2020/02/01 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にシスター・マルレーンさんが現れました。
シスター・マルレーン > 二度と行くまい。来るたびに思うんですが、なんだかんだで幾度目か。
闘技場の土を踏むシスターは遠い目をしていた。

彼女は言った。
戦う理由の無い相手と戦い、お互いに傷つくだけなのは例え力を示すという理由があっても辛い物です、と。
言外に、だからもう行かない、と伝えたつもりだったのだけれど。

では、戦う理由があればいいのですね、と予定を組まれる有様。

「………なんで一介のシスターがゴーレムの試運転に付き合うんでしょうかねー。」

遠い目をした。目のハイライトが消えている。
彼女の隣には、組み上げられていたウッドゴーレム。もう破壊は終わった。

シスター・マルレーン > 防衛用に作られたゴーレムが相手を求めている。
そこで、教会には「力」があることを改めて知らしめて、民衆に安心を届ける。

名目としてはもはや穴だらけで笑えてくるものであるが、命令とあれば仕方のないこと。
ウッドゴーレムを片付けて、はいはい、と終わろうとした彼女の背で、また門が開く音がする。

「………え。 いや、二体目は聞いてないんですけど。」

振り向けば、純白に銀と金の意匠が施された金属製の巨人。
騎士の甲冑がそのまま3mほどに大きくなって、ただ歩いてくると考えればわかりやすいか。

「………本命がいるならいるって、先に言っておいて欲しいんですけど、ね。」

ため息をつきながら棍を構え、それが金色に輝く。
ここまでが、試合前の記憶だ。

シスター・マルレーン > あ。 これは死ぬかも。

ゴーレムの拳を避けきれずに、棍を構えて受け止めた瞬間によぎった言葉。
衝撃が受け止めきれずに棍を通って身体を突き抜け、武器もろとも木の葉のように身体が浮く。

彼女は比較的戦闘能力は高いが、特別重いわけでもない。
純粋な質量勝負ではあまりに分が悪かった。

「―――っ、ぁ―――っ」

声が出ないまま、スタジアムの壁に叩きつけられ、バウンドする。
受け身とかそういう次元じゃない。
頭から行かなかったのは、ただ運がよかっただけだ。

「………や、………。 っば……。」

今まで剣闘士にも、ゴーレムにも、キマイラにも後れを取らなかった女の視界がぼやけ、血が視界を赤く染める。
わんわんと耳鳴りがする中で、大歓声が響き渡っていることはかろうじて分かる。

このまま倒れ伏していれば死ぬだけだ。
それがノイズ交じりの意識の中、やけに鮮明に、理性的に頭の中に響き、身体を起こす。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にグライドさんが現れました。
シスター・マルレーン > とりあえず目の前のゴーレム相手には、勝てない。
それだけは分かった。

少なくとも核となる存在を貫くためには鋭利なものがいるが、自分の手にあるのは棍だけ。
全力で突進しながら突けば可能性はあるかもしれないが、とりあえず今の自分では無理だ。

このまま戦闘を続けても勝てない。素直に降参を聞き入れるとは思えない。
潰せ! と叫ぶ声が響く中で、さてはて、ならば、と頭を回転させる。

「………さてはて、よし。」

覚悟を決める。 棍を構えて身を低くして。
壁際から動かない。

グライド > (ゴーレムの試験、と言う話を聞いた
其れはこの試合が始まる直前の事、場所は闘技場の前
その相手を務めるのが、教会の修道女で在ると聞いた時は
何の間違いだと一寸眉を顰めたモノだが

客席では無く参戦者の待機場にて、初戦の様子を眺めていた分には
成程、腕は在るのだなと感心していた。
だが、二戦目、己もまさかとは思った金属製のゴーレムに
少しばかり、眉根を顰めては――)

「―――よう、ちょいとふけるぜ。」

(ひとこと言い残してから
待機所から門を通り、ゆっくりと場内へと姿を現そう
観客の視線は、興味は、ゴーレムが女を蹂躙せしめること一つだろうか
其処に現れたのが『余計な横槍』であれば、歓迎する筈も無い、が。)

「勝負が掛かってる訳じゃねぇならよ
俺にも遊ばせてくれねぇか、嬢ちゃん」

(その腰には、競技者用の剣が一振り。
其の全身に纏う鎧と、盾と違い、余りに「合って居ない武装」を携えながら
女の前に現れる。 ―――敵対者が、一人増えたとでも言うかの体で)。

シスター・マルレーン > 彼女はあくまでも冷静だった。
自分のダメージをいかに少なく、そしてスマートに負けるかのその一点。
壁際待機は、すなわち、あと一撃を貰ってから観客席にまで飛び込むという、ルール無視の大技だ。
国防を建前にしている以上、観客に被害を出すわけにもいくまい。

「………おや。」

はて、と目の前に現れた相手に首を傾げつつ。

「いやまあ、私としては構いやしないんですが。
 これって私がペナルティ後から貰う流れだったりしませんかね。」

ははは、と笑う。
まあ、反則負けを狙っていたのだから渡りに船ではあるけれど。
散々っぱらやられていたのに、言葉は明瞭で、思考もくっきりとした女。

ダメージは深いが、それでもここに立つだけはあるらしい。

「いいんですけど。 まあ、そうなるとやらざるを得ないというか。
 ま、このままいけば大怪我はしていたんで、有難いところですけど。」

男がやってきた。
その状況で自分が観客席に飛ばされたとしても、戦いは続行するだろう。

ならば戦うしかない。

ふー、っと大きく吐息を一つついて意識を集中させれば、修道服は黄金色に輝きを増す。
聖なる力を付与するその力を、全開にまで開いて。



ゴーレムは……ゴーレム、という固定観念があるならば、その予想よりも俊敏に地面を蹴って、二人の方へと突っ込んでくるだろう。

グライド > (当然ながら、場内は酷く殺気立つ
女が蹂躙される瞬間を見たがった観客は
突然の参戦者に対して、先刻以上の敵意にも似た感情をぶつける
殺せ、潰せ、直接的な言葉が轟音と化して飛び交う中で
平然と、気にも留めずにゴーレムに向かえば。)

「これが競技で、勝負だったら俺様も手は出さねぇがよ
試験運用だってんなら話は別だ、一枚噛ませな、嬢ちゃん。」

(ていうか、既に大怪我してるだろうよ、なぞと笑いながら
背に担いだ盾を片手に構え、腰にした剣を地面に突き刺す
使いたければ使え、と言う意図なのだろう、其れと共に
盾と共に、鈍重と言う一般的なイメージからはかけ離れた
防衛よ言うよりはむしろ、制圧殲滅、の方が正しそうなゴーレムの突進に対して。)

