2015/11/24 のログ
■ルーフェン > 金属の棒の説明を受け、ほう、と興味深げに眼を瞬かせる
「酷く曖昧な物なのだなあ…こんなもので本当に探しものとやらは見つかるのか…?
神任せに探しものなどと…色々と人間は考えつくのだなあ…」
呆れ半分関心半分な口調で回転する金属の棒を眺める
それはひどく頼りなさ気に見えたし、胡散臭くも見えた
自分が探しものであったか、と問われれば金属の棒から視線を彼女に移し、続いた言葉に耳を傾ける
「―――なんせ、人ではないからなあ
人の身であったらば、そりゃあ、慣れ親しんだ料理の
方が良かろうよ…まあ、そう慌てるな。主を食ったりはせんよ」
へらり、と笑いつつ彼女に伝える
「主の探しものが何であるかは知らぬが、竜族を探して
おったということであれば、その玩具もあながち使えぬ
という訳ではないようだ」
くしゅん、とクシャミを1つ
赤くなった鼻を袖で拭えば、すん、と鼻を鳴らし
「俺は嵐の竜の一族、ルーフェンと名乗っとる
今はまあ…さっきも言ったが、旅人、狩人みたいなもんだ
…旅竜、狩竜…か?なんにせよ、人ではない」
にぃ、と笑いかければ鋭い犬歯が僅かに見えたかもしれない
■ティセル > いつでも飛び退ける体勢をとりながら、
それでも子供の声は鷹揚で揺るぎない。
「神は人間などとはまともな会話などせぬからな。
宣託なんてどうとでもとれる曖昧なもんだよ。
だからこそ真実がある。解釈する人間次第でね。
──竜?」
怪訝そうな表情で、改めて男を見遣る。
その瞳も顔つきも肌も、竜らしき特徴も兆候も見当たらない。
ただ、笑みに覗いた犬歯が、人のものとは違う、と思えただけで。
「そうか──
私の求めているのは杖であって竜じゃない。
だが、ここへ導かれたのも何かの縁だ。
探し物と関係あってのことだろうな。
私は、ティセル。
ティセル・キュリエス・アルムフェルツシェキンという。
覚えておくがよい、竜族のルーフェン」
男のくしゃみを見れば、目を瞬き、ふ、と相好を崩して。
「竜でも風邪を引くものか?
ふ、ふ。こうも冷えてしまってはさもあらん。
こんな時、身体を温める手っ取り早い方法を知っているか?」
愉快そうに言って唇を舐めると男に向かって手を伸べる。
膝を崩し、ここへ来いと言わんばかりに。
■ルーフェン > 彼女の言葉に、カカッ、と声を出して笑う
今にも逃げ出しそうな気配であったが彼女の声は鷹揚であったからかもしれない
「…逞しいなあ。それ故、地上にコレほどまでに栄華を極めたのかも知れん…」
自分の一族、竜と比べればか弱き生き物である彼らがこれほどまでに増え、
地上を蠢くのはその神の意志など意に介さない心の逞しさにあるのかもしれない、と彼女の言葉に興味深げに耳を傾ける
されど、彼女からの怪訝そうな視線に気がつけば、嘘は言っとらんぞ?と念を押す
「…ふむ、竜探しではなかったか。
杖を探している、と言われても俺には全く覚えがない…それでも意味があったというのであれば、主…ティセルが
雨に濡れぬよう、樹の下に導く役でも任されたのであろう」
彼らに―――、と曇天の空の上を指し示した
「身体が小さい故な…どうも、人の身は不便だ…」
伸びてきた腕と彼女を交互に見つつ、何となく彼女が言わんとしている事を察せば、その腕を取り、寧ろこちらへと
引き寄せようと力を込めて―――
「良い思案とは思うが…ティセルよ、雌であればこそ
慎みを持つべきだとは思うが、その辺りどうなのだ?」
■ティセル > とても竜の化身とは思えぬ男のナリではあったが、
L字棒の御宣託ではあるがゆえ、半信半疑とはいえ信じることにした。
とまれ、人でないことは確からしい)
「もとより簡単に見つかるものとは思っておらぬよ。
でなければ、とうに神殿に戻っているだろうからの。
ふ……で、今回は雨宿りのためこの住処に導かれた、と?
