2020/07/08 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > ダイラスで、尤も手っ取り早く金を得る方法。
それは、何かを賭けることだ。
ただし、必ずしも金貨である必要はない。

『アケローン闘技場定例大会へようこそ!
第一試合、クレス・ローベルク VS ○○○の対戦は、もうすぐ行われます。
第一試合のBET受付は後十分で終了しますので、まだ賭金をお賭けになってない方はお早めにお願いします!』

魔導機械のスピーカーから、そんなアナウンスが観客席に流れる。
この観客の内、少なくない人間が、これから戦う二人の勝敗に、金を委ねるのだ。
そして、その二人は既に試合場で向かい合っている。

「やあ。今日はよろしくね」

試合場に立つのは、これより剣と、場合によっては操を賭ける事になる二人の選手だ。
試合場に立つ青い闘牛士服の男が、向かい合って立つもうひとりに声をかける。
対戦相手は、男にとってはある種のパートナー。
故に、敵意などなく、朗らかに挨拶を行う事もあるのだが――さて。相手はどう返すだろうか。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にリヤンさんが現れました。
リヤン > 数奇と言うべきか、それとも、必然と、言うべきか。慣れ親しみたくはなかった、この場所に戻ってくるとは思わなかった。
今の主に、実力を見せる必要があった、買い取られてから、一度もそう言った事象がないので。商会で買い取られて、実力の保証はされている。
ここで戦っていたという経験もある。―――然し。
主の前で、実際に戦っているところを、見せてはいなかった、だからと言うべきなのだろう。
闘技祭の出場者が足りないという理由で、過去の興行主―――殺してやりたい相手のうち一人が、へらへら笑い揉み手でやってきた。
その際に主は意外にも、許可を下ろしたのだ。
実力を見せてくれと、言う話で。故に、今回は主の意向での参加、無論戦闘記録は興行主が持つ水晶玉に記録し、主の元へ送られる。


「――――。」

この、アケローンでも有名な、クレス氏に対し、向けるのは鋼の瞳。敵意と殺意を込めたそれで。
それは、奴隷として、拳闘士として、生きて来た時に培い、忘れえぬものだ。
礼儀を持つのは、彼の余裕だろう、当然彼は今までずっと剣闘士として生きてきたうえに、自由を勝ち取ったチャンピオン。

そして今の自分は―――。

殺意を、敵意を、隠さぬままに、一度足を引き。スカートの裾を摘まんで。お辞儀を返す。
今は、情けなくも、主の所有物、所作で泥を塗るわけには行かない。

声が出ない理由は、彼は知っている筈だ、この闘技場で、何度か戦いを経た事のある、彼故に。
その喉が切り裂かれ、声が出せなくなっている女の事。

クレス・ローベルク > 「――っと。そういやそうだったな」

一瞬、返事を期待した間が空いたが、しかし直ぐに思い直した男の言葉で埋められた。
対峙するのは初めてだが、彼女の事は、何度か試合記録や名鑑で目にした事がある。
剣闘士ならぬ拳闘士。この腕利き達人集まる闘技場で、敢えて無手で闘うのもさることながら、彼女の最大の特徴は――

「ん、どうも。今日はいい試合をしよう」

向けられた敵意を感じていないような、そんな笑みを浮かべると同時。
魔導機械のスピーカーが、再びアナウンサーの声を響かせる。

『時間になりました。それでは、第一試合、リヤン選手 VS クレス・ローベルク選手……試合、開始!』

そんなアナウンスと共に、銅鑼の音が響く。
男は、剣を構えるが、その場から動きはしない。
その代わりに、口を開く。

「レディファースト。最初の一撃は、君に譲ろう。
防御や回避はするが、カウンターはしない。何時でも、かかってくるといい」

殆ど挑発のような申し出であるが、さて。
彼女は、どう応えるのか。

リヤン > 不思議な間があった、彼の様子は、何処かぽかんとしていて、何かを待っているような雰囲気で。
その表情に、理解の光が見えた、忘れていたのだろう、仕方があるまい、彼とは違い、こちらは底辺といって良い戦績、最近ようやく勝ちが見えるようになってきた程度の存在なのだ。
彼と戦うには不足過ぎて、組んでもらったことがない、初対面の相手であれば、むしろ、それでこちらを知っている彼の用意周到さの方を賞賛すべきなのだろう。

