2020/03/14 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 『さあ、アケローン闘技場夜の部、今宵は、スペシャルマッチ。
その名も、磔台スペシャルマッチ!
今宵、敗者は、あの磔台に掛けられ、存分に責められると、そういう趣向となっております』

魔導モニタに、様々なタイプの磔台が表示される。
オーソドックスな十字架タイプ、足を開脚させて拘束できるX字。
背の低い磔台は跪かせたり、座らせたりして磔にするタイプだ。
他、寝かせて拘束したり、拘束した後観客席の高さまで長さを伸ばせるタイプなどもある。

一応、試合場の中央にも磔台はあるが、責めの趣向によってはこれらの出番もある、という事なのだろう。

「(あー、これは敗けられない試合だなー)」

と、今回の試合の剣闘士であるクレス・ローベルクはぼんやり思う。
この興行は、試合内容もだが、その後の濡れ場に力を入れたいというスポンサーの意向を感じる。
試合に手を抜いたりはしないが、しかし観客の期待に応える為には勝たねば用意された磔台は無用になりかねない。
……まあ、対戦相手の趣向によっては、自分が磔されてしまう可能性もあるのだろうが。

「(それは別の意味で避けたい……!)」

と、そんな不退転の覚悟を決めた所に、試合開始のアナウンスが入る。
自分の向かいにある、選手入場用の扉に意識を向ける。

『それでは、今日の対戦相手は――』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にルエットさんが現れました。
ルエット > 『対戦相手は――ルエット・メーニン選手! 王都の学生さん……ですっ!』

鳴り響くアナウンスからやや遅れて、とぼとぼと覚束ない足取りでアリーナへと入場してくるのは、うら若き少女。
場を取り囲む大勢の観衆、そして『闘技場』という場の雰囲気そのものに気圧されて、すっかり怯えきっている様子。
背を縮こまらせ、丸眼鏡の下では泣き出しそうな瞳が周囲をきょろきょろと見回している。今にも逃げ出しそう。
身に纏うローブは簡素で質素、防御力など期待できない物。そして武器の類も帯びていない――杖のようなものすらも。

なぜ、ただの学生であるルエットがこんなところに居るのか? 分からない。自分でも分からないのだ。マジで。

商家である両親の付添でダイラスにやってきて、つかの間の自由行動が許されたルエット。
闘技場の前へとふらりとやってきたが、もちろん入る意図はなく。
見るのも闘うのも自分には縁のない話……だけど、魔術師として経験を積むなら、こういうとこで闘うのもいいコトなのかなぁ?
――などと、思いを馳せて。
次に気がついたら、ルエットはなぜか闘技場の控室にいて、ちょうど入場のアナウンスが放たれるところだったのだ。
係員に問いただしても、『君は自分の意志で参加を表明した』と言い張り、今更逃げ出すことはできないという。

そんなわけで、まったく闘う意志も心構えもできないうちに、流されるままにアリーナの中央へと歩んでいく。
中央にはおぞましい造形の磔台がそびえ立っているが、ルエットはあえてそちらを見ないようにする。
――まさかあんなものを、遊興の試合で使うはずもない……だろうと、楽天的あるいは逃避的に考える。

そして、凛々しい闘技服をキメているクレスの前に立つと、軽くお辞儀をして、顔を伏せ気味のままで恐る恐る問いかける。

「……こ、こんにちわ。あの………えと、た、闘う……のでしょうか?」

歓声に呑まれてクレスまで届かないかもしれない、それほどに小さな、怯えきった声。

クレス・ローベルク > 「(おや、学生さんとは。随分珍しいな?)」

別に、学生立入禁止などという決まりはないが、しかし幾ら闘技場では多額の賞金が出ると言っても、学生という未熟な身分で出場を決意することは少ない。
まして、それが彼女のような、明らかに戦闘能力を持たない、それどころか戦闘する覚悟さえ無さそうな少女となれば。

