2018/01/03 のログ
ご案内:「セレネルの海 入り江」にエズラさんが現れました。
ご案内:「セレネルの海 入り江」からエズラさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海 入り江」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 寄せては返す、静かな波の音――
天には煌々と青白い月が異様に大きく輝いている。
南方に面したその入り江は、少し入り組んだ地形をしており、それなりに操舵に優れた者でなければ、通常の船舶で外海からは容易に到達することができない場所。
しかし、小舟ならば話は別。
小さな岩場にもやい綱で固定された舟の傍に、男の姿。
桟橋のように伸びた岩場の先端に座り込みながら、黒々とした海中に竿を垂らしていた――
「今日は明るい夜だな――」
仕事のない日が続くと、山や川や、時にはこうして海へ――
サバイバル訓練も兼ねて、最低限の荷物だけを持って出かけるのが趣味。
既にテントは岩場から少し離れた場所に設営済みで、夜釣りを楽しんでいるのであった――
■エズラ > 竿がひくつく――瞬間、腕をしならせて逃さず釣り上げ、岩場に落下した魚を手早く針から外す。
手元の籠の中に魚を放り込むと、釣り竿を肩にテントの方へと岩場の上を歩く。
その足取りにはよどみがなく、まるで平坦な道を歩いているかのようである。
程なく、ベースキャンプへ到着――
「ようし、まだ火が消えてなくて助かったぜ」
簡易組み立て式の椅子の上に腰をおろすと、暫し焚き火で暖を取る。
然る後、同じく組み立て式の小さなテーブルを用意し、魚を捌き始める。
下処理を済ませ、塩とこしょうを振りかけると、流木の枝に突き刺し、火の傍へ。
じりじりと魚が焼けていく。
細い煙が明るい夜空に上り、香ばしい芳香が鼻腔をくすぐる――
ご案内:「セレネルの海 入り江」にイーリスさんが現れました。
■エズラ > 「……よし」
魚の表面に食欲をそそる焦げ目がついてきたのを見計らって火から離し、かぶりつく。
口腔に芳醇な味わいが広がり、最低限の味付けにもかかわらず、十分に美味い。
海の恵みに感謝しつつ、綺麗に骨を残して完食。
暫し、揺らめく炎を眺めて過ごす。
「……やっぱ、火はいい――」
誰が聞いているわけでもないのに、ふと呟いてしまう。
一人でいる時、脳裏によぎるのは、いつも戦場の記憶――
■イーリス > ぎっ、ぎっ、ぎっ…。
規則正しい櫂が軋む音を響かせ、波を割って灯りを点けぬ小舟が漆黒の海を奔る。
「正規の船乗り」が乗らない船は、当然のようにダイラスの船着き場には投錨できない。
となると、それらの船は必然的に港の外の岩場や入り江に投錨することになる。
ある程度の縄張りはあるが、その辺りは暗黙の了解というやつが存在していた。
なのに、だ。
今宵の「仕事」に出るべく港から小舟に乗り、我らが「船」へと乗り込もうと差し掛かった入り江に灯りを見た。
揺らめく灯りからそれが炎だと遠目でもわかったし、それはヒトか何かが居ることを示していたから、
小舟の行先をその入り江へと定めて向かわせたのは、ほんの気まぐれ。
ただ、入り江の岩場に差し掛かって、船があることは見えたが、人影はなかった。
「………お前たちは船に向かえ。軽く見回ってから、いざというときは、この船を使わせてもらうさ」
何か言いたげな配下の男たちに、ひらりと手を振り、岩場へと降り立つと同時に短銃を抜いた。
さほど殺傷能力はないが、威嚇程度にはなるだろう。
ぴりと肌を灼くような緊張感、これはやはり…―――悪くはない。
足音を立てず、静かに、ともすれば岩場に結わいた船の持ち主の寝首でも掻かんと気配を消して進む。
■エズラ > どこを見ているでもない、男の目――まるで虚空を認識しようと必死になっているような――
血、汗、腐臭に炎――悲鳴に怒号、砲声、攻撃魔法の炸裂する音――
そんな、「戦場」のすべてが、己が身をゆっくりねっとり包んでいく――
「……!」
瞬間。
男の目線が、虚空から現実へ転じる。
自分でも気づかぬうちに傍らの剣を手繰り、即座に呼吸が変わった。
波の音に紛れ、オールを漕ぐ音は聞こえない。
岩場が陰となって、舟の接近も視界には映らない。
それでも男は、異様な変化を感じていた。
そろりと物音を立てず、テントの陰に身を潜める――
■イーリス > 何も好戦的だと自認したことはないし、自覚もないが、海賊稼業は時として死線を越える。