「防いでやる、何とかしな。」

(勢いに任せた、其の重みを乗せた一撃を――盾で、正面より受け止める
刹那、地面に両脚が僅か減り込むほどの衝撃が響く、が
其の拳は、間違い無く止まる筈だ)。

シスター・マルレーン > 「はっはー。大丈夫ですかね。 まあ、死ぬよりかはマシとしておきましょう。
 ええ、信心深き人よ、ありがとうございます。」

大怪我でしたね、と笑う。口の中には鉄の味。
だが、やるとなれば"やる"しかあるまい。
自分の今できる技術で、相手の動きを止めるのはもうほとんど残っちゃいない。

突き刺した剣を拾えば、なかなかの鋭さであることはよく分かる。
ただ、その剣にエンチャントは………やはりすぐには難しい。 いわゆる金属製品に聖なる力は少し宿りにくいのだ。

「では、何とかしましょう?」

なんて、頭から血を流しながらも、にしし、っと歯を見せて笑った。


「ちょっとお借りしますっ!」

攻撃を防げば、後ろから女の声。 剣を借りる、という意味ではなく。
攻撃を防いだ男の腰、背中、肩と思いっきり踏みながら駆け上がってから、全体重を乗せての突進。

がつん、っと音をさせてゴーレムの首に食い込んだその剣。
その柄を目掛けて、光り輝く白手袋を使った、思い切りのよい掌底が叩きつけられる。
がつぅんっ、と、それこそ杭が撃ち込まれるような甲高い音がコロシアムに響き渡れば、メキメキと音をさせて白銀の金属が裂け、その首と胴体が離れて……ずずん、っと倒れていくだろうか。


「………お借りしました。 あ、剣と肩を?」

てへ、と笑って両手を合わせて見せましょう。 助っ人を踏んづけてまで勝利を掴む、これが血塗れの修道女だ。
あ、それはこのコロシアムで勝手につけられた名前です。

グライド > (通常のゴーレムの性能とは比較にならぬ
一般兵で在れば間違い無く数人分、相性次第では無双出来るスペックは誇るだろう
実際其の相性差は、この女一人を相手にした時十分に発揮されて居る
其の隙を生み出すには、想定外の事をするしかないのだ
即ち――其の重い一撃を、受け切る事。

巨大な盾が其の拳を受け止め、ぎりぎりと火花を散らす
其処から跳ね返す程の猶予は無い、が、其れで十分
響いた女の声は、生憎なんて言ったか聞き取れなかったが
――腰を、背中を、肩を、駆け上った女には
まるで岩の如くに動かぬ重みと、剛さを感じられるやも知れぬ。)

「――――――よう、上手く貸せたかい?」

(――其の瞬間を目にする事は叶わなかったが。
女が、初戦の様に其の軽やかで重い拳を奮ったのだろう事は知れる
聖別されたのか、其れとも強化魔法か、輝きが盾の陰から感じ取れ
次いで、ゴーレムの身体が倒れて行けば

ふぅ、と、小さく吐息を零し、翳した盾を降ろして。)

「やれやれ、防衛用にしちゃ随分とやんちゃなこったぜ。
――――終わりだよなぁ? 流石によう。」

(女へと、顔を覆い隠す鎧の隙間より、問いかけては。
門が開く音が再び聞こえやしないかと、戯言を零しつつ
――実際、ペナルティ、と称して在り得なくも無い辺りが困るが――
腰元から取り出した治療薬の小瓶を差し出しながら
其の負傷の度合いを、一見して確かめてみよう)

シスター・マルレーン > 「お借りしました。」

てへ、と笑いながら、まあ、終わりでしょうね、とつぶやく。

「あれだけのゴーレムですから、おそらく自動では無くて、後ろで誰かが操っているんでしょう。
 となれば、予算的にもそうそうあれだけのものを2つも3つも揃えられないでしょうから。」

ふー、っと同じように吐息を漏らしつつ、遠い目をして一つ。

「ペナルティであれば、きっと後日私に直接来ますよ、多分。」

ははは、と笑いながら、差し出すそれを掌で制する。
殴りつけたその手袋は真っ赤に染まって、ぽたりぽたりと流れ落ちているのだけれど。

「もちょっと後で。 ここで弱みを見せるとちょっと後が大変なんですよ。」

なんて、くすりと微笑みを投げる。
そのまま、鮮血で真っ赤に染まったその手で棍を拾い上げれば、怪我など気にせぬとばかりにぶぉん、っと棍を振り回し。

ガンッ、と地面に叩きつける。
観客への、強烈なデモンストレーション。

その気があるならかかってこい、と言わんばかりのそれを見せつけ、ブーイングを力任せに黙らせる。

「………帰りましょう?」

肩を竦めて背中を向け、控室に向かう。この場では、一瞬でも弱みを見せないことを徹底した女。
まあ、一人では完敗したんですけど。

グライド > 「なぁるほど、手動操作か
ゴーレムマスターは今頃裏で地団駄踏んでるだろうな。」

(言われて納得する
確かに、これ程のゴーレムが自己判断で戦闘を行って居るのだとしたら
相当な戦闘技術と情報を詰め込む必要が出て来るだろう
そんな物を試作として出すのは、余りにもコストが悪い
まぁ、裏で操作しているのなら、殺す気で攻撃を仕掛けてきた辺り
全く以て罪悪感も無いが。)

「そうかい、んじゃ、後で渡すぜ。
名前が知られてっと、そう言うトコが面倒この上ねぇな。」

(一度出した小瓶を再び仕舞い
そして、女のパフォーマンスを見守ろう。
怪我を後回しに、轟々と非難の声を響かせる観客へ向けての、威圧
ぴゅう、と小さく口笛を響かせれば、やるねぇと感心した様に呟き。)

「おう、なら、堂々と背中見せて帰んな、女王様のお通りだってな。」

(戯言、呟きながら、己は女の後に続こう
あくまで、今宵の主役は女で在ると言う意思表示をしながら
控室へと辿り着くまでは、女へと手も貸さぬ。

だが、もし、今は他に誰も居ない控室まで、辿り着いたなら
――其処で漸く、其の片腕を、支えて遣ろうとするだろう)。

シスター・マルレーン > 「そういうことです。
 ………あー、本当に面倒ですね。 報酬も出ないんですから。」

ははは、と笑いながら、鮮血で染まった服装はそのままに堂々と帰る。
そのせいで、またなんか不名誉なあだ名が増えるのだけれどもそれは別の話。

「………大丈夫大丈夫、もう座りますからね。」

支えようとする手をそろりと断りながら、がっくりと崩れ落ちるように椅子に腰かけて。
怪我は多くとも、致命傷と言えるほどのそれは無く。
派手に吹っ飛んだ割には身体はまだ動くのか。どこぞが折れたり砕けたり、ということでもない様子ではある。