何か見るからに虐められっ子っぽい見た目だし、多分自分の意志じゃないんだろうなーと思うが、これも仕事。
勿論、最終的には彼女を責め、犯す訳だが、

「(しょうがないなー。流石にこのまま闘うのもアレだし)」

そう心に置いて、男は彼女に笑いかける。
人好きのする、如何にも好青年と言った笑みで。

「うん、こんにちは。うん、此処は闘技場だからね。此処に立った以上は、闘わないといけない。
でもまあ、不安がることはないさ。闘うって言っても、別に命までどうこうする訳じゃない。そういうのはしないって決まりだしね」

尤も、命以外の何かはどうこうする可能性が大きいが、それは言わぬが花という奴だろう。
あくまでも、親切な青年の仮面をかぶったまま、

「しかも、俺は女性相手にはハンデをあげると決めてるんだ。
それを考えれば、君にも十分に勝つチャンスは有る。
だから、頑張って、ね?」

と笑いかける。
まあ、実際彼女が緊張やら動揺やらしてる間に事を進めてしまってもいいが、試合はできればフェアにやりたい。
その為の、余計とも言える雑談。
とはいえ、試合前の時間は少ない。直に、試合開始のアナウンスが鳴る事だろうが――

ルエット > 「う、うう………やっぱり、闘うんですよね。闘技場、なんですから。
 ………わたし、なんでこんなとこに……なんで……? 闘うつもり、ちっともなかったのに………」

アリーナにて対戦相手と対峙した以上は、戦わずしてこの場を去る道理はない。
一度も観戦した経験すらないルエットでも、そのくらいのことは分かる。正気であれば参加表明なんて死んでもやらない所業なのだが……。
……ルエットは自分の意志でそうしたのではないが、『自分からそうした』ことだけはなぜか自覚がある。
自分の中に根付いた、自分でない『なにか』の意志がそうさせたのだ。よくわからない事実、よくわからない現象。
そんな奇行が『あの時』から何度となくあった。それを思い返すたびに、背筋がうすら寒くなる。

しかし、そんな怯えたルエットの様子を案じたのか、対戦相手が優しげに語りかけてくるのを耳にすれば。
徐々に、ほんとうに徐々にだが、戸惑いと混乱の色は薄れていく。

「……ハンデ、ですか。お、お願いします、できるだけ。
 わ、わたしも、できるだけ『死なさないように』がんばりますから……」

自分がどんなナメた口を聞いたか自覚する間もなく、試合開始のゴングが鳴る。
そのけたたましい高音にビクリと肩を竦めるが、すぐにルエットは相手へと向き直り、きりっとにらみつける。
そのまま、しばし逡巡。

――『攻撃魔法』と呼べるもののレパートリー、ルエットの脳内には何百とある。使おうと思えば、どれだって使える。
中には、この闘技場まるごと灰燼に帰すことすら可能な大破壊呪文だって。
当然だが、そんな剣呑な大破壊はもちろん、容易に人を殺してしまえるような呪文はすべてこの局面では禁忌である。
そして、さらに付け足すなら、ショーである闘技においては『派手な呪文』が好まれるはずである。
加えるなら、できればさっさと相手を無力化し、一刻も早くこの場を去りたい。親も心配しているし。
――では、そんな条件のもと、いま用いるべき一番の呪文は……。

………1秒には至らないが黙考と言えるくらいの長い逡巡を経て。

「………………………ッ!」

ルエットの唇と指が細かくも精緻に動き、周囲のマナの流れを制御する。特定元素のみを発生、収斂させ、指向性をもたせる。
……現れたのは、6つの火の玉。1つ1つがスイカ大に膨れ、煌々とした輝きと熱波を放つ。
十分に安定するまで、詠唱からわずか1.5秒。すぐさま、それらを相手に向けて射出した。
ボールを投げるよりも遅い投射速度だが、ゆっくりとクレスの動きを追従し、生半可な動きではそのまま命中してしまうだろう。