彼の返答に返すは、睨み据える視線。
余裕にも見えるが、その余裕は無論、彼自身の勝ちを疑っていない、こちらを下に見ている視線。
そういう風に受け取り、女の目にさらなる憎悪が燃え上がる。
試合開始の銅鑼が鳴り響くと同時に、動き出すかと警戒しては。

ぎり、と歯を食いしばる。
金色の髪の毛が揺れ始めた、女の短い髪が、風もないのに揺れるのは、その激情を表しているからか。
―――否。
最大の特徴、それこそが、これである。


―――念動魔法―――

己の意志を魔力へと変換し、魔力を、魔法と言う形に直す魔法。
詠唱が無い分威力は不安定で、本人の意志一つ故に弱いとされている魔法。
同じ魔力でいうなら、詠唱した魔法や、精霊魔法など、効率が良く強い魔法は沢山ある。
喉を潰された女の精一杯の抗いにも見えるそれ。

女の周囲が、薄く歪む。
小奇麗なメイド服を強化する、オーラ・アーマー、そして、二の腕まで包み込む手袋と、皮の靴に纏わりつくオーラナックル。
補助魔法で己を強化し剣を持つ男達に対抗してきた。
今回は、先手を譲られたので、全力で、補助を仕掛けた。

拳を握り、頭部をガードするように構え、ステップを踏み、接近する。
先ずは、彼の懐に踏み込むことが重要だと。

クレス・ローベルク > 声もなく、彼女の肉体が強化されていく。
メイド服に魔術的な防護が加わり、更にその手腕にも、おそらくは攻撃力を上昇させるのであろう魔術的効果が加わる。

「此処までは、お互い定石どおり、か」

こちらが攻撃しないと明言している以上、最大のパフォーマンスで来るのは自明である。
男にとってはあまり喜ばしくはないが、それを含みのハンデなのだから、甘受するしか無い。
とはいえ、男の方も、ぼうっと突っ立っている訳ではない。
そのハンデを、有効に使うべく、思考を十全に働かせている。

「(さて、構えからすると脚による攻撃。
何処に来るかは、読み合い次第って感じだけど――)」

ならば、と男は自分から距離を詰める。
もし、彼女が蹴りを選んだなら、対処は二択。
こちらが、蹴りの有効射程に来た時点で攻撃するか、或いは蹴りが出せぬ距離まで敢えてひきつけて、別の攻撃をするか。
相手に選択肢を与えて、反応を見る――そういう狙いだ。

「(相手がそもそも蹴るつもりが無いって可能性もあるけど――それならそれで、相手のスタイルが見える訳だしね)」

リヤン > 相手との技量の差、体格の差、之で埋められた、とは思えない。そもそも、メイドは小柄なのだそれでいて、拳闘士として、居られたのは、慰み者になるための獲物でしかない、襲われて、犯されるための、人形のはずだった。
無残に抵抗し、押さえつけられて、犯される、圧倒的な差ではなく、抵抗もまた、観客へのショー。だから、強すぎる彼と組まれることはなかった。
今回組まれたのは、興行主のものではないのと、その服装―――メイド服だが、特注であり、見た目の柔らかさとは反した防御力や攻撃力があり、底上げされているから、だった。

油断しないチャンピオンは、流石の一言に尽きる、敵意と殺意に彩られている女ではあるが、認めるべきところは、確かに認める。
油断なく、此方を観察し、戦いを組む彼は、確かにチャンピオンと言える男なのだ、と。
初手は、此方から。

回避するし防御すると言った相手、此方の手を潰す様に接近をしてきた。
剣の間合いというものを熟知しているからこそ、女は接近する、懐に入れば、格闘に切り替えるしかなく、格闘ならば、対等に行なえると―――。
思わないが、それでも、彼の剣と戦うよりはましになるはずだ。
加速するように、ぶつかり合う様に、接近する二人、女が、先に動く。


――加速――。

地面を踏み込み、さらに、勢いをつける。確かに、蹴りは殴りの三倍の威力があると言われる。半面剣と同じようにリーチがあり、それを考えれば得策ではない。
油断のない相手、だから女は速度を上げてダッキング。頭を下げて前傾姿勢に。小さく丸まる事で、狙いを隠し。
さらに、さらに、ギリギリ迄攻めて、全身の発条を使っての、下から顎へと向けての膝蹴りを。