確かに、私はまだまだこのような場所で潰えるわけにはいかないな」
男に引かれれば、抵抗もなくその胸へと抱き取られ、
冷えた身体と身体が触れ合って熱が生まれよう。
被っていた頭巾がはらりと肩に落ち、柔らかい栗色の髪の毛と、
頭頂でぴくぴくと動く小さな猫耳が露わになる。
「ほう?慎みとはどのようなことをいうのかな?
貞淑と淫蕩の境目は奈辺にあると?
こう見えても、私は他人の告解を訊くのが仕事でね。
ルーフェンも旅をして狩りをしてきたのなら、色々なものを見てきたのだろう?
なんでもいい、それを私に話せ。
その中に、探し物と関わるものがあるのだろう。
お前の元に導かれたのはそう言うことに違いない」
そういうと、頬を擦りつけるようにしてじっと男の顔を見つめる。
■ルーフェン > 彼女が信じようが信じまいが自分が竜である事は変わらない
無理に信じてもらう必要もあるまい、と思い至った
「それくらいしか思い浮かばぬな…神の意思とやらが
確かに存在するのであれば…だが。潰えるとは大袈裟だな
雨に濡れれば身体も冷えようが、それで潰えてしまうほど
弱い生き物でもなかろ?」
腕の中に彼女を引き寄せれば始めのうちはひんやりとした感触であったが次第に身体が温まる
頭頂で動く猫の耳に気がつけば、おっ?とそちらに意識がむいて向けられる彼女の視線に触ってみても良いか?
とでも言いたげな視線が向けられた
「詳しくは知らん。ただ、その昔知り合った雌がよう言っとった。
杖とやらに関係する話などとくと思い浮かばぬが、それでも
良ければ聞かせてやるか…
まあ、大した話ではないのだが…」
抱いた腕を背中に回し、その手でぽきり、と薪木を折り火にくべながら滔々と語り出す
かつて、北の大地にあった人と竜の争いのこと
そこであった英雄たる人間のこと
自らが竜も人も滅ぼしてしまい、その後長い眠りについたこと
時折、火に薪木をくべながらいよいよ語り終えれば―――
「………ところでティセルよ、耳に触ってよいか?」
と堪えきれなくなったのか好奇心から口にした
■ティセル > 「世の中の人とは物は思わぬところでつながり合っている。
大勢の人間の告白や述懐を日々耳にしているとそれがよくわかる。
その場に居る者にとっては偶然であっても、後になってみればすべては必然だ。
そうは思わないか?ルーフェン」
時折小さく爆ぜる炎の揺らめきに照らされて、
小さな娘は男の腕の中、幼子のように抱かれて長い長い昔話に聞き入った。
そんな神話の世界を、目の前の男は生きていたのだろうかと。
「そうか……。
お前の仲間や家族は、まだどこかにいるのだろうか」
ぽつりと独り言のように零す。
さすがに気にしたのか、口を引き結びながら、
男の言に目を丸くする。
「ばっ……!何をする!
み、みみみみみ耳を触りたい、だと!
この不埒者!慎みというものが無いのか、おまえは!」
耳を押さえて飛び退った後、顔を赤らめて、
ようようと言った態で男に近寄り覗き見るように。
「ど──どうしても、か?」
膝の上で拳を握り眉尻を下げ、紅潮した顔のまま男を見上げた。
■ルーフェン > 自身に向けられた彼女の言葉
その言葉に、ただ曖昧に笑いを浮かべ
「…そうであったなら良いとは思う」
あの時、自身の内から込み上げた感情によって人も同族も一切の容赦なく滅ぼしてしまった事も
定められた必然であったならば幾らか心は軽くなる
彼女の言葉がすべて世の真理とは思えぬが、今は少し彼女の語る言葉に寄りかからせてもらおうと思う
「そうであったらば良いが、どうだかな?
生きてはおっても恨まれずにはすまぬであろうなあ」
へらりへらり、と語り終わる頃にはいつもの調子であった
そんな気分からぽろりと口に出た言葉に腕の中の彼女は思いの外、動転しているようでその様子が面白い
「慎みというのは、お前たち人のルールであろう?
