2019/01/17 のログ
■エルディア > 「―――」
暫く静かだったこの場所に今は地響きと反響する音が鳴り響いている。
いつもの小競り合いとは言え大がかりな軍の衝突は散発的に行われており近年は以前と比べても多くみられるようになってきた。
両翼が奇襲しにくい地形ということもあり王国軍は最前列に槍兵を中心に防御陣を張り、
その裏から魔術部隊や弓兵部隊が砲撃を行うという定石の戦法を取っているようだ。
対する他国軍は装甲獣騎や飛竜部隊を投入しその機動力を生かして戦線をこじ開けようと試みている。
鬨の声や大型魔術の閃光、悲鳴と怒号轟く戦場の様子を
ボロボロになった騎士団のマントを纏った人影が側面の山肌の岩のうちの一つからじっと見降ろしていた。
■エルディア > 最近は少し静かだったとはいえ、此処は度々戦闘行為が行われる”要所”だ。
数百から時に数千単位のぶつかり合いは珍しい事ではない。
今回は少し攻め手が頑張っていたようだがやはり数の差は如何ともしがたく、
その数の利を生かすような戦法を取る王国軍の壁を破ることはできなかったようだ。
両軍共に戦い慣れているとも言えるため、お互いに攻めすぎず、深追いせずといった調子で両軍共に傭兵と思しき兵がちらほらと目につく。
日も落ちた今となれば双方矛を収め撤退というのがいつもの定例でもある。
恐らく今回の衝突が今日最後の衝突となるだろう。
■エルディア > 「……」
その衝突を見下ろしていた少女はゆっくりと立ち上がる。
一際強い風に晒されて身にまとう布と長い髪が軽く音を立てた。
眼下の喧騒など気にも留めないようにゆっくりと空を見上げた少女は
一見迷い込んだ戦争孤児のようにも見える。
見上げる空の月は相変わらず青々と輝き、
今回の犠牲者たちの亡骸を照らしている。
「――」
目を瞑り何か一つ言葉を吐き出すと軽く地を蹴った。
同時に四肢は漆黒に染まり姿を変え、淡い青い光を帯び
その背中から巨大な鎧騎士のような剛腕が二本湧き出すように現れる。
見開いた瞳には既に煌々と赤い光があふれている。
ご案内:「ハテグの主戦場(流血表現注意)」にキニスさんが現れました。
■エルディア > 両軍共に彼女の姿を補足していないわけではない。
その姿は遠めに見ると非力な少女であり、
両軍の何方も魔術反応等を補足していなかったため
彼女が魔族だとは思わず彼女自身も静観を続けていた。
仮に彼女が魔族であったとして、
ゆるい傾斜かつ巨岩が広がるその場所は見晴らしがそう悪い訳ではないため容易に迎撃を行う事が出来るに対し
攻め手は走りにくい足場であることから強襲には適さない。
それをおして強襲するならもっと良い機会はいくらでもあった。
『隊長!右翼より高速接近物体。数1です』
『この数相手に……何を考えている?』
なにより、いくら魔族とは言えこの人数相手に突っ込んでくるのは自殺行為だ。
それを容易にこなすような存在はそもそもこんな場所に来る必要もない。
名を上げるにしても、リスクに比べて利が無い。
それが目的なら他に相応しい場所はいくらでもある。
それでもその少女は、躊躇無く大群へと突っ込んでいく。
その顔に笑みを浮かべて。
■キニス > 主戦場の山肌の一角。
彼女が淡い光を放ち、両軍へと突撃しようかという場面で一人の男がその光景を目撃する。
物陰に隠れてただならぬ少女の様子を覗き込めば、冷や汗をかく。
(何かやべー奴居るんだけど…!!)
