2018/02/12 のログ
■シトリー > 「うんうん。
そっか、私200年以上も寝てたんだ、これは寝坊とかそんな話じゃないよね。
魔族でも私のこと覚えている人いるかな……みんな寿命は長いけど好戦的だからすぐに殺されちゃうんだよね」
相手の話を真剣な目で聞きうなずく。
とはいえ光のない瞳では真剣さは相手に伝わりにくいだろうが。
ちょっと性癖のおかしい放蕩魔族とはいえ、知ることへの興味は何年寝ても薄まることはなく。
「そうだね、まぁ……知らない世界ってのも面白そうだし。魔界に戻る前に見て回るのもいいよね」
完全に浦島状態ではあるものの、むしろそれも良いだろうと前向きにとらえ。
相手の指さす方向に視線を向ければ口元にうっすらと笑みを浮かべて。
「あ、そうだったね。私はシトリー、死なない以外は普通の魔族だよ」
■スナ > 「カカカッ……! よくあるよくある。俺だって200年とまではいかねぇが、長いこと微睡んでたこともある。
人間みてぇに60年ぽっちしか生きない連中が幅効かせてる世だ、そのくらい間を空けたほうが刺激も増して見えるさ」
スナもまた楽しげに笑い声を上げ、目を細める。
人間味の薄い濁った虹彩を真っ直ぐに見据えながら、スナはシトリーと名乗った魔族の思うところを読み取ろうとする。
「シトリーな。よろしく。
……ふぅん、死なない、ねぇ……まぁ剣ブッ刺されて200年も寝てたんならそんなところだろうな。
俺ぁ尻尾が増えちまったんで長生きになったが、不死とはいかんの……刺されれば死ぬじゃろな」
言いながら、スナは改めてシトリーの全身を舐めるように見回す。
艶めく褐色の肌、くすんだ己の毛とは比べるべくもない美しい銀髪、ほっそりとした体つき。
お世辞でもなく、美形である。ゆえに、このまま王都に行ってもあまりロクな目に合わないような予感もする。
魔族にとっては釈迦に説法だろうが、それにしても、今の王都はおそらく彼女が知る以上に爛れ穢れている。
「……まぁ、どれくらい死なないかは知らねぇけどよ。痛いよりは、痛くないほうがええじゃろ。
シトリー、お前さんもせいぜい気をつけて生きな。マグメールの王都もおそらく、お主が知る場所とは違う。
俺にできる忠告はこのくらいかの。余計なお世話だったらそう言っとくれ」
ククッ、と自嘲気味に肩をゆすると、スナは踵を返し、歩み始める。小川にそって、下流の方へ。
「一緒に行くかぇ? 行くならすぐ行こう。獣くらいなら追い払ってやる。
一人で行くってんならまぁ気をつけてな。どのみち俺はもう王都へ帰る」
■シトリー > 「いやぁ、私もあの剣刺された時にはさすがに久しぶりに死ぬかと思ったよ、死ななかったけど」
相手につられるように笑みを浮かべながら剣が刺さっていた腹を軽くなで。
よく見ればワンピースが裂けているのが見えるだろう。
「あはは、心配ありがと。
でも大丈夫、私痛いのは平気だし、どうせ死なないし」
相手の忠告に対し軽く肩をすくめて見せ。
踵を返す相手の背中を見ればすっと立ち上がって小走りに相手の横に行き。
「でも、道に迷うのは飽きたから案内してほしいな。
このままだと森の中に封印されそうだし」
■スナ > 「そうかい、そうかい。
まぁ、痛いのが平気で、しかも死なないってんなら、大抵のトラブルはなんとかならぁな。ククッ」
獣道を並んで歩く。
スナの口調も物腰も大人びているが、こうして並べばシトリーから見ればやはりチビに見えることだろう。
「うん、でも封印は嫌だな。またウン百年寝てろってんならまだいいが。
寝ることもできず一つ所に閉じ込められるのだけは勘弁じゃの。たまーに想像しちまって、眠れなくなる。
……『勇者』と言ったか? 魔族に対してそういう芸当ができる奴、今のこの国にいないとは限らんからの。
せいぜい気張って身を守るこったな。死なないからって慢心するのは愚の骨頂よ」
言いつつ、スナは手に持った片手斧をぽいと空中に軽く投げる。
斧は清流の空気を裂きながら回転し……唐突にその輪郭をぐにゃりと曲げ、一本の銀の毛束へと変わった。
宙を舞う蛇のように身体をくねらせ、スナのお尻へと舞い降りると、4本目の尻尾となり、くにゃりと頭を垂れた。
「……ククッ、間違っても『王都でも俺に守ってもらえる』とか思うなよ? 案内と護衛は王都までだ。
帰ってからも俺に何か頼みたいことがあるんだったら、コレだからな、コレ」
言いながら、スナは細い指で輪っかを作ってみせる。お金と言いたいようだ。
まぁ、こうしてあえて口にするところ、このシトリーという女性のことが心配であることも確かなのだが。
こうして、シトリーとスナは連れ立って森を抜け、街道に通じ、王都へと向かうこととなる。
道中変なこと(色んな意味で)はなかったと思われる、多分。
■シトリー > 「まぁそうだね、退屈は人を殺すっていうけど、不死も殺せるのかな。
でもまぁ、アイオーンの加護が薄くなったんなら当面は大丈夫でしょ」
相手の言葉に牢屋につるされたまま何年も放置される姿を想像し、いろんな意味で身震いをし。
「大丈夫大丈夫、本当にただの道案内のお願いだからさ」
横に並んだことで身長差がはっきりと出れば少し腰を曲げて相手の顔を除きこむようにしつつ。
どこか、子供の少年にお願いをするような口調で話しながら相手と歩調を合わせて森の中を歩きようやく王都へたどり着くことができるだろう。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林地帯」からスナさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林地帯」からシトリーさんが去りました。