「………ぷぁー………アレは、効きましたね。
 よく受け止められましたね、アレ。
 あんなの、単なる修道女には厳しいですって。」

ははははー、と、乾いた笑顔を見せる。自分は単なる修道女です、と言い放って、ぺろ、と舌を出して笑う。

「……助かりました。
 シスター兼冒険者、シスター・マルレーンと申します。 マリーでいいですよ。」

なんて、に、っと歯を見せて笑顔で自己紹介。メンタルがどうやら強いらしい。

グライド > 「無償なのか、ソイツはちょいとお人好しが過ぎねぇか?
……ほれ、何にしてもソイツはやるぜ、良いモン見せて貰ったお代とでも思いな。」

(女が支えを断るなら、ならばと小瓶を投げて置く。
己からの、横槍を入れて特等席で見物させて貰った礼
盾を己が背へと再び背負い直しては、己は椅子に座らず、その場で佇み。)

「なぁに、こちとら受け止めるのが本業だからなぁ
盾役が盾にならなきゃ、良い笑い物だぜ。」

(其れでも、己でも相当な衝撃だったのは確かだ
アレがもし量産でもされたら、と思うと少々渋さを感じるが。)

「とんでもねぇシスターだぜ、全く。
俺様はグライド・クラウス。 グライドの方で呼んでくれりゃ良いぜ、マリー。」

(根っこの強さは、修道女特有の物なのだろうか
とはいえ、相手の其れは少々其れでは収まらないが。
己もまた名乗りながら、気安く相手の名を呼んでは
己が兜へと両手を添えて脱ぎ落し、初めて、顔を見せるだろう)。

シスター・マルレーン > 「世の中には上下関係っていう断っても断ち切れないそれはそれはふかーい鎖がありまして。」

お人好し、と言われれば遠い目をして、怪我をした両腕を開いて力説する。
どうやら上から言われたらしい。とほほ、と肩を落としておく。


「はい、ではありがたく。 深い信心に感謝をしておきましょう。
 ………まあ本業の方は流石、といいたいところですけど、あれ、人間の重さで耐えきれるものじゃないですよ。
 何かしら"コツ"がありますかね?」

なんて、相手を見上げて。
只の力自慢、ではないのだろう、とアタリはつけるけれど、そこまでは踏み込まない。

「素直に言うことを聞いて、全力を尽くしただけなんですから。普通です、普通普通。
 はい、ではグライドさん。
 そういう理由で、お礼くらいしか言えないのが申し訳ないところです。」

言いながら白い……いや、白かった手袋を脱げば、小瓶の治療薬を自分で塗り込んで。
塗っている間は流石に言葉が詰まる。………静かに吐息を整え、苦痛を顔に出さず。 それでも汗はぽたりと流れ落ち。

「……あ、なんかすみませんね。 いやー、こう、治癒の奇跡とかも使えたらいいんですけどね。」

静かになれば気を遣って、あはは、と明るく笑って見せて。

グライド > 「宗教ってのはだから厄介なのさ
ま、軍人だとかも其れは其れで面倒なんだろうが…
その辺りは何処も一緒なのかも知れねぇな。」

(修道女、という事は、上の連中は要するに、司祭とかその辺りか
宗教が関わると大抵碌な事が無い、と思うのは経験上だ
女が明るく振舞うのが、性格なのか、其れとも修道女として故なのかは分からないが
合わせて笑い飛ばし、そして、兜を机の上へと乗せて。)

「そうだな…身体の使い方、受け止める瞬間の衝撃の逃がし方、辺りか
でも、御前さんなら無理に受けるより、避けた方が楽そうだ。
……何か取るか? その指じゃ、暫くは動かさねぇ方が良い。」

(治療薬を塗り込んだとはいえ、直ぐに完治する物でも無いだろう。
必要な事が在れば、代わりに動くとは告げて置きつつ
――ふと、控室に用意されて居る包帯に目を付け、取るだろう
女の傍へと一度屈み込めば、手を出すようにと女へ告げ――
腕甲を付けた儘で、その指に、布を巻いて固定をしよう、と)。

シスター・マルレーン > 「宗教家を目の前に言いますかそれ。
 いや半ばから9割がた理解できるんで文句は言いませんけど。」

あはは、と僅かに笑いとばす女。
金色の髪を拭きながらフードを取れば、さらりと髪が流れ落ちる。
痛い痛い、と冗談のようにつぶやきながら、出血部分を押さえて。

「あー、避けようと思ったんですけど。
 ウッドゴーレムを最初に闘わせた理由が何となくわかったんですよ。
 アレ、私の目をそっちに慣らすためだったんですよね。
 あの速度なら簡単によけられるので、その動きをしっかり見せつけて、身体に覚えさせてから。

 それなら、ちょっと速い程度の敵も、思った以上に速い、になりますもんね。」

緻密とは言えないまでも、悪辣に仕組まれた戦いに、肩を竦める。
じゃ、取ってもらえます? と素直に応じて指を差し出す。

「いやー、………次の試合とか組まれないといいんですけどねー。」

包帯を巻いてもらいながら、苦笑をする女。

グライド > 「其れを判ってて辞めてねぇんだからなぁ…?」

(自分ならとっくに改宗してるか、脱宗している。
金の髪糸に血の色は酷く映える、笑える傷ではない筈なのだが。
この期に及んでも冗談を告げられる精神力には感心しながら
持ち寄せた包帯を、差し出された女の指へと巻いて行こう。)

「断れ。 ……嗚呼、いや、そうか
嬢ちゃんの場合は上からの指示って奴が在る訳だな?
次が在ったら、間違いなく今回よりも更に質が悪い相手になるだろうよ。
此処で負けりゃ、殺されても、犯されても文句は言えねぇ。
……其れで良いのか、嬢ちゃんはよ。」

(鎧を着けながらでも、器用に包帯は巻かれて行く。
真っすぐの形に指を固定するのではなく
最悪、拳を握れる形にして置きながら
――もし次が在った場合、如何するのかと問い)。

