2018/10/31 のログ
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」にアデリーナさんが現れました。
アデリーナ > 夜の遠乗りは、街道から逸れた旧道でひとまず終わる。
この先には「あの」遺跡。今はまだ、そちらに行く用事はない。
誰かが来るかもわからない、今や獣くらいしか使ってないんじゃないか、
ってくらい荒れた石畳の上に馬からよいしょと降りたった。

「うーん、速力は上々。持久力も本家に遜色なし。首がないから騎手がビビらなきゃビビることもない
 うまゴーレム(仮)、意外と行ける気がするぜ……!」

石と鉄で作られた馬は、首の代わりに杖を前に向けて据え置く杖架と硝子の風防が生えている。
うまゴーレム(仮)、魔導長杖とセットで運用すれば高速で正面に魔法攻撃を放てる軍馬の代替品としてイケる気がする。
ただしケツは死ぬほど痛いのでクッションの装備は必須だな。
僕のかわいいおしりがふたつに割れちまった。ちくしょう。

ぼやぼや言いながら、懐かしい苔むした空気を肺いっぱいに吸い込んで道の脇に座り込む。
たまには行くあてもなく外に出てみるもんだなあ、なんて。

アデリーナ > 「ほいっと」

ぼ、と旧道を橙色に暖かく染める光。
小規模な炎を発生させる魔導着火具を使って、拾った小枝に火をつける。
それを枯れた枝葉の小山に放り込み、焚き火にして手を翳す。

「温いなあ。うーん、こういうのキャラじゃないけどキャンプとか楽しいかもな。
 お前もそう思うだろ? 思わない? 思えよ」

首なしのうまゴーレム(仮)に話しかけながら、制御魔法で哨戒モードにする。
変なのがよってくれば、うまゴーレムが接近を知覚して教えてくれるはずなので存分に気を抜こう。
懐からバターの香る柔らかなパンを出して齧りつく。

「相変わらず味しねーなー……まあ柔いから喰ってるようなもんだけどさー」

ぼやきが静かな夜の街道にやけに大きく響く。

ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」に紅月さんが現れました。
紅月 > ―――――かつ、かつ、しゃら…

今はもう使われていない筈の、古い道…不意にそこに靴音が響き始める。
深淵の如き暗闇の向こうにある遺跡の方から、ゆらゆらふわり…月明かりに煌めく紅はまるで、焔。
ゆっくり、ゆっくりと、少女の方へと近付いてゆく。

「…火が見えたから来てみれば、女の子が夜にこんなとこ出歩いちゃダメだぞー?」

能天気なユルい声で話しかけてみる。
そう、焚き火の灯りの届くところにつけば何て事はない…紅の髪の女は不思議そうで心配そうな微妙な表情を浮かべながら首を傾げた。

アデリーナ > 首無し馬ががしゃんがしゃんと落ち着かなさそうにうろつき始める。
認識範囲になにかを捉えた証だ、つまりはなんか来る。
残ったパンの欠片を頬張り、魔導短杖を手に警戒。
ろくでもないものなら、一当てしてうまゴーレムに掴まって即時離脱だ。
戦闘なんてできっこないのだから、目くらまししたら一目散。それしか生存の目はないだろう。

――と、珍しくシリアスぶってみれば、飛んできたのはユルユルのふんわり声。

「……あん?」

現れたのは人間の女? 自分が言うのも何だけど、こんな所で深夜に出会う顔には見えない。

「そっくりそのままお返しするよ。――何しに来たのさ、こんな廃道くんだりまで。
 残念ながらこの先には"何もない"ぜ? 迷子ならくるっと後ろに回って真っすぐ行けば新道に出るよ」

紅月 > 「……、…ん?」

そっくりそのまま、そのまま…?
え、もしかして非力な乙女カウントされてる…?
数拍きょとんと固まった後、ケラケラと笑い出す。

「あっはは、ふふっ…や、うん、ごめんごめん……なーんかひっさしぶりに普通の女扱いされたら嬉しくなっちゃってね、ックク。
…我が名はコウゲツ、東の果ての地にては紅の月と書きまする。
普段はマグメールの冒険者ギルドに属するトレジャーハンターか、はたまた治癒術師なんかをしておりまする…どうぞ、良しなに」

気が済むまで大笑いした後、目尻の涙を軽く拭いつつ姿勢と表情を整えて自己紹介を。
トレジャーハンターと名乗り、遺跡の方角から来たとなれば…何をしていたかなんて言うまでもないだろうと、そこまでご丁寧に口にはせずに。

