2019/01/22 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 興行試合」にロゼリンドさんが現れました。
ロゼリンド > 扉が開くとそこにいたのは

「あら、これが噂に聞く……?」

何だか場違いな雰囲気のメイドさんでした。
見るからに柔らかい雰囲気のメイドさんは
片手に本を、もう片手を口元に当てて
にっこりと微笑みながら観客席を見渡し

「あらあら、どうもごきげんよう」

笑顔で穏やかに手を振り返してみたり。

クレス・ローベルク > にこやかに、しかし内心は張り詰めた糸の様な心持ちで、相手を待っていた、のだが。
蓋を――ではなく扉を開けてみれば、出てきたのはメイドであった。
それも、柔らかな笑顔と、緊張感のない雰囲気。
観客達もこれには戸惑っているのか、美人の登場に歓声ではなく、寧ろ戸惑うようなざわめきを以て迎えることになった。

『おーっと、これは随分とこの場に似つかわしくない女性が現れました!この緊張感のなさは、世間知らずなのか、それとも……?』

実況もどう対応したものか戸惑っている。
そして、闘牛士服の男もまた、怪訝な表情で彼女を観察していた。

「(一応、人間ではなく魔族なのは解るし、何かしらの魔力を帯びてることぐらいは解る。んだけど……)」

こほん、と咳払いをして、男は彼女に声をかける。
表情を何時もの笑顔に戻して、

「あー、ごきけんよう。その、つかぬ事をお聞きするけど……戦いに来た、で良いんだよね?」

ロゼリンド > 切っ掛けは数刻前。
路地を歩いていたら暴漢に襲われたので”平和的解決”をはかった所
紆余曲折を経て何故かこの試合に出る事になった。
なにやら急遽闘士が居なくなり、
試合に出る強者を探していたところ見つからず
むしゃくしゃしていたところを通りかかった女を見て魔が差したらしい。
その暴漢達とその雇い主は観客席の前の方に陣取っていた。
女が手を振るとその一角だけ大変盛り上がっている。

『姐さんぼっこぼこにしてやってください!』
『どうか俺たちの仇をとってくだせぇ』
『不届きものに天誅を!!戦じゃー』
『ヒッ、ヒィィ!悪魔!悪魔がぁ!悪魔がこっちを見て、見ている!ヒィィ』

頭や腕に巻いた包帯や腫れあがった両頬が痛々しい。
彼らから断片的に聞いた話によると
1.お気に入りの闘士が卑怯な手でやられた
2.しかも彼女がファンだった。なんか凄い負けた気がする
3.イケメンなんて嫌いだ滅べ。爆ぜろ。
大体こんな理由が主だった内容だった。
正直ちょっと困ったさんだと思うものの……
あんな熱心に涙を流して頼まれると嫌とは言えないのが人情というもの。
何だか少し雑音が混ざっている気がしますが
そこは淑女として気が付かなかったふりをする。
……平和的に解決しただけだというのに大げさな。

「あら、ご丁寧に。
 ごきげんよう。私ロゼリンドと申します。
 挨拶が遅れてしまい申し訳ございません。
 ……はい、そう伺っております。
 そちらはクレス・ローベルク様で間違いないでしょうか」

スカートを摘まんでゆっくりと一礼。
間違いという事は無いと思うものの
間違えた相手を攻撃してしまっては大変だとの思いから一応確認。
何だか戸惑ったような顔をしているものも多く
もしかしたら違う会場に入った……なんてことも考えられなくもない。。

クレス・ローベルク > 男とて、恨みはそれなりに買っている方だと自負している。
一応、観客席から結構な敵意を持つ視線を感じない訳ではないが。
しかし、当然ながら、彼等を見ても、それが嘗て倒した対戦相手のファンであり、対戦相手は彼等が送り込んだ刺客であるなど気付くわけもない。

「(絡まれて適当に相手したチンピラ……?
最近あそこまで大怪我させたのって居たっけ……?)」

ともあれ、観客席のことは一旦置いて。
問題は彼女である。どうやら、彼女が戦いに来たというのは間違いが無いようだ。
とすれば、雰囲気がどうのとか何でメイドなのかとかは一旦置くのが流儀である。