クレス・ローベルク > 「(やれやれ、これは嫌な緊張感って奴だな……!)」

素直に蹴りを繰り出してくれれば良かったが、相手は更に距離を詰めてきた。
攻撃ができないということは、牽制も出来ないということ。
その上で、相手は更に速度を上げ、本当に触れ合うかどうかという距離まで接近してきた。

「(組み合い……じゃない、これは……!)」

ギリギリの所で、男は相手の狙いに気付いた。
相手の狙いは、確かに蹴りであった。しかし、それは蹴りのリーチを活かしたものではなく、寧ろ超接近戦に限定されるものの、即死すらも狙える――

「う、ぉう!」

男が、上体を逸らすのと、彼女の脚が射出されるのはほぼ同時。
それぐらいに、際どいタイミングでの攻防だ。
だが、食らってしまった場合のifに思いを馳せている場合ではない。

「――つむじ風」

蹴りで体勢が整わぬ内に、男は踊るように身体を回し、剣を振るう。
腕で振るのではなく、回す身体の勢いに剣を乗せる事により、至近距離でも勢いを殺さずに横薙ぎの斬撃を繰り出す剣術だ。
本来、直撃ならば重傷は免れないが、男の剣には魔術がかかっている。
直撃しても、彼女自身は鉄の棒で殴られた程度のダメージしか負わないだろう――ただし、その衣服はその切断力を受けるわけだが。

リヤン > 軽いから、筋力では劣るから、ならば、全身の体重に加えた加速、それを含めた質量での一撃を目指した。
元々対等な技量ではない、彼がハンディキャップを言い出すほどに差が開いているからこそ、不意の一撃の重要性は高くなる。
が、矢張り百戦錬磨の相手には、未だ、素直過ぎた模様。

「―――っ!」

全力で、自分の思うがままにトレースした、一撃は最高の一撃といって良い、が彼はそれを上回った。並ではない反射神経、状況の把握で、自分の意図を汲み取り、のけ反って回避する。
飛び膝蹴りと言うのは、致命的な弱点を持つ。基本的に、人は空中では体制を変えられないという事。
そんな当たり前に縛られた女は、彼の一撃を回避することは出来ない。

「かは……っ!」

回転する彼の体、剣が横薙ぎに、自分の脇腹を切り裂く。呼気が吐き出され、回転の勢いにそのまま吹き飛ばされて地面に叩きつけられる。
そのまま勢いを殺しきれずに横に二回転、三回転……そして、地面に、全身に土を付けながら立ち上がる。

「がは……けは……っ!」

こひゅ、こひゅ、と吐息が零れる。魔法の力は魔法の力で、斬撃は、その服装―――ミスリル銀を糸にして、編み込んで作られた服故に切り裂かれることはなかったが。
脇腹に思いっきり体重と勢いの乗った鉄の棒をぶち込まれるという衝撃だけは逃がしきれない。
地面に立っておらず、吹き飛ばされたから、意識を刈り取られずに済んだという状況。ダメージは決して低くは、無い。
しかし、未だ、戦える。

ふ、ふ。大きく息を吐き出し、意志衰えぬ視線で男を見やり。
再度の構えを。ぐ、と力を込めて、魔力を貯める。

クレス・ローベルク > 「が、頑丈……!」

露出を期待した客席からブーイングが飛ぶが、しかし知らなかったのだから勘弁して欲しい。
しかし、これは厄介だ。物理戦闘の実力的には拮抗、もしくはやや有利だが、逆に言えばこちらはそれしかないのだ。
最初の一合は様子見、次からは魔術も使ってくるだろうと考えると、

「それなら、今度はこっちから行くよっ!」

今度はこちらから距離を詰める。
切れないならば、打撃で攻めるしかない。
幸い、剣ならば相手のリーチ外から攻撃できるのだから。

「そりゃっ!」

蹴りのリーチからギリギリ離れた所から、剣を突きこむ。

リヤン > 物理的な守り、魔法的な守り、それらを加味してこのダメージだ、元の拳闘士時代の自分であれば、最初の一撃で持っていかれていただろう。
ブーイングこそ、少しでも、彼に近づいている、実力があるという証左だ。それが、与えられた物だとしても、それを使いこなすのが、自分の使命。
雰囲気が変わり、彼の圧が強くなる、恐らく、ここから本気となるのだろうことは想像に難くない。
腹部に、ずきり、ずきりとした鈍痛を感じながらも、女は構え、次の動きを考える。

