2023/01/25 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からロブームさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」に凰魔さんが現れました。
凰魔 > 「歩けども歩けども変わらぬ場所ばかり。人も会わないしなぁ」

ペタペタと、街道を歩く一匹の姿。
全身に妙な札をつけたシェンヤンの服に身を包み、二足で歩く小動物のような姿。
しかし間近で見れば、人間の子供ぐらいの大きさはある獣。
その口からは子供の高い声で発せられて、お腹を抑えている。

「獣もおらんし、人のいる痕跡はやっと見つけられたがなぁ。
とりあえず、ここを歩けばどこかしらで人に会えるのいいのだが」

街道を見下ろして、ひとまず何者かが作った証拠に安心する。
ここを歩けば他人に出会える可能性は高いだろうと考えて歩き続けるが。
空は青空。昨日は結局何も食べずに野宿せざるを得なかった。
せいぜい川の水ぐらいしか胃に入れてないことになんとも惨めな気持ちになる。

「はぁ~。腹が減ったなぁ。誰か我に食べ物を恵んで欲しいものだがのぅ」

返せるものは何もない。今は力も封印の影響で削ぎ落されている。
故に手荒な真似は出来ないのだが、このままではどうしようもない。
餓えで死ぬことはないが、何も出来なくなってしまう。
それはそれで怠けられるといえばそうだが、餓えに苦しいのは勘弁だった。

「最悪木か雑草でも食べるしかないか……。肉が欲しいなぁ……」

そうぼやきながら、ぴょこぴょこと力なく歩き続ける。

凰魔 > 変わらずなり続ける自身のお腹をさする。
栄養状態が良くないせいで毛並みもどんどん悪くなっていっている。
美しい我が肉体がただでさえこんな姿の上に、醜く汚れていくことなど我慢がならない。
きょろきょろと周囲を見渡すが、獣の姿すら見えない。どうすればいいのだろう。
まぁ因果応報という意味でならばそれもまた運命と受け入れられ……るはずもない。

「ぬぅ、自尊心が傷つけられるが、やはり野草に手をかけるしかないか……」

道端に座り込んで、尻尾をだらりと地面に下ろす。
その短い手を伸ばして食えそうなものがないかを乞食のように探す。
木の実でも落ちてないか。この際腐っててもいいから果物が欲しい。
その野草もあまり美味そうには思えないし、当たり前だが土だらけだ。
野菜もまぁ、当然ながら生えているはずもなく。いっそこの土が米にでもならんだろうか。
いや、土が米に見えて来たぞ。幻覚か?

「……いかん。空腹が過ぎて幻覚すら見えて来たぞ……。
くっ、こんな初歩的な事で躓くとは……我も堕ちたものだ……」

目眩がして眉間を手で押さえる。頭も痛くなってきた。
初歩的な病にでもかかったのだろうか。免疫力も落ちているようだ。
このままでは何らかの病や熱が起きかねない。なにか、何か食べ物を。
せめて動けるぐらいにまで胃に詰め込まなければ。

「ぐぅぅ……くそぅ……惨めだ……」

そこら辺の雑草を抜き、もしゃもしゃと口に含む。
苦い。まずい。しかし何も食べないことはできない。
涙すら浮かばせながらもまずいものを必死に口に含み続ける。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にマツリカさんが現れました。
マツリカ > 王立学院で定期的に行われている、喜びが原での課外実習。
将来、冒険者や騎士等の職業に就く者を主な対象とした実技を学ぶ為の場だ。
内容はその時によって様々。今回は、採取依頼を受けた想定での活動だった。
定められた期限までに依頼物を採取し、学院の受付窓口へと提出する。
提出した採取物の品質や依頼達成の速度等が総合的に評価され、成績となる寸法だ。

少女の場合、主人とその取り巻きが気まぐれに参加を希望したため、巻き添えを食った形である。
荷物持ちとして共に出かけ、採取を終わらせたまでは良かった。問題はその後だ。
採取物を速やかに届けようと用意しておいた荷馬車に、荷物が入り切らなかったのである。
端的に言えば、無計画に荷物を用意した結果、採取物を乗せるスペースを考えていなかった。
ただそれだけのことだが、生憎と主人の失敗は奴隷たる少女の手元に転がり込んでくるもので。
少女といくつかの荷物を載せるスペースが、代わりに採取物を乗せるスペースと相成った。
そして少女は、乗り切らなかった荷物を背負い、仕方なしに徒歩での単独行をする羽目に。
襲われた所で奴隷の一人や二人、ということなのだろう。扱いの悪さにも慣れきった次第で。

「――さて、この道を後どれ程歩けば、でしょうか」

ポツリと呟くも、答えるものは居ない。それもそうだ、だだっぴろい平原にぽつねんだ。
遠景にも人家は見えないし、動物の姿も――ないと思いかけた視界の端で、何かが動いた。
なんだろうか。魔物の類だと面倒だ、賊の類でも厄介だ。とは言え迂回する道もない。
気配を見るに、進行方向は同じらしい。速度を合わせれば見つかりはしないだろうが――。

「……王都に着く前に干からびますね」

彼の者の進みは、どうにも遅い。ならば追い抜いていくのが吉か。
ともあれ、いつでも逃げられるように警戒だけはしながら、少しずつ近づいていくとしよう。

凰魔 > もしゃもしゃと水もなしに土の味のする雑草を口に含む。
それをただただ咀嚼することしか自分には許されていない。
そしてどれだけ雑草を食べても、大した栄養になぞなりはしない。
あぁ、肉が欲しい。魚が欲しい。野菜が欲しい。果物が欲しい。

