2020/04/20 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道 路傍の大樹、その根方」にアルヴィンさんが現れました。
アルヴィン > 焚火の火が、闇に浮かぶ。
山賊街道と呼ばれる街道沿い、大きな樫の木の根方だ。
頭上張り出した枝葉が繁る。万一今宵雨になったとて、雨露が野営の火を濡らせることはまず、あるまい。
そういう場所として、野営に用いられることも多いのだろう。
根方にほど近いその土は、幾度かの焚火を受けて色を変えていた。
騎士もまた今宵、その場を野営の場と定めたのだった。
石を組む。風の通り道を作りる。
春が来て、木々の枝は十分に水分を蓄えるようになった。
きちんと火が付き、燃えるまでには、随分と青い煙を立てることとなる。
まずは、熾した火の周囲に騎士は枝を組む。枝から、十分に水分を飛ばしてやるためだ。

火は、ひとまずは熾きた。
乾かしながらくべた枝にも、火は回った。
そうして騎士は、下肢の枝葉の天蓋の向こう、欠けた月を戴く夜空を見上げている…。

ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道 路傍の大樹、その根方」にクレハ・ミズホさんが現れました。
クレハ・ミズホ > 九頭竜山脈は温泉で有名である。
ここから王都まで温泉を引き、九頭竜の水浴び場として経営がなされるほど、一体では名泉として知られていた。

そんな地域をクレハがうろついているのは、単純に温泉巡りだ。
ふらふらと歩いては秘湯に入り、時々男と交わり孕んだりしながら、温泉を楽しんでいた。
今日は秘湯の温泉につかり、ゆっくりと木の上ででも野宿しようと思いながら、その温泉を目指しているところだった。

人の気配がして声をかける。

「こんばんは、月がきれいですね。あなたも温泉へ?」

アルヴィン > 夜の、そして山の空気というものは、驚くほど気配というものを届かせる。
騎士は、かけられた言葉に驚きはしなかった。

「湧き湯…か。それは、寡聞にして存じなかった。
 なるほど…おれも今度は探してみることとしよう…」

いずれの湯とて、湧き湯が怪我に効くことを、この騎士はよく知っている。それはよいことを聞いたと微笑んで、そっと焚火の火を掻いた。

「…山中の魔物を昨夜…討伐しての帰りなのだ。
 …なかなか、骨の折れる相手であった、参った…」

とある寒村の近くに巣食ったマンティコアと死闘を演じ、総身に負った傷を自らの治癒の力で癒して…なんとか今日、帰路へとつくことができたのだが、そんなことは騎士の穏やかな声からは察せられまい。
ただ、焚火の近くまで至れば…その鎧にはいくつも傷が刻まれ、そして返り血や騎士自身の血が染みついているのだと知れるだろう…。

「もう、夜も更けた。
 お望みならば…一夜の宿りに、この火を頼っていただいてかまわぬが?」

そう、騎士は提案をし、娘の獣相に気づいたか。ぱちくりと瞳を瞬かせたのだった。

クレハ・ミズホ > 「一晩の契りも楽しいかもしれませんね」

そういいながらクレハは騎士に寄っていく。
白い髪と尻尾が月明かりを反射させ、銀に輝く。
服装は軽装で体の線がはっきり出ている。

「クレハ・ミズホと申します。温泉に共にいきませんか?お背中流しますよ」

場所はほんのすぐだ。目立たない場所なのでアルヴィンは気付かなかったのかもしれない。
共に行ってもいいし、ここにとどまり草の上で契りをかわすのもまた一興かもしれない。
アルヴィンがいかないというならばクレハもこの場にとどまるだろう。