竜たる俺が持ちあわせていようはずもないであろ?」
腕の中から飛び退く彼女に、火の傍ゆえ危ないぞ?と声を掛けつつも動転っぷりにニヤニヤと笑いを浮かべ
「…何も千切って我が財貨宝物に加えよう、という
のではない…ただ触らせて欲しいだけなんだが…」
宝物を収集し好奇心旺盛な一族である
彼女にどうしてもか、と問われれば幾分しょんぼりした様子でいて
■ティセル > 「お前を見ていて、そんなことがあったなどとはとても信じられないのだが──
ルーフェンがそう言うのなら、真実なのだろうな。
全て滅んで、お前が残った。──そして、お前とわたしがここで出会った」
必然の偶然。
運命の邂逅。
そんな彼がのたまう「耳を触りたい」要求に、神妙な気分をぶち壊されてむくれる娘。
「人間の恰好をしているのだから人間のルールに法るべきだろう?
……っていうか、いや、その、耳だけは別なのだ。
なんというか、抱き合うよりも恥ずかしいというか……」
視線を彷徨わせつつも、しょんぼりと項垂れる様子の彼を見て、う、と言葉を詰まらせて。
「……うん、これも神の御心なのだろう。
わかった。それじゃ、ちょっとだけだぞ?
や……優しく頼む」
初接吻もかくやといった様子で、顔を赤らめたままぎゅっと目をつぶり、
男に向かって、ぐいと頭を突き出した。
■ルーフェン > 「長く生きておれば、まあ、色々あるということだ
忘れられぬではないが、いつまでも気にしていたら
生きてはいけまい」
かかっ、と1つ笑いを零せば気分も和らぐ
過去を振り返るのも時には良いが、今は彼女の耳である
「竜の姿で触るわけにもいかんだろ?
力加減を誤ればティセルの耳までぺしゃんこにしてしまうわ
…お主、苦労しそうじゃな…色々と…」
抱き合うより、耳に触れられる方が恥ずかしいらしい
そう聞こえれば後半ぽつり、とそう漏らすが、特別と聞けば尚の事触れてみたくなる
どうやら神の許しが出たようであれば、ぱあ、と顔を明るくしてではっ!と言い終わるが早いか指先を伸ばし
「ふむ…獣のような耳だな…見かけたことはあったが
実際触れるのは初めてだ…」
つぅ、と指先が耳の輪郭をまずはそっとなぞる
優しく、という彼女の言葉に従い、そうっと撫でるように触れていく
その視線は興味深げに耳に注がれ、さわさわと柔らかな手つきで頭を撫でるように何度も耳に触れ
■ティセル > およそ実感の湧かないスケールの話ゆえ、
彼の苦悩も吹っ切れた様子も、想像でしか理解が及ばない。
「竜の姿のルーフェンってどんなものかな……
って、お、大きなお世話だ」
肩を竦ませ目を固く瞑ってその時を待ち受ける。
──と。来た!
触られた途端、びくっと身体を震わせ、体中の髪と毛が逆立った。
耳の周りをつつぅっと彼の指が辿り、ぴんと尖った耳をなぞる様に倒すように、
何度も何度も撫でられて。
「っ……っ、ひ……ひやあぁぁぁあああんっ!」
耳から背中へ、全身へ。
むずむずぞくぞくが抑えきれなくなり、
パニックを起こしたように身体を跳ね上げると、
逆に男にしがみつこうとする。
森の大きな木の下で、
竜の男と猫耳娘とのじゃれあいは、
雨の止むまでは続いたのであろうけれど──
■ルーフェン > 「ティセルよりはデカいな…後は、角があって…
羽根があって…まあ、機会があれば見せることもあろう」
マジマジと竜の姿の自分を見た事などなく、彼女の言葉に首を傾げてしまった
恥ずかしげにしながらも此方の言葉に反応を返す彼女を楽しげに眺めつつ耳に触れる
「っ!?そんなに強く触ってないぞ!?」
彼女の身体が腕の中で震え、毛が逆だてば此方が驚いてしまう
とはいえ、好奇心には勝てず、何度も何度も耳に触れればこちらにぎゅ、と掴まる様子の彼女…
擽ったいのだろうなあ…と思いつつ、さらに柔らかな手つきでそおっと彼女の耳に触れる
そうしてしばらく、大樹の下で竜の方はのんびりと彼女の耳に触れ好奇心を満たしていくのであった
彼女からすれば、良い迷惑であったろうが―――
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からルーフェンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からティセルさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森の中」にテアさんが現れました。
■テア > 「――――…………っ。」
カンッ!
