2017/11/12 のログ
エレノア > 「ハァ……ハァ……ハッ……」

薬液の量が増えるにつれて、更に力が抜けていく。
それでも抵抗しようと力んだ所為か、それとも単に麻痺毒の作用の一つか、呼吸まで荒くなっていく始末だ。
大きな声を上げようにも、その為の力が入らない。
精々がこの場での会話に支障を来さない程度であろう。
弓を取り落とし、扉も閉められた。策もない。
麻痺した体にとっては、両腕を拘束する二本の蔓だけが支えだ。

「この、程度で……」

私を捕らえられると思うな、とは言葉が続かなかった。
抵抗しようにも、更なる注入を予期させる棘の存在が言葉を一瞬詰まらせる。
このまま無尽蔵に毒を注ぎ込まれれば、許容量を超えた体がどうなるか。
考えたくもない。

「何が、目的……だと?それは、此方の台詞だッ……。
軍の薬屋が……人類圏になど……。」

逃亡者に対する追手としては、あまりにも不適格だろう。
こうした一対一ならばともかく、魔族圏を抜け出した魔族全員を捕らえる、またか処断するとなると随分時間がかかるだろう。
そう判断しての返答だった。相手の問いに答えるつもりは、今はまだ無い。
それよりも、相手の目的だ。

クロステス > (呼吸をする為に必要な筋力も、少しは鈍くなるだろう
勿論、生命活動に支障を与えない程度に調整はしている
己を前にしての激情と興奮も関係しているのかも知れないが
其の辺りの判断は、今は二の次だ。)

……そうだね、普通ならその筈だ。 魔族なら毒への耐性が在っても不思議じゃない。
けれど、僕が何者か知っているなら、脅しが騙りでない事は予想が付くかな?

(――なにせ、己が彼女達へと納品していたモノは
特にこう言う時の為に役立っていた物が殆どなのだから。
魔族の耐性を以てしても其の身を犯す毒、それは薬師たる己の悪名の一つ
既に、お互いがお互い、同じ立場で在るとも知らぬ儘に尋問を続ければ
戒めた両腕を僅かに持ち上げ、相手の身体を引き起こしてやり)

聞いているのは僕で、答えるのはキミ、判っているかな?
第一、僕が此処にいる理由何て簡単だろう、キミ達みたいなのが居るからさ。
兎も角、素直に答えた方が良い。 答えないと…、……嗚呼、今は麻痺毒を投与したけど。

(――次も麻痺毒とは限らないよ?
そう囁く様に告げては、ふと、彼女の腹へと突き刺さる蔓が、僅かに震える。
袖口のあたりから、少しづつ膨らみを帯びて先端へと移動する其れが
麻痺毒か、其れ以外か、何らかの次なる投与物である事を予感させてやれば

――相手の瞳を、静かに眺めながら。 其の解答如何によっては。
再び其の胎へと、投与されて行く何かの感覚を、感じられるか。
麻痺毒、では無いだろう。 其れ以上は酷くならない筈だ。
けれど、麻痺毒の時よりも、長く投与され続けるソレが
麻痺毒で感覚の鈍い胎の奥に、更に鈍い重みを感じさせる事となる)。

エレノア > 魔族の薬物耐性すらも貫く毒液の調合など、魔族の国広しと言えども出来る者は限られてくるだろう。
そんな、限られた存在が目の前にいる男だとは、己の運の悪さを恨むべきか。
そも、相手そのものを恨むべきか。
落ち着け、落ち着け、と己に言い聞かせる。
まずは息を整えねば、ままならない。

「狂った薬師が……ふざけたマネを……。」

目の前の男への当時の印象。
同胞からの評判は余り良い物とは言えなかった。
任務にて自らが対応した際には、あくまでも仕事上だからか何も思わなかったが。
恐らく尾鰭が付いているのであろうと思っていた噂が本当ならば、ゾッとしない。

