2017/01/11 のログ
■エアルナ > 「頼もしいですね。私も魔法は少々使いますが…剣のほうは全然。」
見事に使い込まれた風合いの青年の剣に、感心したように感想を述べれば。契約成立、と見たのか狼が腰を上げ、娘の傍に歩み寄る。紹介しろ、とでもいうように主を見上げ、青年のほうを見て
「はい。王都まで、よろしくお願いします――このこはプロスペロ、普段はペロでかまいません。幼い時から一緒ですので、人には慣れています。…ペロ?」
名前を呼ばれた狼は、いったん座ると、頭を下げて見せた。よくなれている、ようだ。
「私のことは…エアルナ、で構いません。旅の道中、敬称はむしろ火種になります。…実家が地方領主の一人、というだけですから。」
周囲をはばかってか、小声で応えるのは。青年もおそらく同じような背景ではとみたからだ。冒険者という、克己心の強さがあるのはと…脳裏で風の噂を思い浮かべてみるが、すぐには思いつかない。
■マティアス > 「いえいえ、少々とはとんでもない。
こちらの狼殿はただの狼ではないとお見受け致しますが、如何に?」
歩み寄ってくる狼を紹介する様子に、此方こそと視線を合わせるように膝を曲げては会釈を返そう。
やはり、ただの狼と断じるには違う気配がそこにある。
幼い頃からの輩と呼ぶには、少し足りない。自分のこの感覚が正しいとすれば、恐らくは、と。
「――承知しました。
あぁ、うん。僕のほうはあんまり気にしないでほしい。
恐らくは似たような家柄で育ったかもしれないが、勘当同然の身でね。寧ろ其方の方が心配だね」
とりあえずは、口調を戻そう。少しは気楽な方へと。
邪魔をされなければ、停められた馬車の御者台に乗り込もう。
自分の荷物を荷台に放り込み、本来の主の方に手を伸ばそう。こちらへ、と。引き上げてゆこうと。
■エアルナ > 「ええ。森の精霊の血を引く、狼です。」
十分人間並みの賢さと、その身に魔力を宿す存在。つまりはそういうことだ――青年を見上げた狼が、一瞬笑みを浮かべたような気がしたかもしれない。
さすがですね、と娘のつぶやきを聞けば、狼はとことこと馬車の横へと回り。出発を促すようにくい、と頭を動かして見せた。
「王都までしばらくかかりますから、楽な口調でどうぞ?冒険の話など聞かせていただければ嬉しいです――と、」
手を引かれ、いざ、御者台へ。ありがとうございます、と礼を言いながら…馬たちへ呼びかける。
「さ、出発ですよ――今日もお願いね?」
ひひん、といななくと。二頭の馬は、馬車を引いて歩き出す…
■マティアス > 「やはり、か。遠目からしてもそんな気がしたものでね」
お守役、というだけではない。それ以上だろう。
単なる獣扱いではなく、相応の礼儀と注意を払うべき一個の存在ということだ。
一瞬、その狼が笑ったように見えたのもまた、気のせいではないだろう。
それほどでもないよ、と軽く笑いつつ、件の狼によろしく、と改めて頷いてみせて。
「とりあえず、歩かなくて良いのは楽で良いね。歩くのが苦ではないが。
……冒険、というにはそれだけじゃ終わらない話の方が多いよ。どこにでも行った。北の帝国で道術を齧ってみたり、他所の地方にも渡り歩いた。」
まずは出発だ。御者台に互いに乗り込み、進みだす馬車に揺られながら腰の剣を外す。
座る己の方に鞘に納めた剣を立てかけつつ、前を見る。
薄く瞼を閉じながら、注意を払う。身体は緊張を抜きながら、思考は周囲に感覚の網を広げる。
■エアルナ > 「魔術士でも、ペロにすぐに気が付く方は多くないですよ。」
まして一般人は、と笑う。貴族の家の娘ではあるが、教育はしっかり受けて来たし、商売にかかわっている関係で箱入り娘でもないのだ。
ちゃんと狼に敬意を払う姿勢に、ありがとうございます、と頷いて。
「北の帝国にも?商売相手には帝国の商人もいますが、まだ、あちらの国まで行ったことはないです――どんなところですか?実際は」
