2018/01/04 のログ
■エズラ > 「ンなるほどな……いわれりゃ確かにその通り。流石に不用心が過ぎたか――」
彼女の言うとおり、自分の行動は、海賊船の停泊地を探る密偵と捉えられてもおかしくはなかった。
もし現れたのが彼女でなかったなら――面倒なことになっていた可能性が、極めて高い。
やはり、命拾いしたのはこっちの方であったのだ。
「あ、ああ、そういや――」
いつか、彼女を案内した入り江のことをふと思い出し。
向かいに腰をおろした相手の姿をつい眺めてしまう。
月光に照らされた金糸のような髪が煌めき、猫を思わせる肢体は、たとえ男装であろうともそのしなやかさを隠せはしない。
「……なぁ、今夜はこれから――「仕事」か?」
ジッと、男の双眸が琥珀色の瞳を見つめる。
無論、その邪魔をするつもりはなかったが――もし、そうでないのなら。
その瞳の向かう先を、しばらくの間独占したい――そんなことを考えている。
■イーリス > 「海賊の理不尽な理屈、だろ?
しかし、まぁ、君の腕なら、どういう状況でも死線を越えていけそうだがな」
この辺りの岩礁や入り江を縄張りとしている海賊らしい身勝手な理屈だと理解しているようで、
少しばかり苦く笑って首を竦める姿は、さすがに申し訳なさげな色を含み。
とはいえ、彼の腕前を垣間見た今となれば、その忠告や心配は杞憂に終わるだろうが。
それでも、この辺りは面倒が多すぎる。
「ん…あぁ、これから「仕事」、だ」
相手の言葉に短く答える。
ぱちり、と焚火が弾けて、僅かに沈黙が落ち、炎と月光の明かりを頼りに相手を見た後で、
「だが、「仕事」をするもしないも決めるのは私だからな。…ボスが居なきゃ、今夜は休みだと理解するだろ。
………で、エズラ。
「仕事」がなくなったとしたら、その分、君が付き合ってくれるんだろ?」
大よそ彼の答えにアテがあるかのような口振りで、口端を上げ、
戯れめいた言葉を紡ぎ、ゆるりと腰を上げる。
淡い月光と温かく燃える炎に立ち上がった人影が大きく地面に影を差し、彼の方へと歩を進め―――…。
■エズラ > 「オレの腕を買ってくれるのは嬉しいがよ――くぐらなくてもいい死線は、なるべく避けて通らねぇとな」
くっくっ、と笑って現実的な台詞を紡ぐ。
繰り返し、命のやりとりを経験した身であることは確か。
生き残るための技術も、数多く習得した。
しかしそれでも――死ぬ時は死ぬ、それが人生と理解していた。
そして、続く彼女の言葉を耳にして、暫し、呆気にとられた呆け顔を晒し――
やがて、同じように立ち上がり、距離を詰め――その細く引き締まった腰を抱こうと腕を伸ばすのである。
「応――もちろん、全身全霊で――な」
■イーリス > 「ははっ、そりゃそうだな。…しかし、そうして死線を越えていれば、こうしてキャンプはしなくて済むだろ?」
相変わらずとんでもない理屈で話を進めているが、言葉遊びだと言わんばかりに声色には笑いが含まれて。
それに、彼のことだ、今まで潜り抜けてきた修羅場も一つや二つではあるまい。
だからこそ、避けて通る、という言葉も理解できるから、言葉遊びの域を出ない戯れであろう。
「ほら、「はい、お頭」っていう言葉はどうした?今日はナシかい?」
ついでに言葉遊び、というより悪ノリである。
肩を小さく震わせて笑いながら、その呆れた顔をした彼に急かすよう手を動かしてみせる。
だが、その言葉はなくとも承諾の意を取りつければ、双眸を細めて頷き落とし。
そして先ほど、己の「生」を左右したその手に軽く身を預けて―――………。
ご案内:「セレネルの海 入り江」からエズラさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海 入り江」からイーリスさんが去りました。