2022/10/16 のログ
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にエリーシャさんが現れました。
■エリーシャ > 防寒具としてではなく、肩から吊った右腕を隠すため、漆黒のマントを纏い、
今は自らふるえぬ白銀のつるぎを腰から提げた軍装の娘が、
昼夜問わず異様な熱気に包まれた奴隷市場界隈を抜けて、裏通りへ分け入る。
廃屋同然の煤けた建物が左右に並び、陽の光もろくに差し込まぬ狭い路地。
どこが商店なのかもわからない有り様を一瞥し、溜め息を吐いて、
「――――…この辺りだと、聞いてきたんだけれど」
左手を浮かせて、世話になっている司祭の筆による書きつけを、ちら、と見遣り。
軽く肩を竦めてから、細い通りへと足を踏み入れた。
傷の治りを速めるために、役に立つもの、あるいは人が手に入る筈。
そう聞かされて、早速来てみたものの――――
「……肩を治して貰うどころか、足が悪くなって帰る羽目になるかも」
目的を果たせず、迷子になってしまうのが落ちかも知れない。
そう、苦々しく思いながらの足取りは、やはり重かった。
■エリーシャ > 怪我をしている肩が、完全にマントで覆われていたからか。
あるいは腰に刷いている、しろがね色が目につくからか。
たった一人、薄暗い路地を歩いていても、
年頃の娘に降りかかりがちな奇禍が、娘を襲うことは無かった。
怪しげな路地に住まう、怪しげな老婆。
その人物に首尾よく行き会えたのは、わずか数分の後のこと。
帰りには意気揚々と、マントの裾を肩から背に跳ね上げて、
凱旋の如く堂々と闊歩する娘の姿が見られた、とか――――。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からエリーシャさんが去りました。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」にヨアヒムさんが現れました。
■ヨアヒム > 「とにかく、奴隷といえど最低限の待遇は与えられねばならん。ヤルダバオート神の御威光と慈悲心は、いかなる卑しき者にも向けられている。人権の蹂躙というのは、たとえこのバフートにあっても許されんというわけだ」
港湾都市ダイラスの北方にうずくまる悪名高き奴隷市場都市バフートにて、中年王族はいつものごとく綺麗ごとを吐いていた。彼の後ろには荷物持ちの従者がおり、彼の両脇には神妙そうな表情で何度も相槌を打つ奴隷商人が腰を屈めて並び歩いている。
「誤解なきように。私は諸君らを糾弾しに来たのではない。ただ、民の善意には限界があるだろう?諸君らがどれほど奴隷の境遇に胸を痛めようと、救いきれぬ命がある。そのために、私は来たのだ」
いつも通りの柔和な笑顔を貼り付け、いつも通りの美辞麗句を垂れ流す肥えた中年男。日常的に使っている洗脳薬と媚薬、そして洗浄剤の補充のためにやってきた中年王族だったが、きちんと表向きの目的もある。それこそが人道支援だ。
バフートでは数多の奴隷、特に性奴隷が売り買いされているが、彼ら、彼女らの多くは劣悪な環境の中で飼育されている。そんな商品の中で特色あるものを見出し、「救済する」という建前で王都に連れ帰り、しかるべき「躾」を施した後に高位貴族たちの性玩具に仕立て、関係を持った彼らから貧民地区の孤児院、医院設立および運用のためのゴルドを引き出す。それが、この中年王族に課せられた務めの1つだった。
■ヨアヒム > やがて、ある荷物を受け取った従者が中年王族に小走りで近付き、袋の口を開く。中に入っていた、女を辱めて、雌に堕とす悪辣な薬の数々を見下ろした後、笑みを深くして従者を手振りで遠ざけた。
「では、次の市場へ行こう。そこならば、私の助けを必要としている者がいるかもしれんからな」
仕込む材料を補充した今、必要なのは有望なる素材。一時の安息と終わらない淫欲を与えられる哀れな犠牲者を求め、中年王族は奴隷市場の奥へと足を進めるのだった。
ご案内:「奴隷市場都市バフート」からヨアヒムさんが去りました。