2016/08/05 のログ
■ファルコ > 隙あれば攻撃してくる。油断ならない相手だ。
翼の一撃をかわし、綺麗なU字を描いて攻撃を避ける。
後になり、前になり。高度を調整して酸のブレスをかわし、鋭い爪には鉤爪で対応する。
尻尾の振り回しには、単独ならば迎撃できたのであろうが、今は背中に乗り手が居る。毒針が当たらぬよう、大振りに飛んで回避した。
幾度とない追いかけっこの後、背面飛行で飛竜の頭上を通り過ぎたあたりで、少女が飛び立った衝撃を感じる。
ならば宙がえりをして距離をとり、その勝負を見とどけよう。
「おお、雷撃を纏った踵落としか。高さもあるが、回転することによりさらに威力が増している。これはキくぞ」
大技が決まり、雷鳴・轟音とともにリンドヴルムの巨体が地面に激突する。
ゴキャリと、骨が砕ける嫌な音がして、首が明後日の方向にねじ曲がった飛竜は、そのまま起き上がることなく地面に倒れ伏した。
さて、少女を回収して褒めたたえよう。そう思ったファルコがふと見回すと、彼女は影も形もない。
まさかと見下ろすと、呆然とした様子で落下していく姿があり……
「──ちぃッ!!」
流石に地面に尻もち衝突は勘弁願いたい。
グリフォンはあらん限りの力で羽ばたくと、落下する少女を急速に追い抜いて先回りし、地面すれすれで待ち構える。
堕ちてくれば空中でスライディングするように救い上げるだろう。衝撃は……死ななければ上等といったところか。
■ハナビ > 「うわわっ!? こ、これはヤバいかもっ・・・!?」
翼をイメージしても、障壁をイメージしても、このような極限状態で、しかも力の大半を使ってる今、都合よく覚えたての力を発揮できるほど甘くはない。
こうなったら四肢を犠牲にするつもりで体を丸めて落下に備えようとし、目をつぶってぎゅっっと力を表面に集中させていく。
「・・・・・・・・・・・・っ!!!」
正直、落下の衝撃にどこまで耐えれるかは未知数であり、むしろ高い確率で即死だったかもしれないが・・・不思議とその体に激しい衝撃が来ることはなかった。
ボスッっとやや鈍い音を立てて想像よりまだマシな軽めの衝撃。もしかしたら骨の数本はイったかもしれないが、獣人の超再生力なら完全に折れさえしなければしばらくすれば治る。
そしてそのあとに感じる柔らかい羽の感触が頬に触れればそっと目を開く。見れば、空が流れるように動き、目の前を漆黒の平原が覆うことだろう。
「わぁ・・・ありがとう、助かったよ」
やや痛む四肢と肋骨をかばいつつ首の近くまで体を動かして背中に抱きつくように体をくっつける。
「ボクはハナビ ありがとう、鳥人さん。二度も助けてもらっちゃったね」
尻尾をぱたぱたとはためかせながら、屈託のない無邪気な笑顔を浮かべていく。
■ファルコ > 「ぐ、ぬ」
狙い通りに背中に落ちてくれたようだ。
無事、とまではいかないがしがみついたのを感じ取り、ぬぬぬと呻く。
「う、うむ…… ぺちゃんこにならずに済んで良かったな……」
正直、受け止めた瞬間にこちらも背中に激痛が走ったのだが、
向こうの着地体勢がよかったのと、毛皮のおかげで重傷は免れたのである。
「ハナビか。こちらも名乗るのが礼儀だろうな。
……ファルコだ。それと吾輩は鳥人族ではない、れっきとしたグリフォン族だ。
しかし、先ほどの一撃は強烈だったな。まさかたった一発で落とせるとは思わなんだぞ。てっきりタコ殴りにするものかと。
それならばドレイクを破砕したとしても納得できよう」
ゆっくりと円を描くように飛び、やがて背に乗せたまま4本足で着地する。
降り立った瞬間僅かに鉤爪を握りこんだが、それもほんのわずかな間の出来事だ。
「ふう。……さて、此奴はどうしたものかね。
通常の討伐であれば撃破したものの獲得物だが」
そういいながら、仮面とローブを拾ったグリフォンが、獅子のように足を曲げて座り込む。
■ハナビ > 無事に地面に降り立って背中から降りて着地すると、岩を背もたれにしてぺたん、と座り込む。
呼吸に合わせて胸が上下に動き、体を休めながら空を見上げて。
「空中じゃ長く戦えないから、タコ殴りになんかしてる暇はないよ。一撃で落とさなきゃ、こっちがやられちゃうもの」
文字通り渾身の一撃。持てる力を全て右足に集約させたため、全身へ帰ってくるダメージもまた大きい。
力も使い果たし、体も満足に動けない今、まさに無防備といった状態で。
「グリフォン・・・? じゃあ鳥人じゃなくて、そっちが本体なんだ・・・! ボクもミレー族とは違って普通の獣人、ワーフォックスだから、なんか似てるようで違うんだね。」
脂汗を浮かべつつも笑は絶やさずに、笑いかける。
■ファルコ > 「理屈の上ではその通りかもしれんが、それにしたって決めた後の事を考えなさすぎだろう。
共倒れでは目も当てられんぞ」
さっきの落下具合からするに、どうも渾身というか捨て身の一撃だったような気がする。
自分が居なくなっても、この娘は空中戦やってけるだろうか。
「そうだな、訳あって人型をしている。特に王都では、あまり言いふらしてくれるなよ?