「ハ、まさか……本当に、脱走者への粛清が……存在するとは、な。」

彼が此処にいる理由、と言われれば、それしか思いつかない。
組織からの脱走、裏切りなどという軍規を乱す行為に対する報復として、粛清は以前から噂されていた事だ。

「下衆め……んっ……くぅ……。」

麻痺毒を注がれていた時とは違う、この感覚が一瞬何か分からなかった。
だが、継続的に注がれる感覚。場所。
その場所が気怠い様な、だが、何処かじわじわと嬲られるような感覚。
己の下腹部に覚えたこの感じは、事実だとすればロクでもないものだ。

「こっ、これは駄目だ……ッ!」

やめろ、と叫ぼうとした。
痛みなら耐えられる。麻痺毒だって、自身の心を折るまではいかない。
だが、女として、どうしても責められたくはないものがあるのだ。

クロステス > はは、其の呼び方を聞くのも久し振りだねぇ…まぁ、今は否定出来ないけれど。

(――軍属時代、周りから付けられた悪名は多岐に渡る。
当然ながら、狂った、等と冠が付く呼び名だって幾つも在った。
何と無く懐かしささえ覚えて、思わず笑ったけれど。
其の後に、やれやれ、と小さく溜息を零してから――投与の量を強めた
狂った薬師、狂った医者、そう呼ばれるなら、今はそう振舞おう
否定してやりたい気持ちは一旦押し込めてから、其の頬へと掌を添えて)

―――――………? ……何を言ってるのか判らないな。
脱走者への粛清なんて、今に始まった事ではないし…其れは、キミが一番良く判っている筈だろう?

(――一瞬、本当に何を言ってるのか判らない表情で頭上に疑問符浮かべ
其れから、そっと掌を下へと落とし、其の金属の鎧へと手を掛けて――ごとり、と
止め具を外し、剥ぎ落として床へと放り、其の身体を無防備とさせようか。
何かを予感したか、或いは本能的な危機を察したのか、制止を願う声にも
肩を竦め、其れから、まるで脈動するかの勢いで蔦から注がれるモノで存分に其の胎奥を、致命的なまでに「仕込んで」は。)

―――……腹部に投与した麻痺毒で、キミの感覚は今ほぼ眠っているに等しい。
今キミに投与しているのが何かは…もう、気付いたかな?
この次、今度はキミの御腹だけに、麻痺の解毒薬を投与する。

……僕が、唯逃げているばかりだと思って居るなら…少し、思い知らせないと、ねぇ?

(きっと、其の頃には。
女の胎奥に感じられる鈍い重みは、最早無視出来ぬ物となって居る筈か。
蔓の脈動が収まり、一度静けさを取り戻せば。
僅かな間を置いてから、再び蔓より投与される麻痺毒の解毒液。
感覚を失っていたのと同時に、一時的に其の機能を眠らせていた女の胎奥が
麻痺から次第に開放されて行くなら――さて、感覚を取り戻した其の場所が
麻痺によって、眠って居られた其の場所が、果たして女に何を齎すか。

急激に目覚め行く子宮が、心臓めいて蠢き出すのを――堪能してしまえば良い)。

エレノア > 唇が震えるのは、粛清に対する恐怖ではない。
命のやり取りの末に果てるのであれば、それも悪くはない。
だが、今この男が行おうとしているのは、そうではないのだろう。
故に、恐怖を感じるのだ。
想像を絶する感覚に襲われるのだろうという、漠然とした恐怖。

「この様な屈辱……殺された方がまだマシだ……。」

身動きが取れないように拘束され、そして女のしての弱味を完全に握られる。
外され、足元に落ちていく防具の一式に、絶望すらも覚えた。
蔦が脈動する度に、麻痺していても感じるものが大きくなり始めた。
いよいよもって、全身に震えが走り始める。
じわりと、汗も滲み始めた程だ。
それでも、この男の言葉に屈するという選択肢は無かった。
傭兵としてか、女としてか、とにかく矜持があるのだ。

「……う、く……耐える。耐えられるのだ、私は。
この程度で、壊れる程ヤワでは……ないッ!
こんな……毒如きで……。」

それは相手に向けた言葉ではない。
自分自身を鼓舞するように、自分自身に言い聞かせるように、そんな言葉だ。
ズクン、ズクン、と麻痺していても尚、小さく疼くような感覚を覚える子宮。
それが麻痺から完全に開放された時、何処まで耐えられるものか。
女には、来る瞬間を待つ事しかできなかった。

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