないのだから、旅団側の人間が傷つくことには非情に徹する。淡々と云い切ると、やはり、彼の返答は予想の範疇のもので大きく肩を落として溜息を吐き出すと。

「――ま、そう云うよね、知ってた。あなた人の為って訳じゃなくって自分の為に動いてるだけなのよね。
 ただ、それなら決着がついた時には……よろしくね」

 何を、なのか云わないままに囁いた。この競り合いもいつまでもは続かないだろう。どちらかが敗退する時は来るはずだ。そうなった時に山のように積まれる遺骸や、生き残った者の場所に彼は立つだろう。何せ最もそれは、困っている人なのだから。その時にこそ誰であろうと分け隔てなく力を発揮してくれる存在は大きく価値を持つだろう。
 だから、よろしく、とだけ告げて片手を挙げて小さく振った。それはささやかなさよならの合図。ここにこれ以上いると敵対側に流れて行かないように人を呼び足止めするのが自分の義務になってしまう。

オーベ > 神官辺り会話を聞いていたら神を冒涜するのですか!とでも言い出しそうな気がする
その神官は負傷者の世話をしているようでこちらの会話は聞こえていないようであったが

「出来る範囲や力が有限というのもありがたみに欠ける気がするなあ…
 公平でありたいとは思うけれど、僕も人間だからね…どうしたって無理なことは無理さ」

ちらりと神官の方を見るがこちらの会話に気がついた様子はない
自分は神という存在には懐疑的であるが、信じている人間とそれを論じるつもりはない
人は己の信じたいものを信じれば良いと思う

彼女の言葉の本流に少々気圧されてしまったように思う
淡々とした口調ながら『傷つけて殺してもらう』なんて妙に語気が強いせいだったかもしれない
森から吹き抜けていく風が頬を撫でればうーん、と頬をかいて小さく唸る
何のかんの言いつつ彼女も治癒師であるからには城壁の内側で傷つく人間がいる、という事が
気にならないわけではないのだろう……――と、思う。勝手な想像だけれども

「そうだよ、俺はちっぽけな自尊心と自己満足の為に今からあ城壁の向こう側に行く
 不遜な物言いだけれどそれだけの力はあるからね。最も、この争いを止められる程の力が無いのは残念だけれど
 単純な話だよ、誰かにただ『助かった』『ありがとう』と言われたいだけの俗人さ
 壁の向こうの事は任せて……――とまでは言えないけれど出来る限りの事はしてくるつもりだから、
 ティアフェルは君が助けられる範囲で仕事をしたら良いさ」

笑みを浮かべたままそう告げると不意に彼女から視線をそらす
壁の向こうに送った相棒が影の中に舞い戻り、中の状況を伝えてくれる
よろしくね、と言葉にする彼女に任された、と小さく返すと杖で軽く地面を叩く
すると風が少し強く吹き抜け、僅かの間、彼女が瞬きでもした間に忽然と姿を消した―――

ティアフェル >  神官に聞きとがめられていたら適当に「エヘヘ」と気の抜けた笑いを向けて誤魔化しておく。その程度に自分の中で神さまは重い存在ではなかった。

「いーじゃない。だって神様にありがたみなんてわたしたち感じてないんだし。
 公平でありたいと思うだけで充分立派よ」

 それが実際公平な人間の姿だろうと小さく笑って。神官に聞かれているかどうかを気にしている姿に肩を揺らした。

「――人間、自分の為に生きてるんだから自己満足は大事よね。わたしはわたしの為に、オーベさんには行って欲しくはないんだけど……諦めた。
 顔に頑固って書いてあるもん、説得は無駄ねえ。
 いってらっしゃい。かんばれとも云えないけど……気を付けて。
 はいはい、わたしもせいぜいお仕事するわ。じゃーね。次に会うことあったら、こんな血なまぐさい話題じゃなくって。かわいい生き物の話でもしましょ」