「……できれば、直撃は避けて――っ!」

火の玉の1つが、地面に接触する。それは即座に爆発――大爆発を起こす。
ズドォム!…と、闘技場全体を揺さぶるような轟音。飛び散る火花と煙、煤。その跡では地面が10センチほどもえぐれている。
直撃すれば、四肢が飛び散るまでは行かないまでも、強烈な衝撃と軽くはない火傷を負ってしまうだろう。
とてもじゃないが、見習いレベルの魔術師では行使しようがない高度で強力な炎魔術である。
――そんな火の玉が残り5つ、ふわふわとクレスに迫ってくる。

クレス・ローベルク > 上がる爆風に、おおおおおお!?と観客達が歓声とも悲鳴とも付かぬ悲鳴をあげる。
男が女性に先手を取らせるのは何時もの事だが、その"先手"が鮮烈だった。
だが、男には直撃していない。
地面に接触するかしないかのところで、大きく後ろに下がり回避したのだ。

「学生ってなんだろね一体……!」

これ以上の何を学ぼうというのかと悪態もつきたくなる。
とはいえ、喚いたところで状況は変わらない。
さっき避けた火球の他、未だ5つがこちらに向かって飛んできているのだ。

「くっそ、それなら……!」

一度、ステップで真っ直ぐ後ろに下り、そのまま背を向けて走り出す。
追いすがるように火球が、群れ成すように襲いかかる。
――群れ成して、火球同士の距離を近づけて。

「せいっ!」

火球に対して男が投げたのは、試合場の地面に埋まっていた小石だ。
走りながら拾ったそれは、火球にぶつかり――爆発を起こす。
そして、その爆発に他の火球も巻き込まれ、連鎖し、土煙をあげる。

「さあ、今度はこっちの番、だ!」

もうもうと上がる土煙の中から、ルエットに対し駆け出す男。
土煙の中ならば、狙いは定まらないという読み。
位置の関係で、土煙にルエットを巻き込む事は出来なかったが、それでも、土煙から出たなら、後五歩程度の距離までは、近づけるはずで。

ルエット > 火の玉を操作している間、ルエットはじっと立ち尽くした体勢。
位置取りを気にかけない様子を見れば、まるで戦闘慣れしていないことは明らかであろうし、実際そうである。
ルエットからすれば、とりあえずこれを『いい感じの距離で』当てれば戦意喪失くらいはしてくれるだろう、と。
そう考え、火の玉の操縦に専念する。背を向けて距離を取ろうとする相手には、ぐっとマナの流れを強めて火の玉も加速させる。
だが自然と、敵に迫るにつれて火の玉同士の距離も近づいていくわけで……。

「――――――ッ!!」

逃げる相手を追い詰めていたはずの火の玉が突然爆ぜた。そして連鎖爆発。
ルエットはそのけたたましい爆音、吹き付ける爆風と閃光に思わず尻込みし、顔をかばってしまう。
自分のレパートリーにあった最高にド派手な呪文であったが、実際に使うのはこれが初めてだったのだ。
そして、誘爆を招いてしまったのは初めてであったがゆえの失態ともいえる。熟練の魔術師であればもっとうまく使ったであろう。

「きゃ………っ!」

そんな具合に自分の呪文で自らひるんでしまったルエット。
こっちの番だ、と凄んでくる相手の声でようやく自分のピンチを悟り、しかし対応する暇はない。
顔をかばった腕の影からおぼろげに敵の接近を見て、転ぶように身を捩るのが精一杯。

クレス・ローベルク > 恐らく、単純な魔術の質ならば、男が戦った者の中でも五指に入るだろう。
だが、その動きは明らかに素人である。
あっという間に、距離を詰めた男は、鞘から剣を閃かせた。

「さあて、今度はこっちの"攻撃"を受けて貰おうか、な!」

男の剣が十字に振るわれる。
だが、それは彼女の身体を傷つけることはない。
その代わりに切り裂くのは、彼女の着る飾り気のないローブの生地だ。
横の一閃で、彼女の胸の腹の辺りを。
そして、縦の一閃で、胸の谷間から股のあたりまで、ばっさりと切り裂く。
傷どころか、痛みさえもないが、しかし相当過激な衣装に様変わりする事になる。

