2020/04/26 のログ
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > 城塞都市の偵察…と、そう言ってよいだろう単騎行を、騎士が終えてのそれは、帰り道であったろう。

眼の前躍り出た数人の賊。
その賊と、意に添わぬながら一戦を騎士は繰り広げ…その、後だ。
『連れがいたとは…!』と吐き棄てる賊の言葉を騎士が怪訝に思ったことが…周囲を探るきっかけとなったのだった。

崖下へと通ずる小径を見つけ。
騎士は、ゆっくりと道を下ってゆく。
そしてそこに、ありありと乱闘の痕跡を見つけたのだった。

「これは…また」

ものの見事になぎ倒された立木やら。随分と乱戦がくりひろげられたのではあるまいかと。愛馬を崖上に残して騎士は、呆れたような感心したような心持で周囲を見回し…。

シスター・マルレーン > 「おや。」

がさりと音がして人の気配。
やれやれ、とため息をつきながら立ち上がって、棍に力を籠めていく。
戦闘に次ぐ戦闘で疲弊はしているが、それでも教会の手駒としては名の通った力の持ち主。
死ぬにしても道連れだ、と言わんばかりに殺気をみなぎらせて。

「……さて、黙って帰るかここで死ぬか選んでいいですよ。」

がさりと音を立ててやってくる女。
傷ついた足は分厚い修道服で隠し、棍を振り回せばみしゃり、っとすごい音をさせて木の幹をえぐり取る。
見た目は黙っていればちょいと幼く見える妙齢の女性。
しかし、その殺気は熟練の冒険者そのもの。

アルヴィン > 「…なるほど。一応は、選ばせていただけるのか」

それは存外、ありがたいことだ、などと。騎士はのんびりと答えたものである。
受け答えそのものには、なんというかまったく危機感がない。
木の幹をえぐり取るような、棍棒のその一撃にも、興味深そうに蒼い瞳を一度、見張るのみ。

「…さて。貴女が…アスピダの手の者とも思えぬが…。
 いかがされよう?一度その棍棒を収められて言葉を交わすか…。
 それとも…」

問答無役と、そう仰せかな、と。
やはり騎士はどこか長閑に穏やかに、なんとも物々しいシスター姿へと問いかけて…。

シスター・マルレーン > 「そりゃもう。……私はちょっと依頼で一人でなんとかしてこいって言われて無理やり街を追い出されただけの身ですから。
 さっさと帰れるものなら帰りますし!」

ああもう、ため息交じりに愚痴を一つ漏らして。
それはそれとして。

「どちらにしろ、ここで一人でうろついている人間は怪しいのは間違いありませんからね。
 それは私も同じですけれど。

 ………なので、言葉につられてはいわかりました、と警戒を解くわけにはいきません。」

ぺろ、と舌を出して笑いながら、視線を周囲に走らせる。
目の前の相手に集中しつつも、周囲の空間への威迫も忘れない。

とほほ、いつの間にか戦士らしくなってしまっている自分がいます。

アルヴィン > 「…なるほど。それはまた、随分と気の毒なお身の上だ」

得たりと騎士は頷いた。
そして、よくよく見ればところどころ埃に汚れ、擦り傷も走るその黒い衣装に、ぽりぽりと口許掻いては、呆れたようにこう告げた。

「では、貴女のお言葉に甘えておれは、ここを去ることとしようかな?
 崖の上には愛馬が待っている。街にも楽に帰りつけよう。ああ、鞍袋には携行用のものだが、食事もあるな」

水袋にはワインも入っていたようだ、よし、それで軽く食事をしつつ、王都への道を辿るとしよう、などと。
言って騎士は、片眼を閉じてみせたのだった。

つまらぬ喧嘩などせねば、そんな食事にご招待もやぶさかではないが、と言いたげに。

シスター・マルレーン > 「………身分を何か証明するものは?」

誘いには乗らない。
乗らないが、一つ気になること、気がかりなことがある。

彼が"教会関係者である"ことだ。

そうなると、教会関係者=応援であり、その応援をしこたま脅したうえに追い返したことになり、帰った後の彼女の立場はしこたま悪くなること請け合いである。

そうでなくても、"めっちゃ偉い"身の上だったら、どちらにしろ立場の悪化は避けられない。

ただでさえ毒を飲まされたり闘技場に勝手に登録されたりカジノの傍の教会担当にされたり一人で橋を作らされたり開墾させられたりさんざんなのだ。
これ以上の立場の悪化だけは避けなければならない。