己の立場上、配下の者たちほどではないし、護衛が居ることもあるから、死に直結することは稀だ。
だが、そうであっても、己の稼業は人の生を握っている側面がある。
部下、敵対組織、奴隷、そして―――…自分のそれを。
足音を立てず、気配も消し、僅かな呼吸の揺らぎでさえ見せぬようにと細心の注意を払い、
岩場を進む足元を、今宵の大きな月が照らしてくれているから視界は悪くなかった。
徐々に灯りが大きくなって、夜闇が薄くなってくる。
炎の勢いは案外大きく、僅かに鼻孔を擽る匂いもある。
「………」
未だ銃口は己の足元へと下ろされたままだが、一歩、その開けた場所へとたどり着いた時、
馳せた視線は緊張と共に怜悧で、そしてどこか好奇な色を綯交ぜにした複雑なもの。
気配を探るように、それ以上は進まず、視線だけが辺りを伺う。
月光と炎、その二つの明かりを半身に受けている己は、ある意味無防備だったが、
逆に言えば、おびき出すには十分すぎる「餌」になりえることを理解しているようで、
片手で握っていた短銃を支えるよう、もう一方の手がそれに添う。
何かが飛び出しでもすれば即座に撃つ、それはこちらの気配から知れるだろう。
■エズラ > やはり――いる。
テントの陰に身を潜めた男もまた、巧妙に呼吸を殺し、気配を消していた。
しかし、咄嗟のことで消化をする暇がなかった故に、自分の存在がその「誰か」には知られていると考えなければならない。
ただでさえ、人気のないこの場所にテントが張ってあるのだから、いつまでも身を隠してはいられない。
「……ったく……――」
喉の奥で小さく呟く。
「誰か」は海から来た――自分が身を隠しているのがその反対側なので、それは確かだ。
奇妙なのは大勢の気配はないということ。
どこからかこの明かりを見つけて強盗行為に及ぼうと考えたのなら、連れ立っているはず。
密かに周囲を固められている可能性も考えたが、それならばもっと前に自分の勘が働いていても良さそうだ。
やはり、一人――そう判断した男は、剣を音もなく引き抜くと、傍らに落ちていた流木の枝を拾う。
そしてそれを放ると同時、その方向とは反対側に飛び出す。
そのまま、人影の首筋に向けて剣を一閃――無論、現時点で傷付けるつもりはない――寸止めである。
何者か、何をしに来たのか――問う必要がある――
■イーリス > 馳せた視線が、月光と炎の明るさを頼りの捕えるのは、テントと生活感のある、今まさにそこに誰かが存在したと思しき様子だけ。
モンスターの類ではないだろう。
…まぁ、モンスターだって、魚を焼くぐらいの知能があるモノも居るかもしれないが、この場合は排除できよう。
となると、少なくとも人か、魔族か、それともミレー族か…。
我らが縄張りに近いのだから、味方でないのなら、戦闘の意思があろうとなかろうと、警告はせねばならない。
…海賊らしい、身勝手な認識だが、事実そう考えて行動しているのだから、この入り江で羽を休める人物にとっては厄災だろう。
何処に居る?
人の、否、そもそも気配がない。こちらに気付いて身を隠したとすれば、よほどの手練れだろう。
何しろこちらとて、岩場に降り立ったときから、それなりに気配を消して歩んできたはずだ。
「…―――っ?!」
不意に、何かの影が奔った。
人間の習性というべきか、むしろ張り詰めた緊張の中で走ったその影に、反射的に意識が向かい、
視線がそれを捕えるのと、両手で支えた短銃の銃口がそちらへと狙いを定めて、乾いた音を立てたのはほぼ同時。
その、通常の短銃よりも風を裂く音が軽いそれは、少量の魔力を収縮した単なるこけおどし、といえたが、
それでも裂傷を起こさせる程度の威力はある。
が、その魔弾が爆ぜ、流木の枝を掠めたのを視界が捉えたのと、
月光に煌めく剣先が己の鼻先で一閃したのはどちらが早かったか―――。
反射的に息を詰まらせ、身を強張らせる。
どうする、と思考するより早く、僅かに足元の感触を確かめるように爪先を動かした。
ともすれば、一瞬の隙を突き、反撃に出ることも可能だろう。
「………貴様、何をしにここに来た?」
だが、その足元の感触は柔らかく、踏み込んだとて威力は半減されそうであったし、何より…。
一閃煌めかせた人物のその動きは無駄がなく、そして隙がない。
だから、低く冷たい声でゆっくりと言葉を発した。
■エズラ > 銃声――男はその瞬間、己の判断ミスを恥じて奥歯を噛む。
たとえその首に剣を突きつけようと、相手の得物が距離をつぶせるものである以上、己の脅しが通じない可能性が高い。
おまけに、中空に放った枝を掠めさせる腕前――姿を現すべきではなかったか。
