2019/01/29 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 【待ち合わせ中です】
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にロザリンドさんが現れました。
クレス・ローベルク > ――あれ?
と男は彼女の反応を見て違和感を感じる。
違和感、というか、彼女に感じる印象の変化、というか。
今まで、彼女の言動は、数百年を生きた魔族ゆえの、謂わば余裕の現れとしての言動だと思っていた。
あの何処か緊張感がない雰囲気も、何かの演出、演技だと。
しかし、まるで新しいなぞなぞの答えを聞いた、というような彼女の表情は、

「(――もしかして、世間擦れしていない?)」

短剣によって止められた突きを、身体ごと後ろに飛び退く事で引き戻す。
それを追うように、彼女が踏み込んでくる。
しかし、だとすれば、どうだというのか。
何も変わらない?否、"既に一回目の媚薬を打ち込んだ今の状況であるならば"――

「答えは変わってくる、んだよなあ!」

身を翻し短剣を突きこんでくる彼女に対し、カウンター気味に左手を伸ばす。
突き?手刀?それとも掌底?
そのどれでもない。男が選んだのは、取りうる手段の中で、尤も最低な手段――
胸揉みであった。

「てやああああああ!」

普通、急に胸を揉まれたからと言って、それで快楽を感じることはない。
だが、一回目の媚薬を投与されている今ならば別。
本格的な効き目を顕す二回目より効果は落ちるとしても、戦闘中にいきなり快楽を感じれば、それだけで隙が生じるはず――そう思っての行為だった。

ロザリンド > 剣闘士にしては喜怒哀楽がはっきりとしている。
表情が分かりやすいというべきかよく変わるというべきか
此方にとっても予想外の事が起きたけれど
相手にとっても何か予想外だったことがあった様子。
最もその内容に関してはいくつかある推測から絞り切ることが難しい。

「ハッ」

飛びのくような回避に追いすがる様にもう一歩踏み込む。
この姿勢でこの速度差。
飛び込む者と不安定な姿勢で後ろに下がる者、
何方が早いかなど言わずと知れている。
得意此方は余り戦いが得手ではないとは言え、純粋な魔族だ。
”加護”の影響は強いがそれでも普通のヒトよりは数段に速い。
守る場所の無い首筋へと短剣を走らせてしまえばこれでお仕舞のはず。

「――」

息を吐き出しながら衝撃に備える。
カウンター気味に突き出される手には何もない事は視認済み。
魔力を練り上げる時間も、内臓を潰す速度もない。
対してこちらは”型通り”の一手であり、
仮に相手が一呼吸おいて何かを発動しても
此方の方が確実に”速い”。
ああ戦いというものはやはり一瞬で勝負がつくものなのですね。
そんな思いと共に短剣を振りぬかんと……

「……!?!?」

声も出ないというのはこの事だった。
まさか狙いが攻撃でもなんでもなくただのセクハラだったとは思いもしなかった。
打撃だと思って僅かにずらしたタイミングは全く意味が無く、
むしろその時間を長くするようなもの。
余りの動揺に一瞬体が硬直し、首元を浅く狙った逆手の一撃がわずかに届かず空を切る。

「んぅっ」

そのまま揉みしだかれる感覚に咄嗟に体が逃げる事を選択する。
声を押し殺し、腕を払いのけながら足裁きで無理やり重心を動かす。

「あ、あのっ、ローベルク様!?」

思わずと言った調子で吐き出した言葉は動揺のあまり声が裏返っていた。
必要以上にバックステップしながら分厚い本を胸元を守る様に引き上げる。
その表情は動揺を隠しきれておらず、僅かに上気している。
視線が相手の顔と手元を何度も無意味に往復しており
完全に混乱していることを周囲にしめしていた。
下手すれば身長が頭の長さ分短くなる危険と引き換えに
セクハラなんて予想の範疇を完全に超えている。
魔族なら兎も角、相手は脆い人間なのだから。