「ああ、そのとおり。俺がクレス。クレス・ローベルク。
それじゃあ、どうやら戦うつもりらしいし――」

そこで、腰の剣を一本抜く。
『非生物のみを斬る』という、特殊な魔剣を。
剣を右手に提げ、足を肩幅まで開く構え。

「君が準備ができたら、こちらに攻撃を一回加えてくれ。
それまで俺は君に攻撃を与えない。その攻撃を以て、試合開始の合図としよう」

ロゼリンド > 「私個人に貴方様に恨みはないのですが……」

少し困ったような笑みを浮かべ言葉を切る。
まぁこの場を見る限り、戦い慣れた相手であるようなので
そこまで大事にはならないだろう。
心得の無い相手に手加減するのが一番難しい。
……慣れているが。

「あら、随分紳士的なのですね。
 ではお言葉に甘えて参りますね」

ふわふわとした印象のまま足元の小石を拾い上げる。
距離にして数メートルを軽やかに歩くと

「えーぃ」

振りかぶり、ゆるーく投げた。
実に平和な空気でスカートが緩く広がる。
投げられたヒョロヒョロと飛んでいくと
払われなければぽすっと鎖骨辺りに当たり、呆気なく地面に落ちる。
……その翻ったスカートの陰で、チャリっと僅かな金属音がしたことを
この場の中でただ一人、石を投げられた本人だけ聞き取れたかもしれない。

クレス・ローベルク > ひゅー。
ぽふ。
すとん。
端的に言って、これが彼女の初撃が直撃した結果である。

――全てが、沈黙していた。
何時もは喧しい実況ですら、『え、えーと』と困った様な声を挙げるしかなくなっている。
観客席に至っては、お互いが顔を見合わせ、どういう事だ、と声を潜めてお互いが見たものを確認しあっている。

――"その音"を聞いた男のみを除いて。

「(やばいっ!?)」

"その音"は、最近良く聞いていたが故に、男はその正体に一瞬で思い至った。
その仮説の真偽を考察すらせず、男はロゼリンドに距離を詰めた。
そして、彼女の腰下、スカートを横一閃を以て切り裂こうとする。
普段なら羞恥を煽り観客を喜ばせるための剣閃だが、今回に限ってはそうではない。

「(もしあれがマジで俺が持ってるのと同じだとしたら――攻撃の起点が見えないのはまずい!)」

ロゼリンド > 男が足を踏み出した瞬間、スカートの裾から4条の銀閃が走った。
潜んでいた蛇が獲物に食らいつくように男の胸元に、足首に、
振りぬこうとした腕と踏み出した足首へと迫る。
一本でも受け止めればまるで鉄の牛に突進されたような衝撃を受けるだろう。

「ふふ」

その主は軽やかな笑みを浮かべたまま背後へと一歩だけ退く。
そしてその身を守る様に4本の鎖が立ちはだかる。

「手加減は無用です
 どうぞお気遣いなく」

そのまま一礼。
それと同時に残りの鎖も鎌首をもたげる。
それは僅かでも動けば再び襲い掛からんと
獲物を狙う蛇のようにゆらゆらと揺れている。

クレス・ローベルク > 「やっぱりかっ!」

咄嗟に、右腕の軌道を変えて、胸元を穿つ鎖を下から上に持ち上げるように叩く。
顔面狙いコースになった鎖を首を傾ける事で回避するが、その代償として、無防備な足首を晒すことになる。
一応、ステップで回避を試みるも間に合わない。
軸足を強引に押しのけられ、俯せに転倒する。

「くそ……!」

勿論、そこで止まるような事はしない。
右腕で剣を構え、何時でも鎖を防御できるようにしつつ、立ち上がる。
見れば、そこには四本の鎖が、威嚇するかのようにこちらに睨みを効かせている。

「おいおい、メイドさんが使う仕事道具にしては、少々物騒すぎやしないかい……?」

引きつった笑みでぼやきとも冗談ともつかぬ事を言いつつ、男は考える。
鎖が臨戦態勢である事もそうだが、より厄介なのは、彼女が一歩だけ後ろに下がった事だ。
一歩距離が離れれば、相手は四本の鎖をこちらにぶちこめるのだから。

「(仕方ない、魔族に効くかどうかは未知数だけど――)」

男は、さっきまで、まるで盾にする様に構えていた剣を地面に置いた。
更に、腰につけていた左側の剣も捨てる。
代わりというように、ベルトのホルスターから、何やら筒の様な器具を取り出す。