この間、思考時間はおおよそ3秒。

「………信用できるものがあれば信用できるんですが。
 まあ、さんざん追い掛け回されたんです。 甘い言葉一つで信用できないのも理解してください。」

アルヴィン > 「…何を御覧に入れれば、信用されるというのだ」

騎士はまず、そう苦笑した。
今この時、騎士は漆黒のハードレザーの胸当てをし、いかにも傭兵、という拵えだった。
常の白い鎧はいまや、修理中。
さすがに、マンティコアに一人で挑んだのは無謀であったと、騎士はこんなところに出た弊害に溜息をつく。

「そうだな。では…これでいかがだろう?
 なに、不埒の振舞あったら、もう容赦なくその棍棒でひっぱたいてくれればよい」

そう、言いつつ。騎士はゆるりと歩を進める。
その右手に、清冽な光輝を纏わせつつ。

それが、神聖魔法の『癒し』の術であることは、それこそ、その筋の者であれば明々白々…。

とまれ騎士は、手負いのけものに近づく用心さで歩を進めて。
まずは身に負われているだろう、いくつもの傷…おそらく、大した怪我ではないのだろうけれど…を、その術にて癒さんとして…。

シスター・マルレーン > 「何か持ってないんですか。
 こう、依頼を受けた証なりなんなり。

 ちょっと待ってください。 わかりました、わかりましたから。」

一歩、二歩と近づいてこれば、こちらも一歩、二歩と下がり。

「………やろうとしていることは分かりました。
 とりあえず、ストップ。 理解はしました。 ですが術を掛けられるのを素直に認めるほど信用はしていません。
 これはもしもご同業であれば、理解してもらえるんじゃないです?

 特に、単独で敵地に潜り込んだなら、なおのこと。

 今回のお相手は、"人を洗脳する"そうじゃないですか。
 魔術で信用を得るのは流石にその、怖すぎますって。」

これ以上近づいたら殺す、と言わんばかりの制空権を広げる。野良猫か何かか。
ただ、それでも退く気が無いというのならば。

「であれば、背中を向けて先に歩いてくださいな。
 そっちの方がまだ信用できますよ。」

肩を落として溜息一つ。

アルヴィン > 「やれやれ…。
 であればもう、お好きにしていただくしかあるまい。
 そこに、崖の上へと通ずる道があるゆえ…ご案内しよう」

用心というものは大事だ。が、過ぎる用心というものも考えものなのだがなあ、などと。騎士は聞こえよがしにぼやきつつ、道を示すように歩き出す。

「…おれは、遍歴の身の上。身は一介の草臥の騎士だ。冒険者ギルドにもこの度の騒動…冒険者を派遣せよとの触れが出ている…」

ここまで大規模な依頼だ。冒険者それぞれに依頼の証など出る筈がない。中には、冒険者という『やくざな立場』を利用して、それこそ潜入を図るものだとていよう。
身分を証立てるものなど、むしろあっては命とりだと騎士は告げる…。

「それより…この国の教会は…随分とまた無茶なことをなさるものだ…」

…懲罰探求でも課せられたのかと、騎士は崖上へと通ずる道を辿りつつ、それはそれは気の毒そうに肩越しの言葉をかけてゆく…。

シスター・マルレーン > 「しょーがないじゃないですか。
 単独行なら、洗脳魔法とか100ヤバ過ぎますし。」

相手の言葉には少しだけ肩をすくめる。
用心深くならなくてもいいレベルなのだろう、とあたりをつければ、それはそれでうらやましい、とため息一つ。
彼女は攻撃力、防御力に特化しているが、それだけだ。
魔法とかホントに苦手なのだ。 一人で来たくなかった。とほほ。

