2022/08/12 のログ
ティアフェル >  落ち着くまで全身を投げ出して休憩。もう身体に力が入らないと脱力しながら。
 四肢は動かずとも口は動き、話は聴けるもので、そちらへ顔を向かせながらふんふんと拝聴し。

「ぅうん……それはまた……なかなかのピンチじゃない……。
 うわぁーあっぶなー……重ね重ね助かったわ。わたしのような健康ばりばりなぎりぎり十代はきっとそこそこ売ってくれたと思われる……奴隷人生が幕開けるとこだったわ!」

 危うく生き地獄まっさかさまだった。良かった。助かった。
 少なくとも目前のこの人は隙を見て売り飛ばすなんてことはないようだ。運が良いと安堵しては。
 ご同業……にしては雰囲気が違うと、ぶっ倒れている己を見て笑っている様子を寝転んだまま観察し。
 そして続いた自己紹介を受けて得心。

「なーるほど。神殿の……神官さんってこと? 〝本をかっ…?〟」

 不穏当に途切れた科白に小首を傾げてやや怪訝そうな声を漏らすも、申し遅れたと気づくと。さすがに転がったままでは失礼か、と大儀そうに身を起こし。

「わたしはティアフェルって云うの。冒険者でヒーラー。ちょっと依頼の途中で彷徨い中。その後は見ての通り。お陰様で今に至る」

 証のようにシンボルが目に入り神職に就いているならば安心感。きっと助けたからって大層な対価を吹っ掛けてもこまいと踏むと。

「いやあ、ありがとう! 本当にありがとう! どうもありがとう! すごくありがとう! 感謝の気持ちは溢れんばかり!」

 礼を云ってすます気満々な笑顔を全面にして。

ヴァン > 「人さらい、人買いはこの国じゃ珍しいことでもないが……
街の外で罠をかける連中がいるとは思わなかった。冒険者の店にそのうち行方不明の捜索依頼でも出るかもな」

安堵した様子の少女を見ては、いいことをしたと実感する。
これもいるかわからない神の巡り合わせというやつか。

「神官……んー。普段は司書として、王都の神殿付属図書館で働いている。
古代の文献を回収することは、神殿としても重要な業務なんだ。傍目からはかっぱらってるだけだが、今は誰のものでもない。
ティアフェルさんね。無事で何よりだ」

今度はかっぱらう、とはっきりと口にする。
開き直るような発言だが、男からは己が所属する組織に対する批判的な姿勢を感じることができた。
感謝感激雨あられの言葉に、少女の思惑でも悟ったのか、少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。

「感謝の言葉は嬉しいが、何か物をくれたり、何かやってくれるならもっと嬉しいね。
でなければ、王都に戻った時に神殿図書館で本を借りてくれるってのでもいいが。ここらで会う冒険者ってことは、王都の人だよね?」

ティアフェル > 「油断大敵とはこのことねえ……うっかりしてたわ。
 そうねえ、わたしよりもしっかりしたランクの高い冒険者が乗り出して、ついでに人売りを一網打尽にしてくれることを願うわ」

 わたしには無理。それはお役目じゃない、と他力本願な心地。
 汗で張り付いた前髪を払いつつ、バックから取り出した水袋からこくこくと飲用し喉を潤してぷは、と息をついて落ち着き。

「司書……うーむ、なんだか神官にも見えないけど、司書さんって感じもしないねえ。
 ほほう……古代のってことは石板に刻んであるのとかだったりするんじゃないの? それは重労働ね。ま、神殿からのお役目なら堂々とかっぱらえばいいと思うわ。
 どうもどうも! お陰様でね!」

 持ち主不在の代物ならば野ざらしにされているよりはきちんと然るべき機関が回収、調査した方がいいことだろと別に悪いことだとも感じてない様子で。
 ありがとうの連呼をかましてみたが、意外と見返りを求められた。
 ちぇ、世知辛いと胸中でぼやきつつ。

「……神官じゃなくて司書さんはギブアンドテイクですね。残念です。
 差し上げるもの……お菓子なら結構がっつり持って来たよ! 労働、は……あ、そうそう、申し上げたようにヒーラーなんで。腰痛肩凝りなど治し……っは、そうそう、久しぶりの――『肩叩き〝拳〟』これでどうだッ!」