かくいう彼は王国側に雇われた冒険者として此度の戦いに降り立った剣士である。
彼個人の力としてはあの光り輝く少女と比べては非力で無力なものであるが、彼の持つ呪いにも似た「特性」が戦場ではある意味、最も恐ろしい能力ではあるのだが…
「うぉぉおお!?ふ、普通の小競り合いとかじゃなかったのかよオイ…!」
急発進した彼女を見て、その大群から離れた場所で行動を監視する
彼も彼でそれなりの修羅場をくぐってきた手練れであるが、彼女の圧倒的な迫力に気圧されない訳ではない。
次の行動はなんとなく予測できるも、一体どうなるのかと巨岩の陰の安置から見守る。
■エルディア > 「ぁは」
向かう先は両軍の衝突している最も密集した場所。
既にこちらに気づき、迎撃術式を組み上げる魔術師と、
戸惑いながら此方に向かって武器を構える王国軍。
攻めていた他国軍は巻き込まれるのを恐れてか撤退していく。
……どうやら中々優秀な指揮官のようだ。
『迎撃準備。惹きつけてぼろきれにしてやれ』
一方王国軍は勝利を確信したまま迎撃にうつった。
合図とともに弓兵が弓を引き絞り、術師が術を練り上げ
迎撃が行われる瞬間、それまで岩破を跳ねるように進んでいたそれは
――宙を紅く駈けた。
背中で爆ぜる術式や矢の雨をすり抜け
音を置き去りにする速度で戦場のど真ん中へと飛び込む。
着地の衝撃で周囲の兵は無残に吹き飛び、一瞬戦場は静寂で満ちた。
「ぁーそぼ?」
抉れた地面の真ん中でゆっくりと立ち上がったそれは
王国軍本陣方向へと向き直りながらゆっくり立ち上がった。
その体の至る所が摩擦と圧縮熱で赤化しており
その髪の毛の先やマントの先端には火が付き風にはためいている。
けれどそれを気にかけることなく、少女は楽しそうに笑った。
■キニス > 「…!」
地震とも取れる彼女の着地の衝撃に体を揺らしつつ、岩にしがみ付き体勢を整える。
一瞬静まり返った戦場の真ん中に立ち、過熱状態である彼女を見据える。
魔王…しかもそんじょそこらのとは違う。特級魔王並の実力者。
しかも"アレ"はまるで嵐のように現れてまるで人を虫かのごとく蹂躙する破壊者。
アレはまずい。アレはダメだ。
「総員退避!!こいつは俺が引き付ける!!」
巨岩から身を乗り出し、ロングソードを両腰から引き抜いて両手に携える。
静まり返った戦場で王国側の騎士や兵士へそう叫べば、彼女へと突撃する。
圧倒的な力量差。それでも挑まねばならない理由がある。
兎に角自分が出来ることはこの"暴風"に対して、少しでも牙を向くことだけだった。
■エルディア > 一泊遅れて岩場が砲撃された轟音と矢の雨の音が響く。
それを見てふんっと馬鹿にしたように小さく鼻を鳴らす。
「まぞくあいてにー、やるきあるぅ?」
勿論偏差も含めで矢や魔法は放たれているが、想定半径が狭すぎる。
これなら並の速度の魔族でも頑張れば避けれる範囲だ。
対魔戦線の最前線で戦うものならいざ知らず、
この場は対魔族戦の経験すらないものも多い様子。
経験者がいたとしても彼女の速度の緩急についていけるものとなるとかなり数は減るかもしれない。
静まり返った戦場を見渡す。遊べそうな相手は……ひーふーみー
「ちょっとかー」
少し残念そうな声を上げると少し首を傾げ、指を宙に躍らせる。
光る指先が描くは立体魔法陣。各々の判断を量るようにゆっくりとそれを描き
「じゃぁ他はいらない」
腕を払うと同時に戦場を裂くように炎の壁が立ち上がった。
それは幾人もの兵士を飲み込み、声を上げる事すら許さず一瞬で灰へと変える。
切り立った炎の壁に恐慌状態になる王国軍を興味なさげに見つめたあと……
「あそぼ?」
背中の剛腕が漆黒の大剣を地面から引き抜き
果敢に斬りかかってきた剣士の剣を
そちらに目を向けることなく受け止める。
その音で気が付いたかのように笑顔でゆっくりと振り返った。
■キニス > (無双状態じゃねぇかよ、クソが…!)
自分の声を遮るかの如く放たれる高火力の魔法。
炎の壁に阿鼻叫喚状態の王国軍に何を言おうが今更無意味で、彼女の抑えに尽力しようとする
「遊ぼうって言われても、生憎こっちはお仕事中なんでね!