シスター・マルレーン > 「まあ、生まれてこの方それしかしてないんで。
 今まで生きてこられたのも恩があるんですよねぇ………。」

汗を浮かべながらも笑って、ダメな人間なんですよねー、なんて、自虐的に笑う。
指に包帯を巻かれながら目を細めれば、ほんの少しの迷いも浮かび。

「そりゃよくないですよ。
 大丈夫、大丈夫。流石に断ります。
 上の指示も、戦って死ね、ではないものですから何とかなりますよ。

 それに、一瞬でぱっと治すことはできませんけど、時間を少しかければ、すぐに動くようになりますからね。」

真剣に伝えてくれる相手に、ふふ、と笑ってウィンク一つ。
ありがとうございます、と穏やかに言葉をかけて。

「だからこそ、ちょっと意地を張ったんです。
 弱っていると見られたら、それこそ帰り際に後ろからがつーん、ってこともありますし。」

教会以外に帰る場所も無い女。
弱った姿を見せれば食われるだけの女。
明るく笑いながら、自然体のように見える究極の強がり。

「ですから、あそこで抱きかかえられてたら危なかったですねー。
 ここだとばかりに帰りの馬車で待ち構えられてたでしょーし。」

あはは、と乾いた笑顔と遠い目で、冗談っぽく言葉を連ねる。

グライド > 「嬢ちゃんが其れで良いんなら構わねぇがよ
其の論じゃ、生きてる内は恩を返し切れねぇぜ?」

(己には、恩、と言う物に縛られる生き方に見える
無論、其れを女が良しとするならば、己が口を出すべきでは無いだろう
だが、もしわずかでも迷いが在るのならば
其れこそ、考えてみるべきではないかと、外野としては感じる物だ。

巻いて居た包帯を、留め具を使って手首の辺りで固定する
多少は固定に余裕を持たせたが、出来れば暫く動かさぬ方が良いのは当然
そんな中で、また、相変わらず笑い飛ばそうとする女の顔を眺めれば
やれやれ、と、肩を竦めて。)

「――……まぁ、んなこったろうと思ったさ。
体面は保てたろうが、無茶しやがるぜ…
どっちにしたって、其のザマで襲われりゃひとたまりもねぇだろうが。
案外、抱えられてりゃ余計な虫は払えたかも知れんぜ?」

(くつくつと、冗句めいて告げながら、余った包帯をテーブルに置く
ふと、遠くの方から観客の歓声が聞こえてきた
次の決闘か、或いは見世物でも始まったのだろう
変に暴動なぞになって居ないだけ、運が良かったと言う所だ
これがもし、女の順が最後で在ったら、随分洒落にならなかった筈で)。

シスター・マルレーン > 「そりゃ困りましたね。
 まあ、正しい方向できっと人を救うこともできるはず、なんですけど、ね。
 私はもうちょっと強くなって、もうちょっとお金も持って。
 人を救うなんておこがましい話ですけど、ね。」

なんて、にへ、と笑う。
人を救う、その助けになる、そんな生き方には迷いはない。
あるとするならば、思い通りには行かないことだけだ。

「ですから、ちゃーんと考えて、二つ名は訂正せずに残してるんですよ。
 尾ひれっていろいろ勝手につきますからね。
 おかげさまで怖がられるようにはなりまして。

 今日だって、ゴーレムとのエキシビジョンだからOK出したんです。
 闘技場と銘打って、メインイベントがエキシビジョンでは締まらないですからね。」

なんて、清楚に見えて頭は回るようで。見た目だけ清楚。

「………とりあえず、代えの手袋を……と。」

しゅるりと白手袋を身につければ、……見た目上は、何事もなかったかのよう。
まだ痛むのか、少しだけ手袋をつける所作はゆったりと。

「………それにしても、改めてありがとうございました。
 スマートに負けようとは思ってましたけど、それやると2、3本は骨を持ってかれる覚悟はしてたので。」

グライド > 「―――――なら、強くならねぇとってのは間違いねぇな。
俺様も宗教ってのの専門家って訳じゃねぇし
その目標?が叶うと良いんだがな。」

(救う、と言う信念が宗教由来では無く
そもそもこの女自身の根底にある物だと言うなら
其れは確かに、宗教を抜きにしても尊いもので、行いだろう
ただ、其の生き方は茨の道だと言う事もまた事実

其れこそ、骨を何本折っても、命が幾つ在っても足りないと思えそうな。)

「らしいな、血塗れ修道女だの、鉄拳聖女だの好き放題聞いたぜ
実際、其の腕っぷしがありゃあ別に誇大広告でも無さそうだが。
流石に、アレは罠に嵌めて来たしか思えねぇ。
……ゴーレムの調整なんてのは、建前って可能性も有るぜ。」

(それくらいに、調整、にしては余りにも容赦の無い攻撃だった。
礼を述べられれば、ゆるりと首を横に振り。)

「言ったぜ、勝負なら止めなかったってな。
偶々、見かけたから通り掛っただけだ、気にすんな。」

シスター・マルレーン > 「叶うといいんですけどね。」

えへへ、と笑う女。夢は小さく自分の教会。
田舎に一つ構えて、孤児院でも隣に置いて。
ああ、それは遠くなってしまった気もしますけれど。
僅かな寂しさを瞳に湛えつつも、それでも、次の瞬間には明るく前向きなシスターです。

「あー、やっぱりそうなんですかね。
 有名になったってことでしょうかね。」

とほほ、と頬を少しかく仕草だけをした上で、ちょっとだけおどけて冗談まで口にする。
実際は、ちょっとだけダメージはある。
身体では無くて心の方。

「では、そのお言葉をありがたく?
 ふふ、信心深い方に助けて頂きました。」

ウィンクをもう一つして……こほん、と咳を一つ二つ。

グライド > 「ま、其処はなる様にしかならねぇからな。
諦めなきゃ、何時までも追いかけてられるだろうがよ。」

(何処まで夢を持ち続けていられるかは、人其々だ
どれだけ遠ざかろうが、諦めなければ挑戦し続ける事は出来る
例え叶わなかったとて、其処に何かが残る事も在るだろう。
人間とは、そうやって生きた証を残すものだ。

――ふと、再び兜を被り直す。
顔も、表情も兜に隠れて見えなくなり
代わりに響く声は。)

「信心なんて高尚なもんは持っちゃいねぇが
『競技』だってのに騙し討ちみてぇなやり口が気に入らなかったんでな。
……クク、素手でゴーレムぶん殴ってた奴と同一人物とはなぁ?
何ならついでに口説きの一つでも入れてぇ所だが、罰が当たっちまうかね」

(告げて、そして
其の儘入口の方へと歩めば、閉じられた控室の扉へと、手を掛けて。)

「―――だから、認めて貰った信心深さついでにだ
多少マシになるまで、護衛にでも付いて遣る
そんだけ名前が売れてりゃ、一人くらい張り付いてても怪しみはねぇだろうさ」。