「さあ、ルエットちゃん。
早く反撃しないと、今度は服が破れるだけじゃ済まないかもよ……?」

と、先程までとは違い、いやらしくにたりと笑いつつ、更に彼女に近づいていく。
反撃しなければ、次は性的な攻撃か、あるいは十字架に拘束して勝負を決めてしまうつもりであった。

ルエット > 迫る闘士、その腰から抜かれるは立派な長剣。冷たく光る刃は躊躇なくルエットに向けて振るわれる。
目にした刹那、ルエットは確実な死を予感した。胸が裂け、血が吹き出し、激痛が走り、ほどなく横死する身の程知らずの少女――。

「ひぃ…………ゃ…………っ!」

とっさにかばった顔、腕の間からおぼろげにその光景を見ていたから、助かったのかもしれない。
その攻撃を直視していたら、臆病者のルエットはまさしく先述の予感を受け止めきれずにショック死していたかも。
詰まった悲鳴とともに、ルエットは2,3歩よろめき後ずさる。
剣の二閃はたしかにその身を切り刻んだのに、痛みもなければ出血もない。
その違和感に戸惑いつつ、とりあえず一命をとりとめたことを自覚してわずかに安堵を覚える……が。

「……………ッ!? え、あ、あれっ!? や、やだ……っ!?」

冷や汗でじっとり濡れた総身を、ひやりとした風が撫でる。いつの間にか服が破れた…?
……と、庇う腕を下ろして自分の体の状態を確認し、ルエットは青ざめる。一張羅の黒いローブの胸から下が切り落とされていた。
細っこく白いウェストラインがつぶさに露出される。質素なスポーツブラとパンツに覆われ、局部はまだ見えてはいない。
デコルテを覆う残りの布地も縦にキレイに両断され、肩口まで降りる。今やローブとして残っているのは両方の袖だけだ。
下着がもう少し派手めだったら過激で悪趣味な衣装に成り果てていたところ。地味な下着では単に悪趣味なだけ、かも。

「………ふ、ふざけないでくださいっ!! こんな、こんな恥ずかしい、カッコ……なんで……っ!」

この闘技場で婦女子の陵辱が日常茶飯事であるなど知るよしもなかったルエット。顔は真っ赤に染まり、視線は覚束ない。
しかし、隙丸出しのルエットに追撃を加えず挑発してくるクレスには、ルエットも神経を逆撫でされたかのように反駁して。
――そして、その挑発どおりに、次の手を繰り出す。

またも短い詠唱。瞬時に、ルエットの足元から大量の水が湧き出した――恐ろしいまでの量が、恐ろしい勢いで。
ドゥッ、と地面を震わせて発生した水はルエットを中心として放射状に拡がる。
その勢いは洪水、いや津波にすらも匹敵する。30cmにも届かない深さだが、それが脚に当たれば転倒は免れない。
またたく間にアリーナ全体を水が覆っていき、怒涛がアリーナの端の壁に当たれば観客席に掛かるほどの水しぶきが上がる。

「これで、倒れてッ!」

クレス・ローベルク > 自分の体を露出させられ、怒りを露わにする少女。
露出と言っても、ブラやパンツは残してあるので、肝心な所は見えていないが。
しかし、それでも彼女の冷静さを失わせるには十分だったようで。
今度は、水――まるで男とルエットを引き剥がすような濁流が、男の足元を掬わんとする。
対し、男が取った行動は、逆に彼女に近づくものだ。

「倒れてあげるさ、但し、君の上で、ね!」

ルエットに対して、身体全体で飛びかかったたのだ。
高さ30cm――立ち高跳びの障害として考えれば、十分飛び越せる範囲のもの。
だが、それを咄嗟に飛び越えようと思ったのは、男の戦闘経験の積み重ね。
"範囲魔法を回避する時、一番確実に回避できる場所は、術者の近く"という鉄則である。
どんなに威力を高くしたところで、否威力が高ければこそ、術者自身の居る位置に自分で攻撃は出来ない、という読みだ。