意外にも高らかな弓弦音を響かせて、放った矢が飛翔する。
放物線を描くそれが、眼下にぽっかり口を開いた森の広場に着弾する前、手早く動いた小さな手指が次矢をつがえて引き絞る。
初撃は吸い込まれる様に灰緑色をしたゴブリンの首筋に突き刺さった。
首筋を抑えて倒れこむ一匹の周り、不意打ちの困惑に固まった二匹目の腹部に次矢が突き立つ。
ギャアギャアと騒ぎたてつつ、残ったゴブリン達は手近な木の幹や岩の影に身を潜め、大きく開いた森の天蓋の先、小高い崖上に血走った黄色い瞳を向けてくる。
一匹目はもう死んでいる。
二匹目は時間こそ掛かるだろうが、助かる傷ではない。
残りは三匹。
先日までに七匹倒しているから、残りは十にも満たぬはず。
崖上の茂みに身を潜め、気弱げな顔立ちの狩人娘が考える。
安全を考えるのであれば、今すぐに身を翻して次の邂逅を待つのが得策だ。
狩人としてはそれなりの腕前を持っていても、テアの剣力は素人に毛が生えたレベルでしかない。
ゴブリン相手だろうと、3対1ではまず負ける。
―――が、汚らわしい邪妖精は遮蔽物から顔を覗かせたまま動こうとすらしていない。
このままもう1,2匹倒せれば、もしかしたら残りは巣を引き払って他所に移動してくれるかも知れない。
臆病者らしからぬそんな欲が、少女の判断を鈍らせていた。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森の中」に魔王ネスさんが現れました。
■魔王ネス > (魔王としての職務、昼から夜への引継ぎを終わらせ、時間が出来たため、向かった先はメグメール。今日は人間の血液を一滴も摂取することが出来ていないため、飢えた吸血鬼は獲物をさがすために森の中へと。途中、盗賊や迷い人等、人間を見かけることは出来たが、不味い血液を自ら吸いに行くようなひもじい真似はしない。狙う獲物は若く美しく、そしてなによりもいい香りのする血液の持ち主だけ。こんな森の中にそんな条件にぴったりの人間などいるわけはないのだろうが)
んー、こんなところに人間なんていないのかもね。
(どこを見ても木ばかりで流石に飽きてきたのか、ここら一帯吹き飛ばして視野を広くするか?なんて物騒なことを考える吸血鬼。そして、運のいいところに視界に入るのは灰緑色をした低属魔物に襲われている少女の姿。可哀想だが、ここで会ったからには逃がすわけにも行かない。アレを土産に城まで持って帰ろうという魂胆。特殊魔法の呪文を唱え、刹那。自らの指を噛み切り、飛び散る血液はたちまち鋭い針のようなものへと形状を変化させる。そして、右手をゴブリンの方へ向ける。すると、俊足の速さでゴブリン数体の脳天を撃ち抜く)
■テア > ティルヒアの挙兵。
突然の動乱の幕開けに、腕の立つ冒険者達はこぞって前線への出稼ぎに出ていた。
結果として首都周辺の冒険者需要が高まり、テアの様な下っ端にも正式な依頼が舞い込む事となったのだ。
少女が受けたのは、村の近くに巣を作ったゴブリンの1団の排除である。
5日前から森に入り、ゴブリンとの直接邂逅を避けながら彼らの生活範囲を探って罠を仕掛け、遠間にてその姿を見つけるたびに遠隔射撃で数を減らす。
そんな地道なゲリラ戦はここまで上手く運んでおり、二十足らずのゴブリン達の数を、今日の戦果も合わせてすでに半分以上削っていた。
人に比べて成長の早いゴブリンとはいえ、当然子供はいる。
そしてそれを守り育てるため、巣に常駐する者も必要となるはずだ。
となれば、実質彼らの中での戦闘要員は、眼下の3匹を入れなければ残り3,4匹といった所だろう。