「さて、それじゃあ、鎖相手に、スピード勝負と行きますか!」

そう言うと、ロゼリンドに向かって一直線に駆け出す。
身軽になり、ロゼリンドの鎖を躱しきり、本体に攻撃を与える。
それが、男の作戦らしい。

ロゼリンド > 「おや、ご存知でしたか」

思わず零れたような言葉にくすりと笑みをこぼす女。
転倒した男に対して追撃はせず、優し気な笑みを浮かべたまま
立ち上がる様を興味深げに眺めて

「そうですね、この子達は少々血気盛んですね。
 嗚呼、でも、重たいものを運んでもらう時には便利ですよ?」

冗談なのか本気なのかわからない言葉を
緩やかな空気のままのんびり口にすると片足を一歩後ろに引く。
立ち上がる男の目から闘志が消えていない事を見て取ると
クスリと小さく笑みをこぼして

「では続けましょうか」

矢のように駆け出す男。それを迎えるべく初めて行動を起こす。
スカートを摘まむと振るうようにしながら一回転。
先に射出された鎖がその動きに合わせるように
等間隔を開けて横薙ぎに引き戻されながら降りぬかれる。
その隙間を縫うように構えていた四本の鎖も動き出す。
一本を避ければその避けた場所と体勢を狙って、
明確な殺意の塊となって喰らいつく。

「あら、意外」

意外な事に相手は武器と同時に防御手段を捨てた。
迎える此方は質量を持って削り取る線の攻撃と、その間を縫う点の攻撃。
まっすぐ突っ込めばその攻撃を避けることは叶わない。

が、今度は前回と違い距離を離す事は無かったため
避けなければ僅かに触れる程度は可能かもしれない。

クレス・ローベルク > 「そりゃ羨ましい。ウチの鎖はそこまで気が利いてないから……ねっ!」

ロゼリンドに向けて猛然と駆け出す男。
だが、その脳内は、プロのチェスプレイヤーが、残り少ない持ち時間で最善手を考えるような、焦りと思考に満ちていた。

「(考えろ……最適手順で攻撃を捌かなきゃ、一瞬でやれるんだからな……!)」

現在出ている鎖は八本。しかし、"この瞬間に"回避すべきは一本のみだ。鞭のように襲いかかる横薙ぎの鎖を、姿勢をかがめる事で避ける。
が、

「やっぱりか!」

姿勢をかがめた事で体勢が悪くなった所に、四本の鎖が突き刺さる。
当然、その攻撃は読めているが、しかし読めた所で、体勢が悪い以上、回避の不利は付き纏う。
しかし、男の足は敢えて真っ直ぐ突っ込むことを選択した。
否、正確に言うと、真っ直ぐに、ではなく――

「蛇行……!」

鎖の軌道を読み切って、その鎖に当たらないコースを走り続ける。
上半身への攻撃は、時にかがみ、時に身体を捩る事で対応する。
謂わば、ボクシングにおけるパンチを、ジャブもストレートもひっくるめて全て回避するような、そんな神業を要求する動きだ。
今も、

「っぶな……!危うく耳が刮げるとこだった……!」

それは、針の穴を通す様な攻撃の捌き方で、一瞬でも間違えば直撃は免れない。
実際、その為に走る速度は遅くなり、走るために回避していると言うより、回避のために走っている有様。
しかし、男はそもそも、ロゼリンドに近付こうとは思っていなかった。

「今だ……!」

横薙ぎに引き戻される四本の鎖の内、最後の一本を、男は掴んだ。
否、それは掴んだというよりは、しがみついたという方が正しい。ホルスターに器具をしまい、鎖を脇に挟み、綱引きの体勢。

「頼むからこれがあの子の服に直接繋がってますように……!」

繋がっていなかった場合、ただの無駄骨である以上、これは賭け。
しかし、賭けに勝利すれば、彼女の体勢を崩しつつ、引き寄せる事ができる。
祈りを込めて、全力で鎖を引き寄せる。

ロゼリンド > 「流石というべきでしょうか」

辛うじてではあるものの男はこの連撃を捌きつつある。
8本程度で片が付くと目測を誤ったのは
やはり相手が人間だったからだろうか。
自分では差別しないつもりでも
どうしても人間相手だと過小評価を行ってしまう。

「私共の悪い癖でございますね」

小さく嘆息を零し、
次々と襲い掛かる鎖を紙一重でかわしていく男を
眼で追いながら首元の髪を跳ね上げる様に広げる。
翼のように広がった黒髪の陰で握られたのは4本の白銀の長針。
追いかけっこに終止符をうたんとばかりに
振りかぶったそれを投げつけようとした刹那