 どこか微苦笑気味に笑い返し。風が吹きつけたかと思うと、幻のように消え失せた姿のあった場所に目を向け、さよなら。と声には出さず口の動きだけで囁いた。
 そして、その場で大きく伸びをすると、欠伸を零し。朝まで少し眠ろうと宿舎に割り当てられた廃屋のなあに戻って行った。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からオーベさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にネメシスさんが現れました。
ネメシス > アスピダを見下ろせる位置にある丘の上の砦。
木製ながら周囲に馬防策を配置した重厚な拠点である。

そこの監視小屋から城塞都市を眺めているネメシス。
団員が入れた紅茶を飲み、傍らでは扇で扇いで貰っている。

「今日はあっついわね。」

全身鎧を着けていると特に暑い。
最近は城塞都市から騎士による奇襲が行われ、周辺の部隊や集落が被害にあっていると聞く。

これ以上被害が増えれば、他の方面にも影響が出そうで。

「困った物ね。 さっさと仕留められたらいいのだけど。」

ネメシス > 「「不審な奴を見かけたらどうされますか?」」

団員の一人がネメシスに問いかける。

「そうねえ…とりあえずひっ捕らえて。
可愛い子なら私が楽しむかもね。
最悪、どっかに売ってもいいかも。」

団員達はネメシスの返答に満足したのか、笑い声が響く。

さて、こんな状況でわざわざ出歩く人間が居るのだろうか。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にシアさんが現れました。
シア > ゾス村の偵察から戻ってきた少女が、城塞都市周辺の森の中に点在する盗賊団の拠点に姿を現したのは日も高くなってからのこと。
さしたる収穫もなかったことに「懲罰」と称した私刑を加えられるのも、いつものこと。
ある程度憂さが晴れたのか、反応の薄い少女に興を削がれたのか。
しばらくして与えられた次の命令は、城塞都市周辺の偵察だった。

「…………ちょっと痛い…」

身体強化で耐えてはいたけれど、さすがに鞭で打たれれば無傷とはいかない。
溜息を吐きながら、森の中を移動していると、見晴らしの良い場所に陣が築かれていることに気づく。

さすがにこれだけ大掛かりな陣ともなると、近づいて様子を見るのも困難。
まだ夜であれば、忍び込む方法もあるのだけれど、残念ながらまだ日は高く。
丘の麓にある茂みから、見上げるような形で様子を窺っていて。

「………荷物に紛れて、っていうのも無理そう、かな…」

ゾス村と違って、物資は潤沢にあるらしいのが遠目にも見え。
屈強な兵士も数多く見張りに立っている。
ゾス村と違って、陣から離れた森の中にまで見回りが居るのであれば、見つかってしまうかもしれず。

ネメシス > 「「副団長、得物ですぜ。」」

聖バルバロ騎士団は弱兵の集まりである。
ネメシスを中心に一部突出した戦力が居るが、基本的には
兵の消耗を避ける意味合いもあり、獲物に対して包囲戦術を取れるように展開する。

今もまた、少女が目立つ砦に注意を取られている間に、他の拠点から出ている偵察部隊が
少女の存在を遠目で発見する。

更に遠方の部隊が獲物の発見を示す旗を掲げて。

「行くわよ。」

ネメシスは愛馬に跨ると、右手に短い弓を手に数名の団員を伴って出撃する。
全員が槍や弓を手にした軽騎兵。

当然、先に見つけた偵察部隊も同様の装備を手にしており、
獲物である少女に気付かれない様、背後に回っている。

下手に動けば弓への先制攻撃、または槍を持った団員が取り囲まんと動くだろう。

シア > ひと所に留まっていても、これ以上の変化は見られない。
そう判断した少女は、別の場所から様子を窺おうと顔を上げる。
その瞬間、フードに隠された耳がピクリと動く。

「………囲まれてる…?」

ゾス村はあまりに温すぎたとはいえ、王都からの他の拠点と比べても段違いの練度。
さすがに真昼間では、茂みに隠れていても手練れの兵には見つかってしまうということなのだろう。

