2015/11/03 のログ
オーベ > (串焼きをもそもそと食べる野良猫たちを眺めていたが、この後も買い物やら渡りをつけておきたい事柄が幾つかあったのを思い出せば、群がる猫たちを踏んでしまわぬように気をつけてその場を離れる。ひとまず、狭い通りを歩いて行き、再び人の流れの多い場所まで来れば、その流れに紛れるようにして、目的の場所へと消えていくのであった)
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からオーベさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にルーキさんが現れました。
ルーキ > この都市にやってくるのも何時ぶりか。

未だ人間だった頃、何度か私用で訪ねたこともある。
今やその時の記憶無く、日も落ちたというのに辺りを彷徨っていた。

「………飽きないな」

普通の市場、倉庫街。少し裏の方に行けば奴隷市場等も。
海の男達が帰っていく、その背を少し離れた場所で見送りながら呟いた。

奴隷に可哀想だ、何だという思考が無いわけではない。
しかし自ら手を出すこともしない。
ただ端から見ているだけ。

ルーキ > 「―――…ん?」

立っていたのが人目につかぬ場だったせいもあろうか。
娼婦か何かと間違えたらしい、酔っ払った男が近寄ってくる。

「生憎だが。わたしは身体を売る気なんてないぞ」

男に向けた手をぎゅっ、と握って広げる。
途端に目に見えない何かに縛り上げられたかのよう、抑えつけられたかのよう。
その巨体が地に伏した。

「……悪いが、少しばかり寝ててくれ」

気をも失っている。
仕切り直しとばかり、背を薄汚れた壁に預けて海を眺める。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にキスカさんが現れました。
キスカ > 港湾都市の玄関口に遙か遠く、巨人のように佇む灯台に光が灯る頃。
所用を済ませた帰りに見知った顔に出会った。

「あの船には」

潮風薫る港に出入りする無数の船のひとつ。
風船みたいに膨らんだ形の、大きな武装商船を指さす。

「私と同じくらいの、ミレーの女の子がざっと20人くらい」
「この港を出たあとは、海を渡って外国のお金持ちに売られていくんだ」

お邪魔さま、と小さく手を振って。

「この街では何でも買える。君も私も、あの船だって―――十分なお金さえあればね」

ルーキ > 話しかけられれば、ひらっと手を振って笑う。

「―――船を買うお金は今の所、わたしには無いな」

指差された商船を見、ぽつりと呟いた。
そういえば相手もミレー族だったか、と。今更思い出したかのように。

「……金持ちの考えは似たようなことばかりだ」
「わたしの家族なんて、まだマシな方さ」

そう言って手招きする。

キスカ > 「家畜と同じ場所につめこまれて、病気になったらそれでおしまい」
「亡骸は海に捨てられて、誰にも知られずに消えていく」

のびた酔漢の頭を蹴っ飛ばし、生き人形に抱きついて頭をもたれる。

「昔はこうじゃなかったんだよ」
「ただ、こうしようって決めた王さまが一人いただけ」

オッドアイを見上げて、ふいっと目を逸らす。

「ルーキが王さまになればいいのに」

ルーキ > 「―――それが、わたしが生まれるより前から続いているわけだ」

抱き寄せるようにして、視線を移す。
オッドアイの瞳が色白の少女を映し出した。

「……人形が王様になったって、ついてくるのは人形の兵隊だけだろうさ」
「あとはキミくらいなものか」

遠く、荒くれ者の下手糞な歌声を耳にして。
小さく溜息を零す。

キスカ > 「王さまが人形になるのと、人形が王さまになるの」
「どっちも同じに思えるけど?」

良くも悪くも、ナルラート以降の諸王であれほどの暴虐を振るった王は出ていない。
裏を返せば、今日の王は無数の利害の糸に絡めとられた操り人形なのだ。
その糸の一端をにぎるのは、王国の社会に住まうすべての成員たち。
この手のひらの中にさえ、手繰ればぴんと張る細い糸が握られているはずで。

