2019/07/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
■クレス・ローベルク > 平日昼の闘技場は、闘技場のイメージと比べるとかなり空席が目立つ。
メイン層である下流・中流労働者の殆どが、仕事に出ているからだ。
それでも、この時間帯に試合をやるのは――
「(この時間帯だからこその客が来るから、だよな)」
ちらりと見れば、客の中に幾人か、身なりの良い人間が混じっている。
彼等は、所謂お偉いさんという奴なのだろう――こういう場所に行きたいとは思っているが、あまりそれを知られたくない。
故に、人が来づらいこの時間帯に来ている、と。
『さあ、それでは始まりました!アケローン闘技場、興行試合昼の部、始めさせていただきたいと思います!』
そんな事を思っていると、アナウンスが試合の開始を告げる。
意識を切り替え、試合に集中。
『今日の挑戦者は――』
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にハーティリアさんが現れました。
■ハーティリア > 『今日の挑戦者は、外部参加の魔術師兼…花売り? ハーティリア選手!』
と、声をかけられて出てきたのは…美女めいた風貌…人によっては「絶世の」とつけるかもしれない…の魔術師。
明らかに鉄ではない煌きの金属の柄で出来た箒を片手に現れ、慣れた風に観客にヒラヒラと手を振ってサービスめいた仕草をする体は、日に焼けると真っ赤になりそうなほど白く…肉感的な肢体。
それを切れ込みの深い、どちらかというと娼婦じみた装いの貫頭衣で包むようにまとって現れて。
「なはは…まさか暇潰しに登録したけど、マジで出ることになるたぁ思わなかった。…まぁ、いいか。」
風貌とはズレた、少し雑把な口調で長い髪を弄りながら苦笑いと共に、舞台へと上がる。
■クレス・ローベルク > 「"魔術兼花売り"……ねえ」
もう何か、その前置きで大分嫌な予感がする。
というか、前にそれで割と酷い目に遭った。
そして、実際の所。
感じられる魔力の量は、今まで遭った人間・魔族の中でも五指に入るもので。
「(あーこれは今日が俺の命日かもなー)」
とはいえ、対戦相手に弱みを見せる訳にはいかない。
にこり、と笑みを浮かべ、
「まあ、暇は存分に潰せると約束するよ。その後、どうなるかまでは保証しないけど」
そう言って、剣を抜く。
一応、剣にかかっている、『生体に対する斬撃無効』の魔術はオンにしておくが――しかし、それが必要かどうかも解らない。
「さて、それじゃあ、早速始めようか。
女性だったら、先に一撃攻撃してもらってから、試合を始めるんだけど……何か君、骨格で性別わかりにくいんだよね。
一応聞くけど、君女性?」
■ハーティリア > 「ごきげんよう、今日はよろしく頼むわぁ。」
にこりと笑みを浮かべる相手にこちらもゆるりと笑みを浮かべ、クルクルと弄ぶように箒を回し…片手でトン、と構える。
ふわりと、彼が魔力を知覚すると同時に、鼻孔をくすぐる甘い香り…トロリと、意識がとろけそうになるそれは、魔術師が持つ魔力そのものが放つ魅了の香りで。
「んー?男か女か…まあ、今はその間、って感じかねぇ、どうする?
