2020/04/24 のログ
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 気に入った物や奴隷は買い上げようと思っているのだが、今一つ食指が動かない。宝飾品や美術品に興味がある訳でも無い事だし。
「…シェンヤンの料理に造詣の深い者が居れば買い上げても良いのだがな」
東洋の菓子を屋敷でも作ってくれないだろうか、等と考えながら、出品された商品に次々と客達が値を付けていく様を眺めている。
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > しかして、望む者は現れず。
暫くして少年の姿は賭博場へと消えていくのだろう。
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】/ 非合法オークション会場」にアリアドネーさんが現れました。
■アリアドネー > 金髪の少女は右手を上げてハンドサインで金額を示す。
それを見て司会が読み上げた金額を聞き、最後まで競っていた相手は諦めため息を吐いた。
金髪の少女が競り落とした品物はこれで4つ目だ。
会場でわずかなどよめきがあるのは彼女が一度手を上げれば誰ひとりとして競り勝てていないから。
仮面で顔を隠しているとは言え、そんな派手な買い物をしていてはその素性に気付く者は多い。
――成金貴族ゴールドパーク家の一人娘。
「また勝ったわ!」
少女が今までに競り落とした品物は、遠い国の王城にあるはずのティアラ、辺境のさらに奥深くのドラゴンの棲家にしか咲かないと言う食人植物、聖人の頭蓋骨、そして、今競り落としたばかりの誘拐されてきた南蛮の姫。
薄暗く隣の人間の顔もはっきりと見えないような会場で扱っているのは通常目にかかれない非合法な品々だった。
ちらほらと護衛や身分が低い者も入り込んでいるようだが、やはりオークションの主賓は有り余る金を持つ貴族や商人達。
そんな場所で金髪の少女はまるで自宅にでもいるように寛ぎ、珍しいモノを手に入れてご満悦の笑顔を浮かべていた。
「次は何が出てくるのかしら?」
ご案内:「◆港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”【イベント開催中】/ 非合法オークション会場」にリンさんが現れました。
■リン > 『──さて、続いて紹介するのは世にも奇妙な小さい人間でございます!』
そんな口上とともに舞台の中央、円形のテーブルの上に乗せられたのは
鼠ほどの大きさの生き物だ。
奴隷よろしく細い鎖つきの首輪に繋がれたそれは掌に乗ってしまうほど青い髪の小さい少年だ。服は何も身につけていない。
(心を許すんじゃなかった……ちょっとぼくに優しくしてくれたぐらいで……)
友人だと勝手に思っていた貧乏貴族の前で『小さくなることができる特技』を披露したら
あれよあれよと拘束されて気がつけばオークション会場で品物として売り出されているというわけだ。
内心で呪いを吐いていたが、おすわりという司会の声にそのポーズを取る。
言うことを聞かなければどうなるかというのはここに来るまでにしつけられていた。
『このようにしつけの手間もかかりません! お坊ちゃまお嬢様のお話し相手にもなり……』
■アリアドネー > 「わ、何あれ?小人?
アリア初めて見たわ!」
テーブルの上に置かれたソレは遠目には造形がはっきりと見えないほど小さく、司会が紹介しなければ人の形をしていることに気付けなかっただろう。
そのあまりにも小さな人に珍しいモノに目がない少女は愉しそうな声を上げる。
すでに周知の事実とは言え、自らの名を口にする少女に周囲は胡乱な目を向ける。
そして、オークションが始まれば客達は次々に手を上げ金額を示すも、金髪の少女が手を上げるとその数はあっという間に減っていき、最後はやはり少女と一人の男の一騎打ち。
じわじわと自らの価値が釣り上げられていく様子を果たして小人はどんな気持ちで眺めることだろう。
■リン > さらし者にされてなお現実感が湧いていなかったが、
入札が始まり次々と価格が釣り上げられていくと逼迫した状況として否応なしに受け取ることとなる。
すなわちモノ扱いされ、誰とも知らない者に生殺与奪の権利ごと売り渡されてしまうということを。
「ひぃっ、やだ、お願い、買わないで……!」
耐えられずテーブルの上で頭を抱えて四つん這いになってしまう。
悲鳴を上げてもそれは小さすぎて、非合法競売の客たちの声にかき消されてしまう。
競っているのが二人になるとわかれば、それはすなわち自分を待ち受ける運命が漸近しているということを理解させられてしまい……
四つん這いになりながら、恐怖と絶望のあまり、脚の間にぶら下げているものを大きくしはじめてしまう。
その片方が聞き覚えのある声だということにも気づかずに。
■アリアドネー > 小人の願いなど関係なく値はじりじりと上がっていく。
そして、男が値を刻み始めると少女は勝ち誇った笑みを浮かべ、一気に値を上げた。
それですべてが終わる。
小人の運命と所有者が決まり、そのすべてが年若い脳天気な少女の手に委ねられることとなった。
「やったわ!