 対価を考え、最終的に子供の使いみたいなもん出てきた。ちなみに券、じゃなく拳、になっているのがミソ。自信満々にバッグから紙切れを取り出して差し出しつつ。

「え? 本借りるだけでいーの? それが極めてチープな対価ね。それじゃこれはなかったことに……」

 話しを最後まで聞いて、すーっと、そのごみと同等の紙切れを引き上げ始めた。

ヴァン > 「酷いなぁ。もう司書やって8年になるんだけど。
その前は冒険者の真似事みたいなこともしてたよ」

鎧はつけていない、武装は一見銀の短剣のみ。仮に魔法使いだとしてもそれなりに防御力のある服をきるものだ。
それをしていないのは、男が冒険を舐めているのか、それなりに実力があるのか。

「いや、図書院にあるのは紙だな。本に罠がないか、魔物化してないか確認して引っ張り出す。
マグ・メール大学の人達には結構感謝されるんだ」

少女の言葉には菓子はいいかもなぁとか色っぽいのはないの?と茶化しつつ。

「あぁ、実際のところ、結構助かる。神聖都市のお偉いさんは頭の固いのばかりでね。
神殿図書館なんだから利用は信徒だけに限定すべきだ、と主張するんだ。
図書館が神殿の客寄せになるってのをわかってない。なので、信徒以外の来館は大歓迎なんだ」

他に誰もいないからか、男は曖昧な表現をしない。信仰心はほぼなく、ビジネスと割り切っているのだろう。
少女が会ってきたであろう神殿関係者の中でも、建前で取り繕うことすらしないのは、珍しい部類といえるだろう。
差し出され、ひっこめられた紙切れにはどう対応するのが正しいのか、わからないようだ。ただ曖昧な笑みを浮かべている。

ティアフェル > 「バンダナ着けてる司書さんも、まあ見ないからな……。司書さんといえばひょろっとして眼鏡でがり勉な。そんな印象。
 ほらもう。冒険者っぽいことしてたなら下地がもう違うんだからイメージ違う訳よ」

 納得。軽装でうろつきまわっている点を見てもまあ、インドアな文系じゃない。すぐに先ほどの罠に察しがついたところを見ても頭がいいの抜きにしても違う。

「そんな古い時代だとパピルスくらいしかないでしょ? 紙で残ってるものなんてあるの? 劣化するし貴重なものだからそこら探索して見つかるものなんてほぼなさそうだけど」

 冒険者の端くれだが探索中ほとんど紙書籍などお目にかかったことがない。あるとすればかなりのレアだ。
 色っぽいの…とフられて。うむ、とアホ毛倒して考えた後。うふん、とわざとらしく片目をつぶった。安すぎる色気。いや色っぽくもない残念さ。
 お菓子にしといたほうがかなり得である。

「わたしでも利用できるの? 貸出は関係者以外結構難しいんじゃないの?
 王立図書館は利用したことあるけど、神殿となると読みたい本がそもそもあるのかしらと思って嫌煙しがちね。そういえば。聖書くらいしかなさそうなんだもん」

聖書も悪くはないだろうが飽きそうだし利用料なども高そうだ。
神殿の司書、という役職の手合いには出会ったことじゃないのでどうにも他と比べようもないが。司書っぽくないし聖職者な空気もないことは判る。
元手無料な肩叩き拳、図書館の利用料。どっちを渡すと得か一考ののち。
「はいっ」とイイ笑顔でその手にぎゅっと握らせるごみ相当の紙切れ。

ヴァン > 「バンダナは俺のセンスであって、仕事とは関係ないぞ?
それこそ冒険者まがいの頃からしてたし」

一般的にはださいと思われるものだが、男なりに美意識というか拘りがあるらしい。
古い時代、と言及されるとゆっくりとかぶりをふる。

「もちろん印刷技術は発達していないから写本が大半だが、製紙自体は今とそう大差ない品質が多い。
今みたいに手軽に利用できる訳ではなかったようだが……あぁ、俺が今話題にしているのは、だいたい2、300年前のものかな。
そこらへんの時代の本が、奇妙なほど少なくてね。それより昔のものはティアフェルさんの言う通りだ」