「………だとすると、それは冒険者ギルドの手落ちですよ。
 相手は同じ団体、こっちはバラバラ。 身分を証明なりできなきゃ、相手に詐称され放題じゃないですか。」

盗賊が少し新しい装備を身に着けて、俺も仲間だ、と入り込む。
こんなに単純で効果的な行動もあるまい。

それを防ぐこともできないギルドに嘆息しつつ、同時に。

「………無茶ぶり担当っていうか。
 その、遠くの教会から派遣されてきたので、別に死んでもいい扱いっていうか。」

あははー、と遠い目で笑う女。崖をよいしょ、と上る。
足は遅い。 まだ矢傷はいえていないが、引きずらずに、ただ足が遅い女を演じる。

アルヴィン > 「…であるゆえ、使い捨てなのだろうよ」

そう、騎士は短く言い捨てる。
騎士として、正々堂々と、と。そういう言葉は聞こえがよいが。
いざ、いくさとなれば、綺麗ごとなどではいくさはできぬ。
歳に似合わずこの騎士は、それなりに荒事の場数も踏んでいるのか、崖路を登りながらにそう、呟いた。

やがて…陽もすっかりと暮れなずみ始めた山道に、二人は辿り着けるだろう。
そこにはまだ、先刻娘が相手どった、賊の何人かが気を失って倒れており、その傍らでは騎士の愛馬が遅かったな、とばかりにブルルルル、と鼻を鳴らして待っている…。

「すまなかったな…。思いのほか、手間取ったようだ」

そう言いつつ、騎士は黒鹿毛の軍馬の鼻面を掻いてやる。
少なくともその軍馬は、よほどに訓練されたものであり、ただの賊が跨っていてよいものではないというのが、よくわかる。
…尤も、賊の将ともなればまた、話は違ってくるのだろうけれど。

シスター・マルレーン > 「となればお仲間ですね。」

ころころと笑って、よいしょ、と崖を上がる。
己を使い捨てであるとしっかり理解して、それに真っ向から抗う女。
現状の弱点は足が遅いことだけだ。

「なるほど。………私程度、ここまで演技なりして仕留める必要もないですし、どうやら真実のようですね。

 幾度もの非礼、失礼しました。
 私、教会から派遣されてきた兼業冒険者、シスター・マルレーンと申します。

 いやまあ、一対一なら自信はほどほどにあるんですが、囲まれて矢を射られるとどうしようもないものでして。
 あそこなら、強制的に一対一を作れるんで、立て籠ろうかなと。」

あはは、と笑いながら頬をぽりぽり。
賊の将ならばわかるが、将たるものがそこまで相手を恐れるような演技は打たぬ、という判断。
これもまあ予測ではあるが、倒れている賊が本当に気絶していることを理解すれば、……おおよそ間違いはないだろう。

アルヴィン > 「生憎と、まだ『お仲間』ではないのだ、シスター。おれは…この依頼受けるべきか受けざるべきかを見極めるため、せめて遠望なりと城塞都市を確かめようと思っただけでな」

ところが、どこぞのシスターの大立ち回りのそのおかげで、このように一悶着起こしてしまった、と。騎士はやれやれ、と溜息をつき…。

「失礼、冗談だ、シスター。
 おれはアルヴィン…アルヴィン・アルヴァーハードという。先ほども申し上げたが…遍歴の騎士だ」

この大陸に来て、まだ一月というところか、と。そう騎士は述懐し、そして…。

「さ、ならば大人しくなさるがいい。
 その傷…決して軽くはあるまいに」

と告げて。呆れたように騎士は腕を組む。
そして、今度は受けていただけようか、とまずは問うた。
娘が是と、肯ってくれるなら…。

今度こそ、癒しの奇跡が届けられよう…。

シスター・マルレーン > 「そりゃ私のせいじゃないですよ。この近くはそんな争いばかりですよ?」

自分のせいにされれば、む、っと不満顔で。
冗談と分かれば、はー、っと溜息をつくのだけれども。

「……いえ、失礼はむしろこちらが先でしたね。
 アルヴィンさんですね、

 依頼を受けるかどうか考えるためにここに来る、は流石に危険じゃないです?」

……ああ、そういうことも考えなくてもいい腕ってことかな、とは思いつつも。

「あはは、こう見えても頑丈なんで、大丈夫ですよ。
 とはいえ、………いざ逃げる、となれば足手まといですからね。

 よろしくお願いいたします。」

相手の言葉に、二度は拒否をしない。
どうやら相手のいうことがすべて本心であれば、自分よりもはるか上の実力のようだ。
素直に受けることにはする。

アルヴィン > 柔らかい苦笑をひとつ、騎士は零した。
そして、娘の傍らに立つと、その蒼い瞳を瞑ってみせる。
右の掌に、清冽な光輝が再び宿る。癒しの波動、そのものが、光となって滲み出る…。
それを騎士は、ゆっくりと娘の身体に注いでゆく。