「その時は私があやつってあげる」

血色の薄い手をとって、潮風に当たって冷えた頬にあてがう。頬、摺り寄せて。

「ルーキは私の人形だから。他のしがらみは全部私が切ってあげるんだ」
「で。こんな海の近くでなにしてるのさ? 塩気は故障の元なのに」

ルーキ > 「……はは。悪いが遠慮しておくよ」
「わたしがこうなったのは――結局は、政争のしがらみを断ちたかったからだ」
「善意の第三者が現れるのを――期待するとしようか」

触れる冷えた頬。常人とはやや低温の掌で撫で擦る。
そっと顔を寄せ、じゃれる風に軽く唇を重ねた。

「何、久々に来たからね。海でも見たくて」
「塩気でどうにかなるほど、わたしの身体は柔じゃないぞ」

キスカ > 臆病者、と小さく呟く。
それは悪意の棘ではなく、どちらかといえば愛ゆえの言葉。

「生まれは選べないけど、生まれた以上は覚悟するしかないのに」
「お人形さんになって逃げ切ったつもり?」
「尊いものの務めを捨てて、手を汚すこともできなくて」
「救い主が現れるのを待っているだけ」

あの船の中にいる同胞の前で同じ言葉が言えるのかと、問いかけるような目をして。

「そんな言葉、私だったら恥ずかしくて口にもできないよ」
「おめでたいルーキが好き。お望みどおり、何も考えなくていいように私が可愛がってあげる」

まるで作り物のように美しい目鼻立ちの、鼻の先に人差し指を突きつける。

「―――ちょっと言いすぎたかも」
「でも頭からっぽにしちゃダメだと思うんだ。人形だってちゃんとさ、考えないとだよ!」
「塩気でどうになっちゃったんじゃない? 大丈夫??」
「これはお手入れが必要かなー。必要ですなー。うんうん、お手入れすべき。されよう。でしょ、ルーキ?」

ルーキ > 悪意とは全く異なる、別の何か。
そんな彼女の言葉に驚くよう瞬いて、鼻先に突きつけられる人差し指を見て。

「―――ふふ」

思わず笑ってしまう。オッドアイが半月に細められた。

「……そうだな。わたしはまったくおめでたい」
「兄に弟に、父に家をお任せして。わたしだけ勝手に人間辞めて、しがらみから抜け出した気でいたんだ」

立てた人差し指で、己を指差す人差し指を押し退け――
指切りでもするかのよう、絡めて繋ぐ。

「……人形だもの、手入れは必須だよな」
「頼めるか、キスカ?」

キスカ > 「弟がいるんだ? いるんだっけ。そっかーいいなーかわいいんだろうなー」

似たような顔立ちかなと改めて観察する。
もともとショートヘアだから男の子バージョンが想像しやすいような気もして。

「会ってみたいな。ルーキの家族、使ってもいい?」
「そしたら私は、君の救い主になれるかも」
「私もルーキのパパやおにーちゃんに使われてあげるからさ」
「今の時代NINJAは必要だよー。ちゃんとしたのがいないと秘密も守れないんだから」
「あ、でも今って家出中みたいな感じ?」
「ひさびさに会った娘はお人形さんになってました!!ってパパショックだよねー」

つられて笑って、笑いあって、指を絡めたまま。

「この近くにお世話になってる商会があるんだ。空いてる部屋か倉庫を借りよう」
「―――うんっ、まかしといて!!」

手を引いて、いざなっていく。
エキゾチックな港湾都市の、隠された秘密の場所へと。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からキスカさんが去りました。
ルーキ > 「いるよ。かわいい……かどうかは、まぁともかく」

姉の視点からは測れない。
観察されれば、瞳が左右に揺れる。

「わたしの家族を……か?まぁ、構わんが」
「そういう……影で動く者を使ったことは…数える程しかないんじゃないか」
「いや、別に。ただ人形となってからは会ってないから…」
「驚くだろうな。きっと」

笑い合う。手を繋ぎ直して、しっかりと握る。

「あぁ。――じゃ、行こうか」

手を引かれ、己の知らぬどこかへと。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からルーキさんが去りました。