2020/10/11 のログ
イスラ > 「 そのように仰っていただけるなら。父も報われる事でしょう。
――相反する物。それでも、どちらも無ければ成り立たない…等というものは。この世に幾らでも存在しますから。」

彼についての噂は、様々に飛び交っているが。
中でも目立つのは矢張り、戦働きと…もう一つは、奇矯と評する者すらも居る、物言いの筈。
だが実際にこうやって、直接話をしてみれば。
言葉遣いの裏には確かな、他者を尊重し、見下す事のない真摯さが有る。
それはきっと。足の引っ張り合いが横行する、貴族達の中では。とても貴重なのではなかろうか。

「 何時の世でも。次男三男という手合いは、その…反抗期という奴が、長引くものですから。
友人というよりは、悪友ですよ、悪友。…こういう所にも来てしまう訳ですし。」

既に先程別行動となったので。これ幸いと愚痴っておく事にした。
実際武家でも貴族家でも、継ぐ物の少ない次男以降が、素行不良に陥るのは。多々有る事の筈。
自身、人の事を言えないだろう…というのはさて置いて。

「 …ろくでなし連中ですが。見立ては確かだった、という事でしょうかね。
しかし、着せられる側としては――なかなか。落ち着かない代物、ですよ。着慣れないという事も有りますが…」

素直に褒めてくれているのだろうから。其処には、素直な頷きを返すのだが。
改めて真っ向から、そういう風に言われてしまうと。つい、意識してしまう事となりそうだ――
この国で見掛ける、大凡の「ドレス」と呼ばれる衣装と比較して、何とも露出の大きなこの服を。
腿を大胆に覗かせたスリットに視線を落とし。…何となく。片脚だけでも退くようにして。

「 ――――、…。
それは。………えぇ、えぇ。そうです…ね。どちらか決められないのなら、どちらも、受け容れるしかないというのに。
…そう開き直っていた筈なのに。少し見失っていたようです。

………お恥ずかしい話ながら。先日、とある令嬢に。こっぴどくしてやられまして。
少々男としての自分ばかりを、意識させられていたようです。

続く言葉に。軽く瞳を見開き…気が付かされた。思い出した。
確かに彼の言う通り。どちらでもある、とも言ったのだから。どちらかを無かった事にしてはいけなかったのだ。
力が抜けたかのように微笑むと。小さく、頭を下げただろうか。

エイガー・クロード > 「そうね。……どちらもバランス良く整えることが一番いいんでしょうけれど。
それを維持することが、一番大変なんでしょうね」

少し疲れたような声で、ため息をつくかのように吐き出す。
王城で見た彼も、今のような顔をしていたとわかるかもしれない。
それが王国の現状を憂いているのか、貴族の現状を憂いたことからなのかは、わからないが。

「そうね。悲しいというべきか宿命というべきか。貴族の家っていうのはとても残酷よねぇ。
でも、そういう繋がりがあれば、少なくとも孤独に怯えなくても済む、って言えるのかしらね」

好意的にそういうが、やはりこんなところまで来るのはあんまり良くないと思っているのは顔に出てる。
それでも子供のやることだから、と大目に見ているのだろうが。

「そうみたいね。それに、マグメールの方の服じゃないしねそれ。
シェンヤンのほうのものだから、やっぱり慣れない服は、ねぇ」

どこでも異文化の衣類というものは最初は慣れないものだろう。
自分も東洋の衣類を見て着方が全然わからなかったのだから。

「ふふ、原点、ってやつを思い出せたの?
まぁ、私のような半端ものの落ちぶれ貴族の言葉で何か大切なものを思い出せたのならよかったわ。

どちらでもないなら、どっちであるかを無理に決める必要はないもの。
自分がどうあって、どんな存在で、どういう風に決めるかは、他人に決められるものじゃないわ」

気にするな、という風に生身の左腕の手であなたの頭を軽く撫でる。
母親が子を撫でるような、温かさがあったかもしれない。

「……あ、ごめんなさい。初対面なのに……」

そして我に返ったように、手を放した。

イスラ > 「 なかなかに、難しい物です。都合良く上手い事行けるのなら。
いけ好かない相手と、それでも顔を遭わせる機会を設けなければいけない――そんな事も減らせるのでしょうけど?」

判らないなりに、それこそ子供として、判断するなら。
あの晩の彼が疲弊して見えた原因は。国その物、貴族その物ではなく。それぞれの均衡を保つ事の気苦労にこそ有ったのではと。
だから、仲を取り持ち顔を繋ぐ為の宴席に、嫌々出席していたのだろうと考えたからか。
心中お察しします、とでも言いたげな表情で。したり、と頷いてみせる。