地下図書院には謎が多い。少女が持つ疑問ももっともといえる。男自身も理解しきれてはいない。
不意のウィンクに男は咳き込む。どうやら、笑ってしまったらしい。

「ま、安心してくれ。色っぽいの狙いだったら、さっきの罠の所でやってるから。
……うーん、やっぱ皆に誤解されてるのがネックか。
入場は誰でもできる。無料。貸出は身分の証明が必要。冒険者ならギルドに登録していれば大丈夫。
神殿図書館は神学書哲学書などもあるが、神殿へ興味を持ってもらうために柔らかい本も多い。最新の冒険小説や恋愛小説だってあるよ?」

罠の所で、のくだりは笑いながら言うが、冗談ではなさそうだった。助けたのは、ただの気紛れに過ぎないのかもしれない。
紙切れを受け取ると、胸ポケットにしまう。

「さて……そろそろ移動するか。じゃあ、図書館で会うことを楽しみにしてるよ、ティアフェルさん。
その時はお菓子も一緒だと同僚が喜ぶんで、よろしく」

この休憩でだいぶ体力が回復し、何より緊張が解れたようだった。
冗談めいた発言をしながら立ち上がると、地面についていた部分を手で軽く払う。
奇妙な模様のバンダナを額にあて、しっかりと締める。

ティアフェル > 「多数の司書はバンダナ巻くようなセンスしてない。
 根本が司書的じゃない」

 それがいいか悪いかそういうことではないが、世間一般のイメージでもないと偏見を述べて。

「ふーん……本ばっかり探索してるわけじゃないというか、本なんかメインで探さないからなんともだけど、そういうもの。
 じゃ、わたしには不要でついでに売っても値のつかないような書籍が見つかったら回すわね」

 と云いつつ、そんなものに出くわす確率は極めて低く。云ったところで誰も期待しやしないだろうが。ない可能性ではないので一応。
 噎せるとは、失敬なと、本気でやったわけではないだろうにつぶってた片目を開けてしかつめらしい顔をし。

「うん。だろうね。それに関しては危機感覚えてません。
 ……えー? 本なんて安いもんでもないだろうに。誰得なのかしらねえ。それじゃあ。云っちゃえば布教活動の一環なのかしら。
 信者にはなんないけど、ちょっとくらいなら利用してもいいわ。なんか入りづらいなって思ってたけど。ヴァンさんがいるなら敷居も低い感じするかしら」

 この気やすい感じな司書がいる時ならば利用しやすいかもしれない。ふむとひとつ首肯して。

「そーね。わたしもそろそろ回復したから行かなくちゃ。
 分かった、行く時はお礼に差し入れもってくわ。いなかったら誰かに預けとくから」

 甘い系としょっぱい系を持参してその内いこうと決めて。よいしょと立ち上がると衣服を払って。
 それじゃあわたしこっちだから、と行く先を示すと方向が違うならそこで別れ、一緒ならば途中までは同行してくだろうか。
 どちらにせよ目的地が一緒ということはないだろうから、どこかでさよならーとひらひら手を振って別れることだろう。

ヴァン > センスについては耳が痛いのか、苦笑い。
少女が浮かべるしかめ面には右手で軽く謝罪の意を示す。

「昔に比べればだいぶ安くはなったよ。文字が読める人も一昔前よりは増えてきている。
いずれ階級に限らず、知識に誰でもアクセスできる世の中になる。
より豊かに人々が暮らせる……少なくとも、そう願っている」

差し入れの言葉には期待してる、と返すか。
男は小さく呪文らしきものを唱えると、突然これまでとは違った方向を見た。
どうやら現在地と目的地までの方向・距離を魔法で調べたようだ。
太陽の高さと方向を眺めたのは、今のだいたいの時間を予想するためか。

剣も盾も鎧も持たない騎士は、森の中に消えていく。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にジークフリーダさんが現れました。
ジークフリーダ > 霧が立ち込める夜の森。
木々によって形成された天然の迷路を行くのは、一人の冒険者。
その手に抜き身の剣を引っ提げているのは、ここが魔物の棲息領域であるため。
しかし、奥地には、滅多に市場に出回ることのない薬草が群生していることで知られている。
こうして訪れたのは、冒険者のギルドでその採取の依頼を引き受けたからだった。

薬草の採取といえば新人冒険者向きクエストの定番だが、
このエリアでの薬草採取は新人には手が出ない難易度に設定されている。
当然、それだけ報酬も高額にのぼり、無目的に遺跡に潜ったりするより確実なリターンが見込めた。
しかし、今夜は霧が濃い……手頃な場所を見付けて、日の出までキャンプを張るのが得策だろう。