2015/11/07 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にマユズミさんが現れました。
マユズミ > 「深夜倉庫街:ある倉庫前」

うんざりと息を吐く。
辺りは既に深夜。
聞こえる音は遠くに響く波音。
倉庫街の一つの倉庫の入り口近くの倉庫の壁にもたれ掛かりながら何度目かの息を吐いた。

所謂倉庫番という仕事なのだが。
倉庫番は数名で交代でやるのが基本だと言うのに今回は何故か人の集まりが悪く、交代も無く彼女一人であった。
始まる前には、追加の人員が見つかればすぐに寄越す、と言っていたが。
空を見る。
夕暮れ時の空から始まったこの仕事。
既に空は漆黒に染まっており、追加の人員など期待できなさそうである。

「はあ」

夜に弱い訳でも無いし一日見張りなど慣れているものの。
何か起きた時に対処するとなれば非常に面倒くさい状況であった。
硬く閉じられている倉庫の扉をちら、と見る。
何が納められているのかは知りもしないが、到底放浪の傭兵一人で倉庫番をさせるようなものだ、ロクなものも無いのだろう、などと思いながら。

ひゅう、と吹く夜の風に少しだけ身を強張らせた。

マユズミ > 最近は風も冷たくなった。
が生憎、追加のローブなどは詰所の方に置いてきており、何時もの装備だけである。

少し走れば取りに行けない事も無い。
が万が一を考えない訳には行かないので仕方なく身体を縮めて耐えるのみだ。

一人でも増えれば話は変わると言うのに。
恨み言の様に心中で呟く。
辺りに気を張るのにも、中々集中力が必要だが一人で夜明けまでするのは到底不可能に近い。
そして何も無い事こそ重畳とはいえ、何も無いからこそ集中力も落ちる。

「ワリに合わないったら」

呟く声は辺りの空気に紛れて霧散していった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──トッ、トッ…と特に隠す気もない足音が、静けさの漂う倉庫街の道に響く。
足音の主は、長剣を背負った冒険者風の出で立ちの、金髪碧眼の男。歩きながら適当に周囲に視線を彷徨わせるその表情は、なんというか呑気そうだった。

「……む?」

そして程なく、男は立ち並ぶ倉庫の一つ、その出入り口の近くに佇む人影を見つけてその歩みを止める。
軽く首を傾げるような仕草をしてから、おもむろにそちらの方へと近づいていって。

「……やあやあコンバンハッ。どうしたのかね? こんなトコで一人で」

と、声を掛けながら、人差し指を立てて片手を上げる。
その指先からぽう、と山吹色の淡い光が現れ、手のひらサイズの光球になり、互いの顔を照らす。
へら、と緩く笑った男の顔が少女にもよく見えることになるだろう。

マユズミ > 歩く音にピクン、と反応をするが特に隠そうともしていないし、殺意があるようにも、思えないので警戒を解く。

が、その足音は途中で止まり、気付けば此方へ向かってきているようで。

見れば、ゆっくりとこちらに来る冒険者だろう。
男が目に入って。
こちらに声をかけてくる。

「……こんばんわ」

少し考えた末、短く挨拶だけを伝え。
淡い光に照らされ笑う男の顔。
それを軽く見上げた。

「仕事です。所謂倉庫番と言う奴で」

隠す理由も無いのでそう伝える。
そして一人で在る現状を再度思い出して軽く息をはいた。

エレイ > 挨拶を返してもらうと笑みが深まる。
それから少女の顔をよく見ようと、光を少しだけ近づける。
ふわりとした暖かさが、彼女の夜風に晒され冷えた肌をほんのり温めるかもしれない。

その東洋系の顔と、そして服装、腰に下げた刀とかを、珍しげな顔しながらジロジロと無遠慮に眺め回しつつ。
続く言葉にはほう、と声を漏らし。

「倉庫番かなるほどなという顔になる」

と、真面目くさった顔で顎に手を当て頷いてから、はた、と眉を持ち上げ。

「……ってキミ一人でか? なんか他に人の気配系のものがないように感じるのだが…交代要員がどっか他のトコに詰めてるとかかな?」

よもや彼女が交代もなしの全くの一人で倉庫番をしているとは流石に思いもよらず、首を傾げてそんな問いかけを投げかけ。

マユズミ > 光が近づけば少しだけ身体が温まり。
ふう、と先ほどより軽い息を吐いた。

こちらをじろじろと見る男にジト目になりながら。

「余り女性をじろじろと見るものじゃないと思うが」

変わらず軽く見上げながらそう呟く。
半分、東洋の血が混じっているのでそういう目で見られるのにはそこそこ、慣れているものの。
とはいえそこはマナーだろう、と言う事であった。
気配がない、と呟くエレイに。

「その通りだよ。生憎交代のお仕事を出来る人が見つからなかったようでね」

言いながら困ったものだよね、と肩をすくめた。

エレイ > 「おっととすまにい。マナー的にアレだとは思っているのだがついつい潔い好奇心が出てしまってな。東洋系なのも珍しいのだがそこについげきの美少女という要素が加わってしまっては思わず3回連続で見つめてしまうのも仕方ないと思った」