おままごとはオフの日にやってやるからよ!!」
感覚で攻撃を止められた…!
彼女の五感の鋭さやその剛腕と大剣を目にし、冷や汗をかきつつも
剣を握りしめ冷静に立ち回る。
笑顔を向けて来た彼女の懐へ飛び込むように接近し、その顔に回し蹴りを食らわせようとする。
■エルディア > 「ん―……」
狙ったのは本陣丸ごとだったのだけれど
どうも魔術師を狙うと少し巻き込む数が減ってしまった。
まぁ魔力保有量が多い順に巻き込めれば問題ないので良しとする。
「おままごとってなーに?」
迫りくる足を掻い潜るように身を屈め、此方から飛び込む。
こういう時小さいと便利だ。
気分的にはダンスのお時間。
「おにーさん、お仕事中なの?」
そのまま切り返す様に体を返すと手刀を走らせる。
狙いは軸足の関節部。軽くなのでまぁ吹き飛ぶくらいで済むだろうの力加減で。
そんな最中にきょとんとした表情で聞き返す。
■キニス > 「チッ!スカった…」
蹴りを掻い潜られ、即座に後ろに飛ぼうとすれば彼女の方から飛び込んでくる
機械の腕や武器はデカい癖に弱点っぽい本体はあんなに小さいのかと
心の中で相手の長所について悪態を付きつつ、カウンターを入れようとするが…
「がっ…はッ!!」
彼女の手刀を食らい、軸足から一回転し、数メートル吹き飛ぶ
彼女にとっては軽い攻撃なのだろうが、こちらにとっては大分の致命傷である
折れた?砕けた?外れた?ともかく、もうこっちの足は動かないだろう
きょとんとした表情の彼女にこちらは苦悶を浮かべた表情で、剣を支えにして立ち上がる
歯を食いしばって痛みに耐えつつ、一応は自分の任務である相手を引き付けることには成功しているみたいだ
「おままごと、てのはお人形さんを使う平和な遊び、だ。お前が今やってることは正反対のな…!
って…見て分かんねぇかよ…!そうだ、お前が俺以外と遊ばないようにするお仕事だよ!」
懐からナイフを取り出し、彼女へ投擲する。
狙いは彼女の首筋や関節、腹など、凡そ弱点であると見受けられる部分である。
■エルディア > 腕を振り回すような攻撃に若干の手ごたえ。
これは打点をずらされたなーと思いつつカウンターに備えてふわりと距離を取る。
思ったより吹っ飛んでいく相手に若干アレぇ?といった表情で首を傾げた。
剛腕が構えた大剣を空中で一振りすると溶けるようにそれは闇に消えていく。
「だれかね、言ってたよ?
おしごとがんばるひとは、えらいひとだって。
おつとめ、ごくろうさまです」
戦場に似つかわしくない雰囲気と柔らかい笑みを浮かべて両手を揃えてぺこりと一礼。
聞いた話仕事人というのは簪で獲物を倒した後釣り針で柱に吊るして
それから薬入れを見せて回らないといけないらしい。
訳が分からないけれど凄く大変なんだよと力説された気がする。
……誰にされたかは覚えていないけれど。
「ほかにあそんでくれるひと、いるの?」
辺りを見渡す。
未だに燃え続ける豪炎の後ろにいた本隊はすでに撤退の動きを見せている。
先に逃げた獣騎兵隊や飛竜の姿もなし。
殿を務める人物の支援をしようという動きすらない。
……どうやら遊んでくれそうな強さを持った相手もいなさそう。
それを見ると途端に興味をなくす。
「いなぃ。つまんなぃ」
ナイフを軽々と避けながら、なら全部燃やしちゃってもいいかなーと少し思う。
どうせ居てもいなくても変わらないのだから。
最後の一本を空でつかむと本陣に向かって大きく振りかぶった。
■キニス > 「何言ってんだてめェ…!」
いきなりお辞儀をし出す彼女に、痛みに耐えつつそう呟く
まさか自分を敵と思ってないのだろうか
確かに自分の実力で言えばそこら辺の兵士より少し強い程度だ
100万の力を持つ彼女に10と15の違いなど区別できるわけない
(完璧、嘗められてやがんな…!)
