2020/08/22 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  ――昼下がりの川辺。
 森林の間を割って流れるそこそこ幅のある川の中流辺り。午後の眩しい日差しをきらきらと照り返し、水辺ということもありまだまだ残暑厳しい中でも付近はひんやりとした風が吹いている。
 せせらぎの音も涼し気な清流には川魚などの小さな生き物や水辺に生える植物の葉や実、花などが静かに流れていた。

 そして、異物も。
 どんぶらこ、と流れるのは革袋、小瓶、櫛………

「――――………」

       人間。
 
 川の流れ、水のまにまに漂っているのは意識不明のヒーラーが一人。
 上流で足を滑らせ水中に転落し、川底に頭をぶつけて気絶。そのまま運よく仰向けにぷかーと浮いて川流れ。

 頭にたんこぶをくっつけてどんぶらこ、どんぶらこ。一見長閑に水流に乗って漂っていた。
 荷物も落ちた弾みで一緒に流されて辺りに浮いていて、完全に意識を失っている姿は水死体のようにも見えた。

ティアフェル >  うつ伏せに気絶していたら速やかに溺死していただろうが、仰向けになったのが不幸中の幸い。
 まあ、それでもこのまま平和にいつまでも漂ってられるかは定かではない。事実、もうしばらく流れていくと流れが急になり吸い込むような勢いで滝壺が待ち構えている。

 早めに意識を取り戻すべきだろうが、まだ目はしっかり閉じていて覚醒の気配は窺えない。

「~~~~……」

 どんぶらこっこ……

 今のところ、浮力に極自然に乗り漂流物として浮かんでいたが……。
 さすがに急流に差し掛かってくると、がたがたと全身が水流に揺れて時折川辺の岩にぶつかって川面で跳ね――

「~~~…っ?!」

 ごち、とすでにできていたタンコブが岩にぶつかり。いー加減、目が覚めた。

 ごぼごぼ!と気泡を口から零しながら水中でもがき。さすがに寝覚めでコレではスムーズな泳ぎなど見せられるハズもなく、じたばたと溺れかける漂流者。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にタマモさんが現れました。
タマモ > 少女がここを見付けたのは、いつもの気紛れな散歩の産物。
釣竿を片手に、タライは傍らに、この暑い中であっても、多少は涼しげな川辺で釣りを楽しんでいた。
そんな静かな空間であるにも関わらず、少女は、その存在になかなか気付けなかった。
それはなぜなのか?理由は簡単だ。

気配も感じられぬ、ただの漂流物と化していた。
そんな存在を、簡単に感じ取れるものではないのだ。

「ふむ…まぁ、場所は悪く無い。
こうして、のんびりとやっておれば、いずれは魚も釣れ…」

釣り糸を垂らす水面、そこを見詰めながら、呟く少女。
その言葉が遮られたのは、少し上流から聞こえた、妙な音に気付いたからだ。

「………なんじゃ、あれは…?」

水中で、なにかが暴れているっぽく見える、そんな光景。
魚にしては、動きが派手過ぎる。
かくん?と首を傾ければ、ひょいっ、と釣竿を一度上げ、ひゅんっ、とそちらに振り翳す。
釣針が、ひゅるるるる…と、そちらへと飛び、ぽちゃんと落ちれば。

「さてさて、何が出て来るか………よいせぇっ!」

器用に釣竿を手繰り、釣針をそれに引っ掛け、ぐいぃっ!と一気に引き上げる。
普通に考えれば、そんな重いもの、引き上げられやしない。
だがしかし、そんなものは力を使えば造作も無い。
その漂流物は、盛大な一本釣りによって、その姿を現わす事だろう。

ティアフェル >  一人釣りを楽しむ河原に徐々に流れされて近づいて行く漂流者から溺れる者へと切り替わったヤツ。
 おーぼーれーるーと、水中でもがいて大分水も飲んでしまっていたが。そんな時に不意に、放物線を描いて飛んできた物が服の一部に引っ掛かった。

「?!」
 
 何ごと!?とさすがに事態を察せずに、引っかかったものが釣り針とも気づかずに思わずさらにじたばたしたが、水流に抗って、そちらに一気に引き寄せられれば、

 なになになになにー?!
 
 軽く恐慌状態に陥りながらそのまま引き上げられ、人一人釣り上げる膂力どうこうよりも釣り糸と竿の丈夫さが脅威だった。

 ざぱー、と勢いよく水の上に引き揚げられてずぶ濡れの全身から水を滴らせつつ、げっほげほと飲んでしまった水を咳き込んで吐きながら、ぷらーんぷらーんと振り子のように糸の先で揺れていた。

タマモ > 念の為と、力を使っておいて良かった。
でなければ、持ち上がらず、漂流物は水中に沈んだままだっただろう。
ちなみに、釣り糸や釣竿は、元々力が込められている為に折れない壊れない、便利。