等と興味深そうに会話を交わすうち、村は見えなくなり。見晴らしのいい原野と、ところどころにある林、という光景に代わってくる。
「あら?…あの林――…鳥達の声がありません、ね。」
ふと。行く手にある林の違和感に気が付いたか、娘がつぶやけば。狼が、すっと御者台を守るかのような位置へ移動する。
■マティアス > 「ははは、少なくとも知識量とセンスは問われるだろうねぇ。
礼には及ばないよ。依頼人に不埒な真似をするつもりは欠片もないけど、噛まれたら痛いし」
最低でも、知識量を補って余りある程の才能、センスが不可欠だろう。
そんな金の卵が、相応の血筋以外の在野にひょいひょい転がっていていいものではない。
馬車の加速に伴い、吹き付ける風の冷たさにローブの襟元を掻きよせながら肩を竦めてみせて。
「面白い処だったよ。ただ、気楽に行くにはいささか物騒ではあったがね。
異国人が軽い気分で赴くには向かないが、その分、いろいろ勉強になったよ」
文化、教養の際は文献や伝聞で知っていても、実際に行ってみないことにはわからないものも多い。
知りえたものは膨大とは言い難いが、自分の術法に対して色々と取り込むことができたものもある。
他にも話し込んでいれば、周囲の風景が変わる。そして生じる――違和感。
「……さて。」
そして、携える剣を左手で掴んでは御者台から身を起こす。さて、何が出る――?
■エアルナ > 「必要がなければ噛んだりしませんよ?ペロは」
冗談交じりにくすっと笑うあたりは、そう、まるで危険には気が付いていないようにも見える。たぶん風にのって、声は林のほうへ聞こえているだろう、と目を細めて。
「道中はやはり危険度が高いんですね?…この時世、仕方ないと言えば仕方ありませんが。文献は持っていますが、いまはまだそこまでです――…」
そんなのんきな声を聞きつけたか、林の中からばらばらと…武装した、いかにもな荒くれ男たちの集団が現れる。
『おい!その、女と荷物と有り金を置いていきな!』
ボスらしい男が怒鳴るのは、定番だろう脅し文句だ。
■マティアス > 「成る程。では、そうならないように気を付けるとも」
獣の見ていないところで、云々とはゆくまい。
尋常なるものなら兎も角、そんな小手先のことでどうにかなるものではない。
「道中が危ないのは何時の世もそうだよ。
だが、幾度も国同士が戦っていると、色々と変な目で見られたりするものだが……
と、こんな時に、か。」
言いつつ、御者台から立ち上がりながら周囲を見回す。
ばらばらと現れ出づるのは、いかにもな風体の男達。紡がれる言葉もまた、定番。
だが、数とは力なれば、脅威に足ろう。しかし――。
「すまないが、そうさせないための契約を交わしているものでね。
当方の都合で大変申し訳ないが、掛かる火の粉は払わせていただくよ。――疾ッ!」
腰の剣は抜かない。だが、魔力を巡らせて口の中で幾つのかの句を連ね、右手で印を切れば、
弾かれたような勢いで鞘に収まった剣がひとりでに抜けて宙を舞う。
その刃が向かう先は、そのボスと思しい姿の顔。
そして、馬車を止めるように告げながら己も、身軽な動きで馬車から飛び降りよう。
剣が向かう先へ駆ける。その動きを身にまとう魔力の淡い光が飾る。
■エアルナ > 「紳士的なのですね、ありがとうございます」
気を付ける、と述べる青年の真摯さを認めるように、礼を言う。
そして、いかにもな男たちを見れば…あぁ、食い詰めた村人ではないのはわかってしまう。何人もの旅人が、すでに食い物にされただろうと思わせる、手慣れた動きで…馬車を包囲しようとする足さばきだ。
「お願いしますっ」
短く答えて馬車を止め。こちらに迫ろうとする男の足を救い上げ、足止めしてくれる狼に一つ頷けば…詠唱するのは光幕の呪文。馬車と馬を保護する光の壁が、きらりと周囲を覆う――
これでこちらを案ずることなく、彼も動けるはずだ。