でもまあ、暇を潰させてくれるんだろう?…お先にどうぞ、『手加減してあげるから、死に物狂いで来なさいな?』
…なんて、な。」
挑発というよりは冗談めかすように首を傾げてクツクツと喉を慣らすように笑みを浮かべ、杖の代わりなのだろう箒に、魔力が通していくにつれて、香りはより甘く、濃密に。
「じゃないと、俺から先にぶっぱなすけど…?」
■クレス・ローベルク > 「(クソ、こういう系の魔術師か、ついていない……)」
感知した魔力を通して感じる、甘い香り――それを知覚した瞬間、即座に魔力を感知するのを止める。
殊、魅了系、幻覚系に対する対抗手段を殆ど持たない男にとって、微かな違和感であっても致命傷になりうる。
対魔術師戦において魔力知覚なしはかなりのハンディだが、こればかりは仕方ない。
「いやいや、そういう事なら、遠慮なくぶっ放してくれて構わないさ。
但し……」
次の瞬間、男はハーティリアに肉薄する。
敢えて剣を見せ札にした貫手で狙うのは喉。
声帯を潰し、呪文詠唱を封じる、"魔術師殺し"の技だ。
まるで、出し抜けの攻撃だが、これは男のルールには反していない。
何故ならば、
「"魅了"だって、立派な"攻撃"なんだぜ、お嬢ちゃん!」
■ハーティリア > 「おやひどい、生まれつき持ってるのはどうしようもねぇだろう?」
何か術を付与したわけでもない、単なる体臭のようなものなのに…と拗ねたような仕草をするけども、別段気分を害した風はなく…言葉と共に肉薄した男が、剣で作った死角から突き出す貫手に一瞬目を見開く…が。
「あ、っぶない!」
トン、と跳ねるような、しいて言えばシーフじみた動きでとっさに身を反らし、ピッ!と喉をかすめる貫手に見開いた目を細め…踊るように脚がステップを刻めば、腕めがけて金属製の箒を思い切り振り上げ、打ち下ろさんとする。
ただ、杖(箒)を触媒に自分の体を魔力で外から動かした一撃の速度も勢いは、柄があたった舞台の石畳がバキィッ!と音を立てて粉砕されるという、魔術師と呼ぶには過剰なものであるが。
■クレス・ローベルク > 「(早いっ!)」
可能な限り不意を打ったつもりだが、紙一重で躱された。
だが、相手がわざわざ箒を振り上げてくれたのが幸いした。
振り上げて、振り下ろす2アクションに対し、こちらの回避は1アクションで済むからだ。
振り上げて、振り下ろす瞬間に、男は彼女と身体が触れ合う程の距離まで接近する。
「悪いね、こっちは魔法を使わない戦いが売りだ。
……大体の獲物の対処は、解ってるんだよ」
力がどれだけ強かろうが、関係ない。
振り下ろそうとしても、男の身体が腕に当たってしまい、殆ど威力は発揮できない。
箒での攻撃を諦め、肘打ちなどの近接打撃戦に切り替えるしか無いが――その隙を許す男ではない。
「おお――らっ!」
彼女の首を抱え込む拘束――首相撲からの、膝蹴りをぶちかまそうとする。
当たれば、少なくとも悶絶、下手をすれば嘔吐、気絶も免れぬ一撃だ――人間であれば。
■ハーティリア > 「おぉ…流石、確かにこれじゃ…。」
杖を振るにも魔法を使うにも一苦労する超接近戦、確かにこれは巧いと内心舌を巻く。
相当慣れた手際に愉しげに目を細め…。
「だったらヤろうか…超接近戦(取っ組み合い)。」
相手が首相撲で己の首を拘束するなら…こちらは更に近く…箒をからんと手放し、そのまま相手の背中に腕を回して抱きつくように組み付こうとして…。
甘い匂いと柔らかな肢体、それと相手の鍛えられた体の隙間がなくなるほど密着すれば、相手も膝は使えないだろうと…ただ、密着できてしまえばゾッとするほど冷たい体温が、相手にバレてしまうだろうが、まあ…仕方あるまい、相手が巧すぎた。
まあ、組み付くまでに膝を一発はもらうかもしれないが…痛そうに顔をしかめるが、気絶どころか、嘔吐も悶絶もしない。まあ、そもそも吐く物もないどころか、本来ダメージを受けるはず内蔵が機能していないせいだが。