そして、この回避にはもう一つの利点がある。
それはつまり、飛びかかったということは、回避と同時に、ルエットを押し倒せるという攻めの利点である。

「(まあ、近距離戦で使える魔術とかあったらワンチャン死ぬやつだけど、それ言い出したら何時までも近づけないしね!)」

頼むから倒れてくれと思いつつ、男は勢いに全体重をかけて彼女を倒そうとする。

ルエット > 狙いを定めず、全方位的に敵を押しやろうとする意図の津波攻撃。
相手が油断していたならこれで押し倒し、流し、あわよくば溺れさせて戦意喪失……なんてことを無意識的に目論んではいたが。
やはりここでも戦闘経験の差が如実に出たということか。クレスは押し寄せる波を華麗に回避するどころか、果敢に距離を詰めてくる。
その動き自体がルエットにとっては予想外で…。

「……ひいっ!?」

魔術の操作が必要ない呪文でも、詠唱後の精神集中はある程度は必要。
そして不意を突かれたのもあって、クレスの掴みかかりにルエットは対応できない。
魔術抜きなら唯のか弱い少女にすぎないルエット。男女ゆえの体格差もあって、あっけなく押し倒されてしまう。
足元から放っていた水がクッションとなって、頭や背を地面に打ち付けずに済む。水も引き始め、溺れる恐れもなさそう。
――しかし、そんなことを抜きにしてもこれはまさしく絶体絶命。

「や、やぁっ……くっつかない、で、くださ………い……っ!」

青年闘士の体重が、体格が、体温が、しとどに濡れた乙女の柔肌にじりじりとのしかかって来る。
男に抱きつかれているという現状と、今にも負かされそうな状況に、これまで体験したことのないほどの焦りがこみ上げる。
完全に組み付かれたわけでもないのに、すでにルエットは大男の腕の中で締められているような錯覚を覚える。
精一杯の力で身をよじりつつ、最後の抵抗を試みる。呪文をとなえ、指で紋を切り……その手指の先に、電流の火花が散る。
接触によって直接電撃呪文を叩き込もうとしている。
しかしその詠唱~接触までの挙動は、これほどの至近距離であれば止めるのも容易だろう。気付いていれば、だけれど。

クレス・ローベルク > 遂に、押し倒した。魔術師相手なら、ほぼ九分九厘勝負有りと言った状況。
だが、魔術師相手に確率などというモノが意味を成さない事も、男は重々承知していた。
まして、あれだけの大魔術を自在に振るえる魔術師ならば、此処からでも逆転できる魔術一つぐらい、持っていて然るべき、である。
故に、男は彼女が正に口を開けた瞬間、素早くその魔力の流れを見た。

「残念でした。後もう少しで、不埒な男に電流を浴びせられたのにねえ」

そして、その魔力の流れが彼女の腕を通っていると見た瞬間、その手首を抑えてしまった。優しく抑えてはいるが、彼女の力では、決して剥がれぬ戒めだ。
彼女の抵抗はあっさりと、そして致命的な形で防がれてしまった。

「それにしても、濡れた人に電流流すなんて悪い子だなあ。
いや、悪いのはこの口かな?」

両手で彼女の頭を挟んで固定して、そのまま覆いかぶさるように彼女の唇を奪う。
そのまま、口を閉じて抵抗しないならば、容赦なく彼の舌が彼女の口内を犯す事だろう。

ルエット > いちかばちかの反撃にと繰り出した電撃の接触も、あえなく防がれてしまう。
魔術師に対して、容赦なく決め手と対策を封じてくるその技量には感服するしかない。
しかし、その結果こうして自分が地に叩き伏せられ、のしかかられている状況では、感心してばかりもいられない。
――そう、感心してばかりも……。

「………う、ううっ、や、やめてください、降参です、降参ですからぁ……乗っかるの、やめて……」

四肢や腰に力を込めて引き剥がそうとするも、男の体重と力には到底叶わない。クレスからすれば少女は藁人形にも等しい非力さだ。
そうして最後のみじめな抵抗を演じつつ、クレスの眼下で黒髪の少女はぼっと頬を赤らめ、懸命に男から視線を外そうとする。
――照れている。ルエットのこれまでの人生で、これほど男性の顔を間近で見せつけられたことはなかったから。
それも相手はどちらかといえば美形に入る方の年上男性。心乱されないわけがなかった。