かと言って、このままじっとしていたら逃げ道がどんどんなくなってしまう。
どっちの方向に逃げようかと思案している間にも砦の方にも動きがあった。

「………早すぎ。ちょっとまずいかも…」

砦から出てきたのは騎馬隊だった。
となれば、馬が走りにくい森の中しかない。
身体強化を施して、走り出した瞬間に矢が飛来する。
それを拠点でくすねたナイフで叩き落としながら、道なき方向へと駆け抜ける。
悪路であれば、馬からでもどうにか逃げられるかどうか。

ネメシス > 「「副団長、獲物が森に逃げ込みます。」」

「そのようね、結構優秀じゃないの。」

ミレー族だろうか、聴力に優れているようだ。
単独で送り込まれるだけの実力は最低限あるのだろう。

「是非とも欲しいわね。
皆、森を取り囲むように展開して。
私が行くわ。
…試運転がこんなに早く来るとはね。」

敵の戦力から軽騎兵で出撃したネメシス達だが、相手が森に向かって逃げ込めば状況は悪くなる。
貴重な馬を悪路で走らせるにも限界がある。

牽制で放っている矢も多少の足止めになっているだろうが、相手のナイフに弾かれる。

「「くそったれ! なんて奴だ!」」

「「いいから撃ち続けろ。 副団長がなんとかしてくれる。」」

団員の中には苛立つ者も居たが、ネメシスへの信頼は厚かった。
そして、当のネメシスは馬を降りると、深く呼吸をし…。

次の瞬間、ネメシスの身体に魔力が溢れる。
なんと、重い鎧を纏った状態でありながら軽業師のように飛び跳ね、走り抜ける。

「…あれね。」

視界の先にフードを被った獲物をみつけ、笑みを浮かべる。
魔力で加速した足は悪路であろうと駆け抜ける。

次第に距離が詰まっていく。
いよいよとなれば取っ組み合いとなるか。
ネメシス自身は鎧を身に着けている。
格闘戦となっても少女一人となら十二分に渡り合える。

シア > 弓矢は砦方面。恐らくは先程の騎馬隊からのものだろう。
数本を往なせば、あとは距離さえ稼ぐことでどうにか逃れられる。
もとより木々の茂った森の中では、余程の腕利きでなければ矢を当てることは難しいだろう。

森の中を取り囲むように動いている兵士たちの足音を聞き分けながら、
少しでも包囲の少ない方へと脚を向ける。
このままであればどうにか抜けられるか。
そう思った矢先に、背後からゾッとするような気配を感じた。

「………なに、さっきの……? ―――っ!」

重たいはずの全身鎧をがちゃがちゃと響かせながら迫りくる追跡者。
その気配は、どう見積もっても、身軽なはずの自分よりもはるかに速い。
あり得ない現象に、幻聴かと思いたくなるけれど、そんな悠長な現実逃避をしている場合ではなく。