遊ぶ遊ばないに固執している彼女に歯を食いしばる
恐らく彼女の感性なのだろう。虐殺ではなく一種の『遊び』として今の状況を楽しんでいるのだろうが
しかし、困った事に彼女はだんだんと自分という『玩具』に飽き始めている
「待てやオラァ!!」
彼女が自分のナイフを掴んで大きく振りかぶった瞬間。
左手を彼女の方へ向けて特大の火球を放つ。
彼女が放った豪炎の壁に比べれば脆弱なそれだが、彼女の気を引くには十分な見た目だろうか。
■エルディア > 振り上げたナイフに刻印が浮かび、淡い光が集まる。
一種の吸魔術式は着弾地点を中心に周囲の魔力を強制的に奪うというもの。
迎撃しやすいこの場所は不幸にもこの場所はあまり逃げ場がないともいえる。
――ヒトって不思議だ。あんなに楽しそうに何度も戦争を起こすのに
こうして逃げ惑うのを見ると戦うのが楽しい訳ではないのだろうか。
苦しいなら、怖いなら、戦争なんかしなければいい。
「まいっかぁ」
遊んでくれないなら”収穫”に変わるだけ。
麦を刈る人が一々罪を覚えないように
彼女もまた人を刈りとる事に何ら悪意も罪の意識もない。
……ただそういうものだというだけだ。
「ん、と」
怒気の混ざる声に戸惑ったような反応を返す。
傍から見れば完全におちょくっている以外の何物でもないが
残念なことに彼女の場合割と本気でそう思っていたので
何を怒られているのかわかっていなかった。
「なぁにぃ?」
その怒りをぶつけるかのような火球は
守る様に割り込んだ巨碗に直撃し、炎と閃光をまき散らす。
それが静まった後には変わらぬ姿勢でナイフを振り上げたまま
静かな表情でそちらを見つめる姿があった。
それは手に持ったナイフをぱきんと握りつぶすと
「ぇぃ」
空中でデコピンのように腕を動かす。俗にいう空気砲。
それに圧縮された空気が破裂音を鳴らした。
■キニス > きっと彼女の手に掛かれが何のこともないナイフも大量殺戮兵器になるだろう
そう踏んで彼女に茶々を入れたのは正解であったか
本隊も大多数が撤退をし、ついに戦場にはボロボロの自分と、体に一切の傷がない彼女だけとなった
「だから他の連中の所には行かせないって言ってんだ…お望み通りにしてやろう
俺と遊ばねぇか?」
また先ほどの巨腕が現れたと見据えれば、ナイフを握りつぶし、こちらへと攻撃を仕掛けて来た
指先だけで風圧を起こし、空気砲なるものをこちらへと放ってくる。
それを風魔法を使って相殺しつつ、相殺しきれなかったものは氷魔法で氷柱を召喚し、ガードする
しかし、氷魔法の精度不足のため、空気圧が直撃すればそれは砕け散って周囲に冷気を漂わせる
「さぁ…次は何をするよ?言っておくが、案外強いんだぜ…俺はよ!」
回復魔法を唱え、足の怪我を癒せば、彼女へ再度突撃をする
特大の火球を放ちつつ、その火球に隠れて回り込むように接近し、背後から斬り付けようという戦法だ
五感の鋭い彼女には見切られてしまうだろうが、今自分が出来る最善手を打ち続けるしかない
この勝負、勝てる勝負ではないが、絶対に負けはしない
■エルディア > 「ほんと?」
遊んでくれるという言葉に華が咲くような笑みを浮かべる。
その一言で大群から興味は逸れた。
元々興味が失われつつあったのだから尚更だ。
軽いデコピンを弾き、回復魔法が効果を表すまでの間、
それは再びゆっくりと向き直る。
その瞳は魔術の光と共に期待の色が溢れていて……
「じゃ、ぁ、いくね?」
そう囁くと同時にとんとんっと爪先を地面に打ち付けると
自ら火球へと突っ込み同時にその細い腕を振るう。
それは易々と火球を撃ち抜き、その舞い散る炎に自身を焼きながら
その背後の人物もまたそのまま撃ち抜かんと腕を振り切る。
■キニス > (やっぱり…『それ』に固執するか…!)