「ぐふっ…くそ、いってぇ…打撃入れられたのとか、何時ぶりだ…?」
■クレス・ローベルク > 「決まっ、た……!?」
疑問符がつくのは、そのあまりの手応えの無さ故だ。
動けない状態から、思い切り腹を蹴ったのだ。
内蔵を押し潰すに等しい攻撃――だが、相手は痛みを感じていても、それ以上のダメージを全く受けていない。
「(もしかして、"魔術で肉体を強化して"いるんじゃなくて、"魔術で肉体を動かして"いるのか!?)」
二つの意味は、同じなようでいて、決定的に違う。
前者であれば、あくまでも人間の法則で動いているが故、例えば窒息や脳震盪など、人間の弱点が効いてくれる。
だが、後者は――
「(クソ、とにかく、一旦離れ――)」
だが、今度はあちらが早い。
甘い香りと、溶けるような肉体が、こちらに纏わりついてくる。
彼女の考える通り、完全に密着すれば、こちらもまた、手出しはしにくくなる――
「(不味いっ、何をされるか解らないが、何かされるっ!?)」
ならば、と全体重をハーティリアにかけ、押し倒そうとする。
なにかされる前に地面に叩きつければ、多少は妨害になるだろうと。
■ハーティリア > まあ、彼の反応もさもありなん。まさか、こんな白昼堂々と不死者(アンデット)が活動しているなんて、夢にも思わないだろう。
生ける死者、動く屍体…そう言われると、別に腐ったりとかはしてないと慌てて主張するやもしれないが。
「(うーむ、なんか色々と察されてる…勘が良いなぁ、口止めされてくれるかねぇ。)」
ほんとは、遠距離とかで適当に派手な魔法ぶちかまそうかと考えていたが、思いがけず組み付いてしまった…思い切り抱きしめてもいいのだが、まあ…この状況なら淫魔としてヤることは一つだろう。
ただ、全体重をかけ押し倒そうとする彼とは裏腹に…ただ体重をかけるだけでは、不死者の膂力相手ではビクともしない。
甘い香りと人外の膂力で捕らえた彼の耳元に唇を寄せると…いっそ、脳髄が溶けてしまいそうなほど、甘ったるい声音で淫魔の魅了をたっぷりと込めた囁きを……。
『力を抜いて…俺と、遊びましょう…?』
そしてそのまま、唇を奪おうとするが…?
■クレス・ローベルク > 「(クソ、平和ボケのしすぎだ……)」
実家に居た頃であれば、見た瞬間に彼女が人外であると看破できた筈だ。
思い返してみれば、色々と違和感があった――試合開始の合図もないのに、何故か発動していた魅了魔術、余りに中性的過ぎる肉体……。
つまり、相手は、
「淫魔……!」
それも、ただの淫魔ではない。
魔術で肉体を動かす系統の魔術師となれば、恐らくは治療か、死霊系統の魔術師でもある。
だが、それを理解した所で、どうしようもない。
魅了の魔術がかかった声が、脳髄に流し込まれる。
「く……」
意識がとろけそうになる。
今は何とか持ちこたえているが、このままでは不味い。
だが、返しの技はない――相手の膂力はこちらの膂力より上なのだ。
「仕方ない、やりたくは、なかったけど」
やるしか、ない。
男は、手に持った剣を自分の左足に突き刺す――一応、動きに支障がない様にはしたが、それでもかなりの激痛が男に走る。
「お、おおおおおお!」
今度は、渾身の力でハーティリアを突き飛ばす。
激痛も相まった力は、先程の比ではない。
■ハーティリア > 「……おぉ。」
ほとんど正解、レベルまで絞り込まれてちょっと感心したような声が漏れたのは、勘弁してほしい。
正確にはリッチの能力を経た淫魔、だが…まあ、そこまで当てたらそれこそ未来予知レベルだ。正直その方が怖い。
ただ…自分に剣を突き立てたのは予想外にギョッとして、思わず手が緩んでしまったのか。
「のわ、っと……無茶すんなぁ。」
激痛と渾身で己を突き飛ばす彼に、称賛半分呆れ半分の言葉を投げつつも、突き飛ばされた蹈鞴を踏んだ体を立て直しつつ、クイクイと…指が何かを招く仕草をすれば…ヒュンッ、と自分の元に飛んできた箒を手に取り…ニィ、と笑みを浮かべる。