「え?」

その体がふら付く。
先人の言葉にこんな言葉がある。
”運も実力のうちである”と。
まるで蛇が如く意志を持つように動く鎖は
掴まれたその身を振りほどかんとばかりに身をくねらせた。
男の祈りが天に通じたのだろうか。
その鎖はスカートの端を鎖の輪の間に噛みこんでいた。
そしてスカートは不幸にも随分頑丈な素材であったようで
鎖自身の異常な質量も相まって女の体を振り回す様に簡単に動かす。

「きゃ!?」

本来この魔具は開いた空間から出ているだけで体には繋がっていない。
その異常な質量故に自重で動けなくなるからだ。
だからこそ引き寄せられるという想定外の事態に体勢が崩れ上半身が泳いだ。
……結果捲れそうになったが為に咄嗟にスカートを抑えたという事もある。

クレス・ローベルク > 「うおおお!?何だこの鎖ぐにゃんぐにゃんする!鰻か何か!?っていうか、微妙に俺の身体持ち上がりそうなんですけど!?っていうかこのメイド服と鎖なんなの!?何で作ったらこんな重くなるの!?或いはまさかロゼリンドさん自体が重いの!?」

此処で鎖に持ち上げられたら、そもそも引き寄せ作戦自体が失敗である。全力で体重をかけて鎖の動きを押し留めつつ、ロゼリンドの身体を引っ張る。
果たして、その効果はあった。
彼女の体勢がつんのめる様に前に流れたのだ。

「今だッ!」

彼女の体勢が崩れた今こそ勝機。
勿論、鎖は自立駆動しているらしいので、八本の鎖が滅茶苦茶に暴れれば近づくことはできない。
しかし……

「この状況でそんな事をすればスカートの中はほぼ確実にあげっぴろげになる……!」

まさか、パンツを見れるか見れないかが、戦闘の判断基準になるとはと思いつつ、ロゼリンドの元まで走っていく。
ホルスターから再び引き抜くは、薬品をほぼ無傷・無痛で注射できる特注の注射器だ。

「まあこれ一回目だとあんまり効き目薄いんだけどねっ!」

一回目はただ単に血行が良くなり、身体感覚が敏感になる程度である。
とはいえ、千里の道も一歩から。まずは一回目を投与しようと、ロゼリンドの首筋に注入器を押し当てようとする。

ロゼリンド > 「重くないですっ」

抗議の言葉にも鋭さはあれど張りが無い。
その片手は本を、片手はスカートを抑えていて握っていた針は空を舞っている。
翻りそうになった動揺からか鎖は言う事を聞かず絡んだ部分も解けない。

「……ゃ」

首筋に迫る手。蘇る記憶。女は一瞬すくんだようにも見えた。
崩れた姿勢に不自然な体勢でしかも視線まで外してしまえば避けられるはずもなく
伸ばされた手は狙い違わず首元に届き、注射器の中身は狙い通り撃ち込まれる。

「っ!!!!」

薬物を打ち込んだ瞬間に
もし男に女の顔が見えていたなら
先程までの落ち着いた優し気な笑みの代わりに
目元に僅かに涙を湛え、羞恥に上気して
切羽詰まったような表情を浮かべている事に気が付いたかもしれない。

男は知らない。
このメイドの先の主人が、いつもと違うこの少女のような顔を見たいがために
不意を衝く様に度重なるセクハラを彼女に仕掛けていたという事を。
彼はいわばギャップ萌えの体現者であった。
そして結果続く攻撃を世界で最も多くまともに食らった人物でもある。

「――っ!」

咄嗟に、そして咄嗟故に手加減一切なしで
その細い腕が男目がけて渾身の力で振りぬかれた。
例え目を瞑っていても正確に男の頬へ放たれる”乙女の秘奥義その壱”。
そう、人はそれを
――ビンタと呼ぶ。

クレス・ローベルク > 「(えっ、あれっ?)」

てっきり、回避される……までは行かずとも、もう少し抵抗があると思っていた。
或いは、それができないにしても、苦渋に顔を歪ませつつ、こちらの腹なり股間なりを蹴り上げるか、さもなくば無関心か。
しかし、実際の彼女の反応は、寧ろ初心な女のもので。

