2018/07/23 のログ
■紅月 > 「よ、っと…」
魔獣や魔物の亡骸から、ト、と軽い調子で飛び降りる。
改めて見上げるとなかなか壮観だ。
…なぜ、こんな惨状になっているかと言えば。
この森に噴き出した瘴気が原因だ。
溜まりに溜まったアレコレが、限界を迎えて爆発する…地震や噴火なんかと同じ、魔界ではよくある事である。
今回の場合は大地に溜まった瘴気がこの森に溢れ、元々いた魔物なんかが凶暴化したり…動物達が瘴気の毒に喰われて堕ち、変質してしまったらしい。
「魔境なんて言われる訳だ…土地の瘴気が他から集まってる。
暴発ってよりは、毒抜きの場だなこりゃあ」
太刀を鞘におさめ、骸を背に歩き出す。
装束には返り血ひとつ無く、歩みにも淀みがない。
■紅月 > 「魔物の異常繁殖って言うから来てみれば…どっちかと言えば聖職者の分野じゃないの。
念のために舞装束着込んどいて正解だった」
此処に来たのはギルドからの依頼で
『魔物がこの森で爆発的に増えて周辺に被害が出始めているから、魔物を討伐し巣を破壊して欲しい』
というものだった。
「真を知らんとは言え、随分とまぁ…」
思わず苦笑する。
さすがに瘴気塗れの魔獣を喰う気にはなれず、もう面倒だから倒すだけ倒して雑に放ってきてしまったが…帰りに素材採取はしておかねば勿体ないか。
ご案内:「喜びヶ原 月獸ノ森」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 付近で野営中だった男は、ただならぬ気配の源を探るため、物音を頼りに夜の森を駆け――行き着いた先には。
「こりゃ~おったまげたな……――」
濃厚な血の芳香の正体は――無数に積まれた獣の骸。
みな一様に異様な形状をしているところから、それらの獣が常世のものではないことが知れる。
あまつさえ、その骸の山の向こうに居たのは――
「また会ったな――魔物退治の専門家か?」
以前、セレネルの海上で、大怪獣バトルを繰り広げていた女がそこに居た。
■紅月 > ふと、近付く気配に気付き、足を止める。
魔のモノではない…なら『この森は出るぞ』と脅かして帰らせるくらいはした方が親切やもしれん。
月を眺めて気配を待てば…
「……ん?
…え、あれっ、あの時の。
エズラ…で、合ってたっけ?」
振り返れば、見覚えのある顔。
ぱちくりと目を瞬かせ、思わず男を指差しながら。
セレネルの小舟の上にいた雷撃使い…確か、そんな名前だったはずだ。
「うん、んー…こっちの姿の時は冒険者と治癒術師がメインなんだけどね?
魔狩りもやってるよ」
この男には、最初に会った時既に角を見られている。
隠す必要がなく気が楽なぶん、変に気を使わず…この異様な状況でもふわりと笑んで軽く手を振ってみせる。
■エズラ > 名前を呼ばれるのに合わせて軽く片手を挙げて、返事に代える。
あの時は夜であったのに加えて海魔に襲われていたという状況も重なって、相手のことをしっかりと確認する余裕もなかったが――
月明かりの元で改めてその姿を観察すれば、やはりというか人ではない。
「ああ――それで合ってる。そっちは紅月、だったよな」
異国の響きであったが故に、頭に残っていた。
周囲を改めて見渡してみる――むせかえるような血の臭いと、撫で斬りにされたと思しき魔物達――
「鼻が曲がるな、こりゃ――一どーやら、オレの助太刀はいらねぇようだな」
海上での一件の礼でもれきればと思っていたが――少なくとも周辺に、自分たち以外に息をするものは居ないようである。
■紅月 > 「覚えててくれたんだ、名前」
嬉しそうにニパッと笑う。
己としては当時『面白そうな人間』と認識していたから覚えて当然なのだが…まさか、相手に覚えられてるとは。
「強いて言うなら素材採取手伝って欲しい気もするんだけどねー…守護魔法付加して御守り作ったりするから。
んでも、此処までくるとさー…めんどくさくなって来ちゃって。
もう燃やして供養しちゃおっかな、とか」
話しながら男の隣へと近付いて、少々困ったように笑いながら死屍累々を眺める。
「素材剥ぎたいヤツいる?牙とか」
なんて男に訊ねてみようか。
欲しいのあれば持ってっていいよ、といった風に。
「…って、そうじゃないや!
