2018/11/13 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 娼館『聖者の鞭』」にアデラさんが現れました。
アデラ > 『こういう言い方は気が引けるのですが』

「なに?」

『貴女は暇なのですか?』

「ぐっ……お、思ったより率直な物言いね……」

娼館『聖者の鞭』――広い敷地とおおらかな料金体系、そしてずれた審美眼で掻き集められた娼婦の質。
決して良くない方向で有名な館の、その門前にて少女が椅子に腰掛け、受付小屋の男と閑談に興じている。
少女の身を覆うのは、胸の先端や下腹部を申し分程度に隠す他は、白肌を半ば透かしたレース布地ばかり。
ネグリジェをより淫猥に改造したもの、とでも言うのが良いのだろうか。
椅子の上で脚を組み、その脚の上に本を一冊載せて読書の傍ら、時間つぶしに言葉を交わし――時々は道征く者に目を向ける。
その様には逼迫したものが無く、あまり熱心な娼婦には見えないことだろう。

「……別に暇じゃないんだけど。寧ろ忙しいから、こうして大きく稼げる手段を選んでるんじゃない」

『だとすれば貴女は、少々お脳が春の日差しでございますな。学生ならばもう少し真っ当な手段で稼ぐが宜しいでしょう』

「あら。人類最古の職業の一つよ、真っ当も真っ当でしょうに」

男の言葉を軽く笑い飛ばした少女は、両手をぐっと持ち上げて、上体を反らし伸びをする。
身体が反り返っても尚、その胸の膨らみは然程の強調を示さない。だが、幼い訳でもないのだ。
骨格や、薄くも確かな丸みを帯びた身体――少女自身の両手に収まる乳房は、二次性徴を終えた女のもの。
豊満な女を好む者の多いこの国では、いささか見劣りすると言わざるを得ない所ではあるが。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 娼館『聖者の鞭』」に繰黎さんが現れました。
繰黎 > あ、は。
暇が有るのは良い事じゃないか。
時間を掛ければ、金を稼ぐ事は出来るけど。
どれだけ金を積んだとしても――過ぎた時間は、取り戻す事が出来無いんだから。

(そんな声音が掛かったのは。門扉に繋がる塀の上からだ。
彼女等が目を向ける事が有ったなら…塀の上に腰掛けて。膝から下をぶらぶらと揺らす小娘の姿を見出せる筈。

すわ不法侵入か、泥棒やらの類か、という態ではあるが。実際の所、そんなに大した物ではない。
暫く前からちょくちょく。この娼館に出入りしている……一応は、客、という所。
何故なら、確かに娼館としては、些か狭き門と言わざるを得ない趣味嗜好に偏ったこの館だが。
最大だが唯一と言って良い、その部分にさえ目を瞑るのなら――
古式ゆかしく、豪華極まる館内設備。きめ細やかに行き渡った従業員の心遣い。
何より貴族向けさながらに、提供される飲食物が素晴らしい。
正直、飲食目当てで通っても、充分に価値の在る場所だと思う。

…そんな。娼館の客としては中途半端な、だが定期的に金を落としには繰る、奇妙な輩。
今日も今日とて、目当ては茶菓子か、間食か、といった按配…の筈だったのだが。
座ったその侭、かたんと首を傾げたのなら)

…って。新しいコ…なのかな、ぁ。

(受付役と言葉を交わしていた相手が。見覚えのない少女だという事に、遅ればせに気が付いた。
だから傾げたのかもしれないし…或いは。この季節に、下着一丁と大差無い姿を晒す蛮勇に。
ちょっとした興味を覚えたのかもしれず)

アデラ > 『おうや――いらっしゃいませ』

と腰を深く折って言葉を発したのは、受付の男の方だった。
滅多なことで客の訪れないこの娼館においては、二度訪れたならもう常連も同然。
受付の男は相手の顔を覚えていたのだろう。さして咎め立てもせずに礼を見せた。

