2015/10/27 のログ
■ハスタ > 「はははは!一つねぇ?おじさん欲張りだから先ずは叶えてくれる希望を3つにしてくれって言っちゃうぜー?結構結構。金なんざぁいらんさ。おじさんを楽しませてくれれば良い。硬貨やチップなんて石っころには、おじさんを楽しませてくれる力なんかないだろう?」
このおっさんは、別段不正をしたわけではなかった。賭け事を賭け事として、楽しむこと。彼にとって、これら全ては道楽でしかない。楽しいからやっている。負けても楽しいし、勝ったら尚楽しい。だから、このおっさんはとても楽しそうで、満足そうで。彼女の境遇も一切知らないままに、笑って語る。この賭博の場で、負ければ身ぐるみ剥がされて、女の子は酷い目に遭うなどもう決まりきっている事。
「ははははは!すまんねぇ、急いで捕まえんとな。そうだ!かわいい嬢ちゃんにゃ、素敵な鳥かごを、プレゼントしてあげようかなぁ?」
ディーラーに勝負は終わったとアイコンタクト。そうすれば場が片づけられるか。ガタイの良いおっさんが立ち上がって、何かを思いついたように暗喩表現。煌びやかな光沢のある髪を、別段気遣う素振りもなく横にのけて、おでこから額、その小さな頭を、大きな掌で掴む。全身から力を抜かせる、初歩的な虚脱の咒い―――なのだが。
「あ、あっるぇー?おっかしいぞぉー?」
全く効かなかった。何でだろう。
一つ分かった事は、その辺の矮小な人間の小娘ではないらしい。ただの嬢ちゃんだと思っていたが然し、そうではないのだと認識する。
適当にちょちょいのちょい、と言った具合の咒いには耐性がある模様。
「ったく、ちょーっと痺れるから我慢してネ~。」
手から魔力が溢れる。二重の六芒星を白で描く小さな魔法陣を作れば、電撃の様な激しさを伴った、
かなり過激な咒いを使った。体全身は勿論、精神的にも、様々な方向から、痺れるような虚脱感や気怠さを感じさせる、複合型の呪詛。効果はさてはてどれくらいのものだろうか。
「あっ!そうだそうだ!可愛い御嬢ちゃんの御名前なーぁにっ?ハスタさんに教えてちょーだい。」
自身の名乗りも済ませながら、少しくらいは弱っただろう彼女の額から手を離す。叶うならば、その小さな体を持ち上げてしまおうか。
■シャロン > 「――そうでしたね。こちらの流儀は弁えております。とは言え、私と貴方の勝負です、彼ら他の者に見せてやる必要はないでしょう?」
聖女とはいえやることはやっているし、そもそもこの世界を旅する中で純潔を保てるのは貴族や平民の箱入り娘と相場は決まっている。――でなくば大抵が経験済みか、或いは強引に奪われたか。そんなところが一般的だろう。ともあれ、嘆息すると同時に視線を向けて。
「いえ、1つは1つです。それ以上は高く付きますよ?――んっ……」
何かが割れるような涼やかな音がして、少女を守る加護と魔族の暗示が相殺される。目の前の大きな掌を見つめながら、特に慌てた気配もない。なにせ、ヤルダバオートとアイオーン。本来相反する2つの神の加護を同時に受けた身である。消耗すればどちらかが強く顕在化して、ヤルダバオートが強ければ淫乱な色情狂に、アイオーンが強ければ邪悪に厳しい清廉潔白な性格になる。今は両方のバランスが中庸であるから、最も安定した少女の性質が顕在化していた。
「――魔族でしたか、随分と気配を隠すのが上手なのですね……」
腿に隠した銀の剣を抜けば、目の前の魔族に一矢報いることも出来るだろうが、其れは今すべきことではない。まずはこの人混みを脱出すること。聖女ではなくただの哀れな貴族の娘と思われたほうが今後については得なのだ。さて、どうするかと思った矢先、男が唱えるのは複合式の呪詛。聞き覚えのある単語は、普段から警戒している術式。本気なのだ、と思った刹那、強烈な電撃のような痛みが精神と肉体を同時に貫き、一度ビクリと震えた後に、掌に掴まれるままにぶら下がる形に虚脱する。目を見ればその輝きが薄れているのが分かるだろう。強力な暗示を軽減したものの、軽度な暗示と同程度の効能を受けてしまった少女は、問われるままに。
「……シャロン。――シャロン・アルコット……」
今までで最も、少女めいた声色で名前を告げる。そしてそのまま、少女は男に抱き上げられて、どこかしらと連れ去られていく――
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からシャロンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からハスタさんが去りました。