「クレスくん、だっけ?…いやぁ、驚いた…痛みで魅了と拘束を無理やり解くたぁ、剛毅なことするねぃ。これでも並の魅了魔法より強いはずなんだけどなぁ、俺の声…。」
■クレス・ローベルク > 「はぁ……はぁ……っ、と」
突き飛ばして直ぐ、剣を抜く。
血が吹き出るように出るが、問題はない――この戦闘が終わるまでは、保つ範囲だ。
とにかく、それを構えると、そこでようやく、痛みに引きつってはいるが、笑みを取り戻した。
「魅了払いは、実家で叩き込まれたもんでね。
本当はこんな力技じゃなくて、ちゃんと魔術や薬品を使うんだが……そっちを修得する前に、家を出たもんだから」
苦笑いする男。
実際、笑うしか無い、という状況だ。
足は痛めて、相手は無傷。おまけに魔族と来たものだ。
この勝負の勝ち負けという意味でもピンチだが、何よりこれ以上は、観客の身の危険も考えなくてはならない。
「仕方ない、か」
溜息一つつくと、男は声を上げる。
但し、それはハーティリアではなく、上の実況席に向かって、だ。
「『雇用契約に基づく緊急事態時の対応第二項、著しい危険性を有する選手に対する、予防的特権』を使う。
悪いけど、いざという時の観客への避難誘導コミで宜しくお願い」
言うや否や、実況席から、男に向かって何かが投げられる――それは、迷彩色のローブだ。
魔術師なら、それに数え切れぬほどの強化魔術や召喚魔術などがかかっている事が感じ取れるだろうか
男はそれを引っつかむと、手早く羽織った。
「悪いね、本当はこういうのはルール違反なんだけど、君レベルの相手じゃ、こういうのを使わないと勝負にならないからね。
まあ、俺もこれ使うとギャラ貰えないから、許してくれよ」
そう言って、改めて剣を構えた。
「さあ、此処からが、本番だ」
■ハーティリア > 「おぉぅ、なるほど、狩り手かぁ…まさかこんなとこで会うとは思わなんだ。」
うわぁ、痛そう…と眉根を寄せはするものの、生ける死者の内心に大きな動揺はない。
ただこう、思ったより大事になってる様子に、思わず苦い顔をして。
「一応、回りに配慮するくらいの気配りはしてたのに、なんか災害みたいに扱われるのは酷く傷つくわぁ。」
実況席から投げ入れられる迷彩色のローブ…魔力を可視化する瞳に、幾何学の万華鏡かと思うほどの魔術が編み込まれたそれにうわぁ、と思わず声が零れ。
「いやまあ、死に物狂いで来なさいと言った手前文句はいわねぇけど…また、えげつない数の魔術編み込んでんなぁそれ。…なんでローブの形維持できてんの?」
一つ一つを魔法陣に編み直したら、この舞台くらいの規模はありそうな術式の数を編み込んだそれ、魔術同士が干渉して爆発してもおかしくない…正直言って「頭おかしい」レベルのそれを詰め込んだ迷彩色に寒気半分興味半分。
「じゃあ、勝てたら俺がギャラ払ってやるよ……その方がやる気出るだろ?…ここまでお膳立てされたら隠すのも野暮ってもんだし…『端くれでも魔王に単身挑むんだ、ご褒美くらいはあげねぇと、な?』」
そう言って目を細めれば…そっと、彼にだけ聞こえるように周りの空気を魔力で動かし…彼の元にだけ囁きが届く。
「さ、遊ぼうか…『我は魔王、字は砂薔薇、英雄の母…ハーティリア=ベスピア=ハートナイト…月に揺蕩う、夜祖の血を継ぐ者なれば…。』」
己は魔王であると、告げる言葉には意味がある、力と地位を持つものであると、宣告することで『格差』を知らしめることによる一つの結界術。正直、地元では偉かったから!と言い張るようで気乗りはしないのだが…魔力を知覚できる彼であれば、花の花弁めいた、薄い不可視の壁を幾重にもまとったのが、感じられるだろうか…とはいっても一枚一枚の強度自体は、壊すのにそれほど苦労するようなものではない。
■クレス・ローベルク > 「うっせえ!魔族が言う"配慮"は信用出来ないんだよ!平気で観客席壊したり、殺人禁止なのに当たったら死ぬ級の攻撃出してきたりするし!