今日の戦いでこの依頼を完遂することも不可能では無いはずだ。
戦いの継続を決め、曲射のために矢羽の一部を噛み千切ろうとしていたテアだが、眼下にくぐもって響いた断末魔にビクリとして動きを止めた。
慌てて茂みの隙間から崖下に目を向ければ、そこには遮蔽物に凭れ掛かるようにして絶命した邪妖精の姿。
頭部に穿たれた孔が、欠損した脳核を晒している。
確認の必要もなく即死である。
呆然とした表情で茂みから這い出たテアの背後、小高い崖上に昇る坂道の途上にて、ギャアギャアと騒ぐ声音が響いたのはそんなタイミング。
戦慄にテアの背筋がゾッとする。
眼下のゴブリン達はテアを引き付ける囮であり、本命は背後からひっそりと忍び寄っていたのだ。
手に手に無骨な武器を携えた4匹のゴブリンが、生理的不快感を感じさせるわめき声を上げながら坂道を駆け上がってくる。
眼下のゴブリンを倒した相手、宙に浮かんだ吸血鬼に気付く事さえ出来ぬまま、テアは新たな矢をつがえ、せめて一匹でもその数を減らそうと弓弦を引き絞る。
絶望的な思いに手指が震え、狙いが定められない。
そんな少女の危地に、上空の絶対者がどのような対応をするのか。
駆け出し冒険者の命運は、今や小柄な魔王の手のひらに委ねられていた。
―――そしてもう一つ。
現在時刻は正午過ぎ。
冬にしては暖かな陽光が降り注いでいるのだが、吸血鬼でもある魔王のUV対策は万全なのか……っ。
■魔王ネス > それは、私の獲物.....
(気味の悪いわめき声を上げながら坂道を駆け上り、嬢所へ襲いかかろうとしているゴブリンに対しての言葉。もちろん、彼女に聞こえるはずもなく、鋭い歯形が痛々しく滲む指先からあふれる大量の血液。それは瞬時に弓の形に形成され、右手で持ち構える。矢はもちろん、吸血鬼の毒が塗りこまれている猛毒の血液。冷徹な瞳は一瞬で4匹同じで殺傷することのできるポイントを見つけ、狙いを定める。矢を引き絞り、手を離す。刹那、轟音と共に肉眼では見えない速さで、彼女の横を通り過ぎ、ゴブリン4匹を一撃で串刺しにする。周りには不気味な緑色の血が飛び散り、矢は止まることなく、何本かの木を薙ぎ倒し、森の地形を少し変化させてしまった)
ふぅ...。
(飛び散る緑色の血液で服が汚れぬよう、赤紫色の傘で身体を覆う。何気ない涼しげな顔をしながら羽を使い彼女の元へと近寄る。このまま血液を吸うつもりだ。もし抵抗するならば、やり様はいくらでもあるが、なるべく綺麗な状態で城まで連れて帰るつもりだ。一応拘束魔法の準備もしてあり、冷たく鋭い吊眼は少女へ向く)
■テア > 「――――きゃッ!?」
震える手指で弓弦を引き絞る狩人娘の傍ら、颶風を巻いて鮮血の矢弾が疾走した。
吹き付ける風に灰金色の短髪を、黒狼のマントフードをはためかせてよろめくテア。
破砕の轟音が過ぎ去った後、ゆっくりと目を開いた少女の眼前。
地形が変わっていた。
高く枝葉を伸ばしていた巨木が根からへし折られ、降り注ぐ陽光がその残骸を照らしだしている。
その合間に飛び散る汚らしい緑色と、妙に色鮮やかな肉塊は、破壊の衝撃を直接被ったゴブリンの屍の欠片なのだろう。
澄んだ翠瞳を丸く見開き、どっとその場に膝を付くテア。
状況認識が追いつかない。
一体何が起きたのか、まるで理解出来なかった。
薄汚れた頬を一筋の汗が伝い落ち、無骨な革の胸当てに押しつぶされた豊乳の谷間へと流れていく。
柔らかな羽ばたきの音が背後に聞こえて、呆然とした表情のまま機械的に振り向いた少女の視界に場違いなドレス姿が映り込む。
直感的に理解した。