包囲の隙間を狙ってすぐさまに走り出した。
じりじりと詰められてくる距離。
応戦しようにも全身鎧の騎士にナイフや鉄球で立ち向かうなんて現実的ではなく。

必死に駆け抜けたその先には、突如木々が途切れ視界が広がった。
どうやら包囲している兵も有能過ぎるほどに有能らしい。
目の前の崖に立ち竦むしか仕方なく。

ネメシス > 多少の段差は飛び越え、滑るようにして駆ける。
魔力でコーティングされた体の使い方をしったネメシスは、次第に走るから
浮遊するかのような動きへと。

何せ実戦での使用は初めて。
にしては使い勝手が良い。
魔力を注いでくれたミレー族を含む団員達に感謝する。

「「流石副団長だ。 もう使いこなし始めている。」」

「「後はお任せしておこうぜ。」」

団員達は馬で包囲の輪を狭めるように展開する。

「後ろは崖よ。
貴方がちょっとでも命を惜しむのなら足を止めてこっちに来なさい。」

フードを被った相手の数メートル前に立ち、右手を差し出すネメシス。
これ以上追い詰めると、崖に飛び込みかねない。

最悪、飛び込まれても仕方がない程度なのだが。
できれば捕まえて内部の状況を知っておきたいし、
何よりこの手練れを手放すのは勿体無いと感じていた。

シア > 足を止めて崖の下を見下ろしていると、程なく追いつかれてしまう。
もはや走るというよりも、飛んでいるというようなそれに畏怖しかない。
とは言え、崖の下に飛び込んだところで、無事で済む保証はどこにもなく。
どうにか騎士を掻い潜ろうにも先ほどの動きを見れば、まず無理だと思い知らされた。

「……………」

フードを被ったまま、肩を落とすとナイフを足元に放り投げて、小さく諸手を挙げた。
あっさりと諦めた理由はふたつ。
ひとつは、声の主が女性だったこと。
そしてもうひとつは、手を差し伸べられたことだった。

崖から数歩、騎士の方へと近づいて。
その場で立ち止まる。
さすがに見逃して貰えるということはないだろうけれど、すぐさま殺されるということもないだろうという判断。
兵士にも取り囲まれていることから、差し出された手を自分から取るようなことはしないまでも、抵抗するつもりはもうなさそうで。

ネメシス > 「はい、ありがとう。
私を信用してくれて嬉しいわ。」

差し出した手は結局掴み返されることは無かったものの。
崖に飛び込まれると言う事態は避けられたようだ。

諸手を挙げた少女の手を、後からやってきた団員…この場では馬から降りている…が後ろ手に縄で縛る。

そして、団員の一人がネメシスに下卑た笑みを浮かべる。
この場合、どちらかと言うと獲物と遊び損ねたネメシスを笑っていた。

抵抗するなりしてくれば、甚振って遊ぶこともあるネメシスだが。
こうして大人しく従う相手であれば紳士的に迎え入れるのが最近のネメシスである。

とりあえず、いきなり飛び込まれない様に崖から相手を遠ざける。
この際、腕の形状から少女、そして鞭を打たれた傷跡、更にフードの膨らみ具合からミレー族であろうと推測していた。

「先に自己紹介をするわね。
私はネメシス。 この聖バルバロ騎士団の副団長よ。
王都でも割と大きな顔をしている集団ね。
貴方は? 城塞都市から出てきたのは知っているし、返答によっては処遇も考えるわ。
フードも無理に外さなくてもいいわよ。」

森の中で始まる取り調べ。
慣れない術を使い、顔から汗が浮かんでいるネメシスの顔を団員の一人が、タオルで拭いていた。
その団員は女性であり、堂々とミレーの証である獣耳を曝け出している。

シア > 決して信用したわけではないのだけれど、わざわざそれを口に出して不興を買う必要もない。
昨夜とは違って挑発すべき時と場所は、これでも一応は弁えているつもり。
腕を後ろに回され、縄で縛られている間も抵抗らしい抵抗は何もせず。

「……………シア。」

こういう時は余計なことを喋らない方が良い。
かと言って、訊かれたことにも答えないのでは拷問が待っているだけ。
なので端的に答えだけを口にする。
それに下っ端の情報ならともかく上層部の情報など持ち合わせてはいないから返答のしようもない。
ただ、その声はまだ幼さを残す少女のものと分かるだろう。

「………そっちの人……ううん、何でもない。」

副団長と名乗った相手の世話をしている女性団員の頭を見つめて、少しびっくりしたように。
それ以上は何も言わないまでも、ちらちらとその女性団員の様子を窺っているのは、フード越しの視線でも分かるだろう。

ネメシス > 「貴女、シアって言うのね。」

後ろ手に縛っている縄は、存外緩い。
大人しくしているのなら乱暴に扱わないと言う意思の一つだ。

ネメシスは汗ばんだ顔をミレーの団員に拭ってもらいながら会話を続ける。

何から声を発しようか考えていると、先にシアが口を開く。

「そう、ミレー族なの。
うちはミレー族だろうと魔族だろうと私に忠誠を誓ってくれるのなら誰でも受け入れるわよ。
貴方の所みたいに痛めつけたりもしないわ。
どう? ちょっとは興味持った?」