「 …モラトリアムを分かち合っている、それだけでしょう。
あまり羽目を外しすぎないようにはせねば、と。心掛けてはいるつもりです。
――今以上に、貴族というだけで、他の者達から悪し様に思われるようになるのも。心外ですし。」

目上の彼に言われるまでもなく。事実、父兄からも釘は刺されているだろう。
少々ではなく、民の血を流し、民衆の心が離れるような事でもしでかせば。困るのは自分達だけではないのだと。

…若輩である、という意識ばかりが先に立ち。ひょっとすれば普通に、夜遊びを心配されているだけかもしれないとは。
どうやら、考えられていない様子だった。

「 あちらのオークションに、色々と流れているようです。…シェンヤンの物品が。
改めてお言葉を承ると…悪い気はしませんが。慣れないし…落ち着き、ませんね。矢張り。」

無自覚に緊張していたのかもしれない。力が抜けたのと同時に、少し周りが見えてくる。
そうすれば、矢張り気になってくるのは。大勢のカジノ客達から向けられる眼差しだ。
兎を模したカジノの店員程ではないが、これもこれで、それなりに人目を…取り分け男性の目を惹いているらしく。
何となく、顔を隠すようにか、意識せざるを得ない視線を阻む為か。前髪を書き上げ、半面を隠すように。

「 ――何と言いますか。子供じみてムキになっていたと、反省しました。
自分は自分なのだ、という事を忘れてしまうだなんて。我ながら、確かに――」

ぉっと、と。つい声に出た。
頭を撫でられる。僅かに傾ぐその上から、確かな、温もりが伝わってきた。
…母親が居たなら。こんな風に感じるのだろうか?と、刹那。

「 ……いえ、そんな事は無いでしょう。
クロード卿は、確かな、自分らしさを。今も抱いておられるのでしょう?
それでしたら決して。半端――などではない筈です。」

何せ、半端である事には一家言有る、若造が保証するのだから…と。最後は冗談交じりに、片目を瞑って。
それから謝辞を受けたなら。これにもまた最初と同じく、気にしないで欲しい、と。

エイガー・クロード > 「えぇ。…………でも、これも貴族や騎士の務めと思えば、へっちゃらよ」

だから心配はするな、という風に笑いかけた。
こんな子供に心配をかけさせるほど自分は弱気になっていたのかと思って、一度自分を戒めた。

「それならば……いいのだけれど。子供だけで何かに巻き込まれていないか、心配になっちゃうわね」

純粋に親や大人として、子供を思う者の気持ちの一つとしての発言。
だからこそ、こんな場所に子供だけで来ているのかと思ってしまったわけだが。
そうじゃないのならばまぁ気にする必要はないか。

「ふふ、そうみたいね。いろいろ視線を集めちゃってるし」

大変だな、と思うが、そんな風に生まれてしまったのだから仕方ない。と断じてしまうのはよくないかもしれない。

「……自分らしさ、ね。そうね、それに関してだけは、私はしっかりとうなずけるわ。
だから……あなたも、強い自分をしっかり持ってね」

そう言った後、少しだけ周りを見渡し、その視線の数々を観察して、どんな目線が多いかを察して

「もしよければ、私と一緒に行動しませんか、マドモアゼル?」

冗談めかして、しかし所作の一つ一つは確かに気品があった。
物語のワンシーンのように片膝をついて手を差し出した。

イスラ > 「 貴族の、勤め。…何れは私も果たさなければいけない物、なのでしょう。
取り合えずは、そうですね――学業を修めた後になると思いますが。」

そう、現状、学生である。だから矢張り、子供扱いされたり。夜遊びを戒められるのは当然なのだろう。
これが、何も知らない者に、頭ごなしで言われただけなら。幼い頃を思い出し、思う様反発したくなるが。
彼の場合は真剣に、此方の事を気遣ってくれているからなのだと解るので。だから素直に受け止める。
実際、この街は王都以上に。娯楽に、誘惑に…危険にも、充ち満ちて。
少し裏道に逸れたりでもしたのなら、何が起きてもおかしくないのだし。

「 事情を知らない者達から、こうも、あからさまに見つめられるのは。…初めてかもしれません。
今まではそんな事も無かったのですが、運が悪ければ今夜、何事かに巻き込まれる可能性を案じてしまいますね。」

思わず溜息。そう、何も知らない者達は、どこまでも無責任だから。
きっと…夜の街で背伸びしてみようとする不良娘が、身なりの良い男性に口説かれている、とでも思われているのだろう。
大々的に性をカミングアウトしたのなら、視線は去ってくれるだろうか…いや。そうとも言い切れないのが。
別に男の娘でも構わないだの、両方愉しめてお得だの。そういう輩が居てもおかしくないのが何とも。