「…ついでで散歩してたらあんさんを見付けたんだけど、道がわかるなら迷子じゃないのか。
良かった良かった」

けれど、少女の方へと近寄った理由はきちんと説明し、ホッとしたように笑いかけようか。

アデリーナ > 「こりゃご丁寧にどうも。
 クルシンスカヤ魔導技術研究局主任技師、アデリーナ・クルシンスカヤだ。
 普段は魔導機械の研究とか兵器設計とかやってる。よろしく?」

泣くほど爆笑している女――コウゲツに眠そうな半目で抗議の視線をぶつけておく。
それから自己紹介。
――というか、だ。もしかしてこいつ、あっちから来たよな?

「ああ、僕は迷子じゃないよ、そこは安心したまえ。
 で、遺跡入ったのかい? 中で変なものとか、見てなかろうね?」

笑う女に剣呑な空気をまとって詰問。
事と次第では口封じ――殺したりとかは多分無理だから、何かしら別の手段で――をしなければ。

紅月 > 「アデ、リーナ、クルシンスカヤ…クルシンスカヤ?
……あーっ!噂のゴーレムマスターかっ!!
凄い凄い、ホンモノに御目にかかれるとは!」

目の前の少女の正体に気が付けばキラッキラ、それはもうキラッキラと表情を輝かせてグッと拳を作りつつ詰め寄るようにして。
見ようによっては人懐っこい犬にも見えるやもしれぬ。

「ジャンルは違えど創り手として、アデリーナ女史の探究の噂が好きで……え?変なモノ?
いやいや、遺跡っていうのは大概が変なモノの宝庫であって…別に、今更それでどうこう言うほどでもないけど」

けれど相手から剣呑な空気を感じれば、心底不思議そうに首を傾げる。
そう、己にとっては遺跡とはそれ自体が未知の宝箱…その未知を探求し財宝を探し当てに行っている辺り、ちょっと普段と毛色の違った"変なモノ"があったくらいじゃあ驚かないのである。

アデリーナ > 「えっなにそれ。僕今どういうことになってんの?
 怖いんだけど。ゴーレムマスターって。なにそれ知らない……」

すささっとうまゴーレムの陰に隠れる。
見に覚えのある異名は喜んで認めるし自称もするが、そんなはずかしい異名を貰った覚えはない。
誰だそんなこと言い出したやつは、とぷりぷり怒りながら、挙動は怖がっているような素振り。

「いや、まあうん。えっ、君もなんか造るの? へ、へぇ……何を手がけてるのさ?
 いや、気になるものが無かったならいいんだ。すまんね、変なことを聞いてさ」

どうにも彼女はハズレを引いてはいないと判断して警戒を解く。
そんなことより、造り手談義だ。同好の士を見つけたかも知れないほうが大事。

紅月 > 「えっ…えっ?
とりあえず昨日酒場で聞いたのは…自ら手掛けたゴーレムに跨がり、他のゴーレムを次々に轢き倒し擂り潰していったとか。
…新兵器の試験戦闘でもしてたの?」

まさに伝言ゲームの弊害"末端にいく頃には別の話"である。
尤も…この女の場合は根が素直故に、周りが面白がって変な事を吹き込んでいる事も多々あるのだが。
何にせよ噂を信じきっている紅娘は、少女の様子にただただ困惑するのだ。

「私はマジックアイテムの類いを扱ってるんだ!
付与の術が得意でね、まずアクセサリーやらポーションやらを作って…そこに追加効果を作ってみたり、逆に呪術系の禍々しいの作ってみたり?
魔石の加工もできるから、そういう系統も色々とね」

分野を訊ねられれば嬉々として答える。
女のそれは主に装飾や御守り…はたまた武具防具の素材そのものの加工や能力の付与強化、そして完全に趣味のアレコレなどなど。
だいぶ幅広く無節操に…ほくほくと語る表情からは、研究というより"楽しむ為にやっている"というような印象を受けるだろうか。

「気になる、ねぇ…強いて言うならアレよアレ、あんげろす?
あの絡繰騎士に何度か襲われて返り討ちにしたくらい。
…倒しても喰えないわ大して剥げないわで、旨味がないのよねぇ?」