また勝ったわ!」
満面の笑顔を浮かべる少女は、一人の人間のすべてを握ったことへの責任も重圧も何も感じている様子はなく、むしろ、じゃんけんに勝ってお菓子を手に入れた子供のように喜んでいた。
そうして、小人の運命が決まってもオークションは滞りなく進む。
小人は裏へと下げられ、新たな商品が舞台に上がる。
そして、この日のオークションが終わり、数日後手続きを経て小人は他の商品と共に少女の邸宅へと届けられる。
■リン > 「ああ……」
脳天気な声をBGMにがっくりと項垂れる。
自分の運命がこんなに簡単に決まってしまっていいのだろうか?
いやそもそも自分の運命など波間に浮かぶ葉のようにこれまでの人生で揺れまくっていたなぁ……
などと現実逃避気味な思考をしている間に舞台から引っ込められてしまった。
……
数日後、少女のもとに職人が装飾を施した華美な木箱が届く。
箱を開ければ、リボンで飾られ、首輪や取扱説明書などの細かな道具とともに箱に封じられ、
眠っているどこかで見たような顔の青い髪の小人がいるだろう。
眠り薬をかがされて人形然として意識がないが、箱を開けて少しの刺激を与えるか待つかすれば起きるだろう。
■アリアドネー > 続々と運び込まれる珍しい品々に少女の機嫌はこれ以上なく上々だった。
「待ち遠しかったわ!
あ、それはあっちね!
あと、そのえっと何だっけ?そんなの落としたかしら?
まあいいわ、その辺に適当に置いといて。」
使用人に指示をして部屋のあちこちに配置していく。
他の場所ではお目にかかれないような珍しい品々に、競り落としたばかりの品が加えられ、少女に与えられた家が一軒入りそうな部屋の中はごちゃごちゃとした印象を与えながらも使用人達の尽力により辛うじて他人に見せられる程度の雑然さに抑えられる。
そして、使用人達が退出すると少女は競り落としたばかりのモノを一通り愛で始める。
ティアラを頭上に乗せて鏡の前でくるりと回り、それで満足したのか雑にアクセサリーボックスに押し込む。
ガラス張りの箱に収められた食人植物へ何の肉かわからない肉片を投げ込み、それを貪る様をまるで餌を食べる子犬を見るように眺め、聖人の頭蓋骨は適当に宝石を詰め込んで宝石入れに。
小人は摘んで眺めた後に食人植物の箱の上に首輪に着けた鎖で繋ぐ。
そして、南蛮の姫は……少女の玩具となった。
眼下の何の肉かわからない肉を貪る異形の植物と共に小人は数日に渡って少女の遊びを眺めさせられることとなる。
部屋に監禁された浅黒い肌の姫は誇り高かった。
その誇り高き姫が毎日少しずつ壊されていく。
屈辱を与えられ、快楽を与えられ、苦痛を与えられ、尊厳を踏みにじられ……。
可哀想、そんな言葉すらも生ぬるい仕打ちを延々と与えられること一週間。
南蛮の姫は餌皿に溜められた自らの小水を恍惚とした表情で啜るまでに壊れていた。
「そろそろこの奴隷も飽きてきたわね。
んー、また新しい奴隷を買いに行こうかしら。」
南蛮の姫が餌皿に顔を突っ込んでいる様子を子犬を見つめるよう眺めていた少女は、大きく伸びをする。
その時、この一週間使用人に世話させるだけで視線すら向けなかった小人と偶々視線が合う。
そして、ぽんと手を打った。
「そういえば、貴方がいたわね。」
無邪気な子供のような満面の笑顔、それが小人へと向けられた。
■リン > 届けばすぐさま文字通りに振り回されるのかと思ったら、
そういうことも別になく、ただ繋がれるだけで一週間は過ぎた。
この世界には貴い者の興味を惹くような珍しいものはたくさんあって、
