2016/11/17 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」にアニマさんが現れました。
アニマ > ……なんだか少し冷たい
ふと浮かび上がる意識に冷たさを感じて目を開けると足元は水が満ち、小さな魚が悠々とその身をくねらせている。
そういえば昨日は雨だった。
この盆地では雨が降ると次の日はまるで水盆のようになってしまうと誰かが嘆いていたような気がするがそれはいつのことだっただろう。
そんなことを考えながら枕代わりになっていた鞄を探る。

「…鞄は濡れてない。記録帳は……うん。平気」

きっとずっとこうして来たのだろうと考えつつ
初めて読む記録帳に目を通す。
そこには彼女自身の、彼女だけの記録が少しずつ綴られている。
自分の日記なのにまるで他人の日記を盗み見るような罪悪感を覚えるのはやはり、昨日までの私と今の私が同じ人物だと確証を持てないからだろう。

アニマ > 一通り目を通しほっと一息つく。
綴られている内容は確かに自分のものだけれど、その中で受けたはずの傷はもうない。
昨日晩、私は四足歩行をする動物…恐らく大型のイヌ科が変異を起こしたものにわき腹を食いちぎられていたらしい。
それでこんな場所に命からがら逃げこんで力尽きたのだろう。
冷静に分析する自分に気が付きふっと自嘲の笑みをこぼす。

「全て忘れてしまうなら、記録なんかしなければいいのですよ。アニマ」

まるで他人を諭すように呟く。
自身の身を守るために戦う術も持たないモノがこんな場所に足を向けるなど、自殺願望でもあったのだろうか?
空は晴れているけれど、ここから歩いて帰るには随分と時間と傷を受け入れる覚悟がいるだろう。

「…何回死ぬでしょうか」

いつしか身についた独り言の癖。
その理由も何一つ思い出せないけれど。

アニマ > 俯き水面に映る知らない誰かにそっとため息を投げる。
どうしてこんな、面倒なことをしてくれたのですかと。
水面でこちらを見つめ返す琥珀色の瞳をしたそれに思い出す事のない謎を無意味に投げかけるもただ時間が無意味に過ぎていくだけだ。

「時間は二度目の食事をとるべき時間でしょうか…だとすると再生してからも数時間倒れていた…?」

また時間をはかりなおさなくては。
憂鬱になりながら昨日の自身を呪う。
しかしそんなことをいつまでも続けていても意味がない。
そう意識を無理やり切り替えて日記帳と照らし合わせながら荷物を確認していく。

アニマ > 「日記帳と…羽ペンと…この石と…」

照らし合わせるだけでめまいが起きそうだ。
どうやら昨日のうちにほとんどの物をなくしてしまっている。
お気に入りだったらしい水晶細工も、誰かの思い出の品も

「私の手元にあるのはたったこれだけ…ですか?」

…持っていても何も思い出せないのだからなくしてしまえたほうが幸せだったのだろうか?
そう一瞬考え頭を振る
私はきっと何度もそう考えて、それでもそれを持っていたいと思ったのだろう。

「…この辺りの記録は大体取得していますから…」

ともすれば内に籠る思考を冷静な分析に切り替え
記録に残る周辺地図を再検索していく。
今から歩き出せば…私の足でも3日ほどでマグ・メールにつくだろう。
もしかしたら親切な誰かが近くまで連れて行ってくれるかもしれないけれど…

自身の性質を思い頭を振る。
だめ、親切にしてくれた人のことも覚えていられない私は
誰かに親切にしてもらってはいけない。
甘えそうな心を奮い立たせ水盆となった盆地に足を踏み出す。

「…いくよ。アニマ」

その水音の反響にまるで一人ぼっちの自分を重ねるように
風の音の中に小さな水音を立てながら小さな少女は歩き始めた。

アニマ > …靴を脱いで裸足で歩けば靴がずぶ濡れになることも、歩くのに苦労することもなかったと彼女が気が付いたのはその数刻後のお話
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からアニマさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道脇の森」にエドヴェルト=ランデルさんが現れました。
エドヴェルト=ランデル > 鋭く振り下ろされた長柄の一撃をひらり、と躱す
空を切り振り下ろされたハルバートは地面叩き、動きの止まる一瞬を見極めるようにして長柄を踏みつけ、
横薙ぎに払い相手の頸を落とすつもりで首筋へと刃を突きつけた
相手の力量を持ってすれば、長柄を踏みつけた自分を跳ね除け再度、ハルバートを振るう事は容易であろう
同じように自分はこのまま相手の頸を落とす事が可能である

―――お見事でした

ハルバート振るう自分よりも一回りは年若い戦士の眼から闘志が消えてその声が聞こえれば、
此方も静かに刀を引いて、踏みつけていた長柄から足を下ろせばふーっ、と息を吐いた

「いや、若いのに結構な腕前で…余程、場数を踏んだように見えました」

戦場を求めて王都を尋ねるらしい若い戦士とは街道で偶然一緒になり、手合わせをする事になった
街道脇の森に入り、斬り合うこと数合、武器の長い彼は森の中という不利を物ともしない腕前であった
互いに挨拶を交わし、日の暮れぬうちに王都に入りたい、という彼は自分より先にこの場を後にした
残された自分は、その背中を見送り、見えなくなった所で短く息をつくと、少々鈍ったかな、などと
考えながら近くの木の根元に腰を下ろす。彼とは違い、此方には急ぐ理由はない