「……そういう言葉は多分、お年寄りになってからじゃないと、説得力が無いと思うのよ」

一方で少女の方は――最初の言葉には、愛想が薄かった。
ただの来訪ならば、普通に正面から歩いて来れば良いのだ。
そうしない理由は何か――と訝るが故か、そこには僅かに壁があったが。

「新しい子――ううん、どうなのかしら。ここで働いてはいるけど、居着くつもりは無いわ。
 だから半分だけ当たりってとこね。……そういう風に聞くのは、お客様なの?」

『ええ、物好きなお客様です』

繰黎 > 物好きは酷いな、ぁ。客は客って事じゃないか。
別に不平不満持ち込んで、値引きしろーって詰め寄ったりとか。してないだろぉ?

(軽く頬を膨らませてみせてから。よ、と一声掛けて飛び下りた。
危なげない仕草で塀の内側に着地すれば、首を鳴らしつつ、館の者である二人の方へ)

いやいや。勿体ない物は勿体ないじゃないか。
若い内だって…遊ぶ時間が減ったとか。睡眠時間が削られたとか。
絶対嫌だと思う。……うん、そう思う。

(微妙な不信感を知ってか知らずか。少女のツッコミにも、すらすら詭弁と戯れ言を半々で言ってのけ。
その侭彼女の前辺り迄歩み寄ったなら)

ふぅん?何それ。今の内だけ?流しの…って感じじゃなさそうだけど。
……期間限定って言われると…弱いなぁ。

(きっと。世の女性…否、性別問わず多くの人間が、弱いであろう四字熟語を。思い浮かべてしまった。
普段は文字通り本来の意味で、食べる為に利用している館だが。
これはこれで…という感覚。
軽く腰を折り、腰掛けている少女と高さを合わせて、真っ直ぐに顔を覗き込み…にへら。笑って)

半分だけお店の子。半分だけお客。足したら、丁度良いのかな、ぁ…?

アデラ > 『私からすれば、お客様が入ろうとそうでなかろうと同じなのですがね。
 いや全く、風変わりな人もいたものだと呆れはしますが……』

敷地の中へ飛び込む客の姿にも、とくに咎め立てをする様子は無い。
これが一見の相手なら、まずは料金を払ってからにしろと忠告するところであろうが、
希少な常連客へ大してとやかく言うほど、この娼館は厳密に運営されていないのだ。

『……まあ、風変わりと言うなら、このお嬢様も大概でしょうが。
 いつもの通り、交渉はご自由に。勿論、私どもから娼婦に対して、いかなる強制も致しません』

それだけを言って、男は読書に移る。彼にとっては仕事より、本の続きの方がよほど大事だ。
だから交渉の相手は、見慣れぬ少女へと移り変わるのだが――

「……言葉で戯れたいならば、まずは口説いてからにしてくださらない?
 生憎と私、それではぐらかされる程のお飾りではないし、それに壁の花でもないの。
 安くはないわよ、私。……それに、燃えないならお断りしちゃうわ」

――少女は指を相手の顔に向け、覗き込む目の視線を妨げる。
〝風変わり〟と受付の男は言ったが、なるほど――この少女は自分を売り込むのに必死でないのだ。
買われるなら良し、買われないなら良し、という開き直りに加えてもう一つ。
自分の値も売り渡す先も、自分で決めるという精神性が為に。

「期間限定だから食べたい、なんて。悦ぶ女がどこにいるのかしら」

繰黎 > 私の国じゃ、お客様は神様です、なんて言うのさ。
…神様は、降ってくるモノ。或いは昇っていくいくモノ、だろう?