触れはしない。
その黒い修道衣にも触れず、ただただ温かく優しく甘い波だけが、じんわりと伝えられて、そして…。

「…お怪我は、脚か。このようなところでそれは…命とりであろうに」

強情なお方だなあ、と。再び瞳を見開いた騎士は、呆れたように告げたのだった。

「さ、このようなところ…長居は無用だ。ここで寝ている者達も、さすがに夜露が下りれば目覚めよう。また悶着、というのはおれはご遠慮こうむりたい…」

そう言うと。
騎士はさも当然と、娘へと掌を差し出したのだ。

「さ。手助けが必要ならば、お手伝いしよう。お乗りあれ」

と。
そう、その愛馬の背に乗られるがよいと騎士は告げ…。

シスター・マルレーン > 「……わかります? いやー、ちょっとピンチだったんですよね。
 ですから気も立っていまして。」

てへへ、と笑ってごまかしつつ。
常に呆れられている気がするのはいい気分はしないが、改めて考えれば依頼そのものがおかしいこと以外は、呆れられても仕方のないことをしている気もする。

「………そうですねえ、では、街道筋の見晴らしがいいところまでお願いしてもよろしいでしょうか。」

お礼は出せませんが? と、ころころと笑うのだ。

アルヴィン > 「王都まで、お送り申し上げるが?」

自らは馬には跨らず、騎士は愛馬の口を取って歩き出した。
そのようなことをせずとも、この馬はきちんと主の意を酌み付いてくる。
ただ、慣れぬ者を背に乗せて、万一、癇走ってしまうことのないようにと、それはそういう用心でもあろう。
いざとなれば、娘の後ろに跨って、悍馬の思うままに走らせることはできようが、だとて無駄に疲れさせることはない。

「礼などかまわぬ。困った時は相身互いとそういうものだ、シスター」

さて、おれはこの依頼をどうすべきかな、と。
騎士は歩を進めながらにそう、独り言ち…。

シスター・マルレーン > 「それはそれで困るんです。
 せめて送るにしても、私は王都から見える場所まで来たら降りますからね。

 いやなに、さっき話した通りいろいろと大変な身の上っていうか。

 あ、さっき話したこと、王都では誰にも言ったらダメですよ。
 絶対ダメですからね。
 下手したら私が路頭に迷います。」

はっはっは、と冗談っぽく笑いながら、視線だけは遠い目をした。
相手の言葉には真面目な顔に戻して、少しばかり足を揺らしながら考える。

「…………正直な話をするなら、10人、20人で組まないと危険ですね。
 単独でやりあえる相手ではないですし、先ほど言ったように洗脳をして戦力を増やす関係上、少なくとも単独で近寄れば相手の思うつぼです。

 私もそれなりにやりあうことはできましたが、………数も違いますし、魔術使いもいる。 ………それこそ、捨て駒を使う作戦が逆効果すぎます。」

アルヴィン > 「やれやれ…ますますお気の毒なお身の上だな」

今度の呆れた口調は、娘にと言うのではなく、娘が属するその教会へ、という色だ。
少なくとも、騎士が信ずる軍神…竜の神の神殿では、そのようなことは考えられもせぬと、そういう色が溜息には混ざっていた。

「それでも、足りぬかもしれぬよ、シスター。おれはむしろ…手練れの潜入の方がよいのかもしれんと、そう思った。
ただし、その限られた手練れには、万全の後押しが必要であろう…」