先程までの幸せそうな表情は何処へやら…不満タラタラな様子で愚痴る。
相手が明らかに自分より年下っぽくても構わず愚痴る。
昨今の暴走絡繰には辟易しているのだ。

アデリーナ > 「あー……」

あれか、昨日の今日でもうそんな噂になってんのか、って頭を抱える。
あの失敗のおかげでうまゴーレムに着想出来たとはいえ、失敗談が出回っているのは精神的によろしくない。

「その件に関しては黙秘するよ。そして広めないように。
 機密事項だ、変に口外すれば消されても僕は責任を取らない」

脅しを込めて内緒にするよう言い含める。
多少事実と異なる内容だが、身に覚えのある話だ。それを事実無根と言うには無理がある。
なので、言外に認めた上で拡散を防ぐことにした。

「へぇ、マジックアイテム。近年の若者はマジックアイテムと魔導機械の区別も付かないっていうけど、
 君のは古式ゆかしい伝統技法を感じるね? へぇ、魔石加工……
 魔導兵器の素材に良さそうなの見つけたら市場より割高で買い取るからさ、持ってきてよ」

いろいろ作ってるんだなあ、と頷きながら分野の話に花を咲かせる。
僕は魔導機械が本分でゴーレムは片手間の副業なんだ、とか。

「へえ、やっぱ魔導機兵が再起動してたか。
 まあ、大丈夫だろうしいいや。――旨味ならあるよ、できるだけキレイに仕留めてくりゃ僕が買い取る。
 くず鉄で売るよりうんとカネになるぜ」

だから狩ったら持ってきてよ、と相手の見た目が年上なのをいいことに、子供のおねだりのように上目遣い。

紅月 > 「あぁ、勿論勿論。
城にはボチボチ友人もいるし、私も一応第6師団の協力者だからね。
…ってか、そもそもそんな"おっかない"情報を欲しがるようなブッ飛びさん、紅の周りにゃ居ないよぅ!」

ケラケラと笑いながら、何ともユルい調子で黙する事を約束し…ついでに所属師団を教えておく。
第6、人呼んで『便利屋』…ソロで行動できるレベルのエキスパート揃いな少数精鋭で、他師団のサポートを主な目的とした師団である。
決して好き好んで少数精鋭なのではなく、単に人員不足なだけというのが本音であるが、そこはご愛敬。

「うん、そうそう…絡繰は全く使わない、完全に作者の魔法技術に依存した付与型のやつ。
道具っていうよりアートに近いかも?
……魔導兵器用の素材、かぁ…何か困ってる事ある?
あ、何なら兵器そのものに付与術式刻んでみちゃうとか?」

違う分野だからこそ芽生える興味、関心。
付与やサポート系の魔法は弱点のフォローも役目のひとつ…であれば、何か役立つ事もあるやもしれない。

「え…いやいや厳しいデショ。
あいつら爆発四散したりドロドロ溶け始めたり風化し出したり…ことごとく自壊してくじゃん。
生け捕りにでもしなきゃキレイは…あ、でもカケラは一応集めたなぁ。
あぅっ…こぉんなかわいこちゃんのオネダリだもん、仕方ない仕方ない」

もとより女子供と物作りは大好きな紅娘、断る理由がある筈もない。
むしろ役得かもしれない。
というか何だこの可愛い生き物は。
…思考が欲望の方に逸れていくままに、折角だから抱き締めたり出来ないかと軽く両手を広げてみる。

ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」からアデリーナさんが去りました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」にアデリーナさんが現れました。
アデリーナ > 「なんだ、軍人かぁ。
 ぶっ飛びさんとは言ってくれるね、人によっちゃよだれが出るほど大人気のウチの秘密情報だぜ?」

覚えのある所属に肩をすくめる。
何でも屋師団、兵器の卸先としては小規模過ぎてあまり取引のない相手だが――
それでも軍隊、取引先に変わりはない。喧嘩を売りまくる必要もないだろう。

「うんうん、そういう古式ゆかしいのも無駄があったりするが、
 魔導機械とは違った趣があるよね。僕はわからんけど。
 芸術品として売れるのもまあそうだよなあ。
 ――今の所困ってることったら魔導機兵のコアユニットが回収できないことくらい、かな。
 ほかは概ね有り物で誤魔化してっし」

機能停止と同時に自壊する重要部分。それが無傷で稼働状態のまま回収できれば
解析が進んで新技術の研究が捗るのになあ、とため息。
門外漢に愚痴っても詮無きことではあるけど。