文句があるなら、闘技場での魔族のマナー向上をお仲間に呼びかけてください!お願いします!!!」
割と真剣な顔でそう叫ぶ男。
魔族の恐ろしさは実家でも叩き込まれたが、闘技場で魔族と戦ってより一層そのイメージは強化された。
尤も、男の運が悪いのか、闘技場で戦った魔族の大半が上位魔族だったりするのも大きな原因だが。
しかし、あちらが名乗れば、こちらもまた居住まいを整える。
卑怯千万が売りの剣闘士とはいえ、それでも仮にも貴族だ。最低限のマナーというものがある。
「……オッケー。生憎、こっちはそんな洒落た名乗りはないし、そもそも家を捨てた人間なんでね。名乗りはしないが……」
こちらも、ローブの裾から魔術破壊術式が編み込まれた鎖を展開する。
本来は隠し玉だが、魔王相手となれば刹那の遅れが致命傷になる。
故に、男は最初から全開のつもりで、
「魔も人もなく相手取る、剣闘士の意地を見せてあげよう!」
言うやいなや、両の裾から出てきた鎖を、猛然と叩きつける。
この鎖は男の意思で幾らでも軌道を変える上、何らかの方法で掴んでも、召喚魔術を解除すれば消え去り、再使用で再び現れる。
その上で、魔術を破壊する性質を持つため、魔力障壁では防ぎきれない……チートとしか言えぬ鎖だ。
しかし、鎖任せにする程、男は呑気ではない。
寧ろ、こちらが本命と言わんばかりの、
「おおおおおお!」
鎖のに少し遅れる形で、男もまた、彼女に肉薄する。
音速に届くレベルの速度で以て接近し、狙うのは腕。
相手が普通に殺すこと叶わぬアンデッドであるならば、まずは動きを封じる。
その上で、彼女の身体を動かしている"魔術"を鎖で砕けば勝ちだ。
「見てろよ実家、放蕩者が、お株を奪うさ!」
■ハーティリア > 「失敬な…って言いたいとこだけど、否定できねぇ。…いや、俺この辺りの魔族連中とあんま親しくないはぐれ者だから、呼びかけはできねぇけども。」
まあ、ゴブリンやオーガとかもまとめて魔族と呼んでるこの辺りのあれこれには一言物申したい気分も無くもないが、彼の言い分も千年近く人間に混ざって暮らしてた自分には十分伝わる。
「でも、闘技場は俺も正直デッドオアアライブだと思ってた。そっか、殺したら駄目なのか、その気はなかったけども。」
とかつぶやいてる時点で割と自分もアレなのかも…という気付きはそっと心の奥底にしまう。
今は彼の相手に集中しなければ。
「いいよいいよ、気楽に行こうぜ、ってな……っうわ、またけったいなモンを…っ!」
じゃらりと、ローブの裾から取り出された鎖…術式が見えたのか、ゲェッと眉根を寄せる。
でもまあ、やりようは…なくもない。タン、タタンッと淫魔がステップを刻み始めると、目に見えてその動きのキレがましていく。
刻むリズムとステップがそのまま術になる踊りの魔術…彼の腕を、鎖を…まるで羽毛が指をすり抜けるように紙一重で抜けていき。
『全ての力の源よ 今盟約を解き放つ 魔は魔に 物は物に 来たれ 還れ 破砕せよ……魔具破砕【シャッター】!』
これは一種の興味の実験…魔術破壊の力を持つ鎖に「魔具を破壊する」魔術を叩きつけたらどうなるか…まあ、大体は鎖に込められた魔力と術式に込めた自分の魔力勝負になるだろうが…さてはて。
術式を込めた箒の柄で…薄皮一枚の差で交わしていた鎖を、横薙ぎに術を叩きつけようと。
■クレス・ローベルク > 「くっ……!」
踊る動きに合わせて、こちらも剣を振るう。
肘を狙うすくい切り、肩に叩き込む振り下ろし。
足や腰なども狙い、とにかく動きを生む所要な骨を断とうとする。鎖に至っては、とにかく当たればいいと、威力度外視で振り回してさえいる。
だが、その全てが、
「当たらない……!」