言うなれば、忍びとでも言おうか。
そのような者がいれば、この任もまた、話は変わってくるのではないか、と。騎士は言う。

聖騎士という立場でありながら、戦場にての汚れ仕事を請け負うはずの、そのような兵にも通じていると、騎士は匂わせ歩を進める…。

「いずれにしても…九頭竜の山を下りるところで、今宵は野営にせずばなるまい」

道行きはまだまだ遠いな、と。騎士はつるべ落としに暮れる山の黄昏に肩を竦めて…。

シスター・マルレーン > 「そうですかね………。 まあ、それこそ国を傾けることもできるような人がいれば可能性はあると思いますが……。」

そんな人いるのかな、と、訝し気な表情を見せる。
彼女はそのシノビを知らない。 そういう職もいるんですね、と頭に想像する。

戦いにおける感覚こそ研ぎ澄まされているし、話し方は理性を伴うものであるが、彼女には学はさほどなかった。
ふむふむ、とうなずきながら話を聞いて。

「………この辺りは数も多いですからね、
 できればできる限り距離は離したいものですけれど。」

渋い顔をする。
この近隣、何度戦闘を繰り返してここまで来たかもわからない。

アルヴィン > 「…然様。あの城塞都市は、『一国』を相手のいくさとでも見て相手取るくらいが、ちょうどよいのではと…おれには思えてきたな」

娘の言葉に相槌を打ち、騎士は歩を進めゆく。
そして、馬上から聞こえた言葉にまた苦笑を零すと、それならば、と歩を停めた。

「しばし…お待ちあれ」

再び、騎士は眼を閉じる。
その姿は、瞬時にして深い祈りに至ったのだとわかる姿だ。騎士は、数語なにやら聖句のようなものを呟いて、そして瞳を見開いたのだ。

「…これで、よし。おそらく…山を下りるまでは、煩わされることもあるまいよ」

まあ、相手がよほどの手練れであれば別だがな、と。
確かに、周囲の気配が変わったように、娘にも思えたことだろう。
澄んだ気配…。それでいて、ピンと張り詰めたような気配が、軍馬を中心にして常に周囲に張り巡らされる…そういう、不思議な気配を今、二人と一頭は纏っているといえばよいか…。

シスター・マルレーン > 「そんなイメージですね。 それに関しては分かる気はします。」

………相手のやることは、わかる。
ある程度は自分でもできることが多い。
とはいえ、彼女は自分の身体からその力が離れるのが苦手だ。
あくまでも、手の内にある物質の強化に特化している、と言ってもいい。

「……なるほど。 効けばいいんですが。」

この手の力は、野生動物や単なる賊に対しては有効だろう。
この場所であれば、単なる斥候ばかりだからおそらくは大丈夫ではあろうが。

「………魔力に関しては、割とできることできないことが多すぎるんですよね、私は。」

ははは、と笑う。

アルヴィン > 「まあ、よほどに見破るつもりでかかってこられねば、と…そう期待したいものだ」

気休めにはなろうさ、と。騎士はそう微笑んだ。
『人払いの結界』などと、俗に呼ばれる結界だった。
近寄る者が、意識なく『そちらには進むべきではない』として、自然と近寄らなくなるものだ。野営の際になど、肉食の猛獣を避けるためにも用いられる。

「…所詮、術も力業ゆえなあ…」

結句、術者の力が強いか、抵抗するものの意思の力が強いか。単純な力学だと、この騎士はまた、随分と神の奇跡に味気ないことを言うものだった。
そして、味気なく即物的に力業、などというものであるからこそ、騎士は意外そうに鞍上の娘を返り見た。

「そうは仰せだが…。貴女のそのお力はなかなかのものだと思うが?」

女の細腕で、立ち木を砕き地を抉る。
そのような棍の一撃を繰り出せるというのは、よほどの武の心得か…そうでなくば、エンチャント、エンハンスドの力がなくばできぬこと。
それが見事と騎士は笑む。

シスター・マルレーン > 「まあ、山を抜けてしまえば、それこそ幹部級が迫ってくることもないでしょう。
 そうなれば、むしろ危険なのは賊に山を追われた野生の獣。 おそらくはこれで安全は確保できるかと。

