2021/09/05 のログ
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にシシィさんが現れました。
■シシィ > ───とある神殿の地下にある、書庫。
物品を納入している伝手を頼っておとなったそこは、石壁と床、林立する書架がある埃っぽさと、乾いた古書の香りが鼻腔を刺激する場所だった。
換気は生きているのか、黴臭さは薄いが、書の保存を考えて、地下にしつらえられたその書庫の作り自体はとても古いのだと、案内してくれた神官が語ってくれたのは記憶に新しい。
蜜蝋の明かり一つを伴って、暗い書庫の中、林立する書架の古書に視線を滑らせる。
頼りない明かり一つでは室内を照らすには乏しい。
けれど、火気の持ち込みは強く制限されている以上それが限界だった。
己の足元すらもおぼつかないような中を、ゆっくりと歩み、己の欲するものが記された書を探さねば。
依頼主がこの神殿の神官の事務方で、ここを自由に利用していいというのは助かるとはいえ、地下に一人取り残されたような状況は少しだけ落ち着かなくもあった。
一度天井──地上に続く階段に視線を向けて、再び書の背表紙に視線を向けた。祭祀の記録だから、そう難しい内容でもない。ただ、その数が膨大なのは確かだった。
ご案内:「神聖都市ヤルダバオート」にムメイさんが現れました。
■ムメイ > (仕事の報酬として、金の代わりに面白いものでも頼む。
そんな言葉をこの都市まで護衛をした神官にしたところ、この書庫への入場を申し渡されたのが朝の話。
人間と偽ってはいるが、魔族がこんなところに入って良いのか――等とは野暮と言うもの。
正確にはそれはそれ、これはこれ。
都合に合わせて心には棚を作るのが長生きの秘訣だとよく知っている身としては、折角の機会と書庫を歩いて回る。
時折、過去の武技に関する本があればそれを捲り、記憶する。
幸いにしてこの暗所で、明かりを灯す事無く歩き回れる訳だが)
「……ん?」
(気のせい、ではない。
小さな明かりがある、持ち込みが許可されている蜜蝋だろう。
向かう先にそれがあるのを見れば、ゆっくりと相手の方に近づいていきながら――)
「……神官でも無いのが二人もここにいるとは、随分珍しい事もあるもんだな」
(元よりこちらは驚かせる気は無い。
なので大きくもなく、静かな声音で問いかけてみる。
神殿の地下で神官以外同士が遭遇するなど、滅多にあるものではないのだし)
■シシィ > 依頼されたのは祭具の調達だ。ただ、己はその詳細を知らない。しらないものをいい加減に調達するわけにもいかない。
だから祭祀にまつわる書を手繰り、数冊を抱えて、隅に設置してある読書机にでも向かおうとしていたのだが───
「────?」
ふと、空気が流れたような気がして、視線をさまよわせる。
この神殿所属の、ある程度の位であれば自由に出入りできる場所ゆえにそれは不思議ではないのだが、灯りの揺らぎは───見渡す限りでは己の一つ、くらいしか見当たらない。
いぶかしむように首を傾け、けれど、気にしてもしょうがないと、己の職責を全うしようと行動を再開したのだが──
「───っ!?」
燭台と、抱えた書を落とさなかった己を褒めたい。
希少本というわけでもないが、それでも物は大事にする性分だ。ほう、と安堵の吐息を零して、ゆる、と視線を転じた。
小さな燭台の明かりは、至近でも相手の輪郭をおぼろにしてしまう。
少しだけ、不満を表明しても問題はあるまい。
気配なく、灯りもなく、見知らぬ存在に声をかけられたら誰だって驚くというものだ。
「────驚きました。この暗さでよく、灯りも持たずにいられますね……? 」
こちらの声音にも敵意はないが、それでも少し憮然とはしているだろう。問いかけに対しては、少し考えてそうですね、と同意を返した。
書庫というのは基本的にその組織に属した存在以外を弾く存在だ。彼がここにいる、というのは確かに異質で、彼からすれば己もそうなのだろう、とは思う。