踊るような動きは、全てをすり抜けて無尽の舞を見せる。
こちらは身体能力を上げた上で、全身の急所をのべつ幕なしに狙っているというのに、だ。
しかし、戦慄すべきは、それがただの回避機動ではなく、
「動作魔術か……!ってか、ちょ、何だそのピンポイントな割に致命的なの!?」
一応、この鎖は再生機能もあるが、その再生速度はかなり遅い……しかも、一度消滅させねば再生自体が始まらない。
実際には相手の魔具破壊が破壊される可能性もあるが――賭けになる。こんな序盤で一本目を失う訳にはいかない。
だが、流石に今から鎖を引き戻すのは無理だ。
ならば、
「ええい、持ってけ3000ゴルド……!」
ハーティリアの魔術に合わせて、持っていた剣を鎖の間に噛ませる。
この剣は、場末の魔術師に有料で頼んで掛けてもらった、『衣服のみを切る』というセクハラ魔術のかかった剣だが――一応"魔具"ではある。
剣を失うのは経済的な意味でも痛いが、鎖のトレードオフには変えられない。
「うおお、此処までしたら勝つぞ絶対……!」
魔剣が砕け、それにかばわれた鎖が、彼女の腕を這う。
彼女が身体を動かす魔術にも依るが、魔術を破壊する鎖が這えば、幾ばくか彼女の力も減衰するだろうと、そういう読みだ。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
■ハーティリア > (後日継続)
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からハーティリアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にシュライアさんが現れました。
■シュライア > アケローン闘技場。
日々多数の興行試合が行われ、賑わうそこは、今日も賑わっていた。
『さああああ、今日も始まりました!、今日は予選から実況を開始します!
何故かって!?それは、やべー奴が来たからだ!』
熱狂する実況者。
予選と言えど、小規模ながら賭けが行われることもあるが普段は注目されない。
けれど…珍しい、『女性』が出場しているとなれば注目は集まり
更に、その女性が強いとなれば…興行としては見逃せないだろう
「――――――…」
その注目を集めるのは、木刀を持った、白い仮面の女騎士。
腰に差した直剣を抜く事が許されているにも関わらず、それを抜かずに…下衆なことをしてやろうと迫ってくる男どもを木っ端のように蹴散らしている。
『寡黙な仮面の女ァ!!またもや予選を進んでいく!その肉体を目当てに闘技場の勇士が襲い掛かっていくが、なんだあの怪力はあああ!』
仮面をかぶり、勝利したとしても、誰が相手でも表情を変えず…怒りに満ちた雰囲気で相手を宙に舞わせていく。
…その予選の先、本番の興行試合に待つのは、いったい誰だろうか。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にディールさんが現れました。
■ディール > 本来表舞台に立つ様な人物、いや。魔族ではない。
だが都合悪く目玉となる女性闘士に敵うであろう闘技場側の戦士が居なかった。
治療の為の契約で此処に滞在していた己に、断り難い経路で――女闘士を見世物とすべく、負かして欲しいと依頼を受けてしまった。
――見る限りは魔法などは使う様子が無く、木刀による斬り――というよりは打撃だろうか?
それを駆使していた相手を見れば、溜息1つ。
せめて顔を隠す純白の蝶仮面で目元を隠し、予選最終戦まで体力を温存してから彼女と相対する事になった。
『さて寡黙な仮面の女に相対するのは!こいつも仮面被って何者かわからない白衣の男ぉ!
