2019/07/03 のログ
ナカム > 「………ふむ。考えてみれば当然だけど」

濡れた状態で早く動いたら体って逆に冷えるよね、と。
疲れたくないからと軽くしたのが間違いだった。
ていうかこの季節なら日光浴してたら温かくなるじゃん……。

片手に剣を持ちながら遠い目をする。

ナカム > 「はあ……。しばらく帰れそうにないし、ひと眠りするかー」

魔物を倒して収穫はゼロ。
盗賊団に目をつけられ、川に落ち、火がつけられなくて体を冷やす。
……ゼロどころかマイナスだこれ。

感覚だけで生きていても良いことないな、そう思いながら睡魔に身を任せるのであった。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯 川辺」からナカムさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川べり」にクルトさんが現れました。
クルト > どこかぼんやりとしたような覇気が無いように見える表情は、しかし無駄な緊張を排除した自然体の極地とも言える精神状態を示している。
全身からは無駄な力が抜け、相手に気配の一つも悟らせない凪いだ湖面のような静かな意識で変化を待つ。
両手で握りこまれた得物は小指と薬指を巻きつけ他の指を軽く沿えぴたりと虚空の一転に据えられ微動だにしない

「……奥が深い」

穏やかな昼下がり、握り締めた釣竿はぴくりとも動かない。
そう、川釣りの真っ最中であった。

クルト > 話の発端は昨日の夕飯時の出来事である。
冒険者の知り合いであり何かと自分に絡んでくる知人がこう言ったのだ。
『お前いつも肉ばっかり食ってるよな』と、なので言ってやったのだ。この世で一番美味い食い物だと。
すると「他を試さず世界一とはよく言った、魚の美味さを知らないとはだっせぇ!」と。
なるほどクルトに魚の美味さは判らぬ。だが美味いものを知らぬと言われ黙っていられるほど大人しくもなかった。

ゆえに朝一番で道具屋で釣り道具一式と、さらには『プロは皆使っている』と革製のアングラーグローブまで購入し事はここに至る。
事前の情報収集ではここ地元住民が大山と呼ぶ名も無き山から流れてくる川にはとても大きく、雄々しく、美味い鱒が釣れるのだという。
他とは違うという事で地名を入れてマス・大山と呼ばれる鱒はそれは鍛えられた筋肉が引き締まり美味いのだという。
しかしそれだけに力も強く、並の大人では逆に川に引きずり込まれ、牛の角に釣り糸を括りつけて引かせるも角をへし折られたという眉唾物の逸話まであるのだった。

クルト > 「……っ」

そろそろ餌を交換すべきか、そう思って竿を引き上げたところ、針の先には付けられていたはずの虫が消えうせていた。
流され外れる程度のヤワな付け方はしていない、となれば答えは一つ。
この自分にも感知できない隠形の術を使い流れが針を揺らすのと紛れるほど静かさで餌だけを取って行ったのだろう。
こちらを煽るような行為にはしかし、屈辱の表情ではなく、ニィっと獣の笑みを浮かべ再び針に餌をセットする。

「居る……」
そう、空振りではなく確かにここに居るという証がある。
であれば勝負はすでに始まっている。
次こそは逃がすまいと神経を研ぎ澄まし、流れの中に仕掛けを落とす。

クルト > こんな事であればマスと戦うにはどのようにすればいいのか、という情報も仕入れるべきだった。
冒険者がたむろしている酒場には休日はマスをかくしかやる事がない、とこぼしていた男が居たのを思い出す。
水中のマスをスケッチする事は出来ないから休日ごとに釣り上げてはスケッチしていたのだろう、彼にコツを教えてもらえばよかった。

「………」
呼吸のリズムをゆったりとした物に変え、風とせせらぎの中に紛れ込ませる。
意識を凪ぎの向こう側、無に近づけ世界と合一をはかる。
針が揺れる。
違うこれは探り……殺気が無い。
そして今のは勘違いではないか?と気が緩むであろう頃合を見計らい、意識すれば違和感を覚える程度の気配の揺らめきが起こり……。

「捉えた……っ」
グン!と竿を一気に引き上げればしなりで弧を描き、大物がかかった事をこれでもかと主張する。
さあ戦いだ!

クルト > 「なかなかの手練……っ」

ぐんっと竿が振られ、力を逃がすべくそれに応えようとした瞬間、逆側に切り返される。
あのまま反射的に動かしていれば二方向にかかる力が容易く糸を引きちぎっただろう。
しかし素早く手首を返す事で力を受け流し、相手の体力を削る事に成功する。
だがしかしその程度ではこの大物を疲れさせるにはまだまだ足りないだろう。
戒めを断ち切らんと知恵を絞り暴れる魚、それを受け流しひたすら体力を…体幹を削らんとする少年。
めまぐるしく攻守入れ替わる戦いはもはや立会いのそれに近い、鬼気迫るものであった。

クルト > 戦いは続く。
虚実を交え、そして一度見せた虚を見せ札に実へと変えてと知恵比べの様相を見せ始め。
しかし思考を本能に任せ瞬間的な反射で対応する強引なまでの瞬発力で勝負の土俵を根底から突き崩す、そうしてどれほど経っただろうか。

「獲ったぁ!」
蓄積した疲労が見せた僅かな動きの乱れに合わせ、一気に竿を引き上げる。
相手の力を利用した掬い上げにマスは宙を舞い自由を奪われ……。

「!?」
奪われない。
大きなヒレで風を切り裂き、滑空するマスが矢のように加速、それをギリギリで回避し竿を振るい糸で動きを掣肘する。
魚が水の中でのみ強いと誰が決めたであろうか。
急降下で突っ込んでくるマス、飛び上がり宙を舞う少年。
二つの影が空中で交差し、戦いは…続く。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 川べり」からクルトさんが去りました。