それはさて置き、釣り上げたものだ。
視線を向けてみれば、明らかに人間なのが分かる。
それを見れば、まず、何でこんなところに?なんて疑問が浮かぶもので。
…と言うか、知人だった。

「………魚の気分でも、味わっておったか?
あんな側に来るまで、妾が気付かなかったとは…なかなかに、やるものじゃのぅ」

そんな言葉を掛けながら、ぐいっと釣竿を更に引き、手前まで引き寄せて。
よいせ、と川辺へと下ろしておこう。

ティアフェル >  驚異的な技で強度を上げられた竿と膂力で適った人間の一本釣り。
 振り子のようにぶらぶらと釣り上げられて左右に揺れていたが、

「いや、溺れてたのよ……ッ。なんだその偏った結論は。
 っはー、はー……死ぬかと思ったぁ………。
 いや……何はともあれ、助かった……ありがと……」

 そのまま引き寄せられて、河原へ下ろされ、へたん、と崩れるように膝をついてしばしけほけほと咳き込んでいたが――、

「ッハ! ごめん! 今日は肩叩き拳持ってない……!」

 お礼!と即座に思いついて焦ったように突如云いだした。ポケットを叩いても中身がいくらか流されてしまったウエストポーチを探ってもない。
 お礼ができない!と慌てるが、誰もそんな礼は望んでいないとは当人だけが気づいていない。

タマモ > 川辺へと下ろす、そんな少女の言葉を聞けば、僅かな間。
ぽんっ、と手を打って。

「おぉ、なるほど、溺れておったのか。
…って、いや、泳げないならば、河川に入るものではないぞ?ティア?
まったく、暑いからと言って、困った女子じゃのぅ」

やれやれ、とわざとらしく肩を竦める仕草。
再び、先走った結論に達したらしいのは、その言葉で分かるだろうか。

釣竿を傍らに立てながら、改めて少女を見遣る。
濡れたまま、何か探ってる様子だったが、次の言葉で理解した。

「いやいやいや、そのお礼は今持っておる一枚で事足りる。
まぁ、また機会あった時にでも、考えておけば良かろう。
………妾が、して欲しい事を考えた方が良さそうじゃろうか?」

要らん要らんと手を振り答え、慌てる少女を宥めに掛かる。
しかし、そう言っておきながらも、己の言葉にふと過ぎる考え。
また変なものを渡されたら困ると、そう言い変えるのだった。

ティアフェル >  ややあって得心したように打たれる手の音を聞いて、少々脱力気味に肩を落とし。

「いや、いやいやいやいや。
 がっつり服着て装備一式整えて泳ぐ奴いる? 戦時じゃないんだから。
 足を滑らせて落ちたのー!
 まったく斜め上なんだから……」

 ふー。と思わず息を吐き出して額を抑え唸るように零し。
 そして釣り上げられたことといい、タライやら竿やらを準備してきているところといい、彼女が何をしに来たかは云わずと知れる。
 釣りか、と見たままをぽつ、と零し。

「えー、あ、そう? あんなん何枚あってもええですけどね!
 うん? なに? 礼には及ばないって? さすが、男前だなあ。
 いやあ、前回と云い悪いなあー」

 人の話を半分も聞いていない様子でなにか勝手に自分に都合のいいように曲解し、なんぞほざいた。
 タワごとを明るくのたまいつつ。ぎゅ、と衣服の裾を搾り髪を振り、水気を落とし、日差しの下へ出ると夏の日差しはみるみる濡れた服を乾かしていってくれそうで、落ち着きを取り戻し、ついでに流されて川岸で引っ掛かっていた装備品の一部を回収した。 

タマモ > 「うむ、だから、それほど暑かったのか、とな?
いやはや、早合点じゃ、そうかそうか、落ちただけか。
………どちらにせよ、気を付けねばのぅ?」

少女の説明に、なるほど、と納得しながらも、己の見解を述べて。
ぽむっ、と肩を叩けば、そう注意しておこうか。
今回は己が居たから良かったが、次があるかは分からないのだ。
真面目な話、知らないところで知人が溺れ死ぬとか、洒落にならない。

「使いどころが多様にあれば、良さそうじゃがのぅ…
まぁ、必要な時にするだけならば、一枚で十分じゃろう。
………川辺の中央ならば、もっと深いが、どうじゃ?」

何か勝手に話を進められれば、にっこりと笑顔を浮かべ、そう言っておいてあげよう。
水気を払う様子を見れば、まぁ、少し放っておけば乾くか、と。
そう考えつつも、多少は張り付く服の上から、じーっと少女を体を見詰めてみるのだった。
いや、うん、今回はやましい事は無しで、スタイルとか気になったし。

そうしていれば、一緒に流れていたらしい、装備品やら何やらを回収し始める。
そうして戻って来るならば、全部あったか?とか、とりあえず、聞いておくのだ。

ティアフェル > 「ねーわ。そんなヤツ頭おかしいわ。
 発想拗れ過ぎだから!
 ……まあ、うん、それはまったく。返す言葉もございません……」

 前半は勢いよく返していたが、後半、肩を叩かれて尻すぼみ気味に。
 もごもごとごもっともなお言葉に濁しながら肯いて。
 実際死ぬかと思った。河原は滑りやすいのだからもっと用心しとくべきであったと自省。