闘技場のルールで魔法生物のお供を連れているぞぉ!』
司会実況の声は中立とは言い難い物だろう。
魔法生物の正体は伏せられ、ただぐねぐねと動く粘液の塊――ざっとサッカーボール数個分の体積を持つ物が。
己と、彼女の間を遮る様に蠢いていた。
打撃では砕けず、斬撃でも効果は薄いだろうその魔法生物。
当然の様に下衆な仕込みは十分にされている。
よくよく見れば、その表面には筒がいくつか浮かび、桃色のカスミを吐き出しているだろう。
「――さて、負けを認めてくれれば俺も面倒な事をせずに済むが。お前も悪くない思いが出来る。降参するか?」
■シュライア > 「―――…」
本選に入ったらしく、毛色が違う相手。
ただし、仮面をかぶっていたとしても、自分が求めている相手とは違うとわかる。
魔法生物のお供にちらりと目をやり…
「誰が。…私には目的がある。…邪魔をするなら、押し通る」
端的な言葉。
木刀をまだ持ったまま…開始の瞬間、その姿が消える。
息を止め、正体不明の霞を吸い込まないようにしながら、その魔法生物に向けて木刀を振るう。
本気で振り下ろされたその木刀は、並みの魔法生物であれば爆砕させ、核を露出させるであろう一撃だろうが…
■ディール > 木刀と侮れば骨すら砕けるだろうと思っていたが、実物は其れよりさらに凶悪。
木刀が触れた瞬間にスライムの軟体が拉げ、そして重量感ある木刀が切り分けるようにしてスライムをさらに拉げさせ――ボンっ、と軽やかな爆音と共にそのスライムが爆ぜた。
内部に溜め込まれた桃色の霞は――色合いからも。闘技場の性質からも判るように、高濃度の媚薬ガス。
本来はゆっくり吸わせるつもりの物だったが、爆ぜた影響で一度に大量に。そして指向性を持って彼女に噴霧される事になった。
当然、顔全てを覆っている分防護は十分だろうが――。
「目的か。そう言われれば引く訳にもいかんな。依頼主の目もある。
早く、強いが――狙うなら本体のほうではないのか?」
そら――と言葉を続けると。ガスを放出した後にはぜ、分裂したスライムが何事も無かったように集結をはじめる。
四方八方に飛び散ったスライム。だが――逆に其れが仇となったかのように。
彼女の背後から。頭上から。足元に飛び散ったものなどが、彼女を包み込み、取り囲んでしまおうと再集結を始めていく。
狙いはスライムにより包み込みと言う所か。例え逃げようともスライムは追尾していく。彼女の言う『核』に該当するものが、まるで彼女の直ぐ傍に有るかのように。
■シュライア > ばきん、という音と共に、木刀もまた砕け散る。
一撃必殺を狙ったため、武器を壊すつもりで自分の最大の力で打ったらしい。
「っ……」
しかし、いかなる思惑があったのか、スライムを狙ったその手は悪手だった。
彼女は、魔法はあまり使えない。
スライムを焼き切る炎の魔法でも使えればまた別だっただろうが…
媚薬ガスの効果は仮面に阻害されたものの、息を止めること自体は長くは続かない。
纏わりつかれ始めれば、ぐ、ぐ、と足を進めようとする。
普通であれば動けないほどの拘束具合だが…けれど、一歩一歩、召喚主へと近づいていく。
逃げるのではなく、相手を倒す為に。それが彼女の目的なのだろうか。
核については考えていないようで、ただひたすらに、脚を動かして。
「――――…!!」
気合を入れながら…妨害されなければ、進んでいくことは間違いない。
■ディール > ゆっくりと緩慢に。けれどスライムは彼女の身体――関節に撒き付き。
次は細く触手の様に伸びていくスライムが鎧の内側に。或いは仮面の隙間を探すように、首筋や耳の後ろと言った箇所から隙間を探すように這い回る。
ぬらり、ぬらりと這い回る動きはともすれば愛撫の様に。
適度な湿感を伴いながら撫で、舐める舌の様に、だ。
膝関節に巻きついたスライムが、膝を曲げて進む事を阻害していく。
そして脚を広げる――歩む為に前に進んだ時を狙った様にスライムの触手が衣服の上からだが、彼女の肉土手をきつく締め付け
――特殊な金属でなければ溶かしてしまうような粘液を吐き出していく。