フードを捲るまでもなく、幼い声である。
おまけにそれほど大事にされているようには思えない。

ならば情報狙いではなく、シンプルにシア本人を引き入れようと考えている。
ナイフで弓を弾く様な腕の持ち主ならば十分な戦力となる。

それを理解してか、団員達はシアにことさら触れたりしなかった。

「とりあえず、砦迄戻らない?
ここだと落ち着いて話も出来ないし、喉渇いちゃった。」

シア > 盗賊団や奴隷商人のところでは、痛いほどにきつく縛られるのが普通だったから、
痛みのない縛り方にはこれで良いのかとさえ逆に不思議に思ってしまう。
少なくとも今朝にされた「懲罰」くらいの暴力は覚悟していたから、少し戸惑ってしまう。

それに隣の女性団員も無理やり従わされているという風でもない。
ネメシスという副団長の言葉には、嘘は感じられず。
戸惑いながら、小さく頷きかけて、不意に動きを止める。

興味を知られてしまうと、交渉事は不利になる。
もとより不利な立場で交渉も何もないのだけれど。
それでもまだ相手のことを信用できるかと言えばそんなわけもなく。

「…………シアはどこでも。」

砦に戻るという提案をわざわざしてくるのも不可解。
普通なら問答無用で連れていくものだろう。
選択権のない者に訊かれても困るのだけれど、
けれども訊かれたからには、素直にそう答え。

ネメシス > 「うちはね、従う者には優しいのよ。
だから団員達も皆私によくしてくれているわ。
貴方の所みたいにむやみやたらと痛めつけても、結局はどこかで反発されちゃうからね。」

その代わり、逆らう者には容赦しないけど、と笑いながら付け足して。

捕虜であるシアをミレーの団員の背中に座らせ、皆で砦に戻る。
別動隊の団員達は途中で元の拠点へと戻っていき。

堅牢に構えた拠点へ到着すると、どこでもと答えたシアを椅子に座らせる。
その際、首に鎖をつけてから両手の縄を外す。
鎖は天井に括りつけられ、こちらは容易には外せない。

「途中で喉が渇いたらその水を飲んで頂戴。
嫌なら誰かに先に毒見させるわ。」

シアの目の前に水が入ったカップを置き、ネメシスは向かいに腰掛ける。

ここに至るまでの間、当然ながら信用されていないことが伺えたので多少強引に連れて行ったりもしたが。

「貴女、あそこで随分と乱暴に扱われてきてるみたいだけど。
あそこに帰りたい?」

質問を始めたネメシスは、突然妙なことを口にした。
まるで内部の情報など興味がないかのように。

シア > 同じミレー族の後ろに乗せられて、砦へと連れていかれる。
縛られたままなので不安定ではあるものの、早駆けでなければバランスは保てる。
とはいえ、きちんとそのミレー族の兵士が支えてくれていたから、落ちる心配もなく。

そうして連れてこられた砦の一室。
地下牢的な場所を想像していたのだけれど、どうにも違ったらしい。
首輪に鎖を掛けられたのは、当然とはいえ、
椅子に座らされて、わざわざカップに入れられた水まで出されてしまう。
自由になった手は、そのカップへは伸びないものの、不思議そうに手首を撫でさすってから、膝の上へと大人しく揃え。
鎖を掛ける際にフードを取られれば、手入れのされていないぼさついた茶色の髪とミレーの特徴である耳が露わになる。

「………………?」

客のような、その扱いに居心地悪そうに、もじもじとしていると、また不可解な問いを投げられる。
帰りたいかと言われれば、答えは否しかない。
ふるふると首を横に振って、それにはきっぱりと意志を示した。