「でしょー。生け捕りも難しいもんでねえ。存外残骸は残ってるもんだが溶けるってなにしたんさ。 
 こわっ。魔導機兵溶かすってこわっ……」

ぼそ、と恐れつつ、しかしおねだりが効いたと見てはさらなるおねだり――
魔導機兵研究の手駒を増やすべく邪悪な博士は策を講じる。

「わぁいお姉ちゃんやさしー! えへへー、僕うれしいなあ。
 詳しい話は書面にまとめるから王都にかえろー!」

きらきらにぱーっ。普段クッソ睡眠不足で不機嫌な表情に固定されている顔面の筋肉を総動員で笑顔を作って腕の中に飛び込む。
むぎゅむぎゅとハグ――くっ、無駄に生肉ぶら下げやがって。悔しくないもんな!

「さ、うまゴーレムに乗って。僕の新作の速度で風になろうぜ……!」

それからあれよあれよと抱きしめたままうまゴーレムにまたがる。
おねーさんを後ろ向きに、正面から抱き合ったままだ。
追加の風防くらいにはなるだろ、と自分の心に言い訳して、ゴーレム発進。
石で作られた首無し馬に女二人、王都を目指して駆け出すのであった――

ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」からアデリーナさんが去りました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」に紅月さんが現れました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」に紅月さんが現れました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」に紅月さんが現れました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」に紅月さんが現れました。
ご案内:「◆メグメール(喜びヶ原) 自然地帯(放棄された旧道)」から紅月さんが去りました。
ご案内:「◆喜びヶ原 自然地帯/機兵出没地域」に紅月さんが現れました。
紅月 > ―――――ズシン、ズシン、ズシ…ン……

魔導機兵『アンゲロス』…白銀の魔導金属の装甲を纏い深紅の槍を持った絡繰騎士。
急に遺跡から涌いて出て、遺跡の周辺を警護するかのように闊歩し始めた其れに手を焼く者は多い。
各ギルドには討伐要請が下され、それ自体に少なくない賞金がかかっているが…どうにも、己が闘ってみた感想としては中堅層から上級者向けであって。
また、その生まれが魔に偏った者らにとっては更に危険度がハネ上がるだろうハイリスク極まりないミッションである。

自身が手を貸している第六師団は元々の人数が少ない事もあって静観姿勢…だからいいや、と、己も此奴らとは極力関わらずに居たのだが。

「……、…同士でもあるかわいこちゃんに、オネダリされちゃったしなぁ」

木の上に身を潜めたまま、はぁ、と小さく溜め息を吐き…また、機兵に視線を落とす。
何でも、その娘さんはアンゲロスの残骸を極力綺麗な状態で欲しているらしく。
特にコアユニット…恐らく頭と胸に耀く魔石っぽいアレなのだろう、それの完品を熱望しているようだ。

紅月 > 己自身の機兵への対処なんて、とりあえず邪魔だからブッ壊す程度のもの。
なにせ、己は飯の為以外の破壊行動は基本的にしない主義なのだ…せめて魔物なら美味しく料理して皮や骨まで加工品にするというのに、あんなもの壊しても旨味がない。
ボディの金属もだが、何よりあの胸の核石が濃い呪い混じりで喰えたモンじゃなかった。

「だいたい…アレを無事なまま、もぎ取るって。
"普通の人間"相手なら、ほぼほぼ逝ってこいって言ってるようなモンだろうに」

本当に、大変なオネダリをされてしまった…と。
ちょっぴり脱力しながらクツクツと笑う。
けれど、まぁ、確かにアレを持ち帰る事が出来るなら…込められた魔力の更なる解析も、成分それ自体の解析も、ずっとずっとやりやすくなるのだろう。

…というか、たぶんちょっとした快挙だ。
冒険者とはいえ客将の称号を持つ己が功を挙げれば、何でも屋だの便利屋だのと揶揄されて御上に振り回されてる第六の同士や…特に、最近書類に埋まってグロッキーな友人殿が、ちょっとは待遇改善して貰えるやも知れない。

「止めてもダメ斃れてもダメ、なら…支配権を奪うか、生かしながら剥いで逃げ切るか。
だいたい、そんなもんかねぇ?
……いやダメか…そういやなんか、ギルドの魔導士ちゃんが『操った機兵に自爆された~』とかって担ぎ込まれて来たっけ」

