2020/08/21 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にレギオンさんが現れました。
レギオン > 月明かりが木々の狭間から零れ落ちる。
腰のランタンが照らしてくれなければ、とても歩けない森の中。
すっかりと、深夜にさしかかったような時刻。
幸いなのは、昼間の暑気が大分薄らいでいること、残念なのは――。

「―――良い子も、悪い子もそろそろ寝る時間だよな……。」

そんなぼやきが軽く口をつくような時間だということ。
“――夜中にしか取れない花なんだ。”という依頼人の笑顔が目に浮かぶ。
それを集めるために、わざわざ相場より高い報酬を用意してくれた。
それに釣られて金欠の冒険者がこうして夜中の散策に出る羽目に、という訳だ。

「この辺りかな……?」

人間は、寂しいと独り言が零れるものだ。
何気ない調子で言葉を紡ぎながら周囲を見渡す。
ぽっかりと開けたような場所。薄っすらと月の光を受けて輝く花――薬草の群生地。

レギオン > 「ほう」――と、小さく声が零れた。
蒼と紅。互い違いの目に映るのは、さながら月の涙のような花弁。
仄白く透き通った花弁。硝子のようなそれに微かな月明かりが反射して光る。
輝く――と表現したが、それは間違いだ。輝くのでも、煌めくのでも無い。ただ、光っている。

「こりゃ、確かにあのオッサンがにっこにこで依頼してくるだけのことはあるな。」

依頼人の、“きっと!君も!この依頼に感謝するよ!”というやけに力の入った顔を思い出す。
夜中の散歩くらいは許しても良い。少なくとも今はそう思っておこう。
一面に光る花弁には、その程度の価値はあるし。
そっと手を伸ばし、花弁に触れる。この花弁を集めるのが仕事だ。
できるだけ気を付けて、一輪ずつ摘んでいく。
“なるべく傷をつけずに、完全なものであればあるほどいい”というご注文だ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にミズホさんが現れました。
ミズホ > 月の光を浴びて開く花は薬草となる。
宵待草とも月光花ともいわれるそれを取りに来たミズホは、その群生地で偶然ほかの冒険者とバッティングした。
バッティングしたといっても別にすべて撮り尽すわけではない。
なので特に問題はないはずである。

「こんにちは。あなたもこれを取りに来たのですか?」

あとから到着した故、先についたレギオンに邪魔にならないように端で採取を始めたミズホはそう尋ねる。
てきぱきと採取するその姿は冒険者のようにも見えるだろうが、レギオンの方を一切警戒していないその姿は世慣れしていないようにも見える。
花が輝き、明るい場所ではあるが、森の奥でほかの人間はまず来ることはない、何かをするにはちょうどいい場所なのに。

そんなことは全く考えていないだろうミズホは、プチプチと綺麗に花を採取し、ゆっくり丁寧に籠にしまっていく。

レギオン > “なるべくたくさん。鞄に入るだけ集めて欲しい。”
そう言われて、渡された魔法の鞄に花弁を集める。
伸ばした指先、縫い目のついた右手指で花弁を挟んで、千切って、鞄に詰める。
まるで機械のような――と言われたら、そんな動きで正確に、精密に。
指の間に薄い花弁を挟んで、引き千切る。ふつり、ふつり、なんて感触。
と、微かな音とも呼べない音に混じるのは――こんな時間に不似合いな挨拶。

「ああ、今晩は。風情のないことだが、仕事でね。」

言葉を返す間も手は止めない。
代わりに、左右色の異なる視線を、声をかけてきた少女に向けた。
銀色の髪の毛が、この花の風景に似合ってる。
ついでにいえば、髪の毛の狐耳も、と言っても良いだろう。

「そっちこそ、こんな時間まで大変だね。」

なんて、軽口めいた言葉を挨拶に添えておいた。
作業の合間の、手慰み程度の響きで。

ミズホ > 「そうですね、お兄さんも、大変ですね」

そういいながらプチプチと花を摘んでいく。
そう難しい作業ではないが、傷がついてしまうと値段が下がってしまう。
慎重にゆっくりと花を集めていった。

「でも、一人では寂しかったので、少し心強いです」

そんなことをうれしそうに言いながら、相手と何か合わせることもなく、作業を続けていく。
ここで稼いで、子供たちにおいしいものを食べさせたいのである。

すがすがしい月光花の香りが一帯に漂う。
そこに何となく獣のような、人のようなにおいが混じっているのにレギオンは気づくだろうか。
ミズホの出す無自覚なフェロモンのようなものであるが、それがどう影響するかは……