シスター・マルレーン > 「どうでしょうね、時々で変わるものですから。
 なるようにしかならないですよねー。」

ん、っと伸びをする。身体の節々がズキズキと痛むが、まあそれはそれ。
穏やかな夢を持てば同時に、この国の現状が目の前に広がる。
ここを放って、一人田舎で静かに暮らすことが本当に正しいのか。
そうやって自分で自分を責めれば、夢を追いかける、とは口にせずに、なんとも間の抜けた緩い鸚鵡返しを口にする女。

「なんのことだか分からないですねー!
 いやー、分からないですねー!」

堂々と言いながら、血染めの棍を手に取って、肩を竦め。

「それはありがたい話です。
 そうそう長らく引き回すわけにも行きません。

 それこそ、次の"指示"が来ないうちに、さっさと馬車に乗って帰ると致しましょうか。
 では、馬車までのエスコートをお願いしてもよろしいですか?」

流石に、無償で護衛を延々と頼むわけにもいかない。
それを素直に受けることができるほど、彼女は腹も座っていないし、顔の素肌も分厚くない。まだ若いはずだ。
なんて、てへ、と舌を出し、馬車までの案内をお願いすることにしましょう。

「1晩寝れば、もう1戦くらいできますよ。」

なんて嘯く女。控室の扉を開けば、弱みはその笑顔の隙間からも見えない。

グライド > 「根性だけはホント、一人前以上なんだがなぁ…?」

(たとえ骨が折れようが、きっと女は何も変わらなかった筈だ
膝が折れんばかりの蹴りを叩き込まれずに済んでいる今
負傷中の女を放って去るのも寝覚めが悪い。
其れこそ、負傷の程度を見極められて、変な勝負が降りかからぬうちに
競技の実力者につく護衛の如く、その後ろにぴたりと付き従えば。)

「せめて一日くらいは、大人しくしてやがれってんだよ。
骨がくっつかなくて、拳が握れなくなっちまっても知らねぇぜ?」

(其れが馬車までの道のりだけであったとしても、構うまい
せめて、帰り道が無事に過ごせるならば、束の間の平穏を癒しに充てる位は許される筈だ
控室の扉を開き、今度は女の後ろではなく、隣に添いながら歩けば
護衛の名の如くに、其の武装を構えながらに、其の役割を、果たす筈で――)

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からシスター・マルレーンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からグライドさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 『この街で尤も猥雑と嗜虐に満ちた場所』と侮蔑を向けられる場所、闘技場。
その評判を今日も裏切る事はなく、今日も多くの試合において陵辱や蹂躙が繰り広げられた。
そして、今宵の最終試合は、

『アケローン闘技場今日の最終試合は――クレス・ローベルクのランダムマッチです!』

おおおお、という歓声と共に現れる、青い闘牛士服の優男。
やや整った顔、それなりに上等な剣技、幅広い対戦相手の異能に対応する機転、そしてこの闘技場の剣闘士らしい性欲と性技。
負けても勝ってもそれなりにスッキリする、という点で、男はこの試合場では人気の剣闘士である。

『対戦相手はクジによる抽選!上手い事すれば奴隷相手にお楽しみもありえますが、まあ何かこの剣闘士クジ運凄く悪いんで、今日も魔族とか筋肉達磨じゃないですかね!』

「おい、不吉な事言うなよ!此処最近ずっとそんなもんだけど、言っていい事実と悪い事実があるだろ!?」

ははは、と笑う観客。笑い専用のサクラの声の方が多いが。
こういうのも含めて演出だ。
ピエロ役になることで、こちらが殴られても『いい気味』と思わせる。
しかし、いつまでもピエロではいられない。青い闘牛士服の男は、腰に差す二本の剣の内一本を抜き、対戦相手を待つ。

『さあ、それではお相手の準備も整いました。
今日のお相手は――こちらっ!』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」に識海・L・七空さんが現れました。
識海・L・七空 > 選手入場用の分厚い扉が開かれる。
すると割と通りのよい女の声が通路の奥から聞こえてくる。

「だから言ってるだろう?キミらが私に何を期待しいているかは知らないが余り盛り上がる見世物にはならないと。第一私は荒事が得意でない上に好きではないのだと。まぁ、忌々しいが【奴】の手回しだというから協力はするが。装備?重いだけだ、このままで問題は無いだろう?」

気だるげな声の主が歩を進める足音はやがて明瞭になり開け放たれた扉から姿を表したのは白衣の少女…少なくとも観客にはそう見えているのだろう、会場を覆っていた熱気が一転どよめきに変わる。


『えー、彼女の情報が今放送席に入ってきました。細かいことを省略するとこの闘技場のスポンサーの一人の貴族から売られた…もとい推薦された一般参加の選手の様です。』

「やぁ、クレス君。こんなところで出会うなんて奇遇だね?と言いたいところだけどキミにとっては此処がホームグラウンドなのかな?」

正規の剣闘士と小柄な一般人である少女が向かい合って立っている。
観客も次第にそれが何を意味しているかを理解し盛大なクレスコールが沸き起こり映像を記録するための魔導機械を用意し出す輩まで出る始末だ。

彼らの無言の圧が会場に満ちていくのは言うまでもないだろう要するに【早く凌辱ショーを見せろ】と言うことだろう。

クレス・ローベルク > 「ありゃ?」

扉から現れたのは知り合いだった。
と言っても、嘗てバーで少し話しただけの間柄だが、これは意外であった。
周囲は歓声を上げている。まあ当然と言えるだろう。
何せ、相手はただの(見た目は)少女であり、とても勝てるものでは無さそうなのだし。

「確かに、君が来たのは意外だった。
ただまあ、ホームグラウンドなのは確かだし、だからこそお互い退けるもんでもない。だから、」

悪いけど、見世物になってくれと少し申し訳無さそうに苦笑い。
剣を持つ右と反対の手で腰のホルスターから媚薬注入器を引き抜く。
一度目は身体が多少敏感になるだけだが、二度目は発情、三度目は通常、意志ではどうにもならない程の発情を与える、媚薬を打ち込むものだ。

「その代わりと言っちゃなんだが、何時も女性相手にやってるハンデはあげよう。
一撃目は君が打ち込んでくると良い。
その間、こちらは攻撃をしない。まあ、回避とかカウンターはするけど」

そう言って、剣を刃で身体を隠すように構える。
攻撃を打ち払い、左の手で媚薬を打ち込む何時もの型だ。

識海・L・七空 > 「あぁ、そうだね。キミには此処での立場も、幾分の地位もあるのだろう。此処がどんなところで観客が何を求めているかも理解しているつもりだ。まぁ、どう転ぶことになっても楽しませてくれるのだろう?であれば暫し運動不足の解消にでもつきあってもらうとしよう。」