「生きてればどっかしら凝るっしょ。
 お年寄りなのですし、余計……。
 いやっ、いやいやいや! 遠慮します!
 ってか、どっちなの?! 沈んで欲しいの釣り上げたいの?!
 釣り上げられた後に沈められたらわたしさすがに混乱する!」

 先ほど溺れた所を助けてもらったばかりなのにまた川へリリースされては堪らない。
 キャッチアンドリリースはお魚だけにしときましょ!とぶんぶん首を振り。
 濡れた衣服がぺったと張り付いた体型はそれなりに起伏がありいかにも健康そうにしまったものだったが、じろじろ見られては少々落ち着かずに、ふ、太ったかなデブいかな……と脇腹辺りを気にしていた。
 釣り上げた時に重かったのかも知れないとそわそわし。

 回収した装備品はいくつかは流されていて、物憂げに「んーん」と首を振った。
 貴重品だけはしっかりと仕舞っておいたのでキープできていたのが救いどころ。

「タマモちゃんは? 釣れた? わたし以外」

タマモ > 「世の中、枠に嵌まった者ばかりでもないのじゃ。
そう言った例外も、あるやもしれんじゃろ?
ともあれ、分かったのならば良い」

分かっていたが、反論はなかなかに勢いのあるものだった。
そんな少女に対し、さらりとそう返しながらも、後の反応には一つ頷いておこう。

「ふむ…別に年寄りでもないがな、そうでない、とは言い切れまいか。
ちっ………そうか、ならば止めておこう」

人間と比べれば…いや、他の妖と比べても、確かに年は上だ。
強く否定するものでもないからか、軽く思案しながら、そう答えて。
そして、さり気無く舌打ち一つしながら、それは止めておく事にした。
まぁ、そもそも冗談で言っていた訳だが。

見詰めていて、何やら落ち着かなさ気になる少女。
多分、お互い、思っている内容は、まったくの別物だろう。
分かってはいるが、こう、つい、と言うやつである。

「あー………まぁ、ほどほど、じゃろうか?」

釣れたかどうかの問いには、足元のタライを指差し、そう伝えた。
見てみれば、3匹程の魚が泳いでいるのが見えるだろう。
釣りを楽しむ上では少なめ、食べる目的の上では丁度良い感じなのだ。

ティアフェル > 「人を規格外扱いするんじゃないっ。
 わたしゃそんなヤバイ奴ではないっ。
 ……まあ、以降河原では足元に一層気を付けます」

 枠にはまっているかどうかはともかく。例外というかそんなおかしなことはしません、と念を押すようにして重ね。
 そして、また溺れかけるなんて御免だ。溺死は困る。片手を挙げて誓った。
 
「えー? 前高齢者だって云ってたじゃーん?
 ほんと、長寿でなんでもできるなんて、ずっこいよね!
 スペック高いんだから、無償で助けてください!」

 堂々と厚かましかった。助けてもらっておいて態度がでかい。
 きっと沈めて置けばよかったと思われていることだろう。自信がある。
 むん、と腰に手を当てて無為に胸を張る厚顔。
 
 そして、タライにふよふよと泳ぐ釣果を覗き込んで。
 
「ふーん? どれどれー? あらほんと、ぼちぼちでんなー。
 じゃー、今日イチの大物はわたしだね!
 やー、釣りの才能、あるんじゃない…?!
 次はサメとか釣れちゃうかもよー?」

 あははは、と恥晒しの分際で高笑いしながらほざいた。
 確かになかなか釣り上げられないだろう大物だろうが、自分でいうことではない。

タマモ > 「いやいや、考え方の捉え方じゃぞ?
お主が普通の人間である事くらい、分かっておるしのぅ?
うむ、次やったらお仕置き決定じゃ」

分かっていながらも、それを言う、それが己の性格なのだ。
まぁ、当然と言えば当然の考えではあるが、それだけ付け足しておいた。

「人間と比べたら、確かに高齢者じゃろうて。
それを、他の種族に当て嵌めるのは、あれじゃろう?
………妾とて、苦手な事の一つや二つや三つや…いや、良いか。
まぁ、それは関係無くとも、無償はさすがに御免被る。
せっかく貸しを作れる機会、勿体無いしのぅ」

助けられた少女と同様、態度が大きいのはお互い様で。
それが逆の立場でも、きっと二人は同じなのだろう。
なにせ、こちらも無駄に胸を張っているのだから。

「ふむ…まぁ、そうじゃな。
釣り上げたって言うならば、それをどう扱うのも、妾次第じゃろうか?」

ふむふむと、少女の言葉には頷いてみせるのだが。
そんな少女に返す言葉は、受け取り方次第では、あれなものだった。