ネメシス > ちょっとは躊躇するかと思っていたが、まさかの即答。

ネメシスは組みながら、シアの顔を眺める。
手入れが行き届いていない髪や、ミレー族の耳。
どちらもネメシスの予想通りであった。

「それならうちに来る?
王都でもミレー族は変なのに絡まれたりすることはあるんだけど、
私のとこの所属ってことならあまり絡まれることは無いし、最悪団員を呼べば守ってあげられるわ。
ここに居たらそれこそ騎士だのに襲われかねないし、貴女にとっても良くはないでしょう。」

ならばと、こちらも早速の勧誘活動。

「うちに来るなら毎日風呂にも入れるし、そのボサボサの髪も綺麗にするわよ。
まあ、特段制限をするつもりもないから合わなかったら抜けてもいいわ。
ひょっとしたら、他に良い人が見つかるかもしれないし。
と、一方的に捲し立てたけど。 どう? 質問があるなら聞いてくれても良いけど。」

まあ、これだけで首を縦には動かさないと思っているだけに、相手の返答を待って。

シア > 帰ったとしても、良いことなんて何ひとつない。
だからこその答えのだったのだけれど。
けれど急に勧誘されてしまうと何を企んでいるのかと思ってしまう。

「えと………」

立て続けにいろいろと条件を出されてしまって、思わず素の表情で困惑してしまう。
確かにお風呂に入れるのは魅力的ではあるけれど……

「よく分からない……けど、なんで?」

こんな自分をどうして欲しがるのかと、それが一番よく分からない。
情報が欲しいなら拷問すれば良いだけだろう。
けれどそんな素振りは何もない。
質問をしても良いと言われると、困ったままの表情で素直な疑問を口にする。

「シアは………何もできない、けど……それでも、良いの?」

これまで褒められたことなど、何ひとつないわけで。
言われたことも満足にできないことも多い出来損ないだけれど、それでも欲しいのだろうかと相手の表情を窺って。

ネメシス > 相手が言い切る迄、大人しく待っていたネメシス。
いきなりこんな話を振られては不思議に思って当然。
取って食われると思うだろう。

「そうね、まずは貴女が持っているであろう情報だけど。
これに関しては話さなくてもいいわよ。
正直、あまり興味がないの。

それより、興味があるのは貴女自身ね。
ナイフ一本でうちの団員の矢を次々と弾くなんて凄いわね。
貴方なら私の護衛を務めてもらいたいわね。
それに、貴方とっても可愛いし。
あ、先に言っておくけど彼女は私のお手付きよ。」

ここまでシアを連れてきたミレーの団員のことを手で示して。
団員もまた、まんざらでもない顔をしていた。

「と、貴女を欲しがる理由はこれ位ね。
まあ、この辺は貴女が自分が考えて決めて頂戴。
嫌ならうちの騎士団で雑用をしてくれるだけでもいいわよ。
うち、拡大スピードが凄くて人手が足りないの。」

ネメシスは自らの欲望を曝け出しつつ、シアへの説得を続ける。
シアの幼い容姿も充分ネメシスの欲情を刺激していた。
が、相手にも多少はその気になって貰わないとつまらない。

シア > こちらの話をちゃんと聞いてくれる相手というのは珍しく。
それだけでも興味を持たないはずもない。
なので、こちらの質問を聞いて答えてくれる内容に真剣に聞き入って。

「……護衛なら……できると思う、けど……」

戦闘技術は盗賊団で見様見真似で覚えたものだから、粗も目立つ我流そのもの。
それに礼儀だとかマナーだとかはさっぱり。
だから同じ護衛でも、偉い騎士様のそれが務まるかと言えば、それは分からない。

判断は付かずとも、そこまではまだ理解も追いついた。
けれども、その先については、首を傾げるしかなく。

「……シアは、可愛くない…と、思う…けど……」

無理やりに乱暴されたことは数知れずあれど、こうして口説かれたのは初めて。
お世辞なのだと思ってはみても、顔が赤くなるのは止められず。

「そっちの人も……なの…?」

先ほど馬に乗せてくれた女性がまんざらでもなさそうな顔をしているのを見ると、瞳をぱちくりと瞬かせる。
しばらく、どうしたものかと悩んでいたけれど、おずおずと首輪を指さして。

