2019/08/17 のログ
■セイバー > 焼けた魚を頬張る、非常に美味しいが、まーたこれ風邪を引く流れかなぁ……と思いつつも、此処までくるとどうしようもないので諦める。
ごろりと倒木の上で器用に横たわると、横たわったまま焼き魚を貪り、食べた後は魚の油の残る指まで確りと舐めると、串を捨てて眠りに堕ちるのであった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からセイバーさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 丘」にぼたんさんが現れました。
■ぼたん > 真円に近い月が空に白くぽっかりと浮かぶ夜。
自然地帯にある森の奥の奥の方にある、人が滅多と立ち入らない夏草揺れる丘。
森を通って吹く風がざわと草を揺らし、所々にぷかりと咲く山百合が、重たげにその白い花をふらつかせる。
今宵はその丘に、奇妙にも手押しの屋台がひとつ。
軒先に『うどん そば』と書かれた赤ちょうちんが下がった下から、控えめな湯気が黒い空へと霞んでいく。
客席はたったの3人も座れば一杯になりそうな、簡素な長椅子。
今はその片隅に、向こうが透けてみえる黒い影がひとつ、あるきりだ。
その影の前のカウンターには、丼がひとつ。
まことに奇妙だが、ずずっ、ずずっと音を立てて丼が傾くたび、中身はその影に霞むように消えていく。
―――やがて、その中身も空になって
影が、身じろぎをするように震えて店の奥の方へ少し伸びて、次に長椅子から滑り降りる。いや、落ちる。
そうしてするすると地を這うように、夏草の間を縫って丘の麓へと移動を開始した。
「まいど
また、ご贔屓にー」
その影を贈る言葉が、屋台の奥から響いてくる。
やたらと現実味のある内容と、質感を持った鼻にかかった女の声は、風に乗って丘を渡っていく。
「………。」
やがて
紺のれんの奥から白くふっくりした腕が伸びて、黒髪黒目の女が顔を出す。
その頭部から見えるこげ茶色の毛皮に覆われた耳をひくつかせて、きょろきょろと丘を見渡して。
やがて、ふうーと溜息をつくと、暖簾から手と顔を引っ込めた。
■ぼたん > 影ができるくらいの月夜にだけ、こうして森の奥の丘までやってきて、屋台を始めてみて3月目。
つまりは3回目。
1回目は、森にいる知り合いの『神さん』相手にだけ特別に振る舞った。
そのあとどう噂が広まったのか、その知り合いの知り合いの『神さん』の友達だという『神さん』からもねだられて、とうとう3回目を今宵、振る舞うことになった。
「特段、そンな美味しいモンでもないと思うンだケドねえ――」
そうこぼしながら、湯気の立つ鍋にふたをして、その下に置いていた温石を布巾でもって包む。
カウンターに残ったままの丼を引っ込めて、洗い物置き場に重ねればもうここでの片付けは仕舞だ。
………勿論、王都のねぐらに戻ったら、山盛りの洗い物と格闘することになるのだけど。
合間合間に、時折溜息がこぼれる。
お酒を出すわけでもないから長ッ尻の客がいないのは良いものの、矢張り『神さん』―――こちらの言葉では相手『妖精』とかいうらしい―――相手は緊張する。
それでも断らないのは、所謂『たたり』を恐れるわけではなくて
単純に喜んでもらえるのが嬉しいのと、彼・彼女らが呉れる『代金』が、様々で面白いから。
珍しい木の実から、珍しくも無い木の実。
綺麗な石に、不思議な彫刻のある板。
もしかしたらそれぞれ、魔法の作用や意味があるのかもしれないけども、取り敢えず今は『神さんたち』とのそんな交換が、楽しい。
■ぼたん > 森から吹く風が心地いい。
屋台から少し離れてまっくろい空を見上げれば、心が浮き立つお月様。
灰褐色とこげ茶の入り混じった、厚ぼったい尻尾を上機嫌に揺らして、うーんと伸びをひとつ。
屋台を引っ張って帰るには、月が隠れる前に帰らなければならない。
その事さえなければ、今この場で狸の本性に返って、ひとつ踊りでも踊って帰りたいくらい。
「来月は、お休みもらおかな……」
残念そうな溜息と共に腕を下ろすが、すぐに気を取り直した様子でたすきを締めなおす。
屋台へと戻ると、調理器具一式、お皿一式を数えて指刺し確認をして、すこしずれていたりするのを直してから、うんと深く頷いた。
それから徐に、口元に指を当てて
ピィ!
森の夜空に鋭く響く、口笛の音。
程なく、森の木立の方から大きな鳥が飛び立つ音。
その夜鳥の影が、屋台と月の光の間を霞めて行った後。
丘に残ったのはざわめく夏草と、何気ない顔をして揺れる背の高い山百合だけ。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 丘」からぼたんさんが去りました。