 ………そうですねー、まさに力業ですからねー。」

教会で最も奇跡を力業に昇華している女は、ちょっと視線が泳いだ。
ははは、と笑って。

「……んー、一対一ならそれなりに。
 ただ、こう言った見晴らしの悪い場所で対多数で戦うにはどうにも。

 心得というよりも、それこそ神の奇跡を少し多く与えていただいているだけですから。
 私の力である、と思ったことはありませんよ。」

シスターらしく目を細めて祈ってみせる。
………あ、本物のシスターですよ? と、付け加えることも忘れない。

アルヴィン > 「そこを疑ってはいないとも、シスター」

娘の最後の一言に、騎士はそれはもう楽し気に笑ってみせた。
なんとも愛嬌というか、面白みのあるお方だ、などとも付け足して。

やがて、山道は随分とその勾配を緩やかにし始めた。
頭上、二人をいまや青い月影が濡らし始めてもいる。
道行きは、ようやく九頭竜の山並みを抜け始めた。
となれば、娘のその言葉どおりに、賊よりもそれに縄張りを荒らされたけもの達をこそ、警戒すべきところに来ているようだ。
春ももう、随分と闌けている。
熊もとうに冬眠を終え、空腹な腹を満たすべく山をうろついていようが、その餌場を賊共に取られている公算は大きい…。

「今宵は無理せず、山懐の街道沿いで野営と思うが…貴女はいかがか?」

それならば、王都の教会に気兼ねはいるまい、と。騎士はややも苦笑してみせ…。

シスター・マルレーン > 「よかった。」

あはは、と笑う。理由? そのパワーで修道女は無理でしょとか、頭まで筋肉とか、血まみれ聖女とかいろいろ言われてるからですが。

「………それは構いません。
 ただ、傷を癒してもらった以上、今は対等な立場として、であればよいですよ。

 それこそ、力を認めてくれているのであればですけれど。」

なんて、ぺろ、と舌を出して笑うのだ。
怪我をしたまま、倒れたままならまだしも、現状は身体も回復しているのだ。

エスコートされるお嬢様、の立場は居心地が悪すぎる。

アルヴィン > 「その意気やよし。
 ならば…最初の不寝番はおれが立つ故…夜半過ぎに貴女を起こそう」

それとも、逆がよろしかろうかと騎士は問う。
逆であっても無論かまわぬ。今宵は早めに宿営とし、夜を十分にとって眠りの足りぬことなどなきようにと、草臥の騎士らしく物慣れた口調で騎士は告げた。

「食事は…先ほども申し上げたが、携行食なら持参した。三日分ほどある故…足りぬということはあるまい」

貴女がよほどの大食いでなければ、などと。
大概この騎士の冗談も口が悪い。

シスター・マルレーン > 「私とて持ってきていますー。 食事まで恵んでもらう必要ありませんー。」

んべ、と舌を出して。ころころと笑って見せる。
相手の言葉が冗談であることは分かっている。 とはいえ、どこま口が悪い、というよりも、自然と食事も騎士側が出すことになっていることの方が居心地が悪いものだった。

「まあ、それでも。
 お互い、能力もわからないところです。
 月が頭上に上るまではお互いに起きているとしましょう。 そこから月が半ばまではお願いします。 朝日が出るころまでは番を致しましょう。

 こちらも慣れたもの。旅慣れたシスターは相手の提案を否定はせず、修正を一つして。

アルヴィン > 「承った」

貴女の仰せのままに、と。そこは敢えて淑女への騎士の言葉の定石を告げた。これもまた、淑女扱い無用と言う、武闘派シスターへの冗談であるのだろう。

ようやくに、道行きは勾配を下り平地へと。
文字通りの山賊街道へと、二人は至ったのだった。
街道を騎士は、無理せずに進むこととしたのだろう。
やがて、路傍に大樹の繁る場所を見つけると、騎士はそこにて露営と娘に告げる。
頭上に繁った枝葉が万一の雨と夜露を凌ぎ、風も少なくとも片方からは防いでくれよう。

大樹の根方には、土の色が変わっているところがあった。
焚火の痕だ。
度々、こうして露営に用いられているのだろうと、それで察せられるような…そんな場所を騎士は選んだのだった。

シスター・マルレーン > 「あえてやってますね?」

しっぶい顔をして見せた。もー、と不満顔だ。
ここで乗っかってお嬢様面をしても、この手の相手には全く通用しないことはよくわかる。
だって自然にそういう扱いをする人なのだから。