眼前の災禍はこの少女が巻き起こした物だと。
生物的な本能が、硬直した娘の肢体を震わせる。
抵抗など出来るはずもない。
今にも漏れてしまいそうな小水を我慢するので精一杯なのだ。
真っ直ぐに向けられる色違いの瞳にビクッと肩が跳ねるものの、テアは視線を外すことすら出来ずに震えるばかり。
■魔王ネス > (まるで無機物を見るような感情のない瞳。赤色と青色のオッドアイ、透き通るような瞳は、これから血液を貪るためだけの少女に冷徹な視線を浴びせる。地形が変わるほどの出来事に震え、硬直している彼女見つめ、どうやら抵抗する気はないのだろう。このまま、首筋に噛み付き、血液を貪ろうと彼女に覆いかぶさり、首筋に歯を立てようとした瞬間だ。彼女の豊満な胸が首辺りに当たるのを感じる。その感覚に目を見開き彼女から距離を取る。そう、彼女は胸が非常に大きかった。バツの悪そうに舌打ちを一つ)
....ちっ...、不味そう
(それだけ零し、怯えて縮こまっている少女を睨みつける。自分の胸が小さいというコンプレックスのせいか、自分より胸の大きい女の血液を吸うことに嫌悪を抱いている潔癖な魔王は、血を吸うことを諦めたのか、この少女をどうするかと頭で考える。特に面白いアクションも起こさない少女を殺しても楽しいとは思えないし、城まで連れて行っても特に利用価値もない。どうしたものかと、赤紫色の傘を日差しに向けて頭を掻く)
■テア > その身長こそ己と大差無いとは言え、あどけなさを強く残したその顔立ちは酷く幼い。
身にまとうゴシック調のドレスには汚れ一つ見当たらず、白色の肌も新雪の如く清らかだ。
この様な森の奥で出会う相手としては酷く異質な存在だった。
5日の間着の身着のままの自分の匂いが、こんな状況であるにもかかわらずやけに恥ずかしく思えた。
そんな少女の華奢な肢体が身を寄せる。
可憐な唇が、己の汗と埃にまみれた首筋に近付いてくる。
異界の存在を前にしての生物的な震えに、何故か蠱惑的な色彩が滲む。
閉じた瞳が目蓋を震わせ、彼女の唇が触れる時を待つ。
1秒……2秒……。
しかし、いつまでたってもその時は訪れず、代わりに聞こえて来たのは不快げに吐き捨てるような声音。
後日、この言葉を何度も思い出してはがっくりとしょげかえる事になるのだが、この時は恐怖に縮こまった心はビクビクと彼女の所作を待つばかり。
よもや、日頃からテアを思い悩ませるコンプレックスの塊である駄肉が、吸血の危機から己が身を守ったなどとは思いもつかない。
「………………………………。」
なんとも情けなくハの字を描く眉の下、捨てられた子犬の如き上目遣いが、おずおずと少女の顔を盗み見る。
鳥の声一つ聞こえぬ静寂の中、梢を揺らす風の音だけが遠く響く。
■魔王ネス > はぁ....、襲ったりしないから立ち上がりなさい。そんなとこでお尻をついたら服が汚れるわよ。
(このまま彼女を帰すわけにもいかないが、殺してもなんの意味もない。長い赤紫色の傘髪の毛は風に揺られて、高いシャンプーの香りが周り一帯に広がる。先程の冷徹な瞳はもうなく、あどけない少女の笑みそのものだ。暫く、何をすることなく彼女を見つめ、膨大な魔力を少し抑える。これで彼女が怯えることはないだろうか)
■テア > 「……………っ。」
外見のイメージを裏切らぬ可愛らしい声音。
そんな声にさえビクッと肢体を震わせる、臆病者は、しかし、翠瞳を数度瞬かせつつ、へたり込んでいた身体を持ち上げた。
ほんの少し肌寒い冬の昼風が、少女の艶やかな髪を弄ぶ。
そこから漂う上品な香りに、場違いとは思いつつも少しぽぅ…としてしまった。
