2018/02/20 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にスナさんが現れました。
■スナ > 客入りまばらなアケローン闘技場。アリーナの中央には、2振りのショートソードを握った少年が立ち尽くす。
銀髪の頭頂には、獣の耳が伸びる。厚手の布服上下をかき分けるように、背筋の下端から尻尾も生えている。その数2本。
右の下腕部の袖は大きく引き裂かれるように破かれ、血が滲んでいる。しかしすでに止血は済んでいるようだ。
目を細め、口をへの字に結び、次の相手が現れるのを憮然と待ち続けている。
スナは時折、「闘士」として闘技場に現れる。目的は主に賞金のため。
他にチャレンジャーがいればそれを相手に、いなければどこぞの貴族が飼っている獣を相手に、5連戦。
飢えた猟犬、イノシシ、中型の虎をすでに相手にし、勝利している。
今でこそ王都で燻っているが、元は化物跋扈するシェンヤンにて名を馳せた大妖である。獣ごときに遅れをとるつもりはない。
手に握るは、2振りのショートソード。どちらもどこか鉛めいて、ツヤのない鈍い灰色を帯びている。
右手には薄い刀身の両刃剣。刃渡りは50cm程度。獣の血に濡れており、拭った跡は見えるがそれでも赤くシミが浮かぶ。
左手には、右のそれよりもやや厚く長い刀身の片刃剣。こちらには血はほとんど見られない。防御用なのだろうか。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にレナーテさんが現れました。
■スナ > 右手の傷がずきずきと疼くが、剣を振り続けるのに支障はない。初級回復魔術により止血も済んでいる。
油断した、といえばその通り。だが、この闘技場における戦いは野原で野獣相手に仕掛ける狩りとは違う。観客がいる。
ただ勝つだけではなく、息詰まる近接戦を展開しなければ、客は飽きてしまうだろう。
幻術を用いて致命傷を避けることはできる。しかし、たとえそうできたとしても、術を100%駆使して完封するのはまずい。
……そんなこだわりが仇をなして、虎の爪を一発食らってしまったのだった。
それでも、とりあえずは熱戦を演じつつ3勝だ。ここで引き下がっても十分に賞金は出るだろう。
だが、スナは未だ緊張を解かず、舞台に立ち続けている。スナが今日ここに来た理由は賞金のためだけではない。
……先日、王都にてとある人物相手に、幻術を用いて詐欺(+セクハラ)を働いたのだが、看破され、完全に負けを喫してしまったのだ。
もとより勘の鋭いとされるエルフ、しかも王城の騎士に属するほどの肝っ玉の持ち主が相手だったのだ。
負けるべくして負けたのだろう、その点には溜飲は下がっている。
しかし、幻術とは想像力と意志の力の賜物。負け犬の意識のままでは、精度はみるみる下がってしまうもの。
だからこうして、日常のなかで「負け」を意識してしまったときには、あえて戦いの場に身を投じる。
闘技場で戦う程度の相手に遅れをとることはそうそうない。勝ちを積もらせることでマイナス思考を相殺する。
それがスナの今の生き方だった。
■スナ > 最低限に幻術を行使しつつ、獣相手に剣を振るい、致命傷にならぬ程度に痛手を与え、戦意を喪失させる。
そんな戦い方で3体の獣を退けた。ある程度は観客の熱を上げられただろう。
だが、スナは知っている。安全圏から戦いを見守る客たちの望みは、それだけではないと。
油断したスナが獣に組み敷かれ、大出血とともに噛み殺される展開を望んでいる者もいるだろう。
理性と欲望を兼ね備えた人間同士の、息詰まるような戦いを望む者もいるだろう。
あるいは打ち負かされた女性が(あるいは男性が、スナ自身が)衆目の中で辱められる展開を望むものもいるだろう。
とりあえず、相手に恵まれないかぎり、スナ自身ではどの展開も見せてやることはできない。
そのことはこっそりと心の中で詫びつつ、次の対戦相手を待つ………。
■レナーテ > 運輸と漁業を担う組合所有の船での用事を済ませに立ち寄った港湾都市は、歓楽街も目玉の一つだが、もう一つの大きな観光地として上がるのが闘技場である。
大体は女が強敵に嬲られながら犯される様子をショーにし、観客を楽しませる場所だが、通り道にあったそこからは普段の活気を感じない。
奇妙だと小首をかしげつつ、入場口の係の話に聞き耳を立てると、どうやら普通の戦いが淡々と進んでいるらしい。
成る程と、一人納得しつつも、妙案が一つ浮かべば、反対側にある受付へと歩いていくのだった。
4試合目の相手が決まり、アナウンスの声が流れる。
暇そうに次の戦いを待っていた観客達は、その声に顔を上げて壇上を覗き込むだろう。