アルヴィン > 「…随分と気ぜわしいお話だ、クレハ殿?」

瞬いた瞳が今度は、苦笑の色を宿してゆく。
娘が火の近くへと至れば、騎士は少しばかり、座る場所を改める。最も火のあたりのよいところを、娘に譲るつもりなのだろう。

「…この国の方々は皆、随分おおらかだな。
 少しばかり…困っているところだ」

頬を染めて、騎士はもう一度火を掻いた。愛の交歓とはやはり、それなりの想いを通じ合った者同士が交わすものと、どうやらこの朴念仁は思っているらしい。

クレハ・ミズホ > 「では甘えて、騎士様」

そう言って隣にぴったりと座るだろう。
春とは言え夜になると若干寒い。
こうしてくっつけば温かいだろうという見込みだった。

「この国にも色々いますよ。まあ私は、かなりおおらかですけどね」

ふふふ、とほほ笑む。
笑っているようにも、獲物を狙っているようにも、どちらにも見える笑顔だ。

「そういう騎士様は、おおらかなのはお苦手ですか?」

話しぶりから言って、交わりを交わしている相手がいそうだが……
嫌がる相手にしようとはさすがに思ってはいない。

アルヴィン > 「名乗りが遅れた無礼をお詫びする、クレハ殿。
 おれはアルヴィンだ。アルヴィン・アルヴァーハードという…」

御覧の通り、草臥の騎士だと、騎士は自らを称した。
随分と身体の線のくっきりとした装束は、やはり目のやり場に困るのだろう。
ただでさえ、騎士は野営の炎を見ようとしない。
炎の明るさに眼が慣れれば、闇に視線を転じて闇を見通すことができぬからだ。

「そうだなあ…」

苦手か、と問われ。
騎士は困ったように口許掻きつつ、枝葉の上の夜空を見上げて、何やら考え込む様子…。

「…おれのような無粋者には、手に余ると…そういうこと、であろうかなあ」

と、言うに事欠いてそんなことを口にするのだ。
このような無粋者であるから、はてさて、春が来るのはいつのことやら、という様子。

クレハ・ミズホ > 「ふふふ、アルヴィン様、それなら手ほどきをいたしましょうか♡」

そう言って、さらに近寄るクレハ。アルヴィンの胸に、体を預け、上を向く。
顔がかなり近い。そのまま口づけをしようと顔を近づけていく。

「強引になさるのは無粋かもしれませんが、こうして女子といい雰囲気になっても、何もしないのもまた無粋なものですよ」

ふふふ、と笑いながら、近づいていき、口づけをかわそうとする。
逃げないならば、そのまま深い口づけをかわすだろう。

アルヴィン > 「手ほど…っ!?」

騎士にしては、不用心であったろう。
傍に寄せすぎてしまった、というのもまた、事実だ。
娘の目論見は半ばは果たされ、半ばは果たされずに終わった。
唇は、確かに重ねられたことだろう。
夏の空のような瞳を見開いて驚いた騎士は、その瞳に苦笑の色を滲ませて、そっと指を挟んだのだ。
そして、娘の唇に、まるでおいたを窘めるように、人差し指は当てられたまま…。

「…ならば、無粋はお互い様、ということだな?」

無粋なる強引さを受け止めて。
そして今度は、騎士が無粋を発揮する番だと、そううそぶいてみせるものの。
どうにも照れて困ってはいるのだろう。
頬の色は、やはり炎に照らされているだけでなく、随分と朱に染まっていもいるようで…。

クレハ・ミズホ > 「むぅ、いけずぅ……」

しょんぼりとしながら、しかし離れずに、胸に頬を当ててすりすりとすり寄る。
ふわふわの銀髪が、炎の光を浴びて赤く染まり、ピンと立ったケモミミが、ゆらゆらと様子を窺うようにアルヴィンの方に向いていた。

「私のような女は嫌いですか?」

何がそう苦手なのだろう。そう思いながら、相談に乗れるなら乗ってみようかと思い、そんなことを聞く。

アルヴィン > 「…クレハ殿…、それでは、御身が汚れてしまう」

軍装はまだ、解いていない。騎士は、マンティコアとの死闘を制した鎧を身に着けたままだ。
無数の傷で金属の裂け目もあれば、血汚れもひどい。
純白の狐、という騎士にとってすらいかにも神々しく見える肌も髪も、このままでは汚してしまいかねないと、騎士はそれが気になるらしい。
そして、騎士は娘の言葉にまた、苦笑というには柔い笑みを深くする…。

「嫌いも何も…おれはまだ、貴女のことを嫌うほど、貴女を存じ上げていない…」

見れば、その獣相も美しく愛らしい。
何故に、そうまで交わりを求めるのかが、ここまでくると騎士には不思議ではあるのだと、問うならばむしろそんな疑問が返されよう…。