この森危ないよ?
他の土地の瘴気が集まりやすいみたいでね…そんで、ちょいちょい吹き出すみたい」
ちょっとした噂話を思い出したかのように、物騒な警告を告げる。
男が戦える人物だろうが、危険は危険。
一応伝えておこう。
■エズラ > 「美人の顔は忘れねェ――もちろん名前もな」
ムフ、と口の端っこを持ち上げて笑みを返す。
素材採取――は、流石に面倒であろうと男も同意。
こちらにも分けてくれるとはうれしい申し出だったが、生憎と今現在それほど欲しているものを得られそうな獲物は居ないようである。
「いや、せっかくだがオレも火葬に賛成だ――ん?ああ、それなら心配ねぇ――それが目的だからな」
基本的には戦場が仕事場であるが、それ以外の時も勘を鈍らせないために、最小限の荷物のみを持って山に川に海に野営を張る――そんな生活をしていることを話す。
「だから、こいつらが襲ってきてくれるってんなら、むしろその方が良かったわけだが――この有様じゃな」
こうも派手に暴れられては、今夜はこの一体はむしろ安全地帯と化すであろう。
そうして、男の目が不意にいたずらっぽい笑みを形作る。
「そういうわけだからよ、代わりってわけじゃないが――ひとつオレと手合わせしてみねぇか」
飛び起きて異変目指して駆けていた時は、それなりに臨戦態勢を整えていたが故――その熱気が、未ださめやらぬ――という状態であった。
■紅月 > 「びじ…っ、よ、よくそういう恥ずかしい事言えるよね……」
プイッと顔を逸らす…その頬に赤みがさしてゆくが、はて、月明かりの中で見えるかどうか。
「あちゃあ…そいじゃあちょっと悪いことしちゃったか。
狩り尽くしやしてないだろうけど」
鍛練を兼ねて夜営していたらしい男…いやはや、さすがに、仮に瘴気をほったらかしにしても魔獣が増えるには時間が掛かろう。
うなじの辺りを軽く掻きながら、申し訳なさそうに眉尻を下げる。
「…ん、えっ?
紅と遊んでくれるのっ!?
わぁ、うわぁあ手合わせ!やろうやろうっ!!」
相手の申し出に飛び付く…嬉々と、そりゃあもう目をキラキラと輝かせて。
「ちょっと待っててね、すぐこの邪魔なのお掃除するから!」
そうと決まれば早速、と。
積み損ねた骸もポンポンぐちょりと放り投げ、両手で小山に着火すれば…なんとも巨大なキャンプファイアー、もとい、火葬が恙無く開始される。
「後は…
【来たれ、我が同胞…焔獄の子らよ】
…っとと、ごめんね急に喚んで。
実は、火事にならないようにこの火柱を管理して欲しいんだ。
ちゃんと焼けるならつまみ食いしていいし、終わったら帰っていいからさ?」
喚び出した鬼火達に指示を出す…これで森林火災の心配もない。
やることを終えればバッとエズラへと振り返り。
「…よしエズラ、移動だ移動!