軽く身体をほぐしつかつかと闘技場の中央へ歩き、足を止める。「いつでもどうぞ」と開始を促すつもりが先んじて先手を譲ると言われそれならばと再び口を開く。

「待ってくれると言うならやりたい放題させてもらうよ?怨まないでくれよ?」

胸元に手を当て呼び出すのは彼女の背丈より少し短い蒼き錫杖。
それの顕現と同時に辺りに濃密で強大な魔力が沸き起こる。
そして、彼女は一つ一つ言葉を紡ぎ下準備に掛かった。

「【痛覚軽減】【耐毒付与】【耐麻痺付与】【耐幻覚付与】【斬撃耐性】【打撃耐性】【刺突耐性】【鋭敏感覚】【思考高速化】【柔軟性向上】【俊敏強化】【リジェネレイト】【リジェネレイト改】【リジェネレイト極】【セルフリザレクト】【セルフバーニング】【精神力限界突破】【筋力増強】【筋力増強】【筋力増強】」

1つ唱える毎に彼女の纏う気が、圧が加速度的に増していきすべてが終わる頃には見た目こそ変わらないものの遠目に見るだけで化物じみた存在であることが容易く解る事だろう。
クレスに知る由は無いのだが、【薬物完全耐性】の魔術を使わなかったのは彼女なりに彼の見せ場を奪わないためだろう。なんせ、彼女は何度か彼の試合を見たことがあり手口を知っているのだから。

「好き勝手やった後に聞くのも意地が悪いことだけど、本当に私から仕掛けても良いのかな?」

相変わらず表情の変化が読み取りづらい、しかしその声音は上機嫌そのものといった感じに問いかける。

クレス・ローベルク > 勿論、手を出さないと言った以上、自分に強化魔法を掛けまくるのは想定している。
想定しては居るのだが、しかしその量が異常だ。
各種物理耐性に思考速度上昇、筋力増強に至っては三倍掛けだ。

「う、うわあ」

流石にこれは苦笑いするしか無い。
元々、魔術師だというのは解っていたが、まさか此処までだとは。
とはいえ、勿論観客の前で言った事を翻す訳には行かない。
負けるのは良いが、観客の期待を裏切るのは職務放棄である――というのは、男の信念で、悪癖でもある。

「勿論。君のやりたいようにやればいい」

流石に、何時もの余裕のある笑みとは行かないが、何とか笑みは保ちつつ。
眼に魔力を通し、魔力の流れを見る。
男の魔術妨害術、『邪魔眼』を使うための前準備だ。
戦闘をしながら、相手の魔力の流れを解析、その術式を破壊するのが狙いだ。

「(どれだけ彼女の攻撃を躱しながら、時間を稼ぐか。それが、勝負になるだろうな――)」

そんな風に、戦いの流れを組み立てながら。
男は、彼女の攻撃を迎撃しにかかる。
最初はカウンターはしない。物理攻撃ならばその攻撃を受け止め、魔術攻撃ならば回避する心算だ。

識海・L・七空 > 「あぁ、別段警戒するほどの事はしてないよ、逆に此処までやって漸くまともにやりあえる程度にしかならないくらいには荒事は苦手なんだよ。相手が魔物とかなら魔術1つでどうにでも殲滅出来るけどそれを此処でやると観客に張られてる魔術防壁ぶち抜いて死者が出てしまうしね。」

様の済んだ錫杖の顕現が解かれ再び完全な非武装となった彼女は殴るでも蹴るでもなく、更に駆け寄るでも飛び掛かるでもなく歩いて組み付きに行った。
無論彼女はクレスの手札に媚薬があることも勿論解っている。
暗に此方は好き勝手やるからそっちも好き勝手すれば良いと言う事なのだろう。

クレス・ローベルク > 「まあ、だろうとは思ったけど。それは何というか、ご協力有難うございますというか……っと!」

組み付こうとした彼女の手を、剣を離した右手で取る。
剣は二本あるし、斬撃耐性を得ている彼女相手では盾以上の意味はない。
そして、取った瞬間に身体を半回転させその勢いで腕を引く。

「いーっぽん背負いっ!」

筋力が幾らあろうが、その身体はあくまでも子供のものである。
体重が軽い以上、軽々と投げられるだろうと、そういう読み。
勿論、それだけでは済まさない。投げた直後に腕を首にかけ、身体を拘束。
その後は足を絡めて開脚させるつもりだが……?

識海・L・七空 > 「カウンターを更にカウンターで返したとしたら、少しは焦ってみてくれるのかな?」

腕を取られ半ば背負われた体制の最中悪戯っぽい声でそんなことをクレスに耳打ちする。

投げに合わせて自身も地面を思い切り蹴る、投げられたエネルギーと自身が蹴り出したエネルギー。更に自重と落下に掛かる重力の全てを利用し更に身体を一回転させ捻る。

「そーれっ!と。」

クレスの背の上を転がるような動きで地に足を降ろす。勢いを殺さぬどころか最初の投げの数倍に膨れ上がったエネルギーは体格差を考慮したとしてもクレスを地に投げ転がすには十分なものだろう。巧く投げから抜けられなければ、の話ではあるのだが。

クレス・ローベルク > 「しまっ……!」

ぐるん、と自分の体が回る。
相手が自分の力に地面を蹴った力を加算させ、逆に投げ飛ばしたのだ。
腕を掴んでいるのはこちらだが、こうなればどっちが掴んでいるのかは実質意味を失う。

「しょうがない、なっ!」

腕を離し、勢いを利用して、投げ飛ばされる。
本来は、地面に叩きつけられるはずだったが、腕を離した事で身体が宙に浮き、受け身を取る余裕ができた。
腕で地面を手繰る様にして、身体を前転させてそのまま立つ。

「荒事は苦手って言ってたと思うんだけどね」

と苦笑い。苦手などとんでもない、達人さながらの投げであった。
とはいえ、相手の力量の高さを嘆いても仕方ない。
たん、と地面を蹴り、ラピスとの距離を詰める。
そして、勢いそのままに前蹴り。
苦手との自己申告のある、物理戦闘で隙を作る作戦である。

識海・L・七空 > 「苦手だし嫌いだよ…。怪我なんてしたらゆっくりと読書もできないし。まぁ、それと出来る出来ないは又別問題ってだけで。


ペロっと舌を出し軽口を叩く彼女は投げ出されても姿勢を戻し見事に着地した相手へにぱちぱちと称賛の拍手を送る。
すかさず距離を詰め蹴り出してくるクレスをどう対処しようかと高速化された思考を巡らせて…

「あぁ、その手があったか。」

そう呟くと何故か小さな身体を目一杯広げクレスと抱き止める体勢になる。
仮に1つのミスリードが存在しているとしたらクレスは彼女がこの試合中に攻撃手段として魔術を用いないと思っているだろうか。