アレは惨い有り様だった。
女の子なのに背中は酷く焼け爛れてるし、爆散したパーツにでもぶつかられたか足の骨が粉々になってたしで。
たまたま己と数人のヒーラーが愚痴会しながら屯してたから良かったものの、治癒術師が留守だったらどうなっていたか。

紅月 > 良くも悪くも、治癒術士という連中には情報が集まる。
何と闘えばこういう怪我をする、だとか、どのくらいの強さの戦士ならソレと殺り合える、だとか。
他にもメンタルケアなんかをしていれば、ポロリと溢す愚痴からヤバいアレコレなどなど…その種類は意外と幅広く、役立つ事は多い。
己は別にそれらを目的としている訳じゃあないし、基本的には資料のひとつとして自身の胸に仕舞っておくだけだが。
…あの時にそうやって学んでいなければ今頃己の腕がもげかける番だったろうと思えば、治させてくれた事に感謝すらしたくなる。

「ただ、支配の仕方を知ったとて…半時ももたないとなると、なぁ……仮に小半時がリミットとして、パーツをもいで、それから?
…自爆まで待って、どこまでのサイズなら爆散しないのか実験してみる?
……、…手間、だなぁ」

興味がない訳じゃあないし比較的安全で確実だが、さすがに面倒極まりないというのが本音。
しかも、活動停止している其れでは価値が下がる。
…と、なれば、結局は"無理矢理もぎ取って脱兎"という最初の案に帰結してしまう訳だが。

「……どう足掻いてもリスキー…ぷふっ!」

そう、つまりは。
誰でも思い付くけどあえてやらなかった阿呆の所業…それこそが、今己がしようとしている事である。
…しっかりキッチリ自覚したら、何だか笑えてきてしまった。

視界に捉えるは、機兵の中では小柄な3メートル級。
成人女性を縦に二人並べた程度の其れは、大型よりは部位破壊もし易かろう。
周囲に他の機兵が居ない事も調査済み、いわゆるこの個体の巡回ルートというヤツらしい。
ちなみに魔物や魔獣やらの姿も無い…というのも、機兵の散歩のせいで追いやられてしまっているらしいのだ。
そのせいで農村に二次災害が出たりしてしまっているのだから、やはりこの機兵らは迷惑この上ないと思う。

紅月 > 「……さぁて、一丁やりますか!」

腰掛けていた太い木の枝に立てば、伸びをひとつ。
トトッと近くの木を踏み台に付かず離れずの辺りにあった距離をぐっと縮めていけば、タンッと機兵の頭上を越え…くるりと身を捻りながら抜刀し、機兵の胸板を首の付け根から抉るように切りつけ、そのまま目と鼻の先に着地する。
人間で言うところの鎖骨にしっかりと斜め一閃の傷を創った機兵は、其れと同時に胸の鉱石と頭部の十字から赤い輝きを放つ。
…奴が、己を敵と認識した、証。

「さぁさ、紅と遊んで下さいませ?
…ホレホレその様な、ただの熱線など当たりはしませぬぞ」

直ぐ様飛び退き光線を避け、遮蔽物となる木々も使いながら器用にかわす。
…機兵の攻撃は、直線的なものが多い。
熱線や光線の照射であったり、槍の投擲であったり…受けてしまえば只では済まないのは確か、けれども予備動作はあるし落ち着いて先を読めば充分に回避出来る。
大剣や槍の攻撃は正確無比で戦士として良好だが、如何せん早さが足りない。
常にギリギリで避ける事を意識していれば、案外経験則でどうにでもなる。

紅月 > そうして何発も何発も、繰り返し繰り返し…まさに鬼の如き馬鹿力で純粋な斬撃の物理衝撃を延々と叩き込む。
そうして刻まれていく傷は、丁度胸部の石を縁取るように律儀に並んで。
ガギッ、と、奇妙な音と共に…ついに円形の溝が出来た。

「……ふふっ、後は…」

機兵の光輪がチャージを終え、光線を放つ。
ニィ…と笑みながら横へ飛び退きかわして、そこから真っ直ぐ機兵に駆け寄る。
風を切り横薙ぎに振られる槍を飛び越えると共に手首ごと斬り落とせば、武器をかなぐり捨てて無防備なその広い胸板へと飛び込む訳だが…男女のロマンチックな其れでは断じて無く、胸の核石を装甲ごと剥ぎ取らんとする死の抱擁である。