頭部を俯かせて汚れた前髪の隙間から盗み見る少女の顔は、愛らしい笑みを浮かべている。
唐突に己の首を刈り取ってもまるでおかしくないと思えた死神の気配は、風に散らされたかのように霧散している。
やはり状況についていけないけれど、ひとまずの危地は脱した様に思えた。
と、そこでハッとする。
よくよく考えれば、己は眼前の少女に命を救われたのだ。
その際に彼女が見せた災害レベルの力に気圧されてしまったものの、その事実に違いはない。
「――――にぁ……ッ!」
かすれ声が裏返った猫の様な声音を発した。
ひとたまりもなく赤面した顔を、力いっぱい俯かせ、ぎゅぅぅっと身体の脇に下げた腕先で拳を握って改めて言葉を紡ぐ。
「あッ、……あぁり、………あとぉ……っ!」
途切れ途切れの言葉は、お礼の気持ちをきちんと彼女に届けられるかどうか怪しい代物だった。
■魔王ネス > ....例を言われることはなにもしてない。それに私は貴方を殺そうとした。その事実は変わらない。
(淡々と可愛らしい声には似つかわしく無い言葉の数々。とぎれとぎれのお礼は正直何を言っているのかうまく聞き取ることが出来なかったが、それはいいだろうと彼女へ背を向ける。地形が変わるほどの魔力を使ったのだ。感のいいものはその魔力を嗅ぎつけここに訪れる可能性もある。ならば一刻も早くここから離れるのが得策か。そして、羽を使い飛び立とうとしたその時だ。この少女を残してこの場を離れれば面倒なことになるかもと、踵を返す。しばらく考えた後に、彼女の身体を抱き、羽を広げる。彼女のことなど気にすることもなくそのまま空中へ飛び立つ)
■テア > 「―――――っ!?」
ひとまずお礼の気持ちが伝わった事には、無駄に大きな胸を撫で下ろす物の、続いて紡がれた言葉の意味に気付けば、驚愕と怯えに再び表情を強張らせてしまう。
先ほどのあどけない笑顔とは裏腹な、やけに淡々とした声音は、人付き合いに慣れていないテアでさえ妙な刺々しさを感じるもの。
まさか己の駄肉に対する不条理な恨みが原因とは気付けず、少女の機嫌次第ではどうにでもされてしまう小動物はビクビクと怯えるばかり。
で、あればこそ、ドレス姿が背を向けて、崖の端から飛び去ろうとするのを見れば、へたり込みそうになる程の安堵を覚えてしまう。
そこに滲む一抹の寂しさがちくりと胸の奥を刺すものの、今この場では自覚出来ぬ物でしか無い。
―――が、魔王たる少女がその動きを止め、再びこちらに近付いて来たのなら。
「―――――っ!? ………っ、……っっ? ……あっ、ひっ……んゃ、な……何……、ぇ……ええぅ……ッ!!?」
少女の細腕が腰に回され、密着した身体の薄さにドキンッと鼓動が跳ねた。
鼻腔を擽るいい匂いが、密着によってはっきりと伝わるだろう己の汗臭さへの羞恥を煽る。
慌てて身を離そうと彼女の身体に添えた手が、その細腕を突っ張る間もなく襲いかかった浮遊感に、思わず強く抱きつく動きを見せてしまった。
浮いている。
森の中とはまるで違う、高い山峰の頂きにて浴びるのと同じ風が頬を嬲る。
「――――なっ、ぅっ、あっ、あにゃっ、な……っ、なぁうぅ……ッ!?」
■魔王ネス > 少し黙って。このまま落とされたくなかったら静かにしてて
(幼い表情。怖がる少女に少し頬を緩めながら彼女の唇に人差し指を当て、少し静かにしててね、と耳元で囁く。その際に、彼女の大きな胸がさらに密着され少し機嫌悪そうにやはりこのまま落とそうかしらなんてつぶやく。もちろんそんな気は無いがそれで彼女に不安を植え付けるのも余興のうちか。そんなことを思いながら、地形が変わりすぎた先程のところとは一変、木々で生い茂る森の中央へと降り立つ)