遊ぶということに大きな笑みを浮かべた彼女に此方は余裕のない表情で思案する
だが、とりあえずは目標達成だ
あとは上手いことこいつを倒して生き残ればいいだけだ
…ま、それが一番難しい訳だが…
「さぁ、来ッ…!?」
自身が持つ攻撃の中でも割と上位の部類に入る火球を物ともせず
本体の腕で攻撃を仕掛けるようすに驚愕する。
だが、その動きを寸前で見切り、頬に指先が掠りつつも、相手の懐へと入り込む。
剣を振るい、彼女を斬り付ける…
と見せかけて、足を踏み込んでその腹へ向かって膝蹴りをぶちかまそうとする
■エルディア > 正直言うとこの戦場は期待外れだとおもっていた。
けれど外れ戦場にもたまにいる。こうやって、遊び相手をしてくれるヒトがたまに。
ああ楽しみだ。どうやって遊んでくれるのだろう。
どんな表情で、どんな戦術で、そんな覚悟で武器を振るうのだろう。
「ぇぃ」
その目は炎の舞い散る中でも冷静に相手の動きを追い続けている。
そのまま突き抜けてくるとは思わなかったのだろうか。
一瞬見開かれた眼と驚く表情がなんだか可笑しくくすりと笑みをこぼす。
「にゃっふ、ぃ!」
振り切った腕を戻しつつ前傾姿勢で飛び込む。
斬りつける動きは振った方が不利になるのでフェイント。
迫る膝蹴りの防御に肘を直角に合わせ、相手の蹴りを利用して体を跳ね上げる。
そのまま相手の肩を転がる様に飛び越えると同時に体を捻りすれ違うように蹴りを放った。
空中での回し蹴りが狙うのは相手の延髄。
「んふ」
そのままとんっと離れた場所に着地するも若干重心がずれる。
本来なら無傷のはずの腕から煙を上げていた。
防御術式も探ってみれば反応が無いだろう。
それどころか強化術式はおろか、背中の剛腕すら消えている。
何時しか魔族らしい特徴は消え、剣士の前に佇むのは一人の少女。
■キニス > 「がっは…!」
完全に動きを見切られており、フェイントも膝蹴りも何もかも対策を取られていた。
すれ違いざまに放たれた蹴りは自身の延髄へクリーンヒットし、一瞬視界が途切れ地面へと倒れ込む。
2秒だけ意識が飛び、目を覚ましたら地面へと倒れていた。
身体が何故か痺れたかのように動かなくなっており、立とうとしても腕と足に力が入らない。
「クッソ…!」
立ち上がれない。殺される。
冷や汗をかいて、必死にもがこうとするもその努力は虚しく視線だけ彼女を追う
しかし…可笑しい
先ほどまで感じていた彼女の異様な気配は最早感じることはなく、目の前にたたずんでいるのは普通の少女のように見えた。
腕からは煙を巻き上げており、痛みを感じるであろう事象に対してケロッとしていること以外は至って普通。
もしや…魔力が切れたのでは?