向こうに湖あって、そこはもっと開けてるから!」
■エズラ > 「恥ずかしい?そんなことはねェだろ、誰だって紅月のことが美人だと思ってるぜ」
王国内ではあまり見かけることのないエキゾチックな出で立ちに、艶めいた雰囲気を纏うその姿は、一度目にすれば忘れることはないはずであろう。
そして、こちらの少し唐突な申し出を喜んで受けた相手が、手早く魔物の処理を済ませる。
「ほーォ、便利なもんだぜ――ようし、行こう行こう――」
促されるまま、湖のそばへと移動――月明かりもひときわ明るく、周囲を照らし出していた。
男の装備はといえば、寝間着代わりの軽装に、あとは腰の剣というばかり。
しかしそれで十分なのか、男の身のこなしに無駄はない。
「さぁーて……――」
手慣れた様子で抜剣し、両手で剣を構えて遠慮なく切っ先を相手に向けた。
口元は緩やかに笑みを形作り、その身は微動だにしない――
力の抜けたその構えは、どこからでも切り込めるようでいて、その実いかようにも攻撃を受け捌くことが容易な風にも見え――
「そら、来いよ――」
■紅月 > ふむ、見たところだいぶ薄着であるが…手合わせであるし、そんなもんか。
特に疑問も持たず、かといって油断もせずに…鉄扇でポンポンと手を打つ。
…決して、相手を舐めている訳ではない。
鉄扇を横に持ち妖力…こちらで言うところの魔力を込めると、ただの鉄製の扇が刃を纏った黒漆塗りの大扇に変わる。
ロングソードくらいのリーチはしっかりあるだろうか。
「…最初は小手調べ、が、定石なんだっけ?
じゃ、まずは1柄からかねぇ」
片手で軽々と扇を開けば…にこり。
「一差し、お付き合い下さいませね?」
タンッと姿勢低く懐目掛けて跳ぶように間を詰め、下段から袈裟斬りにするように扇を振り上げる。
…勢いのままクルリと回る様は舞っているかの如くに。
■エズラ > 「得物はそれでいいのか――?」
確か以前、海魔と戦っていた時には、大太刀を振るっていたようであったが。
鉄扇が巨大な扇に変化――優美にそれを構えた相手が、挨拶もそこそこに距離を詰めてくる。
「おおっと――」
間合いの詰まった分だけ正確にバックステップし、逆袈裟に迫る扇の風圧を顎に感じつつ反り返る。
その時点で両手での構えは解いており、中空に舞い踊る相手の脇腹へ狙いを定め、こちらも避けた動きをそのまま攻撃動作に転じ、鋭く斬り上げる――
■紅月 > 「えぇ、こちらで。
…この子は攻防一体に御座いまする故」
くるりと扇を回し、面を盾にして切っ先を防ぐ。
面で隠れたその裏から、扇を下から閉じるように回し蹴りを…相手の胴目掛けて。
「対人なら、小手先遊びも出来ましょう?」
■エズラ > 金属同士がぶつかり合う甲高い音が、静かな夜に響く。
その衝撃もさめやらぬ間に、再び扇が閉じられるのと時を同じくして、蹴りが迫る。
「ムオッ……――」
剣の腹で蹴りを受けつつ、後退――軽やかな見た目に比して重い一撃である。
柄を握りしめる手にじんわりとしびれが走る。
「いい蹴りだ――まだまだ行くぜっ!」
再び剣を両手で構えると、地を滑るように間合いを詰め――上段から袈裟に――斬り込むフェイント。
返す刀で相手のすねを逆袈裟に狙う――
■紅月 > 「ふふっ…おいでませ?」
不意打つ一撃を見事に受け止め、後退する男…やはり、戦い慣れてる。
思わず笑みが零れる…ワクワクする。
するりと間合いを詰める彼の姿はしなやかな獣の様。
上段からのそれを面で防ごうとするが…フェイント、ならば!
空いている方の手でバッと扇を閉じ、そのまま金棒のように扱い逆袈裟の刃を止める。
「…やりまするな、では」
閉じた扇をそのまま相手の切っ先をはね飛ばす様にカッと蹴りあげ、その勢いで扇を開きながら1度二人の間をくるりと一回転させて…袈裟斬り、の勢いで体を回してそのまま横凪ぎ斬り、と、組み合わせて連撃を仕掛けてみよう。
さて、当たるか距離をとるか…楽しみだ。
■エズラ > 「そっちもな――おおっ、と、と!」
フェイントからの逆袈裟を上手く防がれ、続く連撃――
しかし、男の両眼は扇の動きを冷静に捉え続けている。
袈裟斬りを斜め方向に受け流し、激しい攻撃の勢いを利して半身になり、横凪ぎをガッチリと受け止める。
それらの攻防はすべて、一歩踏み間違えれば致命傷になりかねない、きわめて近接した間合いで行われており――
「……ムフ」
不意に、男の顔に助平心を隠そうともしない笑みが浮かぶ。
直後、鍔迫り合いになっていた剣から力が抜け、片手に持ち替えたと同時にさらに近間へ入り――相手の脇へと逆袈裟を見舞う――
という、フェイントの向こう。
そちらの動きは寸止めとなり、もう一方の手が――にゅ、と無造作に伸びて、相手のふくよかな乳房を柔く鷲掴みにしようとする算段。
■紅月 > …その一撃を叩き出したのは、本能であった。
「へぇ…止めるか」
嗚呼、楽しい愉しい…!
