2021/09/06 のログ
■ムメイ > (驚かせる気は無かった、だから気を遣った心算だったのだが――不足だったらしい。
相手が取り落としそうになれば手を伸ばそうとするも、落とさなければ手を戻してから彼女を見て)
「済まん済まん、俺としては驚かす気は全く無かったんだが……」
申し訳ないと言うように片手を上げて謝罪。
不満に対して素直な声を向けつつ、しかし言葉にはああ、と声を出して
「職業柄、この位の暗さなら然程でも無いんだ。
魔法の暗闇とかああいったものに比べりゃ、って話だけど」
角灯だろうと魔法の灯だろうと吸収する遺跡や森の中特有のそれを口にしつつ、然し実際は種族柄故の問題だ。
同意する様子に手を差し出して
「俺はムメイ、傭兵やってんだが――
ここの神官殿の護衛をした時に、金じゃなくて面白いもん寄越せっつったら通された。
詫び代わりっちゃ何だが、その本持つぜ?」
読書机の場所なら案内出来るし、と声をかける。
何度か本を読むのに利用したが……探すにも億劫だし、何より場所が地味に入り組んでいる。
ならばと案内を買って出たのは、驚かせた詫びだ。
■シシィ > こちらの挙措に合わせるような仕草、は、一応己を慮ってでもいるのか。ただ、知り合いでもない相手に声をかけられる理由はやはりわからないものだ。ふ、と緩く息をついて、相手の返答に対して首を横に振った。
「そういうものでしょうか……?まあ……深くはうかがいませんが」
闇に慣れているとはいえ、持ち込める灯りがあるのにそれを使わない理由にはならないが、さりとてそこまで踏み込む問題でもあるまい、と言葉は飲み込んだ。
それから再び差し出される手に視線を落とす。
何を意味するのか、を窺うような視線に対して、返された言葉、なのりに対しては、先ほどよりは険の取れた声音が応じた。
「ご丁寧にどうも、私はシシィ、商いをしているものです。
ご厚意はありがたいのですが───これは私の仕事ですから、どうかお気になさらずに。案内はありがたいのでお願いできますか」
案内については受け取るが、己の荷を受け持とうとするその手は丁寧に辞去することにした。
読書机の場所が分かりにくいかどうかは、この場所を始めた己にはそも判別がつかない。
───連綿と受け継がれる知識の層が分厚くなればなるほど、構造も複雑化するのかもしれないが、と己の背よりも高い書架を見上げ、少し息をついた。
■ムメイ > 「そんなもんさ、慣れると割合便利なもんだぜ?」
(笑って見せるも実際は、『神殿』の『火』。
本性からすると物凄い苦手な部類なのだ、とはいっても回復魔法直撃程のダメージは無いが。
ただ、変な事に縁起を担ぐ人間は何処にでもいるものだし。
そうして、辞去されれば手を引っ込めつつ頷いて)
「商人のシシィな、よし憶えた憶えた。
案外、何処かで顔を合わせた事があるかも知れんな
……っと、こっちだこっち」
(軽い調子で言いながら、相手を先導する様に歩き始める。
案内して歩く先は、少し離れたところにある上に
自分からすれば若干判りにくい場所。
普通ならば大きな本棚の間の通路がある十字路となるべきなのだが。
一か所だけ通路が塞がれ、L字になっている。
その外側は普通の通路になっているので、道を一本外れると道を戻らねばならなくなる。
つまり、割と面倒な事になる。
そしてその先にあるのは、個人用の小さなキャレル。
そこまで案内をしてから)
「俺が見つけた限りとなるが、さっきの場所からの最寄りがここだ。
入口からはちょいと遠いが、まぁそこは作った奴に言うしかないな」
(誰が作ったかは知らんが、とも付け加えて彼女を見て
役に立ったなら幸いだ、と締めくくった)
■シシィ > 「私にとっては灯りを持たないことの不便のほうが強いですから」
何しろ相手とは生業が違う。
平素であれば闇に潜む必要も、その中で仕事をこなすことも求められることではない。
「───どうでしょう。旅商いの途上であればあったかもしれませんね、……ぁ、ありがとうございます」
存外しっかり案内はしてくれるよう。