■マティアス > 「無理強い等、僕の趣味じゃないのでね」
乙女の身体を開かせるなら、丁寧に優しくが信条だ。
ぼそりと零す言葉はかの狼の守り人が聞けば、頭から齧られそうだが、ともあれ。
目の前の危機が問題である。とりあえず、追い払わなければ先に進めない。
「――……結構。良い手並みだね」
疾走しつつ、生じる光を肩越しにちらりと見て手を伸ばす。
ボスの顔に突き立つ寸前の刃を引っ掴み、横手に見えた野盗の一人を切って捨てる。
血に濡れても、まだ燦然と煌めく刃を片手に、後ろから回り込んでくる姿をさらにもう一太刀。
ローブの裾を揺らしつつ、振るう剣の手並みは我流を嘯きながらもそれなりの剣士のもの。
「引くならば追わないよ。急ぎの旅なのでね。
だが、それでもと云うのならば容赦はせんよ。――返答は如何に?」
己を取り囲む賊をぐるりと見まわし、右手に剣を構える。
彼らを威圧するようにひゅん、と一振りして血糊を払い、飛沫が降りかかる大地をその色に染めて。
■エアルナ > 「…いい趣味をおもちなんですね、きっと」
反応するのは少しばかり笑みも交えて。
そういう話は聞いています、とでもいえそうな大人の対応…に、なるか。
ただ。いまは盗賊の対処が先、とマティアスの剣技を見つめて。
「--引き時は誤らない方がいいですよ。命が惜しいなら、なおさらです」
血の色に染まり倒れた賊を見れば、小さく嘆息。
自身も警告を発しながら…
「ペロ」
と一言声をかける。淡い魔力の光に包まれ、ググ、と大きさを増す狼――馬ほどの大きさと化し、男達が逃げないならとばかりに。ウオウ、と吠えた。
■マティアス > 「……ああ、うん。そうだね。そういうことにしておいてくれたまえ」
その声と言葉を聞くと、複雑げな面持ちで空いた左手で眉間を揉み解す。
とりあえず、そういうことにしておくのが大人の優しさであろう。
「だ、そうだ。そうでなくとも、野盗狩りの依頼が掲げられると、安眠できる時は微塵も無くなるぞ?
まぁ……僕の剣に切られなくとも、あの狼に齧られてより痛い目を見たいのならば、止めんよ。」
その上で軽く剣を振り、左手で複雑な印を続けざまに降る。
小さく言葉を口の中で紡げば、切先に強い魔力の光芒が灯る。
空中に突き出せば、激しい破裂音が響こう。彼らに決断を迫らせるために。
■エアルナ > すこしばかり微妙な反応なのは、わからなくはない。けど。
ここはそういうことにしておく、のがいいくらいは察して。
頷くだけにとどめるーー
「夜盗退治だと…全滅条件にされてしまいますよーー元の道にもどる、最後の機会です。…いいんですか、このまま悪事に染まってしまっても?」
とどろく破裂音。重なるように、静かな警告。白狼が、ずいっと足を踏み出す。
そして。
『くっ、ひくぞっ』
傷ついた仲間を抱え、逃げていく夜盗達…その姿が遠くへと消えていくのを見届けて。ふぅ、と息が零れた。
「…ありがとうございます、マティアスさん」
■マティアス > 「……やれやれ」
引いてくれるのならば、言うことはない。
全滅させるのも手だったが、其れは其れで要らぬ業が溜まる。その帳尻合わせも面倒この上ない。
消えゆく気配を見送り、剣の状態を確かめたうえで腰の鞘に戻す。そっと溜めた息を吐き。
「どういたしまして、エアルナ嬢。ではでは、改めて先を急ぎますかね」
ローブの裾を払い、振り向き直りながら会釈を一つ。起こす顔に小さく笑みを見せながら、御者台に戻ろう。
この場に残る血の気配に、要らぬ騒動が招かれる前に早々にこの場を去ろう。
まだ夜と先の旅路は長い。少しでも急ぐために――。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からエアルナさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からマティアスさんが去りました。