「…っぐ、っ……んぬぁらぁああああっ!!」

響き渡る咆哮は、獣の如くに。
ブチブチとまるで太い血管が引き裂かれるような音を鳴らしながら無惨に千切り奪られてゆく、巨大な赤い鉱石。
無論相手も呆然としている筈もなく、張り付く敵を掴んで引き剥がそうとする…が、お生憎様。
化け物じみて頑丈に出来ているのは機兵だけではなく、鬼神の血を引く己も同じ。
ミシミシ、ボキリ、と掴まれた腕から嫌な音はしたものの、一拍遅かった。
雑に放り捨てられる勢いを半身を捻りながら殺し、何とか着地する。

「……は、っは……っはぁ…ふふっ。
貴方の心臓、もーらいっ」

無事な左手に輝く、赤い赤い其れ。
そのまま手を離せば重力に従い…フッと虚空に消えた其れと同じ大きさだけ、機兵の胸部には大きな損傷がある。

ご案内:「◆喜びヶ原 自然地帯/機兵出没地域」にカインさんが現れました。
カイン > 「……派手にやってるやつが居ると思ったら」

眼の前で繰り広げられる光景に少しだけ呆れた視線を向けながら、
少し離れた場所から声を掛ける男。
到着はたった今ではあるのだが、何とも言い難い光景に微妙そうな表情を浮かべ。

「生きてるか?幸いな事にくたばるまで入ってないみたいだが」

そのまま近づいていけばおもむろに右手を差し出してみせる。

紅月 > 「……っ!?…カイン!」

まさかこんな時に、こんなタイミングで、しかも知り合いに会うだなんて…一体どれ程の確率だろう。
元より心をあまり隠さぬ質ではあるが、それはもう驚いたという表情で左手を彼の右手に重ねる。

「…あっはは、生きてる生きてる。
ちょっと頼まれ事しちゃってねー…後はアイツを生かしたまま捕まえるか、生かしたまま逃げ切るだけなんだけど」

苦笑しながら立ち上がれば、直ぐ様潰された腕を押さえる。
皮や脂肪の内側で骨が粉々に砕け肉に刺さっているらしい己の右腕はぷらりと力無く垂れ下がり、一周廻って痛覚が行方不明…どうやら動かせそうにない。
とりあえず事情の要点だけ手早く説明しつつに、血抜きがてら患部に爪を突き立てて…血液を使い柘榴石のギプスを作成する。
ようは二の腕から石がまとわりつくように生え、巻き付いて固定しているだけだから凄く不格好ではあるものの…非常時だ、致し方ない。

「…なーんか手軽に逃げ切る方法、思い付いたりする?」

カイン > 「驚いてるのはこっちだがな。…まあ、逃げるだけなら何とかな。
 何度かやりあってて気がついたが、彼奴等は彼奴等なりに目を持ってるらしい。
 そいつは地面の中までは見通せんらしくてな、地面に潜る魔術の方が空飛んで逃げるよりも多分安心だ。
 …俺は使えんことはないが、お前も一緒だとちょっと痛いかもしれんぞ?」

加減がきかないと、何とも物騒なことを言いながら相手の体を抱き寄せながら言い返す。
肩をすくめて未だ健在である様子の機体に視線を一瞥して問いかけ。

紅月 > 成程、土遁か…!
さすがに地中までは試した事がなかった故、驚きと感心の混じった目を男に向けて。

「…いいよ、やって。
カインなら任せられる」

ニィ…と闘争の熱の醒めきらぬまま、男の腕の中で不敵に笑んでみせて。
ちら、と目を向けるのは機兵…から少し離れた位置に転がる己が愛刀。
けれども非常時だからと自分自身に言い聞かせ、涙を飲んで目を閉じる。

カイン > 「…その信頼はその信頼で重いがな、まあ応えなきゃ男がすたる」

ニッと笑って言い返しながら緩やかに背中をなでて見せれば、
呪文を唱え始める正直な話をするならば、慣れない内容だ。
だがだからといって逃げるわけにもいかぬと近づいてくる機兵を一瞥した後、
手早く呪文を完成させれば音を立てて地面を蹴る。
直後、その場に立っていたはずの二人の姿はとっぷりと地面の中に沈み込み、
後に残るのは空虚な空間だけであった――

ご案内:「◆喜びヶ原 自然地帯/機兵出没地域」から紅月さんが去りました。
ご案内:「◆喜びヶ原 自然地帯/機兵出没地域」からカインさんが去りました。