「………ねぇ、お願いですから、離して………やっ、顔近づけ………んぷうっ!?」

完全に闘志を失いつつある少女から唇を奪うなど、百戦錬磨のクレスにとっては朝飯前だろう。
差し込まれる舌を防ぐことも叶わず、はじめての唇が見知らぬ男のモノとなる。
組み敷くクレスの下で、細く小さな少女の体がみるみるうちに体温を増していくのが感じられるだろう。
津波魔術の残滓の水を吸った下着にその熱が伝わり、全身からにわかに湯気までも立ち上りはじめる。
押さえつけられた手首、そしてすぐに全身からも力が抜けきり、完全に屈服してしまう。

「んっ、う、ふ、ふううっ………ん、ら、らめ……っ……っちゅ……ちゅる……っ……」

塞がれた唇の奥、湧き上がってくる唾液や吐息もどんどん熱くなってきて。雌の色香すらも帯びてくる。

クレス・ローベルク > まるで、どころかそのまま生娘の反応。
もともと、好き好んでこういう仕事をしている男である。
初々しい反応への罪悪感は、むしろ男の興奮の材料の一つに過ぎない。
ただのキスではなく、舌と舌を絡め、時に舌裏や口の上側などの性感帯を嬲る、"感じさせる為のキス"
体全身で彼女を抑え込むのは、決して逃さないという言外の宣告だ。

それが約5分程続き、ようやく男が唇を離した。
ぺろり、と行儀悪く舌なめずりをすると、男はさも今思い出したかのように

「おっと、いけないいけない。今回は、"磔台スペシャルマッチ"だったね――降参と言ってくれた事だし、これから本格的に、敗者への罰ゲームと行こうかな」

そう言って、パチンと指を鳴らすと、黒子の衣装を着た男達が現れる。
彼らは、クレスが彼女からどくと同時に、彼女の身体を担ぎ上げる。
そして、彼女を運ぶ先は、彼女が試合が始まる前に恐怖の視線で見ていた、あの磔台。
これから、彼女はあの磔台に聖者の如く戒められ――そして、恥辱と快楽の限りを浴びせられる事になるのだ。

ルエット > 唇を覆われ、舌を絡め取られ、身体を重ねられ……。
抵抗はおろか、悲鳴を上げることも、呼吸すらもままならなくなる。何もかもが男の為すがままとなってしまう。

「………んっ……ぅ、ぅぅうう………ぅあ…………あふっ………♥」

じっくり時間をかけて、はじめての唇が開発されていく。
口腔内のありとあらゆる粘膜がねっとり舐めつくされ、唾液と吐息が注がれれば己の身体の芯まで雄の匂いが染み渡っていくのを感じる。
体温で曇る丸眼鏡の向こう、濃茶の瞳はうっとりと伏せられ、徐々に生気が失われていく。
その表情は絶望か、疲労困憊か……否。確実に発情の色を見せつつある。
そして、少女の身体の昂りはすぐに、性器粘膜の湿りとしても顕れていく。

「………ぅ………………んんっ………ば、ばつ………ぁ……あああ……」

5分という、ルエットには永遠にも思える口腔陵辱を終えて、クレスが身を離すと。
そこには、濡れた地面に髪をぐしゃぐしゃに散らし、下着とローブの千切れた袖のみを纏った無惨な姿の少女の身体。
それを黒子たちが軽々と持ち上げ、磔台へと括り付けられる。
下着をまだ脱がさなかったのはクレスに対しパフォーマンスを期待してのことだろうか?
しかし、ほぼ裸体といえる状況で高々と固定され、肌を隠すことも許されないのは、乙女にとっては耐え難い恥辱だった。

「やだっ…………やだぁ…………………みないで…………………おろし、て………」

心身ともに疲労しきったルエット、悲鳴すらもか細く、今にも消え入りそう。
他方で、未体験の陵辱劇を控えて昂りきった少女の身体はこれまでにないほど燃え盛り、赤く火照っている。
木綿の地味なパンツ、クロッチ部からはすでに幾筋もの滴りが溢れている。ねばっこいそれが愛液であることは明らか。