小人といえどそのうちの一つにしかなれないというわけだ。
ただ繋がれるだけの一週間というのはリンにとって形容としては不適切かもしれない。
囚われの姫君とはさほど口を利けたわけではなかったが、それが逆によかった。
もし情が移っていたら狂っていたかもしれない。
高貴なものが辱められていくさまを傍目にひそかに自慰をした。
そうやって飽きられ忘れられなんとなく逃してくれないかなどと
ほんの少しだけ期待していたが。
「はいっ」
視線があって、小人はすくみあがった。
いつかのように脂汗がダラダラと流れる。
「なななんでございましょうお嬢様」
すっとんきょうな声が出てくる。
足元に、自分などひとのみにできそうな植物が口を開けているのがいやでも目に映る……
二通りの末路を見せつけられていた。
■アリアドネー > 「あら、貴方喋れたのね。」
それが以前演奏をねだった相手だと気付かない少女は右手を口元に当てて驚きの声を上げた。
つまり、この一週間小人が使用人と言葉を交わしていたことにも気付かない程度に興味を持っていなかったということ。
そして、今その興味が小人へと移ってしまったのだ。
「ごはんは何を食べるのかしら?
お肉とか食べる?」
自分の背よりも高い食人植物のケースの上を見上げながら手を叩いて使用人を呼び、食人植物用の肉を持ってこさせてそれをケースの上へと投げ込む。
その何の肉かわからない肉片は小人の体躯よりも大きく、小人がそれをどうするか興味深そうに眺める。
もちろん、使用人は小人の説明書に目を通し的確な世話を行っていた。
しかし、少女の勘違いには何も言わないし、正しい世話の仕方を指導することもなかった。
つまり、少女とはそういう存在なのだ。
■リン > 「は、はい」
顔見知りだというのを言うべきか言わざるべきか迷い、
結局は何も言わないことにした。触らぬ神になんとやら。
「うっ」
ぼとん、と小人を押しつぶせそうなほどの肉の塊がそばに落ちる。
切り分けるどころか調理もされていない生肉など、もちろん食事には適さない。
けれども、ここで興味深そうな視線に応えないということはできない。
興味を失った生き物の捨て場所がすぐ足元にあるからだ。
「ふぐぅ……っ」
巨大な肉片に近寄るとかぶりつく。
必死に食いちぎろうとするが、小人にとってこの肉は固すぎるのだ。
焦りのあまり半泣きになっているが、それでどうにかなるものでもない。
数分も観察を続けていれば、かなり無為な試みをしていることに気づけるだろう。
■アリアドネー > 「……じー。」
小人の食事を見つめながら擬音を口にする。
必死に肉塊にかぶりつく様子は何とも可愛い。
しかし、しばらく観察していても肉が減る様子はなく、どうやら顎の力が弱いのではないかと気がついた。
「貴方、固いモノはダメなのね。
小さいし、仕方ないわね。」
ひとつ理解したとうんうんと頷き、再度手を叩いて使用人を呼ぶと鎖をつけたまま小人を机の上へと下ろさせた。
「まるでお人形みたいだけど生きているのよね、不思議だわ。」
細い指を伸ばし、つんつんと小人を突く。
そして、摘んで持ち上げ、隅々まで眺める。
「あら、貴方男の子だったのね。
名前はあるのかしら?
まあいいわ、貴方は今日から『タマ』ね!」
少年の股間からぶら下がるモノに気付くと股を拡げさせて作りを確かめる。
そして、ペットにそうするように小人に勝手な名前を付ける。
ちなみに南蛮の姫の名前は『チョコ』だった、褐色の肌だからと言う安直な理由である。
もっとも『タマ』も玉があったからと言う理由でしかないが。