ミズホの尻尾や耳が揺れるたびに、そういった、女の匂いがほのかに混じっていく。

レギオン > 少女の手つきに比べれば、此方は速度には勝るが、慎重さに於いては劣る。
人の手によるそれというよりは伐採道具のそれに近い動き。

「そうかい?こういう仕事は一人でやるに限る、とオレは思うけどな。」

作業の傍らの会話。
寂しかった――という、娘の言葉に、少し笑みを含んだ声が返る。
“もし、同じように獲っているものがいれば―――”
なんて依頼人の言葉が、浮かんで消える。
と、鼻孔を擽るのは月の花に混じって漂う獣と、人が混じったような香気。
――有体に言えば“雌”の香り。

一瞬、男の手が止まる。
『ヨブ―――』とだけ、脳裏で声を響かせる。
“相棒”を起動させるのはそれで充分だ。
ついでに、鞄のストラップを握る左手を強く、爪が掌に食い込む程度に強く握り込んで。
それだけで、流れかける、雄を抑え込む。

「いや、本当に“大変”なんだな、お前は――っと。」

軽い声をひとつ、響かせる。鞄が一杯になった。
その言葉の意味が、彼女に伝わるかどうか。
いずれにせよ、此方の作業は終わり、とばかりに屈めていた腰を伸ばし、鞄に蓋をする。

ミズホ > 「よし、ボクも終わりましたよ」

籠いっぱいに詰められた花を持ち、立ち上がる。
これを納めれば仕事は完了である。

「あ、ボクはミズホって言います。 お兄さんお名前は?」

ぴょこぴょこと不用意にレギオンに近寄る。
一切警戒していない。隙だらけの姿である。
どうせなら一緒に帰れば道中も暇がつぶせるし安全かな、なんていうことを考えていた。
目の前の者が安全かどうか、なんてわからないのに。

近寄れば雌の匂いがかなり強くレギオンの鼻を突くだろう。
この状態から何か、例えば無理やり犯す、なんてしても、実力差、そして周囲に人がいないことを考えても、まったく障害はないはずである。

レギオン > 「そっちも終わりか。お疲れさん。」

――こんな夜中にお互い大変だったな。
なんて、軽い色合いで言葉を添えて労う。
不用心に此方へ近付いてくる様子に、少しだけ吐息を吐き出す。
鼻孔を擽る匂い。それに混じる香りを吐き出すような所作。

「ミズホ、ね。あまりこの変じゃ聞かない方の名前だな。
 オレは…レギオンで良い。お兄さん、って歳でもないしな。」

名乗られる名前に、己の呼称を投げ返す。
気安い態度を崩さない侭、伸ばした手で狐耳を、ぽんっ、と撫でようとして。

「それじゃ、オレは帰るけど、どうする?
 森の入口位までならタダで送ってやるよ――」

“その先は有料だけどな”なんて言い添えれば
先に立って歩いて行こうとしよう。
何かするつもり――は今日のところはなさそうだ。
次に会った場所と、状況次第でどうなるかわからないけれど。

ミズホ > 「えー、おうちまで送ってくださいよー レギオンさん」

頭を撫でられれば、
ぎゅーっとくっついて楽しそうについていくミズホ。
そのままただレギオンに送られていく。
そうして今日は、平和に家に帰れるのだろうか?

籠はほのかに光り、夜道をわずかに照らす。
月明かりの中、二人は森の中を歩いていく。

このままさらわれても、誰もわからないような道筋。
特に何もなく終わるならばそれはそれで幸せなことだろう。

抱き着いた腕に当たる胸の柔らかさ。
香る雌の匂い。
楽しそうに揺れる狐の耳と尻尾。
触られれば柔らかく、嬉しそうにピコピコと動くだろう。

レギオン > くっつくのを止めはしない。
ただし、「えー」という不満げな言葉には。

「良いぜ。歩きながら依頼料を交渉しよう。
 割り引いてはやるけど、夕食一回で、とかは無しな。」

そんな風にわざと意地悪く笑ってみせるだろう。
そうして歩いて行く二人の影。
森の中を二人きり、男と女、雄と雌。
何が起こるのか、何か起こるのか、何も起こらないのか。
それを語るにはいささか、月の灯りが不足しているのかも知れない。

ただ、確実に言えることが二つある。
魔法の鞄は無事、依頼通りに依頼主に届けられたということ。
娘がどうなったかは、見下ろした月明かりだけが知っているということ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からレギオンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からミズホさんが去りました。