「………では、とりあえず薪でも集めてきますね。
 なに、心配はいりません。
 こう見えて獣の一匹や二匹、毎日のように相手取っていますからね。」

指を立てて自慢げに言って、ころりと笑う。
分かっていることをあえて口にして片目を閉じて。 準備はお願いします、と。

アルヴィン > にやりと、騎士は笑って片眼を閉じた。
すると、不意にその騎士の表情は、妙に悪戯小僧めいたものになる。歳不相応…否、本来の歳相応の幼さが、そこに僅か垣間見える、そんな顔だった。

「承った。火を熾す支度はしておこう」

水場が近くにあればよいが、なかなかそうは上手くはゆくまいなと、騎士は支度してきたこれも水袋を鞍袋から取り出して。
まずは、地面の色の変じたそこに、石組みを素早く組み上げてゆく…。

風の通り道を読み、春で水気を増したとはいえ、周囲の草木に火種が燃え移らぬように、と。
そうして騎士は、娘が戻る頃までには、しっかりとした露営の支度を調え終えて…。

シスター・マルレーン > 「あんまり意地悪してると、お返しの一つでバチが当たりますからね。」

んべー、っと舌を出して。
彼女の方は、殺気を出していない間はずっと、割と動作そのものは子供のよう。
表情もころころとよく変わる。

薪をなんだかんだ、それなりに抱えて戻ってくる頃には準備は終わっているだろうか。

「……山の方でまた一つ二つ、火の手が上がりましたから。
 逆にこちらには人は来ないでしょうね。

 何事も無ければいいんですが。」

山の方を何度も振り返り、考える。
どうにもこの騒動、すぐに解決する気配がない。

アルヴィン > 罪のない、微笑ましいやりとりのその後に、騎士は娘の言葉に眉を顰める…。

「…気がかりなことだ」

いつの世も、そして大陸の東西と南北とを問わず、戦乱に疲弊し苦しむのは、いつも最も弱い者…つまりは、民草が全てをひっかぶると、騎士は初めて心底からの、冗談などではない溜息をつく…。
見れば確かに山には剣呑な気配がまた、色濃く…。

「ともあれ、だ、シスター。今手の届け得ぬことを憂慮しても是非もない…。今宵は、十二分に休むといたそう」

それこそ、王都に戻れぬ身とあれば、しっかりと休める時に休んでおかねば身が持つまいと。
そして騎士は、自らの分はと、己の携行食を取り出した。

そしてまずは、娘の集めてくれた薪を組む。
春になり、水気を含み始めた枝はすぐには火が付かぬ。
まずは、眼に染みる青い煙がもくもくと、二人の前に立ち昇り、やがて煙は夜空にかかる月にまで、青い月影の中に立ち昇り、珍妙な二人連れの、今宵の野営の幕開けを告げ…。

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からシスター・マルレーンさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からアルヴィンさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > (戦場というのは、色々な人員が必要とされる。
直接的に戦闘を行うモノは当然ながら、偵察、物資の輸送、輸送された物資を仕訳するもの、など等。
前線からややと離れた後方の拠点。
物資や人が集積され、慌ただしく人々がゆきかう、そんな場所。ここもまた一つの戦場である)

「あいよ、回復ポーションと毒消し、それと鎮痛剤が5セット。ちゃんと確認しておいてくれよ」

(書類の束と木箱を確認する男――の姿は、なんだかいつもに比べて白かった。
外観からもやや清潔そうなテントの中は、薬品の臭いで充満していた。
こと戦場で必要とされるモノの一つは、医薬品だろう。
都市から送られてくるものも多いが、今必要とされるモノは後方拠点で絶賛増産中……その最中に、男はいた)

アシュトン > 「前線で偵察したり、侵入して諜報するよりかは……まだマシだけどさ」

(荷物が運び出されていくのを見届ければ、目頭を揉みながら小さく呻く。
あかれこれ3日は寝ていないか……4日だったか……
開戦してから日も浅い分、前線の人員はまだまだ問題の無い状態だ。ただ急もあってか、地固めが厳しい状況。
本来自分であれば偵察等にまわされる可能性が高かったのだが、医薬系の知識があることも手伝って、ひとまずはこちらへとまわされる事となったのだ。
万が一の自衛能力がある分、いざとなれば本業の薬師や治療師なんかを逃がす、という役割もついでにあったりするのだけれど。
とは言え、いま襲われたらやばいなー、という位には本気で疲れていた。
欠伸混ざりに白衣のポケットを漁れば、覚醒作用のある葉を混ぜた紙巻を咥え――錬金術師の一人に、凄い顔で睨まれた。禁煙だそうだ)