最初の強化魔術の群れのなかにこんなものがあった。

【セルフバーニング】

仕掛けてから任意、又は設定した起動条件を満たすまではなんの効力も無い魔術、ディレイスペル。

今回のこれは彼女が任意で起動する、もしくは相手と密着した状態で数秒が経つと発動する。彼女を中心とした火柱が足元から巻き起こる物だ。

つまり今クレスは七空という対人地雷に自分から蹴り掛かっている状態と言うわけだ。
無論、クレスの蹴りが打撃耐性を挟んで尚彼女を弾き飛ばすような強烈な物であるならば杞憂だが、そうでないなら彼女に抱き付かれ少々熱い目に遇うことだろう。

クレス・ローベルク > 今も尚、魔力の流れの解析は続いている。
普通、魔術を解析する時は、その術者から離れるのが定石だ。
だが、男はそれはしない。
それは、勿論動きのない試合を見せる訳には行かないという理由からだが、それはそれだけではなく――

                ○

ともあれ、知らぬこととは言え、男の動きは軽率と言えるものだろう。
セルフバーニングという呪文を、『身体の内燃機関の強化』だと読み違えていたという事もある。
そして、その勘違いに気付いたのは、彼女が自ら手を広げ抱きとめる様な体勢を取ってからだった。

「まずっ……い!」

当然だが、男の身体能力はあくまでも人間並である。
鍛えてあるとはいえ、流石に打撃耐性ごと弾き飛ばす程の力があるわけではない。
当然、いとも簡単に抱きつかれ――

識海・L・七空 > 「はーい、つーかまーえたー。チキチキ☆真冬の我慢比べ大会でーす。」

クレスを抱き止める事には成功したとは言えその衝撃を全て受け切る事は出来ず、クレスに抱き付いたまま二人で倒れた。という構図が出来上がる。そして間の抜けた事を言い出すと同時に彼女の仕組んだ魔術のカウントが0になる。

刹那床一面に魔方陣が展開され巨大な火柱が立ち上ぼり天を焦がす。
とは言え見た目の派手さほどの威力は無く精々が滅茶苦茶熱い!と泣き言を漏らす程度の物だ。彼女が我慢大会と銘打ったのはそれに加えてこの術は使用者自身も普通に熱いと言うポンコツ性能の物だからである(無論使用者に全く無害な上に相手を軽く消し炭にするような調整も可能なのだが。)

「クレス君、私はそろそろ荒事に飽きたし観客を沸かせるような武人でもない。だからお互いに楽しもうではないか。」

抱き付きを解き術を解くと同時に直ぐ様距離を取る。その際にクレスのベルトに取り付けられていたホルスターをまさぐって居たようだが果たして…。

クレス・ローベルク > 「ぐ、ぐううううう……!」

熱い。
洒落にならない程熱い。
その状況でも目を開けはしないが、しかし他にどうしようもない。
なすがままにやられ、そして魔術師相手に距離さえも取られる。
観客達もブーイングを放ち始める――
だが、その表情は苦痛ではなかった。

「ああ、そうだね。楽しもう」

それは、笑み。勝利を確信した、笑みだった。

「だが、俺は我儘な男なんでね。
悪いけど、素のままの君を堪能させてもらうとしよう」

次の瞬間。
彼女に流れる強化魔法の魔力の流れが、かき乱される。
ある流れは力が発揮できないほどに分断され、ある流れは魔力同士が反発し、ある流れは無駄に体外に放出されるように、魔力のルートを変更されてしまっている。
そう、此処に来てようやく、男の『邪魔眼』が効果を発揮したのだ。

今まで、何のためにされるがままだったのは、君の強化魔法が発揮されるタイミングを作って、その効果を直接確認するため。
そう、ミスリードというのなら、男もまた、ミスリードをしていたのだ。
物理戦闘ではなく、まさかの魔術師に魔術戦を挑むというミスリード。
当然、彼女ほどの魔術師ならば、魔力の流れを取り戻すなり、詠唱をし直すなり幾らでも方法はあるだろうが――

「流石に二度は待ってはあげないよ、てね!」

剣を引き抜き、彼女に迫る男。
最早、物理耐性は通じない。
尤も、男も別に彼女を切り捨てようというつもりはない。
魔剣の力で、彼女の服しか切れない様にしている。
だから、この攻撃は、

「反撃の狼煙、ってやつだよ、ラピスちゃん!」

識海・L・七空 > 「なーるほど。さっきから妙な視線を感じると思ったのはこれか。確かに魔力に一にも二にも魔力に依存する魔術師にはこの手の細工は良く刺さる。でーもね。」

身体中の魔力が制御を失い掛けられていた術は全て役目を終え霧散する。どんなに優れた魔術師でも対処を誤れば致命傷となる、魔力に干渉するとはそう言うことだ。
ただ1つ、彼女が魔術師ではないと言うことを覗けば。

「残念だけど時間は貰うよ?最低限これだけはやらないと犠牲が出ちゃうからね。おいで、【メビウス】」

時が歪む、観客が、相対するクレスが、闘技場の上空を飛ぶ鳥ですら引き延ばされた時間に囚われ世界がスローモーションに流れる。その真っ只中で、七空のみがなんの制約も受けずに動き出す。

「多分この距離なら私がこれからナニをするかはハッキリと見えるだろうけど。余り口外はしないでくれると助かるよ。」

歪みの中心である七空の近くに居たクレスは殆ど動けずとも意識ははっきりとしているだろう。逆に観客や実況は何かが起こったことすら認識できないのだろう。

「ラピスラズリ、魔導書の一時凍結。」

最初に扱っていた錫杖を顕現させ彼女の内に眠る数多の魔導書の機能を一時的に封印していく。自身が魔力を失い制御が効かなくなればそれらはここら一帯を瞬時に焦土に変えるほどの暴走を起こす危険性があるからだ。

「凍結完了、魔力の体外排出。」

彼女の頭と臀部にミレー族のそれと見紛う犬耳、尻尾が現れ彼女の体内に燻っている制御の及ばなくなった魔力を周囲に廃棄し始める。

「時間を操ってる内に体勢を整えるなんてズルはしないからさ、時間の流れが戻ったあとも変わらずに向かってきてくれて構わないよ。」

全ての魔力を排除し空っぽになった自分の内へと魔導書や錫杖を取り込み、時間に介入した瞬間に立っていた位置へと戻る。
このまま時間の流れはもとに戻り、変わらずにクレスが七空に斬りかかる瞬間だろう。
そして、きっと彼女はその斬激を無抵抗に受け衆目に裸体を晒すだろう。
試合に水を差した詫びと言うのもあるのだろうが、そもそも魔力を乱された彼女が禁じ手を使わずに回避する手段が無かった。
と言うこともあるのだろう。