ここまでくれば、大丈夫だろう。それより貴方、汗の匂いが酷い。
(密着していた彼女を下ろしてあげ飛んでいた時から感じていた、彼女の身体から漂う体臭に気づけば少し眉を下げ彼女を見つめる。まあ、自分には関係の無いことなのだが、共にいる間だけでもどうにかして欲しいと内心思っている。こんな森の中に水を浴びれる場所などないだろうと思ったのか、木陰へ入り込み、影の中へ手を入れた瞬間。手が影に飲み込まれたように消えたのだ。これは吸血鬼の移動魔法。闇と闇の間を移動することの出来るもので、どこから取り出したのか愛用の香水を取り出す。これをつければ3日は体臭を消し、匂いを完全に抑えることが出来るだろう。その香水を手に持ちながら彼女へ近寄り、その香水を吹きかける。すると、彼女から臭っていた汗の匂いは消え、その代わり妖艶な妖しい香りが彼女から漂う)
■テア > 「―――――――………みぅッ!?」
ひとたまりもなく口を噤んだ。
こんな高度から落とされたらまず助からないというのも黙りこんだ一因なれど、唇に触れた人差し指の繊細な感触と、耳朶を擽る声音の甘さにぞくぞくっと背筋が震えたからだ。
ドレス姿の胸元に押し付けられるのは、硬革の無骨な感触なれど、その奥で撓む豊乳の柔らかさも同時に感じ取れる事だろう。
バクン、バクンと跳ねまくる胸の鼓動が伝わらぬ事が、唯一の救いと言えた。
人ならざるイモータルの感覚ならば、革鎧の硬さの奥で跳ねる鼓動を聞きつけてしまうのかも知れないけれど。
ともあれ、森の上をどれほど飛んだのか。
巨木の生い茂る森の広間に、抱き合う二人の影がその足先を付けた。
「~~~~~~~ッ!!」
抱きついているのは気恥ずかしいが、手を離せば落ちてしまうかもしれない。
そんな恐怖と羞恥の板挟みにどうにかこうにか耐えていた小動物は、あまりにもストレートな彼女の物言いに真っ赤になってその身を離した。
本人でさえ自覚出来るその匂いは、仕事中の冒険者であれば当たり前の物である。
年若い娘であるテアの体臭は、むくつけき男冒険者のそれに比べれば余程にマシな物とは言えど、そんな理屈で羞恥が消えるものではない。
愛らしい少女からの直接的な一言に、赤面した狩人娘は酷く惨めな気持ちで身を震わせた。
再び近付く少女に対し、思わず後退りしてしまうテアの身に、品の良い香霧が吹きかけられて。
「―――――………っ? ぁ……こ、これ………?」
驚きに目蓋を瞬かせながら、すんすんと己の肢体の匂いを嗅ぐ。
饐えた様な匂いは消えて、代わりに妙に大人びた匂いが上品に香っていた。
■魔王ネス > ん、いい香り。女の子なら身嗜みくらいちゃんとしな。
(ボサボサの髪も、どこからか取り出した櫛で手入れしていく。妹の髪を直していたこともあって、慣れた手つきで髪を整えていく。そして、綺麗にまとまった髪の毛を見つめ、彼女から一度離れる)
さて、そろそろ寒くなる。どこか休める場所があればいいのだけど。
(辺りを見回しても木、木、木。休める場所なんてあるわけもない。陽が落ちかけ、そろそろ気温も寒くなる頃か。そして、ふと見上げた先に灯る灯り。小屋だった)
貴方も、寒いでしょ。彼処で休もうか。
(小屋を指さし、彼女の手を引く。もちろん他意はない。ただ、この少女を放っておけば自分のことをむやみに話されるかもしれない。それはいろいろ面倒だと思った。これは口封じの為である。そう心に言い聞かせながら小屋の扉を開き、中に入る)