2017/01/04 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山賊街道/山中」にマティアスさんが現れました。
マティアス > やっていることと言えば、為すべきことと言えば、とても単純だった。
害獣駆除である。
ただ、野犬やイノシシの類であればまだ良かったが、群れて徒党を成して街道に降りては人を襲う――盗賊と云う人獣の類となれば話は変わる。
連中は少なくとも、知恵が回る。それはそうだ。一応、同族と言えば同族なのだ。
人の考えそうな事となれば、向こうだって少しだって介するだろう。何故ならば人間なのだから。

故に、どうするか。穴居生活を行う一派の立てこもる山を、単身で迫るか?
バカバカしい。段平片手に踏み込んで、えいやと丁々発止遣るのは物語の中でいい。

故に――。

「……やぁ、丁度折よく出てくれたか。良かった良かった。退屈していたのだよ」

とある山賊の立てこもる山の中腹、幹の太い樹の根本で背中を預けながら笑う。
何を見て笑う? 使い魔として、即席で借り出したフクロウの視点を借りて笑う。
僅かな星明りを頼りに、夜を見通す眼を借りれば見える。山中をのこのこと歩く獲物の姿が。

「では、景気良くいってみよう。仕込みの成果は自分で試さなきゃあ、面白くない」

座り込んだ姿勢で抱えた剣の位置を直しつつ、右手で持つ木の枝で地面に図形を描く。
正しくは、升目上に土の上に描いた図形に不可思議な印刻を書き足す。
そうすることで、どう、と。夜を震わせる爆音と、悲鳴が響く。
事前に設置した使い捨ての魔術陣を遠隔で発動させ、事態開始の呼び水とする。

マティアス > ようは、よくあることだ。街道を行き交う行商達のギルドが冒険者に対して張り出す野盗退治。
それを請け負う。痕跡探索に数日、動向確認に二、三日掛けて、その上で罠を仕込む。
英雄らしい英雄のような所作は好まない。
事をスムーズに終わらせる手管があるならば、それを凝らす方が己にとっての最良だ。

「――刻んだ式の少々精度が甘かったか? 
 或いは、事前の充填魔力量か。放散分も加味してもう少し、威力が出せるつもりだったが。」

成果は上々、とは言い難い。即席使い魔たるフクロウに念を送り、件の箇所に視線を向けさせる。
生物的構造の違いか、色彩の欠ける情景だが吹き飛んだ足を抑えて蹲る野盗と駆け寄って警戒する仲間の姿が見える。
予想としては、もう少し威力が出るつもりだったが。
片目を閉じ、その瞼の裏を使い魔の視線を見るために割り振りながら小首を傾げる。

だが、もう少し待とう。開始地点付近に仕掛けた遠隔発動式魔術陣はまだ、ある。
術者たる己周囲への警戒も、怠らない。脳裏に常駐させた警戒式は現状、正常。

非知覚域からの攻撃? その時はその時だ。人間、誰しも死ぬときは死ぬのだ。

マティアス > そして、わざわざこうするのも理由がある。
略取した人質等の有無までは、図りかねたからでもある。
右手で何の変哲もない木の枝をタクトの如く振って、弄びつつ思考を回す。
住処が明確なら、もう少し具体的な手段で燻り出す手だってあった。

だが、居るのかどうかすら分からない誰かのことを思うと、良策ではない。
奪還出来て、望外の報酬増額を見込めるのなら、まだ自分自身でより手間暇をかける方がいい。

「……ん。では、次行ってみようか」

頃合いか。人の気配の動きに、山中の野生動物がざわめく様を肌で感じながら、地面にさらなる印を描き込む。
先のが「爆裂」ならば、こちらは「衝撃」。
木の幹にそれとなく埋め込んだ小石に刻んだ印刻が小さく光、指定された方位に籠められた魔力を放散する。
指向性を与えされたそれは、人間数人を容赦なく薙ぎ倒す文字通りの衝撃波と化す。

また、響く轟音が夜陰を圧し、さらなる悲鳴と呻きが唱和する。
持参していたカンテラが割れ、中の火種が零れて夜陰を乱す。

マティアス > 「……あー。しまったな。氷結系の仕込み、加えておけば良かったか」

フクロウの視界を借りてみると、やはり闇夜の中の炎とは眩く見えてしまってよろしくない。
山火事になりうる点を思うと、余計によろしくない。柳眉を顰めて、こめかみの辺りを揉み解す。
あまりこの状態を継続するのは、さらに云えばよろしくない。
両手両足でそれぞれ別個の作業をこなしているのにも等しい。つまりは、とても疲れるのだ。

もう少し、待つか。もう少し関係者を悲鳴を契機に呼び集めて、一網打尽とするか。
それとも、それこそ剣を片手に踏み込んで残りを薙ぎ倒すか?

「……面倒臭がったツケが出てきた、か。一人捕まえて手始めに尋問しておけば良かったよ」

は、と白い息を吐き出しつつ、小さく舌を出す。
拙速を尊びつつも、面倒臭がってしまったことののツケと云われてしまえば実にそれまでだ。