「(もしかして、魔族的な所作に紛れてるだけで、性格としては意外と可愛いけ……)」

い、と思う直前に、ビンタが直撃した。
痛みより先に衝撃によって、男の身体が一歩後ろに下がる。

「あいたあっ!?」

無論、不意の一撃とはいえ、ダメージ自体は決して強くはない。
が、不意であるがゆえに、一瞬、彼の手は頬を撫で、更に身体自体も後ずさっている。
隙としては、それなりに大きなものになるだろう。

ロゼリンド > たたらを踏んだ男の腹を目がけて結晶の棒のような物が振り抜かれた。
いつの間にか女の手には青い結晶質のハルバートが握られており
叩きつけられたのはその柄の部分。
流石に刃部分を当てるのは自重したようだが……

「……戻りなさい」

若干低い声に鎖がびくっとしたように身じろぐと
素直に足元へと戻ってゆく。
それに絡んだ布地を外し、再びあげられた顔は笑顔。
ただし、纏うオーラは全くの別物。

「……私の負け、でしょうか」

しかし劫火の如く揺らめいていたその怒気は一瞬。
いつの間にか片手で構えた得物の切っ先を地面につけ、残念そうに首を傾げる。
まるで鉄塊を地面に落としたような重量感のある音がその辺りから響き
僅かに地面にひびが入るがそれ以上は動かない。
取り巻く様に戻っていた鎖も鎌首をもたげたまま追撃を行わず静止している。

「今の攻撃は有効打というべきものだと思うのですが……」

もし注射器ではなく武器であれば、
先の一撃はある程度の痛手を負わせている事になる。
最も武器を持っていれば反応も変わったかもしれないが……
それでも事実首筋に触れた事には変わりない。
このまま続けるのかと問うように男の方へと視線を巡らせて……

ロゼリンド > ――後日に続く――
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 興行試合」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 興行試合」からロゼリンドさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 地下修練場」にミセリコルデさんが現れました。
ミセリコルデ > 港湾都市ダイラス、アケローン闘技場に存在する地下修練場。

既に剣闘士達は眠りつくか、酒を飲みに出歩いている筈の誰もいない時間帯だと言うのに、その地下修練場へと続く通路には薄っすらと灯りが零れ、今だ修練場を利用する人間がいるらしい――人間とは限らない、が。

通路の先にある地下修練場から鋭く渇いた音、まるで空気が爆ぜるような音が何度も幾度も響き、今だ修練を続けている者が居て、中を覗けば今まさに鳴り止まぬ音のがどの様にして奏でられているか見る事が出来るだろう。

室内は広く、人型の木人に藁を巻きつけた物や色々な鍛錬用道具が転がるその部屋は最低限の灯りだけ、通路から漏れて見えるくらいの弱い明かりの中で、少しだけ小柄な人影がその木人を打っている。

頭部に位置する場所に側頭部に当る部分に鋭い蹴りを肩の部分には拳を脛には蹴りをそして頭部でも顎に当る部分に拳をぶち当て、その時だけ重たい音を響かせる。

「フッ……フシュッ……シュゥ………。」

蛇の唸り声、短く鋭く吐き出し、同時に木人相手に拳を蹴りを放ち、当てれば引き、迫っては再び鋭い呼吸を吐き、木人を打つ、を繰り返して実戦で感じた事を動かぬ的相手に復習し、適切な行動を反復して身体に刻み込む、実に地味な鍛錬であるが、何も考えないで出来るこの鍛錬が好きで試合の次の日、若しくはダメージが消えて動けるようになった日には毎晩の様にくり返している儀式染みた行動。

今夜は昼間は幾つか学ぶ事があり、試合的にも比較的にゆるく珍しく勝てたので、身体が覚めぬ内に木人を無心に打っている。

動けば散る汗の珠
前髪が揺れて微かに覗く鋭い眼差し
木人を打つ際に響く乾いた空気の爆ぜるに近し音ともに、キュ、キュと足が剣闘士達により研磨された床を更に研磨していく。

普通の剣闘士であれば試合後はパトロンとお付き合いがあるだろうが、幸運な事に現在はパトロンもなし、なので自由時間を誰も居ない世界を1人満喫しているのだった。

ミセリコルデ > 身体から陽炎の如く熱が立ち上り始め、十分に身体が温まると、次は火照る身体を静める為にシャワーを浴びる事にする。

最後の最後に打ち込み相手に藁巻の木人に会釈をすると、水浴びよりも心地の良いシャワーに向けて鼻歌を歌いながら小走り加減に向うのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 地下修練場」からミセリコルデさんが去りました。