「きゃっ」

足元がおろそかになっていたのかその動揺からか
地面に落ちていた石に足を取られた。
上体が後ろに流れ、髪と服がふわりと広がる。

クレス・ローベルク > 「――ッッッ!?」

こちらの手が届いた数秒後にこちらの首元を掠めた短剣に、反射的に後ろに下がりそうになる。
それを押し留めたのは、男の意思というより、ロザリンドの押し殺した、しかし確かに聞こえたオンナとしての声だった。
バックステップするロザリンドに対して、男もこの機を逃すまいと距離を詰めていくが。
その男の心の内にあったのは、奇妙な納得感だった。

「成程……。成程なあ……」

まだ感触が残っている左手で、無駄に虚空を揉みしだきながら男は呟く。
平時の彼女ならば、腕を払いのけるどころか、逆に掴んで投げるか、いっそへし折っていた可能性を考えると、これは言うまでもなく大きな弱点だった。
現に、彼女はまるで生娘のごとく動揺し、体勢を崩してバックステップを――

「あ」

つまづいた。
後ろに流れていく彼女の身体の背に左腕を回し、それを支える。
そのワンシーンだけ見れば、まるで仲睦まじい男女に見えなくもない。
実際、男は温和そうな笑顔で、彼女を見下ろしていたが――

「はい、お注射の時間ですよー」

残念ながら、此処は闘技場で試合はまだ継続中なのだった。
右手の剣を落とし、代わりにホルスターから薬品注入器を取り出し、彼女の動揺が冷めぬ内に、中の液体を注入。
これが決まれば二回目の注入。――性感の強化と、性欲の大幅な増幅が引き起こされる。

ロザリンド > 何時もであれば笑みすら浮かべてとどまって見せただろう。
今の自分と同じように躓いた新人が持っていたカップやポットその他を
落ちる前にすべて回収するなんて言う芸当も当たり前にやってのける立場だった。
少なくとも、服を土で汚したりはしない。

「ぁ」

躓いた際に結紐が外れたのだろうか。
流れていく景色の中広がる髪を何処か他人事のような思いで眺め
その背中を支えられ、一瞬舞いの空白のように舞台が静止する。
此方を覗き込んでくるような瞳を見返すそのワンシーンは
そこだけ切り取ればまるで恋愛譚の一場面。
一瞬抜け出すことに抵抗を覚えたのは僅かに、ほんの僅かに
そんな場面であることに呆けてしまったからで

「っ!」

何かを押し付けられる感覚と空気の抜ける音。
情緒も欠片もない声と行為に
薙ぐように腕で顔を払い、稲妻のように身を翻し距離を取る。
残念ながらここは戦場。しかも相手は手段を択ばないような相手。
あれが何か意図がある事は流石に予想でき……

――世界が傾いたような感覚を受ける。
周囲の音が潮騒のように高低を繰り返し。
動悸が激しく、まるで耳元で別の誰かの鼓動があらぶっているかのよう。

「……ぁ」

ふらりと体が崩れ、ぺたんと地面に膝をつく様に座り込む。
胸元を抑え俯いて吐き出した息には過剰な熱量。

クレス・ローベルク > 「うおっと!」

ぶぅん、という音共に、こちらの顔面を薙ぎ払う手を、首を逸して避ける。
まさか、薬が注入されて尚、それだけの行動が出来るとは思わなかった。
とはいえ、薬品注入器が薬品を完全に注入し終わるまでは、1秒もかからない。
既に、手遅れである事を表すかのように、彼女は膝から崩れ落ちている。が。

「おや?どうしたのかな、そんな急に崩れ落ちて。
体調が悪いならギブアップという手もあるよ。
勿論、"負けた場合のペナルティは受けてもらうけどね"」

そこで素直に終わらせてやらないのが、男のゲームメイクである。
負けた場合にどうなるかを言外に示唆し、退路を絶って立ち上がらせる。
戦場でありながら性を意識させ、流されまいとする女を、あくまで"戦い"の中で快楽漬けにする。
勿論、此処で降参というならそれもよし。それならそれで、普通に彼女と楽しむだけだ。

「……さぁ、どうする?」