クレス・ローベルク > 磔台の後ろに階段付きの台が設置されており、男はその上から彼女と同じ高さで喋る事が出来た。
何故、そのような物があるかといえば、

「いやいや、そんな見ないでって言われても。
ほら、見てご覧よ、皆、君が今からどんなエッチな姿を見せてくれるのか、見たくて見たくて仕方ないんだよ?」

と、耳元で囁きかけ、より彼女の羞恥を煽る為。
そして、彼女の身体を、より責めやすくする為である。
とはいえ、磔にされているという都合上、挿入は少しむずかしい。それをやるとしたら、ショーのクライマックスでやるべきだろう。
となれば、愛撫や玩具で責めるべきだが、

「(……やっぱ、此処は快楽落ちの線かなあ。いや、俺の趣味も有るけど)」

幸い、彼女はとても感じやすく、しかも燃えやすい。
快楽を教え込まれ、いけないと思いつつも自分から求めてしまう……というのは、なかなかソソるものがある。
おまけに、磔台……つまり、身動きが出来ないという磔責めの特徴に、自慰を封じるという意味をもたせられる。

「(うん、そうしようか)」

と、決めると、男はにっこり笑い、
彼女に話しかける。

「とはいえ。そこまで降ろして欲しいというなら、そうだな。ゲームをしようか」

と言うと、男のウェストポーチから、何かを取り出す。
それは、砂時計だ。
男がそれを地面に置くと、彼女の正面に見える魔導モニタに、その砂時計の中継映像が映し出される。

「この砂時計で三十分測る。その間、"降参"って言わなければ、君の勝ち。君を此処から降ろして、お家に帰してあげる」

でも、と男は付け加える。

「もし降参って言っちゃったら、その時は今日一日、君は見世物だ。
とっても気持ちよくて、とってもエッチな、そんな罰をずぅっと受けてもらう」

どうかな、と男は問いかける。
尤も、磔にされている時点で、すでに選択権など彼女には無いようなものではあるのだが。
とはいえ、自分が降参と言わなければ、家に返してもらえるというのは、楽観的に考えれば良い条件ではあろう――楽観的に考えれば、だが。

ルエット > 「ぅあ、あ……そんな、こと………う、ううっ……!」

背後から掛けられるクレスの声に、ルエットは閉じた目を恐る恐る開く。
アリーナを囲む観客席には無数の人。その視線がほぼ例外なく、自分に……自分の半裸体に向けられている。
ぞわっ、とすべての肌が粟立つ。耐えきれず、再びぐっと目を瞑ってしまう。
しかし爛れた視線の雨もまたルエットの雌の身体には覿面に効いたようで、脚の間を伝う滴りの量がみるみる増していく。
羞恥に咽ぶ理性とは裏腹に、乙女の雌としての本能は刻々と醸成されつつあるようだ。

「…………ううっ………げ、ゲーム……っ?」

そんな状況で提示される、一種の交換条件。もっともそれは敗者に対するお情けみたいなもので、たしかに選択肢はない。
それに、こうしてひん剥かれて晒し者にされている時点で、十分すぎるほどに見世物だ。
それが一日中も続けば、いよいよ心身ともに限界を迎えてしまうだろう……いや、30分だって耐えられるかも疑問だけれど。

ただ。
降参と言わなければ少なくとも30分後には解放されるのだ。楽天的に考えれば悪くない条件である。そう、楽天的に――。

「………や、やります、やりますですっ………だから、早く帰して………くださいっ………」

目を伏せ、うなだれ、全身から汗を滴らせながら、ルエットはかぶりを振りつつ吐き捨てるように承諾した。
――悔しさと恐怖で曇り尽くしていたルエットの表情が、ほんの一瞬だけ口角を釣り上げ、爛れた笑みを浮かべた。
その間も、磔台に縛られた細く白い身体はがくがくと震え、その様子は哀れな咎人そのもの。