ジト目で指摘されれば、ハッハッハ、と悪びれた風もなく笑いながらつらつらと奇っ怪な口調でそんな返答を。
こちらの問いへの答えにはウェ!? と妙な声を漏らして驚き。

「女の子に完全ソロで倉庫番させるとかちょとシャレならんしょ…」

先ほど聞こえた溜息めいた息遣いの理由も得心が行くと、眉しかめながら呟き。
それから改めて彼女をじっと見遣りつつ腕を組み。

「ってゆーか…俺様が見た限りキミは中々腕が立ちそうだったな。その腰のカタナも飾りではないんでしょう? なんでこんなしょっぱい仕事してるわけ?」

と、首を傾げながら問う。
自分も割に合わない依頼を請け負ったりはするが、それは報酬以外のところに価値を見出しているからで。
この仕事に彼女にとって何かそういうものがあるのかな? と頭の片隅で考えながら。

マユズミ > 「まあ、慣れてはいるんだけど」

得てしてこういう手合いは気にしないことが多いので、一応言っただけであり、それほど彼女も気にはしていなかった。

「しょうがない所だと思うけどね」

この倉庫番と言う奴はとにかく厄介で。
何がと言えば何も無いのだ。
何かあれば相当な事態であるし、何も無ければ彼女の様に数時間はひたすらぼんやりする羽目になる。
いわば、余り傭兵や冒険者は余りやりたがらない。
エレイがそう言うのも痛くよく分かった。
首を傾げるエレイに。

「……特に理由は無いかな。まあ割には合わないけど」

お茶を濁す。
そこは真面目に言う必要が無い、と判断して。
夜は一人で何もしないでいると流されそうで。
そう思って夜のこういった番をして自分を仕事中に切り替えているだけであった。

エレイ > 「…まああ倉庫番といえば聞こえは…良くもにいがぶっちゅけここは風景が倉庫か海か、といったところだしな…何か事件でも起きないかぎり確実に致命的に致命傷なレベルの退屈な時間が番する奴を襲うのは間違いないだろうな」

そこら辺の事情は、通りすがりでしかないこの男にすら容易に察することはできた。
ぐるりと、周囲の中々に殺風景な様子を改めて眺めてから、大げさに肩をすくめてフンス、と鼻を鳴らす。
特に理由はない、との返答にはまた顎に手を当てふむ、と唸り。

「……そうかならいいのだが。だがまあ偶然たまたま通りすがってしまった以上俺は放置してはおけなかった。とゆーわけでキミの仕事の時間が終わるまでは一緒にいて暇つぶし要因になってやる俺は優しいからな」

などとドヤ顔しながら勝手に決定すると、側に近づきぽん、と軽く肩を叩く。
それから彼女の顔を覗き込むように見遣って、ニッと少年めいた笑顔を向け。

「──俺はエレイといって謙虚な旅人で冒険者だが呼ぶときは気軽にさん付けで良い。キミは?」

マユズミ > 「そう言う事だな」

再度肩をすくめる。
相当退屈なのだ。
刺激を求める冒険者などは進んでやりたがらないし。
そもそも傭兵であれば余りにも「ワリに合わない」
それこそ人を斬っている方が話も速い。

ぽん、と肩に手を置かれ。
ずくん、と身体が音を鳴らした気がして。
―――努めて無表情を貫いた。

「すまないが、余り触らないで欲しいのだけど」

ジト目を一層強くし、エレイにそう言えば。

「エレイ……ええ?あぁはい。エレイ、さんですね。自分から優しい、っていうのもどうかと思うんだが」

暇つぶしに一緒にいてやる、という言葉に軽く首を傾げ。

「ヘンな人だな。貴方は。……マユズミ」

そう、男へと名乗った。

エレイ > 「……む? なんだ、どうかしたわけ?」

肩に触れれば、強いジト目で睨めつけられる。
普通なら先ほどのように軽く笑って軽く謝るところだったが、その表情にどうにも違和感を感じて、訝しげな表情を浮かべて問いかけた。

「ヘンとは失敬な…まあいいが俺は心が広大だからなその程度は気にはしない。マユズミか…ほむ。じゃあ……マユちゃんといったところかな? ともかくヨロシクだぜ」

さん付けで呼ばれて満足そうにしつつも、変な人扱いされると唇3の字に尖らせブー垂れて。
しかしすぐにまたドヤ顔に戻って自賛してから、名前を聞けば少し思案顔。
その後に勝手に愛称を決めて呼ぶと、笑顔でビシ、とサムズアップしてみせた。

「俺も実はこの王国の外から来たいわゆる異邦人だからよ、仲良くしてくれると嬉しいです」

そう言って、咎められたばかりにも関わらず今度は背中をポンポンと叩いた。

マユズミ > 「何でも無い」

幸い、それほど疼きも大きく無くスと身を少し引いた。
いぶかしげな表情を浮かべるエレイ。
流石に説明する訳にもいくまいし。

「そうですか。……まあ好きに呼べばいいよ。ん、ああそうなんだ」

へえ、と少しだけ声を上げれば、次は背中を叩かれ。

「っ……だから、軽々しく触るな、って……」

少しだけ、息を荒げてエレイを睨みつける。