2016/12/11 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクラーラさんが現れました。
■クラーラ > 遺跡から発掘された珍しい魔剣を賞品とした大会、その情報を聞きつけてここへとやって来れば、受付にて参加に必要な書類を受け取った。
記載されている注意事項は、目を通すとゾワリとする記載もあり、一瞬からだが小さく跳ねた。
・5人勝ち抜けが出来た時点で優勝決定、賞品を渡す。
・勝敗は相手を行動不能にするか、敗北宣言をさせるか。尚、殺した場合は負けとする。
・敗北した場合、参加時に預ける賭け金は没収となる。
・女性は賭け金なしでも参加できるが、敗北した場合は性奴として闘技場が回収することとする。
・死亡した場合の諸々の面倒、性的な事柄での面倒は一切関与しない。
まさに腐ったこの王都の一片足り得る内容に溜息が零れる。
受付の男がニヤニヤとしながら、賭け金について無駄に丁寧に教えてくれた。
普通の冒険者では出し様のない金額、だから身を売る選択肢があるのだと。
しかし、男の嘲笑う表情とは裏腹に、すっと軍票を彼に差し出した。
「王国軍 練兵小隊からの。ちゃんと使えるの、確認してくれる? 渡して、使えないから身体をよこせとか、嫌だから」
ここらにも駐留している王国軍の詰め所ぐらいはある、男はつまらなさそうに軍票が使えるかの確認を取れば、舌打ちしながら認印をドンと票に押した。
使えると確認が取れれば、書類にサインし、一応の身の安全を確保して金持ち達の戯れに関わることとなる。
一人目、二人目、三人目と、そこそこ腕のいい闘士が出てきたが、速度と技、魔法の連携であっという間に叩き伏せていく。
そもそも、殺さず負けを認めさせるか戦闘不能ということだが、女が弄ばれる様を見たがる観客のために、戦闘不能とみえても戦わせようとしてくる。
電熱を宿した刃を腕に押し付け、血が出ないように切り落としてやると脅して負けを認めさせたりと、悪役じみた事もしながら勝ち進んでいく。
4人目、気持ち悪い魔法生物をけしかけさせられたが、魔法で焼き続けると向こうが逃げてしまい、4勝目。
「……あと一人」
待機室へ戻ると、持ち込んだ竹製の水筒のコルクを抜き、ぐっと水を流し込む。
飲み物ぐらいだしてくれるのだが、何か仕込まれそうだと警戒してのこと。
あと一人と、焦らぬように心を落ち着かせつつ、体を冷やさないように、軽く動きながらラストの相手を待つ。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にフォークさんが現れました。
■フォーク > フォーク・ルースこと『ザ・バーバリアン』が闘技場に上がる数分前の出来事である。
「やらないよ。だって相手は魔法使うんでしょ?」
控室の長椅子に寝そべりながらフォークは不貞腐れたように言った。
魔剣を奪い合うイベントなど、魔法の心得がない男にはまったく縁がないものであった。
男が出場する仕合はあくまでエンターテイメントを追求するものである。
しかし闘技場のプロモーターは推して男を仕合に参加させようとする。
出場すれば、闘技場に立つだけで通常の倍のギャラも出るという。
男の心が少し揺らいだ。
「ダメダメ。だってあいつらが敗けたんでしょ?」
歴戦の闘技場ファイターたちが敗れたという報せが届いてくる。変な生き物を扱う魔法戦士の敗北も今しがた届いた。
これまで敗れた相手は、どれもそれなりに強いのである。そんな奴らを打ち破る女と戦いたくはない。
しかしプロモーターには恩がある。
「しょうがねえなあ……」
男は重い腰を上げた。
戦うことになる女は、現在待機室で休憩中とのこと。その間に男は体を温め、覆面を被る。
闘技場のスーパースター『ザ・バーバリアン』の完成である。
そして男は闘技場に舞い降りた。
「ようこそ皆の衆。この俺様が来たからには、もうご安心あれ!」
両手の人差し指で天を衝く決めポーズをしてみせる。観客が沸いた。
それだけで客が熱狂する。ザ・バーバリアンはそういうファイターなのだ。
「さて、待機室からレディーが戻ってくるのを待とうかね」
ぐ、と太い腕を組み相手を待つのである。
■クラーラ > 組み伏せようとすれば、速度で振り回して背後から一撃叩き込む。
力技に入ろうとすれば、受け流されて顎に膝蹴りを叩き込まれる。
飛び道具との連携をすれば、魔法を叩き込みながらかき乱され、削られる。
おまけに負けを認めぬなら、傷口を焼き塞ぎながら切り落とし、四肢がなくなるまでやってやると脅したりと、女の所業にしては容赦がない。
「……ん、わかった。すぐ行く」
次の相手が決まったと聞けば、小さく頷いて待機室を後にする。
廊下を歩いていると、ぼろぼろになったサンドバッグを引きずる男がみえた。
所々から砂が溢れており、もう使いものにならないのだろう。
脅しは大切とよく理解した今、それは丁度いい脅し要素になると考えて、男に声をかける。