そして衣服を切り裂かれた彼女はこう軽口を叩いて笑うだろう。

「身を守る術がなくなってしまった私はこれからどんな目に遇わされてしまうのでしょうか?」と。

クレス・ローベルク > 体のすべてが、急に静止した。
一瞬、石化の魔法を食らったのか、と思った。
しかし、そうでないのは少しして解る。
自分は動けないのではない、ただ、動きが極端にゆっくりになっているだけだ。
それでいて、身体に重さを感じない。

「(時間操作……!?)」

不老であるのは知っていたが、時間に手を掛けるには、それだけでは足りない。
しかし、人外ではない――彼女は完全に人間の特徴を備えている。
完全に、男の知識の埒外にある存在だ。
だが、それに対する感情は、恐怖ではなく、純粋な

「(勝てなかったかあ――)」

試合ではなく、勝負に負けた事への、純粋な悔しさ。
無論、試合にさえ勝てれば、男はそれで十全だ。
だから、悔しさを浮かべたのはほんの一瞬。
直ぐに、笑みを取り戻し、

「さあ、皆様お待たせしました!これからが本番ですよってね!」

剣が煌めき、服が切り裂かれる。
アンダーシャツの胸部の布地は切り裂かれ晒され、、下も布地を扇情的なカタチにカットされる。
それでいて白衣や眼鏡にはノータッチなのが、男なりのこだわりと言えるか。

「んで、まずは一応試合を終わらせないといけないから……」

左手で、強引に彼女を押し倒す。
頭を打たないように、右腕を彼女の頭と地面の間に敷いて、である。
その上で、左手で彼女の首に刃をかけるように剣を置いて、

「……一応聞くが、まだやるかい?」

と。
何ともこれから少女を犯す、悪役らしい、嫌らしい笑みで聞くのだった。

識海・L・七空 > 「んー?なぁーに勝ち誇ってるんですか?勝手に終わらせないで下さいよ。試合を終わらせて次に進めるのは【勝者】ですよ?」

首筋に刃を突き付けられ、きっと普通は【降参】を選択するのだろう。
だが彼女はニヤリと笑いクレスにのみ聞こえる声でそう言った。
押し倒し、支え、もう片方の手で刃を握るクレスの体勢では視界外にあるであろう彼女の手。
其処には先程抱き付いたときにクレスのホルスターから掠め取った【試練の媚薬】が3本握られていた、否。その3本の薬瓶は既に纏めてクレスの太腿に突き立てられていた。

「まぁ、【勝ち】と言うには我が儘ですがこれで引き分けくらいにはなるんじゃないかな?ク レ ス 君 ?」

どのみちこの後はどう転んでも観客が心待ちにしている淫靡なショーだ。ならば少しくらい主導権を握っても構わないだろうと。

クレス・ローベルク > 突き立てられた媚薬が、男の中に入っていく。
どくん、と心臓が高鳴る。脳内がピンク色の靄に霞んでいく。
自身で使う場合、精々二回だけ。そして、この薬は三回目で致命的になる。
意思の力で、発情をこらえることが、できなくなる。

「……」

――所で。
クレス・ローベルクは剣闘士の中では、非常に『紳士的な』剣闘士である。
愛撫無しで挿入する事はまずないし、あるとしたら試練の媚薬を使って先に膣内を濡らしてからの挿入。これは、男が女性の『可愛い所』を見たいという欲求からの行動である。
では、此処でクエスチョン。そんな彼が、『意思で保てないほど発情』したらどうなるのか。

「……かわいいなあ」

開口一番、呟いたのはそんな言葉。
でも、実際彼女は可愛い。常に怜悧な表情だが、子供特有のあどけなさもあって。
何より、ちゃんとこっちを気遣ってくれる所が可愛い。それでいて、こちらを翻弄してくるのもかわいい。

ああ、可愛い子が生意気な笑顔をしている。
でも、かわいい。かわいい。とってもかわいい。
もっとかわいいかおをみたい。

男は、加減など一切ない力で、彼女を抱き寄せ、強引に唇を奪う。
ねっとりとした舌使いで、彼女の口を堪能する。
その間、まるで彼女の全身を味わいたいというように、彼女の尻をこねくり回しながら。

識海・L・七空 > 「そうでしょう?私は可愛いですからね。んちゅっ。」

流石に痛覚軽減等の補助無しで体格差のある相手(彼女の事情的にはほぼ全ての相手が体格差のある相手なのだが。)が本能に任せて抱きに来た場合多少の苦痛は生じる。
だからとて火の点いた彼女の性欲からしてみればそれすら1種の快楽要素でしかないのだが。

口内に無理やり押し入ってきたクレスの舌に自分の舌を絡ませ丹念に互いの唾液を混ぜ合わせる。
更には行為をしっかり目に焼き付けようと食い入るように見つめていた観客達に視線を投げあまつさえピースまでして見せる程度にはまだまだ余裕のようだ。

(流石にご無沙汰だったぶん私のスイッチが入るのも早いですねぇ。強化無しで最後まで体力が持つでしょうか…。)

クレス・ローベルク > 貪るような、それでいて何かを確かめるようなキス。
その中で、男の手が、彼女の身体を這い回る。
尻、腹、背中、首筋、鼠径部、それから性器まで。
まるで、芸術品を愛でるようなフェザータッチ。
彼女の一本線のようなクレヴァスも、柔らかな、それでいて張りのある尻も、小さな背中も、細い首筋も、全部が愛おしいとばかりに。

だが、それは闇雲にやっているのではない。
もどかしさを与えつつ、彼女の反応を見て、弱い所を探っているのだ。

「(もっと、もっと、だけど、まだがまん)」

そう、まだ我慢だ。
彼女を可愛く『満たして』あげる為には、ゆっくりと彼女の身体を出来上がらせなければならない。
性欲を昂ぶらせられた者では考えられない行動だが、しかし男にと取ってはこれこそが本能。

「すき、ちゅるるる、すきぃ……」

まるで、甘えるように、それでいて、愛玩するように抱きしめながら。
彼女に、貪るようなキスと、優しすぎる愛撫を与えていく。

識海・L・七空 > 「よしよし~いいこいいこー。」

いつの間にか状態を起こして座って向かい合う形になった。目一杯腕を伸ばして頭を撫でる。
自分の身体がクレスの前戯で昂って行くのを感じながらも焦って事を進めることはしない。
目一杯甘やかしドロドロになるまで骨抜きにしてしまってからが本番だと自分に言い聞かせて、ともすれば焦れったくも思えるようなその行為は続いていく。