彼の向かい側にある通路を、カツカツと足音を響かせながら歩いていく。
薄暗い廊下を抜けて現れた姿は、普段と変わらぬ深緑色を主体とした可愛らしい戦闘衣に身を包んだ格好。
だが、戦場に赴くときと違い、腰には爆弾や閃光弾となる便のベルトは巻いていない。
手にした小銃型の魔法銃は背丈より少々短い程度と全長は長めであり、銃口を斜めにした構えで壇上へと上がっていく。
腹部のコルセットには斜めがけされたホルスターがあり、革のそれには、回転式拳銃の魔法銃が一つ収まっている。
丸レンズの奥、丸い金色の瞳が彼をじっと見つめると軽く頭を下げていく。
「よろしくお願いします」
これは奪い合いではなく、手合わせである。
その考えでいる以上、話す合間があるなら挨拶の一つでもするのが礼儀と、真面目な第一声をかけた。
顔を上げれば、茶色の入り混じった三つ編みを揺らしつつ、幼く見える彼の姿に愛着でも覚えたのか、少しだけ微笑みを見せると、銃口を上へと向けて構えを取っていく。
銃口は彼の頭上へと向かった斜めの状態になるように構えられ、ストックが僅かに胸との間で浮いていた。
一見何も出来ないような構えかも知れないが、実際はどの距離でも対応できる構えをとり、童顔が少しだけ引き締まった表情に変わりながら、合図を待つ。
■スナ > どこぞに隠れた実況役が、魔道具で増幅された声に載せて次の対戦相手の登場をアナウンスする。
スナは両手に小ぶりな得物を握り、構えらしい構えは取らずに直立したままだが、それでもその身体からは緊張は抜けず。
鋭く伏せた両の眼で、対戦相手の入場口を見やると……そこには女性の影が。人型生物だ。
スナは憮然とした表情のまま、剣を握ったままの手を鼻の高さまで持ち上げ、丸眼鏡を正す。
そして対戦相手の身なりや装備を観察する。
相手は可愛らしい女性だ。この闘技場ではうら若き女性が戦いに挑むことも少なくはないが、その多くは奴隷である。
しかしいま現れた女性はなかなかに個性的で魅力的、そして小綺麗な衣装をまとっている。
きっと奴隷ではない、自分と同じフリーの闘士だろう。
そして手に握るのは長い筒……火器か。腰にも短い同種の武器が。
スナにはそれが遠距離武器であることは瞬時にわかるが、さすがに魔法道具であることまではわからない。
「……フフッ。よろしくな、お嬢さん」
彼我の距離12m程度。所定の位置に並び終えると、ニッ、と狐耳少年の口角が上がる。今日始めて見せた、彼なりの笑顔だ。
そして、斜めに脚を開き、左手に持った片刃の短剣を前に差し出す形で、構えをとる。
軽く両脚を曲げ、リズミカルにかかとを浮かせる。遠距離攻撃にも対応できる、回避と防御を主眼においた体勢だ。
相手の砲口が直接彼を狙わず、やや上向きになっているのは気にならなくもないが……否、興味深いとさえ言える。
……そして、「カーンッ!」と甲高い鐘の音が鳴る。戦闘開始の合図だ。
音が鳴り響いても、スナは構えをとったまま動かない。相手の出方を見るようだ。
■レナーテ > 「――っ、おませさんですね」
挨拶と共に返された言葉は、年上の男が自分に向けるような言葉。
面食らったように少し瞳を見開きながら言葉をつまらせると、眉尻を下げながら苦笑いを浮かべた。
彼が得物を火薬銃と誤認したのと同じように、此方もまた彼が自分よりも年上とは思いもしなかったらしい。
構えを取ったまま、互いに離れた距離で視線を重ね合わせると、相手の身体がリズムを刻むように動き始めていく。
長さも形状も異なる刃を携えた相手から考えるなら、機動戦で一気に距離を詰めてくるかと此方も身構える。
ゴングが鳴り響き、開始の合図が掛かるときゅっと被筒を握り込む。
しかし、すぐに近づいてくると思った相手は動く様子はなく、先手が譲られるなら短い合間に思考を巡らした。
(「初弾を避けて、そこから近づくつもりでしょうか……なら」)
初弾を回避されれば、狙い直して撃つまでに僅かなラグが発生する。
それを狙っているのだろうと考えると、それに乗っかるように、素早く銃口を彼へと向ける。
引き金のあるグリップ部分を軸にカクンと45度程綺麗に傾け、銃の上に備わったレンズに浮かぶオレンジの光点を彼に合わせ……引き金を搾る僅か手前で、右へと銃口を反らして引き切る。
銃口に一瞬にして青白い魔法陣が広がり、そこから生まれた光弾が、パシュッ!と音を立てつつ彼の左側へ反れながら飛翔するだろう。
敢えて狙いをずらした理由、それは彼が真っすぐの弾道を避けると考えたからだ。
人は最短で判断して角を曲がる時に左を選びやすいというが、自身もなんとなく左に飛ぶほうが避けやすさを感じる。
彼にも当てはまるかは分からないが、自身の感覚を頼りに回避読みの不意打ちを狙う。