依然として、彼に届くためにはいろいろ足りない、今はダメージさえ受けているのだ、自分の持ち味の小回りなどは封じられている。
無理に動けばダメージがさらに広がることが判るから。
そして、彼は気が付いてないが、痛みと言うのは集中をかき乱す、大掛かりな魔法など、この状態で使える筈もない。
だからこそ、弱い、と言われる所以にもなる、詠唱が無い分、痛みを紛らわすための物がないのだ。

「―――!」

向こうから宣言し、近づいてくる。
今回は此方が迎撃のタイミングか、走り込んでくる男、その突き込まれる剣。
女は、魔法を使う、念動魔法の基本、サイコキネシス=念動力。
それは本来の力に比べれば、はるかに弱くなっている、一瞬の操作、彼の剣を少しだけ、右外側に軽く、押す程度の力。
そのままに女もまっすぐ走り込み、右手をŁ字に曲げてガードの体勢にし、剣の腹にミスリル製の手袋で滑らせて、再度懐へ入りつつ右足を踏み込み、左足は外側から鞭のようにしなる蹴りを、彼の右太ももへ繰り出した。
竜の皮で作られたブーツが魔力を帯びて鈍器の様に強化されての一撃だ。

クレス・ローベルク > 「……!」

剣が、ほんの少し――おそらく、観客も知覚出来ぬほどに微弱にだが、しかし右に押された。
だが、既に勢いの着いた剣だ。真っ直ぐに突きこまれる筈だった剣は、その勢いに乗じて、横に流れていく。
そして、それは決してカバーしきれぬ隙となる。

「まずっ……!」

反撃など、出来ようはずもない。
咄嗟に、力を抜く事で骨折こそ避けたものの……逆に力を抜いてしまった事で、ダメージをもろに受けた。
体勢を崩し、転げる様に跪く男。
衝撃で剣すら手放し、形成は逆転している――だが。
剣闘士としての経験は、既にその逆転を更に逆にする手段を、講じている。

「(相手はおそらく思念で魔術を行使している――なら、思念より先に、攻撃を与えるまで。そして、警戒が尤も緩むのは……)」

跪いた際に、左手で腰のホルスターから媚薬注入器を一本、引き抜いている。
這いつくばった際に、身体で隠しているので、彼女には見えない――後は、彼女の追撃に合わせて、

「(この試練の媚薬を打ち込んでやるさ……!)」

試練の媚薬。
一本目で身体を敏感にし、二本目で発情、三本目ともなれば、まず戦闘不能な程の効果を発揮するもの。
本来はファンサービス的に使うものだが、しかしこの様な切迫した戦闘でも決して使えないわけではない。
寧ろ、相手の肌の何処に当てても、薬効が発揮される分、下手な打撃よりも有効でさえある。

「(さて、何をしてくる……!?)」

こちらも、決してダメージが無い訳ではない。
此処で、試合の流れを変えねば、この先の苦戦は免れない。
乾坤一擲の心構えで、相手の攻撃を待つ。

リヤン > ごきり、と骨を砕く音が聞こえる、自分の蹴りが彼に直撃を与えたことを認識する、そして、意識を引き締めた。
彼はチャンピオンであり、今まで生き残ってきた人材、故に、故に。まだ、隠し玉があるのだろうことは想像に難くはない。
こんな風になって、そのまま負けるタマでは無いことは、拳闘士だった経験が教えてくれる。
剣が転がり、油断なく女はその剣を直ぐに蹴り飛ばす。手の届かない方まで。

その際、彼から視線が離れ、ホルダーから薬剤を取り出すところを、見落としていた。最大の脅威と認識している武器を警戒しすぎたのだ。
鋼の瞳は、ゆるり、と男の方を見やる。
闘技場に沸き立つ殺せ、コールは。今までの純粋な戦闘を楽しんだ客が興奮している証左であろう。
明らかに挑戦者である女メイドが、逆転しているところなのだ、と。
メイドが立ち、その足元で、チャンピオンが蹲る、そんな形であり、其処からの虐殺ショーを客は楽しんでいるのだろう。
勝負あった、と銅鑼が成らないこともまた、拍車をかける。