(勿論、理由になってはいない。何せ、門を通らなかった本当の理由を言えば。
何やら門前で話し込んでいる声が聞こえたから。話し込む二人に、不意打ちで声を掛けたなら。
どういったリアクションが見られるかと考えた――それだけなのだから。
こういう辺りも含めて風変わりだと。物好きだと。館の男には評されたのかもしれず。

そんな男が再び視線と意識とを、文章に収束させてしまったのと。
これまた、矢張り風変わりと言われただけの事は有るらしい、少女の返答に。
目を丸くしてしまったのが、きっと同じタイミング。
…五秒か、十秒か。長い間を置いた後――噴き出した)

く、ふ。ふふ……ぁは、ぁはは…っ!
それは失礼…いやぁ、本当に、失礼失礼。
見てくれで判断しちゃいけないっていうのは、此処の皆に言える事だけど。
いやいや貴女も、そうなんだな、ぁ…少なくとも。こういう場所で、貴女みたいな人に遭うのは、初めてだよ。
掘り出し物…って、この言い方も怒らせちゃう?でも、褒め言葉さ。
貴女みたいに…こんな形で、こんな風に、己を誇れる人間は。なかなかお目に掛かれないんだから。
あぁ――くく、っ、愉しい。きっと愉しい――――そんな貴女を…

(此方を遮ってくる手指。なら、無理にそれを退ける事はすまい。
例えばこれが、殺伐とした無法の裏路地等なら、話は別だが。此処はれっきとした娼館だ。
此処には此処の。一つの小世界に於けるルールが有る。
覗き込んだ身を退いて真っ直ぐに立ち、小首を傾げてみせながら)

そんな心根を持つ貴女なら、是非燃やしてやりたいね?

(…いや。寧ろ焼き尽くしてやりたい、と。炙り焦がしてやりたいと。
その為になら、手を尽くすのは惜しくないと。
ぬらりと濡れた眼差しは、滲み出した慾を浮かべていたが)

アデラ > 訪れた女が笑っている。大して少女の表情をなんと形容すれば良いのだろうか。
褒め言葉――なのだろうか。少なくとも少女が表情を和らげることは無い。
彼女は椅子の上で脚を組んだまま、笑う相手の顔を眺めていたのだが。

「……残念だけど、お客様。あなたの火では、私は燃えないわ……ごめんなさいね」

やがて少女は、上下に重ねた脚を解きながら、そう言った。
ルールだとか不文律だとか――そういうものでは無いのだろう。
強いて言うなら気紛れと、何か一つ、少女の身を灯らせる熱が足りなかったと、それだけの事。
少女は首を左右に振り、それから立ち上がって、庭の先にある館を手で指し示す。

「どうぞお客様、お通りを。程良い遊びのお相手ならば、あちらでお待ちしておりますわ」

そして少女は受付小屋の中へと姿を消し――代わりに男が、読書の手を再び中断して口を開く。

『……申し訳ないですね、どうも気分屋の過ぎる娘のようで。
 ささ、どうぞ奥へ。お望みならいつものように茶を用意しましょう』

代金を払い、先へ進んだならば。待っているのは何時も通りの娼館だ。
見目には些か難のある娼婦達と、古めかしい部屋と、程々の応接と。
長く時間を潰せる事だけは間違いない――。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 娼館『聖者の鞭』」からアデラさんが去りました。
繰黎 > …あーらら。それは残念だ。
それはそれで、愉しそうだったのに。

(断られたなら断られたで仕方ない。そういう事も有るだろう。
…通いなのか、偶々の逗留なのか。そんな少女が、少女らしさを発揮した故の結果なのだろう。
そんな彼女の「らしさ」を。見た目だけでは分からない苛烈さを。
弄くってみたいというか、弄んでみたいというか。
妙な形で浮かんだ此方の欲は。彼女のそれとは別ベクトルだった…というのも有りそうだ。

かといって。すげない返答を嘆く素振りはみせなかった。
世の中、侭成らない事など幾らでも有る。欲の侭に生きたいが、その欲が通らない事も亦然り。
頭の後ろで両手を組めば、お勧めされたその通り、館の中へと向かって歩き出す。

……館で待つのは、これ亦見た目だけでは分からない、娼婦達の細やかさや。
色欲だけでは知る事の無い、味覚に訴えかける此処の良さ。
当初のお目当て通りに、それを愉しんでいったのだろうが…
但し、今日だけはちょっぴり。胃袋に詰め込む中身が、今までよりも多かった…やもしれず)

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 娼館『聖者の鞭』」から繰黎さんが去りました。