2018/12/18 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中 野原」にマリナさんが現れました。
■マリナ > 温かな日差しの降り注ぐ午前。少女はお気に入りの場所で過ごしている。
ドレスのスカートをふわりと草原の上に広げ、何かの蔓を編んでいた。
温かな日差しとは言っても、やはり季節は冬だ。
少しずつ外で長時間過ごすには厳しい気候になっている。
雪が積もるようになれば、さすがに春まではここで過ごす事は難しいのだろう。
だからこそ、少々寒い思いをしてでも集落の外に出る時間を貰っている。
近頃仕事の時間が増え、王城で暮らしていたときには味わえなかった経験もさせてもらっている。
久しぶりに城に戻った際には少々――トラブルもあったけれど、無事戻ってこられたのだからいい。
戻ったときには安堵する心地であり、今や少女のホームは王城ではないのだと実感した。
反面、温室育ちの性格だったり価値観だったりは治りきらないところがあるのだけれど。
「ん……手が冷たくて動かしにくい……」
乾燥させた蔓が言う事を聞かず、困り眉で呟くと両手を息で温める仕草。
指の先がピンクに染まり、耳や鼻の頭も同様に。
準備、用意というものも使用人任せの生活だったためか、行き当たりばったりの行動は多い。
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中 野原」にヴィクトールさんが現れました。
■ヴィクトール > 山中の賊退治を終えて、明け方になると山頂の宿から集落へと向かう。
見た目も年齢も背丈も、全てバラバラの仲間達と纏まっての下山の最中、ぴたりと足を止めた。
そういえば、この辺によく来ると集落の少女達が言っていたような……そんな、微かな記憶である。
半目閉ざした思案顔へ仲間達が訝しげに振り返ると、苦笑いを浮かべて指先を払う。
「野暮用だ、気にせず戻ってろ」
それ以上は問わず背を向けた仲間達を見送ると、大通りを外れて草道を突き進む。
冬の山肌は枯れ葉のほうが多く、力強く地面を踏みしめる度に砕ける葉音が幾重にも重なり合った。
走るというよりは、跳躍といったような歩幅で進む先へ意識を凝らす。
戦う前の引き締まった顔に変われば、魔術をコントロールして他の意志、その一つである感情の色を探った。
獣とは違う色、それを探るだけで誰かがいれば分かる。
誰だかわからないあたりが、自身の大雑把さが出ているとも言えようか。
草地を跳ね、木々の合間を幹を殴打するように蹴り付け、そんな獣とは異なる走破音が近づいていく。
最後に茂みを突っ切りながら飛び出し、両足を踏ん張って着地すれば、僅かに土を削りながら速度を殺していった。
「っと……ぉ、やっぱ居たか」
よぉ と言いたげに軽く手を振って、悪人面が微笑むとそちらへと向かっていく。
蔓を手にした格好を訝しげに見やりながら、さも当たり前の様に隣へと座り込む。
どかっと腰を下ろして、片膝を立てた胡座の様な格好。
やはりというところか、可愛らしいフリルの多いドレス姿は絵になるというもので、草地に戯れる姫君の金糸へそっと手を伸ばして撫でようとしていく。
「花冠……にしちゃ、色気がねぇな」
冬の草地にそうそう花が咲き乱れるわけもなく、手にしているのは乾燥した蔓。
蔦で籠を編んだりするのを見たことはあったが、そこまで器用そうにも見えず、手元をじっと見やると翡翠色の瞳を覗き込む。
■マリナ > 荒事に慣れた彼とは違い、つくづく少女はぼんやり生きてきた。
事前に気配どころか物音に気づく事なく、こちらから見れば何の前触れもなく、突如彼が現れたようなもの。
びっくり。するけれども、危険を察知しないところがさらにぼんやり気質を表す。
「ヴィクトール様、おかえりなさい」
嬉しそうに ふわぁと頬を緩ませて、彼を視線で追う。
其の貌は恋する少女そのものであり、清新だけれど落ち着きというものがない。
仕事で忙しい彼が暫く帰ってこない時期の上の空ぶりは、一部では有名かもしれない。
いまいち心身が自立できていないため、彼が傍にいない間は覇気がない事も。
「そうなんです……せめて秋、ここに実がたくさんあるうちに作るべきでした。
お部屋に戻ったら毛糸でも探して巻きつけてみようかな」
髪を撫でてくれるいつもの優しい掌に、笑顔を浮かばせたまま隣の彼を見上げ。
けれど現在作っているものに関しては――やはり期待したような出来にはなっていないようで。
編まれた蔓は輪を目指した形跡はあるものの、いびつに歪んでいて、乾燥した蔓だという事もあり、寒々しい。
出来に満足できない少女は、輪の形を矯正するように両手で、ぐっぐっと力込めつつ、ふと。
「ヴィクトール様。ここは雪がたくさん降りますか?」
■ヴィクトール > 着地とともに驚く様子は見えたものの、それまでの物音の一切に気づいていないようだった。
まるで子猫が飛び上がるような印象を受けるものの、その緩い雰囲気は少々不安すら覚えるが……今は苦笑いでごまかしていく。
「おぅ、ただいまだ」
相変わらずの純真無垢さに釣られるように笑みをこぼせば、腰を下ろす。
自身が居ない合間の話をふと思い出すも、こうも明るく微笑む娘が呆けているなどと……考えていく内に、先程の反応の緩さに繋がった。
おそらく、上の空で周りの音など、まるで聞いていなかったのだろうと。
困ったように笑いつつ金糸を撫でていくと、続く言葉に頷きながら耳を傾けていく。
その合間も、金糸を梳くように指の合間に滑らせて頭を撫でれば、心地よい感触を楽しむように幾度も掌が行き交う。
「冬至祭の飾りにも出来なさそうだな……、それならいっそ、毛糸でなんか編んだほうが良さそうだ。まぁ……俺らからすりゃ、ちょいと脆いぐらいで変わらねぇけどよ」
枯蔦だけの網目では、冠というよりは隷従者の首輪のようである。
乾いた笑い声を零しつつ、形を整えようとする手元を見やり、クツクツと笑いながらもその遊びに興じる事にした。
適当に転がっていた蔦の一つを手に取ると、それを自身の口元へと運んだ。
固くなった繊維をほぐすように奥歯で幾度か噛み込みながら滑らせていくと、軽く捻り、整えてから輪を作る。
賊を縛る時の手法だが、縄がない時はこうした蔦でもある程度は代用が効く。
相手次第だが、繊維がしっかりしている分にそうそう千切れはしない。
手錠を思わせるように輪を二つ連ねた結び目を組み上げると、こんな感じにというかのように少女へと差し出す。
左右の輪っかと、それを支える中央の柱となった結び目、手綱代わりの余り紐。
紐を引っ張ると自然と輪っかが締り、手首を抑え込むものだ。
「雪? そろそろ降る……まぁ降るか、降らされるか…どっちにしろ積もるな」
子供っぽさのある節操のない話の飛び方に、目を細めながらも確かめる。
季節モノ故に積雪量はその年次第だが、ここ最近はある意味一定に降っているのを思い出した。
妙な説明になりながら、嗚呼と言いたげに目を半目閉ざすと何処と無く呆れた顔をして空を見上げる。