黒いグリフォンは数が少ないのだから。
しかしワーフォックス、か。なるほど、確かにミレー族とは微妙に異なるようだな。
直接戦闘に集中して鍛えている感じか」
小さくなってゆく体にローブをひっかけると胡坐をかく人型になり、袖を通してフードを被り、仮面をつければ
最初に見たであろう、仮面の男が静かに座っていた。
「あとは、そうだな……採掘やってた連中は返しておくか、ちょっと待っていろ」
腰を抑えながら立ち上がり、ひょいひょいと宙を跳んで、荷物をまとめ始めている者達のところへ急ぐ。
しばらくすると話が付いたのか、またひょいひょいと跳ねながら戻ってきた。
「さてと、動けるか?
一つ提案だが、空中の敵に対する手段を鍛えるのに、相手が居なければ困るだろう。
吾輩ならば、空き時間に相手になってやろう。此方は本業があるからそこまでしょっちゅうはできないが、幻獣とやり合うなどそうそうないぞ。どうする?」
■ハナビ > 「ウー、もう少し行けると思ったんだよぉ・・・」
おしかりはごもっとで、かくんと頭を垂れつつ肩を落とした。
「うん、大丈夫だよ。言いふらすつもりもないし、ボクはしばらく王都には戻らないつもりだったから。」
こちらも王都には行きにくい訳がある。こくこくと頷きながら秘密を厳守することを約束すると、目の前でグリフォンが人間へと戻っていった。
その姿を目を丸くして見守っていると、先ほどの人間の姿に変わり、立ち上がって採掘の人々の方へと向かっていた。
「やっぱ凄いなぁ変身能力は・・・ボクが魔獣化しても、一回り大きくなるだけだし」
むぐぐ、世界は広い、と改めて実感していたころ、ぴょんぴょんと跳ねて戻ってきた姿を確認した。
「え、いいの? 戦ってくれるのは嬉しいけど・・・ファルコはなんでボクに付き合ってくれるの?」
戻ってきたグリフォンから聞かされた提案。それはとても魅力的だしこちらとして断る必要は何もないのだが、もらってばかりなのも悪い。
「それなら、戦ってくれるならボクもなにか手伝うよ お世話になりっぱなしなのも悪いし、ボクもしばらくは傷を治すためにこの近くにいるつもりだったしね」
■ファルコ > 反省の色が見えるならばよし。闘い方の違う他人から指摘されて気づくこともあろう。
これで人の話を聞かない類だったら危なかったぞ。
「言っておくが、吾輩の人型への変身能力はそう高くない。仮面とローブの補助なしではまだ成り立たん。
姿変えの訓練を行って少なくとも200年は経つが、始めたての頃は二足歩行する鳥か獣かよくわからぬものだったぞ。
目標は仮面の付け外しのみで変身できる段階だが」
どっかと地面に腰を下ろし。
先ほどの呟きが聞こえたようで、苦々しげに答える。
「元々が、あまり向いておらんのだろうな。
汝が狐ならば、吾輩よりは上達早いと思うが……
ふむ、なぜに手助けする、とな。
気が向いたから、では納得せぬよな」
そう聞かれても、折角伸びしろが見える者をわざわざ放っておくのはあまりに惜しい。それだけのことである。
しかし、確かに何もなければ不思議がられるのも無理はない。そうさな、と握った鉤爪に顎を乗せて思案し。
「では取引と行こうか。
吾輩はシンビジューム商会というところで鑑定士をやっておる。
業務内容は、主に珍しい品物や素材の鑑定だな。といっても自力で探しに行くのはさすがに骨が折れる、遺跡の深層などには強敵も多いしな。
そこでだ。その戦闘力を見込んで頼みがある。敵を倒したら、できるだけ鑑定はこちらにまわしてくれ。
なに、黙って横取りはしない。その価値を見定めて、こちらで必要があれば貨幣、あるいは物品で買い取る。もちろんハナビが入用ならばそのまま返す。
取引そのものは模擬戦のついで、そうすれば一々王都に行く必要もなかろう。それでどうだ?」
■ハナビ > 「なるほど・・・ファルコは鑑定をしてるんだ」
取引の内容を聞かれたら、こくんと頷く。それならば冒険者家業となんら変わりはしない。
それに広い屋外ならともかく、狭い遺跡ではファルコはきっと実力を発揮できないのだろう。狭いところならば確かに自分の出番だ、と納得したのか、その取引には是非と承諾し。
「うん、やるよ。ボクも探してるものがあるし、こんなに嬉しいことはないと思うっ! それじゃこれからよろしくね、ファルコ」
こうして新たな仲間を得た少女は、ひとまず空中戦を覚えるために修行しつつ、遺跡を発掘するのを手伝ったり、冒険で得たものを持ってきたりして、協力関係を作っていくことだろう・・・最も、全身のダメージが残ってるので一日くらいは側にいるのだが。
ご案内:「ドレイクの墓場」からハナビさんが去りました。
■ファルコ > 実は、空中戦の訓練……なまっていたグリフォン態を動かし直すファルコ自身のためでもあった。
一度の飛行程度で腰を痛めるなど、空を駆ける獣として、あってはならないことなのだから。
「ああ、頼んだ。
特に暗所の探索はかなり困っていてな、キノコでも苔でもいいから、眼に付いたら持ってきてくれ」
契約は成立した。
これからは特定地域の探索がぐっと楽になりそうだ。
後日、すっかり忘れていた飛竜の鑑定に追われるのはまた別の話である。
ご案内:「ドレイクの墓場」からファルコさんが去りました。