「 少なくとも。卿のような先達が、同じ貴族の世界に居て下さると思えば。行く先を見失わずに済む…かもしれません。
同じように強くなれる訳ではありませんが、それでも――」

流石に。騎士を目指せるような事は無いだろう。だから、見習う強さが有るとすれば。それは内面、精神の物。
取り合えず。露骨な色目だの、欲を孕んだ視線だの向けられても。平気で居られれば良いのだが…と思っていれば。
差し出される手は、きっと。あの夜のような貴族達の集う中なら、さぞ相応しい物であった筈。
二秒、三秒、程の間を置いてから。くすりと笑みを零したのなら。差し出されるその上へ、手を重ね。

「 ―――― 、ふふ。偶にでしたら、何処ぞのお嬢様のように、騎士様の手を拝借するというのも。
悪い気はしません、ね?」

エイガー・クロード > 「そう、それでいいわ。いっぱい学んで、いっぱい知りなさい。
その上で自分が何をしたいか、務めをどう果たすか、それを決めるのは、私じゃないもの」

そうして学べるだけ、いいことなのだから。
学ぶ機会すらなく、既に大人のする仕事をしている子供もいる。
だからこそ、目の前のこの子供には……たくさん学んで、健やかに育って欲しいと思う。

「そうね。場所が場所だから……十二分にあり得るのが、怖いわねぇ」

確かに自分もこの子も、傍から見れば少々不埒なものに見えるかもしれない。
そこで互いが実はどんな存在なのかを話すとなると……まぁ、話すことはないだろうが。
事情を知ったところで、この光景が少し目につくのは間違いないだろう。

「お嬢様のように、お坊ちゃまのように、どう振舞ってもいい。
そう考えると、ある意味お得かもしれませんわね?」

パチン、とサングラスの下からウィンクをして見せた。
重ねられたその手を少しだけ強く、そして優しく握る。

「これで私が、あなたの婚約者だったらきっといい絵にもなったんだけれどね。
ごめんなさいね」

イスラ > 「 ――そのように言って下さる大人に。もう少し早く出逢いたかった、そう思いますよ。
きちんと家に入るまでの間、我ながら何とも…悪い子、でしたから。」

落胤とはそういう物だろう。ある日突然、平民地区だの貧民街だのから、貴族の中へと拾い上げられるのだ。
其処まで詳しくは語らないものの。少なくとも、ちゃんと子供を子供として見てくれる、そんな大人には縁が無かったと。
その点だけは、懐かしげに口にしつつ。だから尚更、今この言葉が有難かったのだ、と。

「 …いえ。私だって、それなりに。される側だけではないのです――が。
流石にアウェーですし、今はどうにも、分も悪いですし…逃げるに如かず。そう、思います。」

好き勝手搾取されるだけ、こういう所で犯されるだけ、の側ではない。そう主張はするのだが。
先程、とある女性に男として敗北した、そんな話をしたばかりなので。どうにも信憑性は無さそうだった。
それでも。歴とした男性、それも、見事な籠手や立ち振る舞いから、見る者が見れば実力を感じさせる人物が。エスコートするらしいとなれば。
流石に、不埒ではあれ力の無い、ハイエナめいた眼差しは。数を減らしていく筈だ。

「 けれども、それは。それこそ、若い内だからです。
何れきちんと、貴族として、人の前に出るのなら。…外面だけは――選ばなければならないでしょう。
プライベートなら兎も角、務めであるのなら。

…そう、言葉遣いだって、今のようにはいかなくなるね。
ボクがボクで居られるのは、お忍びで遊びに出られたらだけ、になるのかも。」

手を取られて、歩き出す。それで、更に人目が散るからだろう。
少しばかり歩調を早めて、隣に並ぶ位置までくれば。
それこそ真面目な、ご令嬢めいた言葉遣いも、余所へと放ってしまい。
若い内の、今の自分自身らしい振る舞い。しゃべり方。取り戻そうか。

「 ぉ、っと。…貴男のような騎士様に、そう迄言って貰えるのは光栄だし、魅力的な可能性だと思うよ、とても――ね。
けれど今は、危険じゃないかな。…ふふ、お姫様を拐かそうとする悪漢共が、この場所には多すぎるだろう?」

エイガー・クロード > 「そういう大人が少ないというより……そんな大人が生まれないのは、とても残念ね」

言葉の裏をすべては読めきれない、けれどなんとなく、この言葉を嬉しく受け取ってくれてるのはわかった。
逆に、こういう言葉一つ受けられていないことに、どうしようもなく悲しくなって、不甲斐なさを感じてしまう。