そんな風に考えていた矢先、冷たく鋭い声が響いた。
それに応じるよりも先に――風に揺らめいた炎が、「誰か」の顔を照らした――
「……イッ、イーリスッ!?」
両手で剣を構え、相手の首筋を狙いつつも――素っ頓狂な声を響かせる。
何故――?いずれにせよ、相手の様子は船着き場で猫と戯れている時のそれではない。
初めて見る――「海賊の頭目」としての姿。
下手に構えを解くことはせず、問いに答える――
「――キャンプに来だけだ、身体が鈍るのを防ぐためにな――本当だ」
返答しつつ、思案を巡らせる。
彼女がここに、それも明確な殺気を伴って現れた理由を。
■イーリス > 短銃の威力は致命傷にならない単なる脅し。
それに、魔力を有しない己にとっては、物理的な銃とは異なり、連続で撃つことができないという致命的な弱点があった。
勿論、敵対者にとってそれは知るところではないから、心理的な恐怖を与える程度には十分役に立ってくれている。
張り詰めた緊張感、相手の手によって己の「生」を握られているという僅かな…恐怖。
自分でも驚くほど、その恐怖は小さかったが、少なくともその一閃した相手が間合いを詰めても、
誰かを判断できないほどに意識が鋭敏すぎていた。
「はっ…―――エズラか…?」
素っ頓狂な声が浪間に響く。
息を短く吐き、緊張を解くようにその名を呼ぶと、張り詰めていた意識の糸が切れたみたいに、ふ、と口許に笑みが浮かぶ。
漸くそこで手にしていた短銃と共に、ゆるりと両腕を上げ、降参、の態を取る。
「なるほど…君の実力を見くびっていたな。君が加減をしなきゃ、今頃この辺は血の海だ」
ゆると首を振り、もう一度短く息を吐くと同時に、腕を下ろして大げさに首を竦めた。
そうなると、鋭利で冷たい表情も声も霧散し、彼の知る「イーリス」であろうことが知れるだろう。
「………しかし、何もこんな僻地ですることはないだろう?」
思わぬ相手の回答に驚きと半ば呆れとを含ませて問うて。
そして、ゆると視線を焚火の周辺へと馳せる。
………正しく「キャンプ」の準備は万端であったから、己の早計な行動に少しばかり自嘲気味に笑ってしまい。
■エズラ > 「……こっちこそ、肝が冷えたぜ。撃たれるのは嫌いなんだ――痛いからな」
同じように深く深く息を吐き――ゆるりと切っ先を地面へ向け、刀身を鞘へ。
じんわりとようやく額に滲んできた冷や汗を拭い、砂の上にどすん、と座り込む。
「アア……いや、こういう土地じゃないと意味がないんだ。リゾート地でキャンプしたって、それは「自然」じゃねぇだろ?」
男の目的はあくまで身体と精神の鍛錬。
なるべく人の手の入っていない、人の生きづらい場所がいい――そんなことを語る。
「……イーリスこそ、こんなとこで一人たぁ妙だぜ――ん、ひょっとして……――」
周囲を見渡して、改めて気付く。
この場所は、人目につかない。
おまけに、「通常の船舶」は容易に近付くことができないのだ――
そろり、と視線だけを上げて、言外に問う。
隠れ家か――?と。
■イーリス > 短銃をサッシュのホルスターへと仕舞いながら、小さく笑ってしまうのは、
彼が言う言葉の響きが妙に微笑ましかったからである。
未だ喉元に剣先を突きつけられていたが、そんな笑みを零すのは、
少なくとも目の前の人物が己の「敵」だとは認識していないことを行動が示していた。
腰を下ろした相手を見下ろし、もう一度辺りを見渡しながら、
「確かにそれはそうなんだがな、エズラ。
ここらあたりは…良くない。解るだろ、適度な岩場、港との距離。
今夜は「船」を投錨させている。その情報を欲している連中に渡されないとも限らない。
………となれば、その不安要素を排除する必要があるというわけだ。
何もこれは私に限った事じゃない。他の「船」の連中だって同じさ」
ほかの「海賊船」も同様。海賊船の敵は、何も正規の海軍だけではない。
同業者だって信用できない敵なのだから、警戒して損はなかった。
忠告めいたことを告げた後、視線を相手へと戻し、相手の言葉に耳を傾け、言いたげなことを理解すれば、
吹き出すように笑ってしまう姿は、先ほどの張り詰めた緊張感と殺気を孕んだ同一人物とは思えぬほど朗らかなもの。
「どうせ隠れ家だというなら、いつか君が連れて行ってくれた入り江かな。
まぁ…誰がその隠れ家まで船を漕ぐか、という問題が出てくるから………結局は陸に隠れ家をもってしまうんだが、ね」
懐かしむように目を細め、相手の向かいに腰を下ろしては、海賊船のボス自ら小舟を漕ぐ選択は御免蒙りたいようで、
笑い交じりにそう言葉を続けて。