アシュトン > 「ちょっと、外の在庫確認してくるぜ」

(告げた目的が実はついで、というのは見るからに明らかだが。特に咎められる様子はない。
クソ忙しいなかかで都合して休憩するのはお互い様だ。冒険者であるぶん体力の差で、余計に働いてるのも確かだし。
咥え煙草をヒョコヒョコと上下し揺らしながら、如何にもダルそうな足取り。テントの外へ。
――……帰ってくるのは、たっぷりと一時間経った後だった)

ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」からアシュトンさんが去りました。
ご案内:「◆城塞都市「アスピダ」(イベント開催中)」にゼロさんが現れました。
ゼロ > ―――前回は、外周の偵察をした。ならば、次に求められるのは、内部の情報だ。そういう意味では、前回よりも、少年には厳しい話となって来る、前回は、外周の偵察の時点で、屋上に居た弓兵に確実に捕捉されていたから。
少年とてバカではない、弓兵のシフトを目視で隠れながら調べ、それが居なくなった時点を選択した。
そして、この白銀の鎧にも仕掛けを施すのだ。

塗料。鎧の色が覚えられていたとしても、あの距離、夜闇の中ではどんな鎧なのか、模様はどんなものなのか迄は見切ることは不可能。
鎧の色を変えてしまえば、そして。腕に付けている第七師団の腕章をも外す。これは、外したくはないが仕方があるまい。
少年自身は二年前に、タナール砦で、スカウトにて入隊した隊員であり、暁天騎士団との絡みは一切ない……詰まるところ自分を知る者は、敵にはいないのである。
だから、鎧の色を変えて、侵入さえしてしまえば、暫くの時を稼ぎ、偵察することは可能なはずだ。
故に、少年は、鎧に塗料をぶっかける。 ――冴えわたるような、青の色を。
鎧に塗料を塗り、蒼くなった鎧を身に纏い、少年はアスピダに近づく、今現状の見張りには、彼女が居ない分、少年にとっては侵入するには楽であり。


実際に、今少年がすでに都市の中に居るのが、その証左とも言えよう。
ただ、今回も又、無茶はすることはせずに、内部の把握と、人員、後、救助するべき人間の捜索に留めておくことにしよう。
まだ、何がるのかが判らない、少しずつ、少しずつ内部を確認し、彼らの事を知るべきだからと。

ゼロ > とは言え、以前のこの場所とは同じ場所にして、全く変わっている―――。
そう思うのは、やはり人踊りの少なさという所、其れに関しては、最初の襲撃の時に街から大体の人間が逃げているので仕方のない事だと思われる。
そして、定期的に此処の兵士―――暁天騎士団と言うべきか、血の旅団と言うべきか、今は何とも言えないが、彼らが警邏をしているのだ。
潜入をしているが、気を抜けばすぐに見つかってしまうのだろう事が伺える。
妙だと思うのは、こんな時でも娼館は機能しているという事だ、音に訊いた暁天騎士団の団長の人格ならば、もっと平和であってもいいはずだが。
なんとなく、廃街区―――スラムのような感じも覚えられるのだ。
今現状居る場所だからなのか、それとも、全体的なのか。自分の勘違いなのだろうか。
ふむ、と軽く少年は唸りつつも、もっと知るべきだ、と動く事にする、青い色は良い感じに闇に紛れてくれる、これだったら黒にして置けばよかっただろうか。
そんなことを考えつつも少年は、夜のアスピダの街を進むのである。

「――しかし、だ。」

少年は呟く。本来はもう少し彼らの拠点に関して調べたいところではあるが、警戒が凄そうだ、少し遠めから見てもそれが判る。
流石に其処を強行突破は難しいだろう。
下手を撃てば、首領が逃げてしまう可能性もある、今は自重すべきだなと、恐らくはと言う枕詞は付くが、彼らの本拠地の方に視線を向けるのだ。
今は、外周から少しずつ警備の状況や、要救助者の場所を明るくしていこう。
何時ものように、少年は決めるのであった。