「あら、さすがに色のことはもうご存じなのねぇ。
ふふ、まぁ貴族ならその年なら当然よね」

くすくす、と、どこか女性的な笑い声を零す。

この男が隣にいると、確かに、眼差しは一瞬はあれどすぐに消えていくことになった。
奇異な言葉遣いをするが、それを知らなければこの男は護衛としてはかなり最上だろう。
それに、そうとても……映える。

「そうね。若いうちは何をしてもいい、年を取れば外面を取り繕う必要があるわ。
私は……あんまり取り繕ってないかもしれないけどね。

……ふふ、それならそれでいいんじゃない?お忍びで、親しい人でも作っても」

隣にきて、砕けた若者らしい言葉遣い。
一瞬目が丸くなったが、なるほど、少し可愛らしく思える。
少々生意気だがそこがいいというべきか。

「そうね。なら、悪漢が出たら私が一人残らずわからせてあげましょうか。
まぁ、婚約者と言っても、私のようなものは誰も願い下げでしょうが」

少しだけ、自虐を零して人気があんまりない場所へと歩き出した

イスラ > 「 そんな大人が生まれない、土壌は。何処にでも存在します。
…この国なんて特に。表と裏がきっぱり、別れすぎているでしょう?」

そんな、裏側が。懐かしい。喧噪と廃退とに満ちた貧民街。
生まれた辺り、幼い内を過ごした辺り。思い出したからというのも。
彼相手なら大丈夫だという判断の下、口調を戻す事にした切っ掛け、だろうか。

「 それは勿論。…良くも悪くも、人と繋がる事は、……好きですよ?」

しれりと断言してみせよう。
色めいて、身体と身体で繋がる事も。…こうやって彼とのように、言葉や心で繋がる事も。どちらも悪くないと。

彼の声が、女性的であるというのなら。
こちらは少しだけ、女性らしさを目減りさせ。どっちつかずの中性めいて。
もっとも、怪しげで危なげな視線達から逃れられるのは。女性らしさの推移ではなく、純粋に、彼の存在の為だろう。
知らぬ者は、言葉遣いさえ聞かなければ、実力者として判断するし…
知る者ならば、言葉遣いを聞いても尚、その強さを承知しているのだろうから。

「 さっきも言った通り。悪さをする友人には、恵まれているんだ。
…彼等彼女等も大人になれば。仕事を任されたり、軍に入ったり、政略として嫁いだり。色々、責任が出て来るのだろうけど。
それでも、互いの事を忘れずに居られたら――ね。素敵な事だと思わないかい?」

ひら、と。目の前に立てた人差し指を振る。
このドレスを見繕った悪戯者達を、幾らか罵っていた気もするが。それも、親しさ故、という事なのだろう。

そして。丁度今、こうやって。手を繋いで共に喧噪から離れていく事となった、その人に対しては。

「 心強い騎士様?…貴男とも親しくしたい、そう願っても良いのかい?

…どう、だろうね。少なくともボクが純粋に女だったなら。生まれついて本物のお姫様だったなら。
口調一つで、こんな優良物件を見逃す事なんて。しなかった筈だ。

――――卑下する事はないよ。上っ面だけで判断する輩なんて、貴男には相応しくないし…
ちゃんと中身で判断してくれる相手なら。その程度で貴男を嫌うなんて、有る筈が無い。」

エイガー・クロード > 「そうね。……私はただの幸運な生まれだったのでしょうね」

そういう彼はしかし、真逆の自分の籠手で包まれた方の腕を見やる。
辛い思いをしたのは、方向性こそ違えど同じこと。
同じことだと、そう思う自分に少し、苛立った。

「……ふーん。そう。……それはいいことね」

その言葉に、こちらもさらり、と肯定した。

「私も、まぁ色は知らないわけじゃないけどこんな男だからね。
誰かとこうしてしっかりと話せる。それだけで私はその人が好きよ。
そう思っちゃうぐらいには私も、誰かとつながるのは好きと言えるかもね」

ふふふ、と減っていく視線を感じながら笑いかける。

「……えぇ、それはとても、そう。……とても素敵ね。
そこにある繋がりが、決して忘れ去られていくことがないなんて」

友故に、そんな風に言える野だろうと思う。
友故に、好きも嫌いもあるのだろうと思う。
友故に…………ずっと、忘れられてほしくないと思う。

「……あら、いいのかしら?私のような、今日会っただけの
もしかしたら悪い大人と親しくなりたいなんて言って。
もしかしたら狼よりもおぞましい怪物かもしれないわよ?」

ぱっ、とその言葉に、先ほどと変わらない笑みを浮かべて

「……そういうあなたが言ってくれるのなら、嬉しいことこの上ないわね」

少し、目を細めて言って。手をもう少しだけ強く握った。

イスラ > 【継続いたします。】
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