そう思考するものの、自分の圧倒的不利は変わらない。
回復魔法を使うにも先ほどの攻撃でマナを結構消費しており、大分寝そべらないとダメだ
さぁ、どうするつもりだ。彼女を見つめ、その動向を探る。
■エルディア > 恐らく本気で戦えば一瞬で終わってしまう。
なので防御障壁を消し、身体能力を抑え、
多分人って普通これくらいだろう程度まで出力も抑えている。
戦士に対してはかなり愚弄なのではないかとかそういう事は全く頭にない。
だってこれは遊びなのだから。
因みに彼女の思うヒトってこの程度も普通基準からはかなり逸脱している火力だったりもする。
「……あれ?」
ゆっくりと膝から崩れるように倒れた後、
しばらく気絶していたらしい相手を見て首を傾げる。
動かない。ちょっと綺麗に入りすぎただろうか。
様子を窺うように近づくと頭の近くにしゃがみこんでぺちぺちし始めた。
子供が動物をつつくような強さで全く敵意などは感じられないだろう。
「あれぇ……」
そこはかとないやっちゃった感にまずった感を浮かべながら
これどうしようと疑問符を浮かべていた。
■キニス > 彼女の手加減は知らなかったが少なくともこちらは全力で戦った
防御障壁などという魔法などは知らないし、使うつもりもない
故に純粋な彼という人間は、勢いのついた延髄に向かっての蹴りで気絶してしまうほど脆いのだ
「くっ…!触るな!」
目はとっくに覚めており、ペチペチと触る彼女へそう告げる
その指を噛んでやろうかとも思ったけどそうすれば流石に死亡は免れない
彼女も何故かこちらを殺す様子はないためここは一つ…
「…なぁ、悪いけどよ。回復魔法か何かかけてくれねーか?」
疑問符を浮かべ困惑する彼女へそう問いかける
もう十分遊んだろう…というか、このままでは彼女も遊べないだろうと思い
一応交渉をしてみる
■エルディア > 「あー……」
これはあれですね。クリーンヒットというやつですね。
ぺちぺちしながら思案を巡らすとまぁそういう事もあるだろうと溜息一つ。
次はもう少しうまくやらなければと思う。
大体戦いなんて最初の数手でケリが付くものだけれど、
それだけで済んでしまったら面白くない。
「んー、いーよ?」
基本的に戦った結果相手が死んでしまうだけで、
殺すか殺さないかは至極どうでも良いのだ。
食事ともなれば話は変わるけれどある程度”刈り取って”お腹は膨れている。
「んー、と、ヒトに使って良いやつ―……。
あー、うん、あれでいいや」
空中で再び指が躍る。
金色の軌跡は空中に留まり魔法式を形作っていく。
記したそれをパンっと両手で潰すと金色の粒子が広がり、ふわりと体に降り積もった。
「ふぁーぁ…ねむぅ」
そのまま立ち上がり、小さく伸びをする。
最早遊ぶことより眠気に意識を持って行かれつつあり
この後何処で寝ようかなーとか本人は呑気に考えていた。
――その回復術式が良く効くものである反面、
ヒトに使った場合副作用の筋肉痛が凄まじい物になるという事をこの時の彼女は、そして彼はまだ、知らない。
■キニス > 「い、いいんだな…」
案外根っこは優しい少女なのかもしれない
ただ、戦闘になると誰彼構わず大暴れして、マナを吸い取って、遊び相手を探して…
いや、やっぱり根っこが優しくてもマイナスな要素が多過ぎる
「人に使ったらダメな奴もあんのか…ちゃんとしたのを頼むぜ?」
若干冷や汗をかきつつも、彼女になされるがまま黄金の粒子が体に降りかかる。
そうすればみるみる内に身体は回復し、しっかりと歩行ができるまでに戻った
彼女の様子を見れば、もうこれ以上は暴れることは無いと安心し、とりあえずは構うのをやめる
その後、案の定その回復術式の副作用の餌食になった彼であったが
そのような悲惨な自体に繋がることをまだ知らず、そのまま王都へと帰還するのであった―――
ご案内:「ハテグの主戦場(流血表現注意)」からキニスさんが去りました。
■エルディア > もうこの辺りにヒトはいない。
それにやはりこの辺りではあまり戦闘に期待できない気がする。
……これはやはり例の場所に行くしかなさそうだ。
そうと決まればさっさと向かおう。
お腹も満たしたし、走っていけば明日には着くだろう。
「たぶんへーきなやつだよ?」
まぁあと数分もすれば動き回れるはず多分。
実に気まぐれらしく軽く手を振ると、振り返る事無く
トントンと跳ねるように走り出す。
「ん、じゃあね」
……次の場所にも、楽しい遊び相手がいると期待して。
ご案内:「ハテグの主戦場(流血表現注意)」からエルディアさんが去りました。
ご案内:「ハテグの主戦場」にエルディアさんが現れました。
■エルディア > (ログ取り忘れです。お気になさらず)
ご案内:「ハテグの主戦場」からエルディアさんが去りました。