2023/03/04 のログ
■エレイ > そのまま、男は山道を下り──
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からエレイさんが去りました。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にカジャさんが現れました。
■カジャ > 夜の闇の中を重たい音が響く。
ズチャ、ヌチャ、ズル、ヌチャ、ズルリ、と。
表現するとすれば濡れたモノを引き摺りまわす音、或いは濡れ鼠となった人間が闊歩する音、水気と粘り気あるものが地面を叩く音か。
九頭龍山脈の山賊街道。
幾分かでも整備されたメグメールの街道と違い、人の手がはいらずただ行き交う人々が地面を踏み固めただけの道をそんな重たい音をたて何かがゆるりとした速度で歩いている。
夜空を照らすうす雲に隠れた月の明かりでは視界で捉えにくい黒い体毛に包まれたオオカミに良く似て非なるもの、それはオオカミを飲み込んで姿を真似ているカジャと呼ばれる呪詛の類に属する魔物である。
毛並みと見えたものは微細なる触手。
その根元には皮膚が有るのではなく細かく柔軟な動きを可能とするヘビの鱗、そして眼がある場所にそれはなく、狼の頭部の額に位置する場所には夜の闇の中でも爛々と輝く赤い単眼、そして地面を踏みしめる四肢の先には鋭い黒色の爪、その爪の伸びる足が地面を踏みしめるが音の源。
オオカミが地面を踏みしめれば重たく濡れた音がひとつ。
地面には黒い液体の染みが広がり、染みは水が土に染みるが如く消えていくが、歩けばまた染みがひとつ、その液体が地面と足裏との摩擦で空気が混ざりぬちゅりとおぞましい音を立てているのだ。
異形なるオオカミは獲物を求め闊歩する。
今宵は獲物が得られるか否か、考える程に知性は希薄であるが、飢えだけは理解している。
増えよ満ちよ育てよ。
呪詛の塊は成長を求めて今宵も犠牲者を求め歩くのだ。
■カジャ > 重たい水音と同様に異形なるオオカミの足音も重い。
ゆっくり、ゆっくりと山賊街道の道を踏みしめるように慎重に歩き、額に爛々と輝く単眼は獲物の姿を逃さぬようにギロりと辺りを隙なく見渡す、当然鼻孔も空気の中に獲物の匂いが混じっていないかを探るようにスンスンと常に鼻孔を動かしている。
傍目から見ても異形なるオオカミが獲物を探す事に執着しているのは判るだろう、それだけカジャは呪詛の塊は『飢え』ており、もし鼻孔に或いは視界に獲物に成りそうな成熟した女がいれば影に沈み潜り込むかして、逃がさぬように強襲を試みるだろう。
爪は鋭く布や鎧を引き裂き。
単眼は獲物をより獲物を捕らえやすく魔力を放ち。
体毛の如く生えた微細な触手は獲物を捕らえる。
襲撃を受けて逃れられる者は少ない。
それが上級の冒険者であれ種族であれだ。
そして掴まえた獲物を呪詛の塊は嬲り、その胎を借りて増えて、また呪詛として進化をする。
その繰り返し、繰り返し、繰り返し……。
けれども獲物がいないとわかれば異形の獣は静かにとぷりと影に沈みこむのであった。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」からカジャさんが去りました。