2015/10/27 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にクロウさんが現れました。
■クロウ > にぎわう港。
昼を過ぎて、しかし夕暮れにはまだ早い時間。西日はまだ、甘い紅には染まっていないものの、強烈に地上を照り付けていて影を伸ばしていた。
港が一番にぎわうのは、何だかんだ言って早朝だ。出港する船も多い。
だが、この時間であっても入港してくる船が決して少なくないのが、港湾都市ダイラスを港湾都市たらしめている部分だろう。
そうして、大量の積み荷、そして船員や乗客が賑わう港に、男は立っていた。
今まさに到着した大型の帆船の脇で、無言でそれを見つめている。
行き来する積み荷や人々を、じぃ、と蒼い瞳で見つめる。
男に気付いた幾人かのうち、さらに幾人かが、愛想笑いを浮かべて声をかけてくる。
「やぁ。こんにちは。良い旅だったかな?」
男は薄く笑って問いかける。
そのまま愛想笑いで答える者もいれば、薄気味悪そうな表情を浮かべて去って行く者もいる。
共通している事は、誰も男に必要以上に近寄ろうとしないという事。
■クロウ > 男は決して彼らに自分から声をかけない。
ただ黙して、その様子を見つめるだけ。時折声をかけられた時だけ、同じ対応を繰り返す。
蒼い瞳をそちらに向けて、ゆるりと微笑んで問いかける。
真昼間に幽霊を見たような貌をして、帆船の船員らしき男が去って行った。
男はそれを目で追いもせず、視線をモノとヒトの流れに固定する。
色々といるものだ。
人間もいる。ミレーもいる。魔族もいる。
男は目を細めるようにして、また薄く笑った。
「次の船出までに、もう少し愉しめれば良いのだけれども。」
独白を漏らす。
手枷をはめられた少年少女の一団が列を成して降船してくる。
奴隷だろう。種族は様々だが、やはりミレーが多い。
■クロウ > ふと、誰かが気付いた。
先ほどまで、じっとあそこに立って積み荷や人を見つめていた男はどこに行ったのだろう、と。
そこには、誰もいない。
まるで最初から誰もいなかったかのように、大きな木製のコンテナがうず高く積まれているだけ。
とても、ももの数分で積み重ねられる量ではあるまい。
隣にいた者に訪ねようとして、やめる。
その男は決してそちらを見ようとしていなかった。
彼はもう一度振り返った。
やはりそこには人影などなく、不細工に積み上げられた無機質な木製オブジェが西日を浴びて聳えているだけであった。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からクロウさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にレナ=ミリイさんが現れました。
■レナ=ミリイ > 積み荷を降ろす港のにぎわいも去った深夜。
一人、ポツンと桟橋に座りながら海を眺める人影。
「はぁ……」
海に反射する月を見ながらため息一つ。
右手で下腹部を撫でながらどこか遠くを見る目で、頭の耳は力なく垂れており。
けだるそうに足をぶらつかせていて、何とか先ほど依頼を終えて子供のお小遣いくらいの報酬を得てからここで体を休めていたのだが。
「気持ち悪いな……動く気も出ないし」
なんとなくこの怠さの原因は察していた。
少女とて女である、何度も身体を売っていればいつかは妊娠するのだろうことは覚悟はできていて、それ自体に険悪感はなかった。
幸いにして部族の加護のおかげで悪阻などはない、妊娠していても身体を動かすことに問題はなかった。
しかし、少女にとって誰かの子を孕むというのは初めてのことであり、精神的に疲れを覚えるのは当然でもあり。
■レナ=ミリイ > 抱かれた相手もここにきて一人二人ではない、本来であればだれの子かわからないものである、しかしなんとなく先日買ってもらった薬を使うお客だろうことはなんとなく感じていた。
しかし、それをどうこう言うつもりもなかった、少女にとって子を孕むのは覚悟の上であるし、そもそもそれがいけないという価値観も無い。
そのため、これほどにも気を病む理由といえば一つ。
「生まれたら、どこに預ければいいのかな……」
目下それである。
部族社会で育った少女にとって、子供を産んだからといって自分が育てなければならないといった考えがなかった、子供は部族が育てるのである。
しかしここは人間社会、代わりとなる施設なり場所なりを探さなければならない。
ましてや、自身は加護により妊娠期間が極端に短い、以前の行為からさほど立っていないにも関わらず、すでに初期症状が出ているのである。
■レナ=ミリイ > 「取り合えず今日のご飯を考えないとだめか」
ポケットの中をあさって出てくるのはわずか10ゴルド、これではパンひとつ買えるかどうか。
この時間から外に出て狩りをするのはリスクが高すぎるだろうから、やはり今夜も身体を売らなければならないか。
「もしかしたら誰か知ってるかもしれないし」
そう思い直しわずかばかりのお金が入った袋を腰ベルトにぶら下げて桟橋から立ち上がり歩きだし。