夜盲症ではないが灯りを持たない相手を追いかけるのは少し骨ではあった。乏しい明かりに浮かび上がる灰色の背中を追いかける形で、一度不自然に方向転換したのはその先がふさがっているからなのだろう。己の眼ではその理由までを知ることはできないが。
───そうしてたどり着いた個席にふ、と安堵の吐息。
初見の場所で、書を抱えてうろつくには確かに入り組んでいるといえた。
落ち着ける場所に正しく案内してもらったことに頭を下げて
「用途を考えたら、書庫の中に入り込んでいるほうが楽なんでしょう、だいぶ時間の短縮ができました、ありがとうございます」
改めての礼の言葉をつげて。
誰が作ったか、という言葉については書庫の古ぼけた様子を見て、緩く肩をすくめた。
あきらかに神殿よりは古い様式で───、再利用したのだろうと知れる場所。曰くのある場所かも知れないが、おのれにはしりようもない。
ある程度の時間の猶予はあるが、とかかえた書を卓におろして、席に着く姿勢。
書庫の所に興味がないわけではないが、先に職分を果たすのが先だろう。10年分ほどの祭祀の記録を確認すればいいだけなのだから、そこまで難しい話でもない。
■ムメイ > 「まぁ、そりゃお互い違う仕事だしな。
商人が灯りを持ってないのにどうやって物を売るんだよ、って話になるし」
(あくまで自分からすれば便利、と言うだけだ。
寧ろ一般的には不便としか言いようがない、そして無理に慣れる必要も無いので尤もだ。 と言うように頷いて見せて)
「ま、全員の顔を憶えてるかって言われりゃあ……なぁ。
いいっていいって、大した事じゃ無い」
(白いシャツでも着ていれば良かったか、と思いつつも服は変わらないのでどうしようもない。
立ち止まる気配がないので案内をし終えれば、感謝の言葉に首を横に振って)
「良いって事よ。
俺の方が偶々ここに先に居て、場所を先に見つけてた。
なら、判らない人が居たら教えるのがスジってもんさ」
(笑いかけながら手を上げて、そうして席に着く彼女に一言二言声をかけてから、先に入口の方へ向かって歩き出すだろうか)
■シシィ > 「ご理解いただけて、幸いですわ」
穏やかに女は応じる。
職業柄人の顔を忘れることはないが───基本女の仕事は顧客の注文を受けての仲買が多い。
旅商人めいたことをするのは、世間の波を知るための、薄利多売と、あとはほんの少しの己の利を求めての行為ゆえに
先に出口に向かう男を見送って、穏やかに別れの言葉を手向けたら
あとは蜜蝋の尽きるまで、己の調べものに没頭することだろう──
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からムメイさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」からシシィさんが去りました。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/聖堂街」に黒曜石さんが現れました。
■黒曜石 > 聖堂が立ち並ぶ通り。
少し冷え始めた夜気が霧を呼んで、薄っすら白く染まる夜。
雲間から零れるのは病んだような蒼白い月の光。
人通りが減ったその場所、荘厳として、鬱蒼とした聖堂の群れの中に
―――― ―――― ――――
歌が、響いている。
か細いけれど、澄んだ澄んだ女の声音で奏でられる歌だ。
聖なる祈りを捧げる歌声。流れ、零れ、響いている。
もし、その声の出所を追えば、階段に腰を下ろす男の元へ辿り着くだろう。
灰銀の髪に、黒い瞳の男。茫洋として、どこを見ているかわからずに視線を彷徨わせる彼。
その肩口から、歌声は響いている。
正確には、肩に身を預ける小鳥程度の生き物。
啼き声の代わりに、啼いているように奏でる聖なる歌声。
――まるで羽を毟られたように骨と皮でできた身体。
頭の代わりに、首の断面を歪める形の良い唇と白い歯。
そんな呪われたような生き物が、ただ、歌っていた。
■黒曜石 > やがて、歌が止む。
曲の途中で、呵責なく躊躇いなく歌が止む。
―――ぐしゃり。
そんな、音が霧の中にひとつだけ響いて、消えた。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート/聖堂街」から黒曜石さんが去りました。