■スナ > 回避重点の構えをとりつつ、相手の出方を待ち受けるスナ。はたして、レナーテは先手を取る。
銃口から放たれる派手な光と紋様、そして銃器の見た目とは印象を異にする、控えめな発砲音。
演出重視の趣味武器なのか、それとも魔法の力を放つ武具なのか。
とはいえ、射線が直線なのは変わらないようだ。
「………ふっ!」
相手の動きが始まると同時に、スナは大きく息を吐き、脚をバネのように曲げる。そして右手へと飛び退いた。
自然に考えれば、左半身を前に構えた姿勢から動く時、動きやすい方向は前や右方向となるだろう。
あえて相手がスナから見て左へと射線をずらしたのは、その裏を読んだためだろうか。
スナは回避動作を終えたあとで瞬時思案を巡らせるが、真意はまぁ今は知れないだろう。
魔法道具による遠距離攻撃であれば、弾数も想定以上にあると思っていい。一度回避したからといって油断はならない。
右前へと飛び退き、再び脚を地につけたあとも、スナは緩急のついたスキップを繰り返す。
徐々に距離を詰めながら、反時計回りにレナーテの周囲を旋回する。
「……ククッ、挨拶に挨拶で応えただけじゃろうの。
それよりお嬢さん、随分と趣味のいい武器を持っとるの。見た目も演出も派手で結構、けっこう!」
そうしながら、スナは低い声を楽しげに高く上ずらせながら、言葉をかける。それと同時に、人知れず己の術を行使する。
……レナーテの構える長銃が、一瞬にして肉の棒へと変貌する。
銃身は浅黒い皮膚に変わり、青い血管が網目のように浮き出て、びくびくと脈打っている。
銃口と銃床はともに、露茎したペニスめいて粘膜色をした亀頭に変わる。
突端には相変わらず穴が空いたままだが、鈴口めいてひくひくと蠢き、透明な雫を撒き散らす。
そんな猥褻物を構えたレナーテの鼻孔には、恥垢を練ったようなひどい性臭が飛び込んでくるだろう。
幻術である。スナはレナーテの(そして観客の)五感に干渉し、彼女の武器を異形にして卑猥な逸物に変えた。
銃そのものに防護がかかっている、レナーテ自身が強い精神力をもっているというわけでもない限り、この変貌はリアルに感じ取れてしまうだろう。
■レナーテ > 詠唱を省く代わりに銃内に刻まれた構文を通り抜けることで魔法陣に書き換え、魔力を瞬時に圧縮する。
見た目とは裏腹に、圧縮された魔力の弾丸は当たればそれなりに痛手を追う破壊力がある。
必要以上の負傷を与えないため、訓練用に調整しておいてあるが、それでも殴打された様な衝撃をしっかりと与えられるだろう。
だが、その弾丸は避けられてしまい、壁にバチン!と重たい破裂音を響かせ着弾していく。
素早く動き回る姿に回避された理由よりも早く、次の手を考え、魔法陣を浮かべたままトリガーを何度も引いていく。
パシュッ、パシュッと魔力弾が数発ほど放たれ、彼の移動先を狙った偏差撃ちを繰り返し、接近を拒むように反撃を試みる。
「……っ、そうですか…? それは――っ!?」
軽口を叩く彼へ再び魔法弾を放とうとした瞬間、愛用の魔法銃がとんでもないものへと変わり果てた。
銃身が使い込まれた肉棒のように変わり果て、銃口と銃床にはあろうことか露出した亀頭。
悪趣味にも銃口から汁を滴らせるところまで幻術で再現するだけに飽き足らず、悪臭までも作り出す始末。
見た瞬間、ぎょっとしたように瞳を丸くしていたが、それは直ぐに冷ややかな視線へと変わりなが、瞳を細めていく。
スカートの中に隠れていた尻尾がだらんと垂れ下がると、毛を逆立てながらピンと伸び切り、スカートがめくれるかもしれない事も気にせず、魔法銃を手放し、床に転がしつつ拳銃へと一瞬の動作で持ち替えていった。
「……やっていいことと、悪いことがありますよ」
お嬢さん呼びに、少し拗ねたような明るい音をしていた声は、2オクターブほど下がっていく。
愛銃ピュアフラックは、自分が自分らしい可愛らしさを象るために拵えた道具の一つ。
目指していた人の足跡をたどるのではなく、自分の道を歩くために作った、決意の塊だ。
それをあろうことか、悪趣味な肉棒に見た目と匂いを変えられたとあれば……怒髪天を衝くとは正にこの事。
怒りを具現化したかのように、胸元に赤い一対の翼の紋が浮かび上がる。
撃鉄を起こし、破壊力を倍増する増幅弾を起爆させながらトリガーを引き絞ると、銃口には真っ赤な魔法陣が広がった。
パァンッ!!と炸裂音を響かせながら放たれた魔法は、バスケットボール程の大きさをした巨大な真紅の光弾。
それは彼の足元めがけ放たれ、何かにぶつかると同時に、強烈な爆風と共に炎を巻き上げだろう。
正しく焼夷炸裂弾といったところか。
普段は味方を巻き込むので使うことの少ない、炎の力を開放させるほど、憤りに満ちた心は彼に対して遠慮を捨てた。