まだ1柄の其れとはいえ、封具で力を抑えているとはいえ…其れでも人間を越える腕力と、そこそこちゃんと速度を乗せた連撃だったのに。
これは迷う…もっと圧すか、扇2柄に増やすか。
きっと此奴ならそれでも捌いて見せるだろう。
そんな狂戦士スイッチが入りかけた、そんな時であった…男がなんともまぁ助平そうな笑みを浮かべたのは。
当然というか『あっ、何か来る』と察する紅娘。
視線だけ向けて脇の逆袈裟を防ごうとした、閉じた鉄扇から…カンッ、とやけに軽い音が鳴る。
急ぎ視線を戻せば…迫る、男の、掌。
その時、確かに男の掌は…柔らかな感触を鷲掴みにした。
ある種の勇者になったというか、漢の栄光を勝ち取った瞬間である。
…が。
ゴンっ!!
其れなりの衝撃が男の頭頂部を襲うだろう。
気絶するような戦場の其れでは微塵もないのだが、こう、なんというか…懐かしさを感じるような。
…その一撃を叩き出したのは、母性、本能であった。
秘技[かぁちゃんの拳骨]…炸裂の瞬間である。
「……、…あ。
…うわ、わ、ちょっごめん!
大丈夫!?ねぇっ!」
こうなってしまっては戦闘そっちのけ…まだ根性で胸を鷲掴んでいたとしても、おろおろと男の心配をするだろう。
■エズラ > 「いよっしゃあ!」
勝ち鬨の声――にも似た、あるいは、ただの悪ガキのような。
ともかくそんな声をあげつつ、手のひらの感触をもにゅもにゅと楽しみ――しかる後、当然の報いを受けることになる。
鋭い拳打を避けるつもりは、勿論もとよりない。
「うげっ!」
したたかな拳骨を見舞われ、もんどり打って地面に倒れ込む。剣も放り出し、ごろごろと転がり――湖に落下。
あっぷあっぷと大げさに水中で暴れた後、じゃぶじゃぶと生還――
「ウォ~イテテテテ……効いたぜ今のはよ~……――」
頭をさすりながら剣を拾って鞘に納める男は――明らかに勝ち誇った笑みを浮かべていたりした。
「ようし、今度は3揉み、いや4揉み――なんつってな!はっはっは!」
先ほどまでの緊迫した空気は雲散霧消し――ガキ大将じみた高らかな笑い声が、森の中にこだまするのであった。
その後もしばし剣劇が続いたのか、それとも夜明けと共に食事でも共にしたのか――それはまた別の話。
ご案内:「喜びヶ原 月獸ノ森」からエズラさんが去りました。
■紅月 > 暫しの間ゴロンゴロンと転がる男を眺めていたが、湖に落ちればさすがに心配もする
。
しかし、しっかり生還する辺りがしぶとい。
「…そりゃ、痛くしたもんよぅ」
勝ち誇った笑みを浮かべる男に、何だかすっかり脱力してしまった紅月。
まだまだセクハラし足りない様子に毒気を抜かれてしまっては。
「いや懲りろよ、懲りなさいよ……ぷっ、ふ…っあははっ!
なんなのさー、もーっ!」
男につられて笑い出す紅娘…元々笑い上戸なのだ、さもありなん。
とりあえずびしょ濡れた男を乾かしてやり、一休憩でもするんだろうか。
どちらにせよ『やっぱり面白い男だった』と…暫くの間、思い出す度に笑ってしまうのだった。
ご案内:「喜びヶ原 月獸ノ森」から紅月さんが去りました。