「それ、捨てるなら…ちょっと使いたい」
いい? と軽く首を傾げると、どうせ捨てるものだしと承諾する男へ、闘技場まで運んでもらうことにした。
歓声沸き立つ中、白基調の整った装いをした細身の女と、ボロボロのサンドバッグを引きずる男という奇妙な組み合わせで現れると、すっと、闘技場の方を指差す。
「あっちに投げてくれる? ぽいって」
それを担ぎ上げた音が、ため息を吐き、これでいいか!?と投げやりに放る。
それでいいと呟くと、既に溜め込んでいた魔力を解き放ち、身体に電気として流す。
加速の魔法、刃に伝熱を通す魔法。
同時に使って跳躍すると、サンドバックに袈裟斬りを放って闘技場に降り立つ。
ザシャァッ!! と皮が寸断されて派手に砂が飛び散る。
まるでお前をこうしてやると言わんばかりなパフォーマンスだが、多分こういうので脅しになるか、無駄に気合い入れてくれて空回りしてくれる筈…なんて思いながら、涼しい顔で剣を鞘に収めた。
「……」
覆面に腰に毛皮を巻いた変な格好、それに訝しげに少し表情を歪ませた。
自分も無駄に派手なパフォーマンスをしておきながら、奇妙といえた義理ではないが。
■フォーク > 「…………」
対戦相手の顔を見て、男は自分の左胸を強く叩いた。
一瞬、心臓が止まりそうになったからだ。
(な……なんであの娘がここにっ……って、そういえば彼女、魔剣とかそーゆーのに興味があったんだったわ)
前に彼女が持っている魔剣を見せてもらったことがある。
男には芸術的価値しか理解できなかったが、何やらすごい魔剣だといっていた。
そんな彼女がこのイベントに参加しない理由がなかった。
(怪我とかさせたくないなあ)
と、考えていたら彼女がパフォーマンスを始めた。
彼女の体が光ったかと思えば、宙に投げられたサンドバックが一閃で切り裂かれたのだ。
(こりゃいかん。下手に手を抜くと俺が怪我する。いや怪我で済めばいいなって感じだぜ)
男は女が裂いたサンドバックの前に立ち、こぼれた砂を手ですくい上げる。
砂はサラサラと男の手からこぼれ落ちていった。
「ほー、さすがさすが。多少やるようだが、このザ・バーバリアン様とお嬢ちゃんとでは所詮モノが違う、モノが!」
と挑発をする。
そして叫ぼう。
「ゴングだ!」
かくして試合開始である!!!!!!
■クラーラ > こちらからみると、覆面をしているのと、以前と違う格好というのもあって、知り合いだとは思いもしない。
今のところは、こんなところで女を食い物にしている悪党で変な人ぐらいな認識である。
やるからには本気で斬り伏せてやると、言わんばかりなパフォーマンスを見せるも、男の方は挑発するぐらいの余裕はあるらしい。
変わらぬ表情のまま、さすが最後とあって強いかもと気を引き締めていく…のだが。
「モノ…? えっと、腕前っていいたいの?」
彼の挑発の意味が今ひとつ分かっていないらしく、変わらぬ表情でいつもの様にこてりと首を傾げる。
ゴングが鳴り響けば、あとでいいと思い直しつつ、地面を蹴った。
神経の電気信号を加速させ、更に魔法自体の力でも動きを加速させる。
ジグザグに走りながら前へ飛び出すと、刃の射程一歩手前で自身の右手側へサイドステップして、急激な方向転換をする。
「ショックボルト…!」
電気を圧縮した短矢を、ステップからの着地で地面を滑るようにしつつ彼へ放つ。
当たれば、強い電流が身体を痺れさせて痛みを与えるだろう。
まずは速度と魔法で、相手がどんな風に動くかを確かめに掛かる。
■フォーク > 「ザッツ・ライト!(そのとおり)」
女の質問に大仰に返す。
実は、男本人もいまいちザ・バーバリアンというキャラクターが掴めていない。
戦闘中はテンションが上がるし自を隠すだけで精一杯なのだ。
試合開始のゴングが鳴った。
女は奇妙な(おそらく魔術が絡んでいるものであろう)身のこなしで突っ込んでくる。
(右か、左か、そのままマッツグか!?)
右だった。
女から電撃の矢が生まれる。
それに対して、我らがザ・バーバリアンは?
「うほほほほほほ~~~!!」
なんと女に背を見せてダッシュしたのである。それはそれは見事な逃走である。
電撃の矢は男を追う。逃げる男、追う矢。
壁際で、男が止まった。そして女の方を振り返り……。
「ニヤリ」
男が不敵な笑みを見せたと同時に、電撃の矢は男に命中する寸前で、大きく軌道を変える。
電撃の矢は、闘技場の壁の奥。観客席に立てられている旗を立てるための金属製のポールにぶち当たったのだ!!
雷は金属の、しかも高いものに命中しやすくなる。旗を立てる高い金属のポールが近くにあれば、人間よりもそちらに向いてもおかしくはない。
「お嬢ちゃん、俺様はな……この闘技場でのバトル数は百戦錬磨なんだよ」
この場所で、様々な相手と戦ってきた。電撃を使う相手とも然りである。
「さあて、今度は俺様の反撃だな!」
拳をペキペキと鳴らした。太い指だった。