そして、女は近づく。
魔法を使う様子がないのは―――魔法だから。
正直に言えば、念動魔法は燃費が悪く、ダメージでさえ、威力が弱る、そして、魔力とは精神力であり、使う程に心が消耗する。
今魔法を使って止めを刺せる程の威力は出ないし、止めを刺せるまでの精神力の回復を待てば、彼は何かしらをするだけの時間が掛かる。
故に、女は止めを急ぎ、近づくことにした。

その頭を蹴り飛ばし、意識を刈り取るために。
一番簡単なのはストンピング―――つまり踏み付けだ、彼を踏みつけるために、女は足をあげる。

クレス・ローベルク > 「(剣捨てられたかー……)」

油断がない、というのは厄介だ。
戦闘技術はともかく、物理的な威力に関して、クレスはリヤンには及ばない。
故に、隙を突くしか無いのだが、その隙は薄く、短いというのは辛い。

「(まあ、でもやるしかないよな。……観客に調子乗らせるのは癪だし!自分が煽った女の子が犯される所を見て、悔し勃起した自分のアレを慰めさせてやるからな……!)」

などと、巻き込まれる彼女にとっては迷惑千万な事を企んで気骨を養いつつ。
彼女が近づいてくるのを待つ。
男の後頭部に狙いを定め、少女の足裏が男の頭上に翳される。
そして、それが叩きつけられ――

「今っ!」

男は、折られてない方の脚で思い切り、少女に体当たりをする。
バランスが崩れた少女に伸し掛かりながら、左手に持った注入器を首筋に当てる。
即座に振り払わなければ――ほんの少しでも皮膚にその注入器の先端が押し付けられれば、薬剤が皮膚から浸透。即座に、薬効を発揮することだろう。

リヤン > 警戒はしていた、十分すぎる程に。
しかし、精神を消耗し、ダメージにより摩耗していた女にとって、その警戒網にも穴が開いていた。
だからこそ、気絶をさせずに足をあげるなどと言う愚行を行ってしまった。

「―――っ!?」

飛び掛かられて、片足立ちの女はそれを受け止めきることができなかった。
元々対格差が大人と子供ぐらいに有る、筋力もその差は歴然であり、大柄な彼を受け止めることができず、押し倒されてしまう。
咄嗟に彼の脇腹にパンチの一撃をお見舞いするが、魔力の籠らぬ一撃ではさほどのダメージにもならず。
首筋に何かが押し当てられて、そして―――。


「!?!?!?!?」

何かが入り込んできた、と認識した瞬間、女はくたり、と動けなくなる。
残念なことに、昔より犯され襲われて、犯されていた体は、開発されていて、その中に当然媚薬もあるのだ。
強烈な薬の力に女は思考が混濁し、魔力が封じされてしまう。
そして、開発されていた敏感な肉体は、その薬効に力を落としてしまう。
必死に、逃げようと、藻掻こうとするも、彼の体を押し返すほどの力すら出なくなり。

「―――っ!っ!」

呼気も又、徐々に、徐々に、荒くなっていく。
顔が上気し、睨む視線に力も、薄れゆく。

クレス・ローベルク > ダメージという観点からすれば彼のほうが大きい。
脚が一本使えない以上、長期戦は敗北と同義。
だから、脇腹を殴られても、決して力を緩める事無く、彼女の身体に薬を注入する。

「本来、この分量ならまだ身体が敏感になるだけなんだけど……」

伸し掛かった状態から、馬乗りになって彼女を抑えつける。
彼女が組み技の技能に長けていたりしない限り、これで十全に抑え込みが出来る。

「薬に対して、抵抗力が弱いのかな?
まあ、とはいえ演技の可能性もあるし……此処はきちんと、ダメージを与えておこうか」

そう言うと、男は体勢を入れ替え、彼女の顔に対して後ろ向きになる。
そこには、当然、彼女の細い足から先を隠すスカートがある。
その裾に手を伸ばし、

「このメイド服自体が防具みたいなもののようだし――此処は、きちんと弱点を露出させてあげないとねー」

羞恥を煽るように、ゆっくりとそれをずりあげる。
その光景は、試合場のモニターを通して、観客たちにも伝えられている。
当然、それは彼女の下着――パンツを、彼らの目に晒すためである。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からリヤンさんが去りました。