2020/10/14 のログ
イスラ > 「 下手な考えでも、本当に休むよりはマシ…でしょうから。えぇ、ない知恵は、捻り出してみせます。
…其処まで考えなかったというのは。考える必要が無いくらい、真面目に過ごしておられたのでは?
今は色も遊びもご存じのようですが。」

受け答えは柔軟で、冗談も言うし、喋っていて本当に愉しい相手。
けれどもっと若い頃、それこそ子供の頃、などは。もっと抑圧された生き方をしていたのではないだろうか…そう見える。
思考停止していたとは言わないが、もしかすれば、思索に耽る暇すら無かったのではないか。
何となく、そんな事を思ったのだが…深くは問おうとしなかった。彼が答えようとしないなら、それで、話題は終えてしまうだろう。
誰であれ、昔については触れて欲しくない。そんな部分が。有って然るべきなのだから。

「 届くとしても、手を伸ばさなければ変わらない。…手を伸ばしても、届かせるには、もっと背が、力が要る。
とかく侭成らない物だと、解っているけれど――もしもの時は。貴方からも、手を差し伸べて下さるというのなら。
お互いが手を取り合うのなら、大丈夫だと。そう、信じています。」

勿論。最悪など、無いに越した事はない。考慮だけはするにしろ。
それに、万が一の時は、などと言ってしまったら。余程の有事でないと遭えないようではないか。
別にそんな事は無く、会えるのなら普通に会いたい。また色々と教えて欲しい。
だから、次また、見掛ける時が有ったなら。今度は、手を繋ぐ為にでも。此方から、伸ばしてみても良いだろうか。

「 もう一つ。怪物は鏡を嫌います。本当は解っているんでしょうね、自分が醜くなってしまったという事を。
……誰かを映す鏡であるように。見守り続ける、見守って貰える。それも、人としての自分を形作って。保たせてくれる筈、です。

貴男は、人を信じたい…信じているのですね。そんな貴男に見守られているというのなら。…襟を正さなければいけない。そう思う。」

誰の言った台詞だったか。覗き込むなら覗き返される。同じ穴の狢になりかねないぞと。
ならば、良い形で見られているのなら。覗かれた鏡が、視線の主を映し返すように。良い影響も双方向であるべきだ。
彼が自分を、彼の心を映す鏡として、認めてくれるというのなら。混じり気のない心をきちんと返せる、綺麗な鏡でなければいけないだろう。
別に、清廉潔白という意味でもないし、純血純心という事でもない。
疑心等の余計な不純物を差し挟ませる事無く、良きも悪しきも、ぶつけられた物を真っ直ぐに。受け止めて、応えるのだ。

「 其処は、まぁ…普段は見ての通り、不肖の末っ子です。目上の方と、こうやって真面目に語らう機会というのは…早々有りません。
ですので、またお会い出来たのなら、その時も。…次はこういった話だけでなく。貴男個人のお話なども聞きたいものです。
日々の過ごし方だとか、趣味だとか……あぁ、そういう風に言うと確かに。婚約者のよう…でしたっけ?」

二人で歩き出して直ぐの辺り、彼の口にした冗談を思い出し。ふ、と笑ってみせた。
手の甲から唇を離し。それと共に、重なり合っていた手も外される。
一歩、二歩、下がった所で、両手を後ろに遣りつつ。真っ直ぐに見上げてみせて。きっと、気の効いた別れの言葉でも、模索していたのだろうが――

「 ――――、っ、っ。それは、…言ったでしょう?ボクは、女として…だけでのお付き合いは、…っ、ね?」

くるりと身を翻して。自分の宿へと小走りに駆けていく。翻るスリットにも頓着出来ない辺り…思った以上に。自分はきっと動揺している。
子供である事を肯定された上で、一端の人間として扱われる事も。…根っからの女性のようなエスコートも。冗談だと解っていても、最後の一言も。
普段聞き慣れる事の無い言葉達に翻弄されて…今夜は、どうにも。誰の寝所に潜り込む訳でもないのに、なかなか寝付けぬ夜になりそうだ――。

エイガー・クロード > 「うんうん。捻りだせる何かはきっと、今までの勉強から来るもののはずだからね。
真面目……真面目ねぇ。そもそもそういうのも叩き込まれたようなものだからね。
まぁ、そこはまた今度時間がある時に」

今度はもう少し自分のことを教えてあげる、と言外に含ませる。
少なくとも、こんな外で話すような話でもないから。
それに、誰かに自分のことを話すのはそんなに多くはないし、長くなる。
だからもっとゆっくり、そして楽しく話したいと思う。

「……えぇ。お互いにそう信じておけば、必ず結果は正しい方向になると思うわ。
私の手は、広くはないけど、長くはあるからね。だから安心して、手を伸ばしてね。
伸びてこない手を掴むほど、私は余裕はないから」

伸ばされる手には、絶対に掴む。だが伸びてこない手を掴むほど、自分は万能ではないし
そうするほどの力も、そして傲慢さも持ち合わせていることはない。
故に…そんな自分は、どうしようもなく恨めしく思うのだ。

「……それは私も同じことよ。私は鏡を見るのは好き、自分を整えるのが好き。
そして自分が美しいと、綺麗と思うことが好きだからやってるだけだもの。

だからあなたも、そう思える自分になって欲しいって思う程度には、私は傲慢かもね」

深淵を覗くとき、深淵もまた自分を覗いている。綺麗も汚いも、両方に偏り過ぎてはならない。
両方を戒めてこそ、人は人らしくなれるものだ。
自分は綺麗ではないと思ってる、けれど汚い自分のままではいたくない。
例えそれが他者に滑稽な物と見えても……自分がいいと思うなら、それでいいのだ。
それこそが自分らしさ、というものではないだろうか。

「末っ子だからこそ、家を背負うものとは違う自由が手に入るものよ。
どっちが力があっていいかとか、そういうのは一概に決められないからね。
……ふふ、そうね。婚約者ならきっと、お互いの事をもっと知りたくなるだろうしね」

そんな冗談を飛ばされて、同じように笑った。
そんな二人の姿は、年の差関係なく、非常に親しい間柄に見えるかもしれない。
そのぐらいには、彼自身もこの子に心を許していた。

「あら?どっちがどっちでも、私は構わないわよ。だって……本気でそう思うなら、そんな障害なんて関係ないもの」

なーんて、自分から離れ、駆けていく背中を見ながら後半は呟くように。
とてもいい子だった、まだ無垢な子供だった。
ここから先、どんな大人に育つかはわからないが……それが国にとっていい方向になれるかは、自分達大人にかかっているのだ。
だから、もし次、まだ無垢なままであったら……自分が、教えるのもいいかもしれない。
最も、その次があるかはわからないが……その時の為に、もう少し、この国をよりよくする努力はしよう。
怪物は、この国にいらないのだから……。

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