「執念は見事だな。俺が騎士であればその執念は賞賛する所だが。
生憎と俺は正義の味方でも騎士でもない。」
動きをスライムに阻害させながら。もし仮面の隙間から触手の先端が入り込む事が有れば、ガスを絶え間なく吹きつけ――だけではなかった。
仮面の内側にびっしりとスライムが張り付き、どこかで嗅いだ事が有るかも知れない。
饐えた、男の苦い精の臭いが漂う事になるだろう。
――言葉をつむいだ己は、そのまま戦士に比べれば幾分遅く。
彼女から距離を取る様に離れる。それだけで良い。
彼女の木刀は砕け散り、魔法を使う様子もない。ならばスライムに無力化させるまで、無理に彼女と腕力や戦闘技術を競う意味も無いのだ。
衣服を徐々に溶かし、仮面を半壊させる事が出来れば目的の半分は達する事ができるだろう。
辱めを与え、正体を明かし――闘技場と秘密の契約を結ばせる。
正体を隠すなら、相応に意味のある正体ではあるのだろう。中の人物が誰なのかは己は知らぬ話だった。
■シュライア > いかな力がある彼女とはいえ、関節に纏わりつかれればそれもまた発揮しづらくなる。
進行の速度は遅くなり、男が動かずとも、その間合いには入れないだろう。
「――――!?」
仮面の下から伝わる、驚愕の気配。
魔法生物にそこまでの知能があるとは思わなかったのだろう。
仮面も、装備も溶かされ始め…裸に向かれていく。
土手に押し付けられたスライムの身体への反応はまだ薄いが…
羞恥に彼女の身体がどんどん紅くなっていき…正体も露になって。
現れたのは、蒼い釣り目と、金髪を湛えた、美女。
その眼は闘志に溢れてはいるが、同時に、媚毒によって荒く息を吐いていて。
「……く……。」
唇をかみしめ、観客の視線から耐える。
ここでは知名度はないかもしれないが、マグメールに詳しいのなら…その人物が、とある貴族であることはわかるだろうか。
そうしている間にも、スライムは再結合を果たしていき…完全に、包み込まれるだろう。
媚毒をまだ噴射しているなら、身体がマヒしたように動かず、裸体を観衆に晒してしまい
スレンダーな体ではあるが、程よく実った二つの果実と…強制的に発情させられ、とろりと一筋、淫蜜を垂らす姿すら、見えてしまうか。
両手両足は既に封じられ…気骨はまだ折れていないものの、もはや勝負は決しただろう。
『さーてぇええええ!!ようやく快進撃が止まったあああ!!、ここからはお楽しみタイム!、観衆の皆様の前での凌辱ショーだああ!』
煽り建てる実況と共に湧き上がる観衆。
その囚われた騎士をどうするかは、相手に委ねられて…
■ディール > ――嗚呼。あの女は。
察したかのように軽く頷いていた。であれば顔を隠すのも道理だろう。
そして――闘技場の一部の資本主が彼女を目玉闘技者に据えたいのも道理だろう。
「成程。であれば――丁度良い。もう少し観衆にサービスをしてやろう。
言うまでもないが、俺は家名を知っている。
口に出しても構わんが――。」
言葉を区切るのは相手の反応を引き出す為でもある。
それと共にスライムの艶かしい、半透明な緑色の触手が蜜を垂らす陰唇を捉え。
さらに太腿に巻きついた触手が大きく足を広げさせることで秘められるべき箇所を観衆に見せ付けていく。
この状態で家名を出されれば、どうなるかは火を見るより明らかではある。
そうして歩み寄り――此処から始まるのは闘技場名物。敗北者への凌辱劇。
二つの果実の部分のスライムを消失させ、手袋に包まれた手のひらが乳房を手に取り。確りと指先を乳房に沈み込ませ、或いは持ち上げさせ。
その先端の蕾を指先で押し潰す様に、磨り潰すように強い刺激を与えていく。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からシュライアさんが去りました。
■ディール > ――闘技場の喧騒に包まれる。場内で何が行なわれたのかはその場に居た者しか知らない事になるだろう――。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からディールさんが去りました。