「これ……してると、居る場所が分かっちゃうから……」

他にも命令に逆らうと、首が締まるとかそんな効果もある。
だから逃げるに逃げられないのだと、素直に告げる。
奴隷商人が使っていたアイテムで、強度としては中の下といったところ。
それでもミレー族の魔力をもってしても破れないだけの強度はあるために少女にはどうにもできず。

ネメシス > 「良いわね、それさえできれば上出来よ。
あ、礼儀作法は求めてないから。
さっき見た連中に紳士的なの居た?」

さっきの連中とは、シアに弓を射かけた連中のことで。
どうみても柄の悪い団員達であった。
そもそも、騎士団は元犯罪者や流れ者が多く。
女性比率が高まったことで多少は落ち着いただけである。

「そうかしら?
とっても可愛いわよ。
貴方が良いのなら私の子供をたくさん産んで欲しい位。」

次第に、ネメシスは自らの欲望を顔に出し始めた。
瞳は爛々と輝き、団員の一人が肩を叩く。

「…ごほん。 ええ、その通りよ。
更に言うと、王都に戻れば同じような立場の子たちが何人もいるわ。」

今更のように取り繕い、貴族然とした態度を示す。

「それは不味いわね。
ちょっと大人しくしてね。」

シアに首輪を向けるように声を掛けると、ネメシスの右手が首輪を掴む。
バチバチと、眩しいばかりの雷撃が首輪にのみ流れ、首輪の効力がなくなってしまう。
最早ただの鉄の首輪と化していることはシアにもわかるか。

「屋敷に戻ったらちゃんと外してあげるけど、とりあえずこれで貴女は自由よ。
今日の所はうちについてくる? どこに行くかは決めるにしても、衣食住は要るでしょう。」

天井から伸びている鎖も、団員が外して。

シア > 言われてみれば、確かに外にいた男たちは、盗賊団とあまり大差がない気がする。
それが顔に出てしまったけれども、さすがに頷くのは他のものが居る手前では控えておく。

「こ、子ども……?
 シア……まだ、そんなの……」

さすがに何をどうすれば子どもができるかくらいの知識はあるものの、
いきなり産んで欲しいと言われてしまったのは、今日最大の驚きだった。
あまりに驚きが大きすぎて、相手が女性だということに気づかないまま。

先に落ち付いたのは、副団長の方だった。
王都には似たような子たちがたくさんいるというから、普段からこうやって声を掛けているのだろう。
自分だけでないと分かると、少し納得できたように落ち着いて。

「ふぇ………だ、だいじょうぶ…なの?」

目の前で激しい火花が飛び散る。
相手はガントレットをしているのかもしれないけれど、それでも焦げ臭い臭いが辺りに漂っているわけで。
首輪がどうなったかということよりも、相手が怪我しなかったかどうかの方を心配してしまう。
鎖も外されて、何も縛るものがなくなってしまうと、落ち着かなさそうにしつつ。

「えと…その……ありがと……
 それと……おせわに、なります……」

付いてくるかと問われると、今度こそ首を縦に動かして。
立ち上がると、ぺこりと頭を下げることに。

ネメシス > 「あ~、まあその気になった時でいいわ。
別に産んでくれないとどうとかってのはないから。」

団員達に咎められ、冷静になったネメシス。
それでもシアの身体に興味はあるらしく、しょげていた。

「まあ、この程度ならね。」

団員達から授かった力は大層汎用性が高かった。
拘束していた首輪も破壊し、シアを自由にする。

「それじゃ、ここは交代の部隊に任せて。
私たちは先に王都に戻りましょう。
先に食事にする? お風呂でもいいわよ。」

シアを連れ、王都へ帰還するのであった。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からシアさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からネメシスさんが去りました。