「とにかくまともな飯が食いたいぃいいい!!」

少女はそんな風に泣き喚く獣の姿を見るだろう。
その場に座り込み、雑草を両手に持ちながら滝のような涙を両目から流す。
シェンヤンの服に身を包む、座り方も獣というよりは人間の子供のようであった。
わんわんなくその姿に、脅威や怖さなど全く感じられないだろう。
言葉も、少女にとっては慣れ親しんだ言語―――というには少々訛りが強いが。
知的生物であることは間違いなく。その外見も少々より少し小さい。
デカイ小動物という矛盾した表現だが、そうとしか感じられない。

「誰か我に食事を恵んでくれぇええ!!うわぁあああん!!」

と、まぁみっともなく喚いてはいるが、背後の少女の存在には気付いていた。
オーバーな反応と思うなかれ、今の彼に魔王としてのプライドなどない。
泣き喚いてでもひたすら他人の同情を誘ってその施しを貰う為なら何でもする。
なんなら靴だって舐める。それぐらい今の状況に悲観していたのだ。
ぶんぶんと尻尾を街道に叩き、少女に背を向けてひたすら鳴く。
少女からしたら、その表情は全く見えないのだが。その声はまさしく鬼気迫るというか。
まぁ本気で言っているのだから、少女が観察していれば本当に困って飢えているとわかるだろう。
泣き喚くのも疲れたのか、そのまま地面に突っ伏して。

「もう動けぬ……我はここまでの命か……ひぃぃん……母上ぇ……父上ぇ……ごめんなさぃい……」

マツリカ > 着実に距離を詰めていくと、徐々に何者かの正体が鮮明になってくる。
もこもことした何かが服を纏ったもの――それが第一印象だった。
その大きさは子供程で、服の意匠は異国情緒に溢れた珍しいもの。
少なくとも恐怖よりは庇護欲を唆る。そんな存在が、少し先に居る。
風に乗って聞こえてくる喚きには、毒気を抜かれて溜息が漏れた。

「――そう言うことですか」

警戒心よりなんとかしてあげたい心が勝った。故に、足取りは先より軽くなる。
駆けつけるとまでは行かないが、あまり待たせても可愛そうだからと足早に近づいて。
側に辿り着いたならば、背負っていた荷物を下ろす。背嚢の中身を手早く漁ると――。

「……もし、そこのお方。干し肉でも良いですか?」

干し肉の包みを取り出した。馬車の中で主人とその一党が摘んでいた逸品だ。
凡そ自分の口には入ってこない代物だが、今ならば咎める者が居るわけもなく。
他にも色々出すことはできそうだが、何よりまずは空いたお腹を慰めるものが欲しいはず。
料理の必要がない乾き物を差し出しつつ、再びの様子見だ。警戒ではなく、餌付けに近い。

凰魔 > 背後から近づいてくる気配。そこまで存在感は強くはない。
そして自身の様子を観察していたことから、話も通じる可能性が高い。
つまり、そんなに大きくないし話が出来る者ということであり。
今、何よりもこの獣が欲しい、出会いたかった存在という事だ。

「んぁ…………」

ゆっくりと、泣きじゃくる土まみれの顔のまま獣は振り返る。
顔にまでその体と同様に毛が生えた、見たこともない動物系の種族。
ミレーにしてはあまりにも毛量が多いことから、それ以外の者だとわかるだろう。
どこか呆けた顔をした後、その獣はバッ、と立ち上がってその干し肉を持つ手を両手で握る。

「に、に、肉ぅうう!!いいのか?これ、我が食べてもいいのか!?
恵んでくれるという事か!?そうじゃな!やったぁあああ!!」

必死な表情で何度も確認するが、その返事を聞く前に無邪気な表情で喜ぶ。
両手を上げてぴょんぴょんと、犬のようにその大きな尻尾を振り回して干し肉に食らいつく。
少女のその手ごと口に入れるが、さすがに歯を立てたりする真似はしない。
干すための強い塩味と、硬いながらも強い肉の味にひどく目を輝かせて。
そうだ、これが欲しかったのだ。しかもこの肉、丸々と肥えた豚の味だ。
目覚めてからようやく美味いものを口に含んだことに体を震わせて。
少女の指をしゃぶりながら奥歯で肉を嚙み千切っていく。

「う、美味い!とっても美味い!こんな美味い物は初めてだっ!
の、のう命の恩人。もっと……そう、肉でなくてもいいから食い物はくれないか……?」

息を荒げながら、両手で自分が含んでいた少女の手を握る。
にちゃあと強い粘つきのある唾液まみれになってしまっているが。
柔らかくモフモフとしたその獣の毛皮と肉球は握っているその手に気持ち悪さ以上の暖かさと心地よさを与えてくれる。

マツリカ > なるほど、今までに見たことのない存在ではあったが、中々に可愛らしい。
差し出した肉を見て狂喜乱舞している所などは、心にグッと来るものがある。
そもそも自らも奴隷身分、いわば被差別民だ。相手の種族など一々気にもするまい。
食べてよいのか、という問いには頷いて、肉の包みをぐいと押し付けるように渡して。

「えぇ、どうぞ。無駄な荷物が軽くなりますので、遠慮はいりません。
 私個人の糧食は、別に持っておりますから、全て平らげても構いませんよ」

持ち帰った所で、物に困らぬ主人達の腹に収まるだけだ。
それなら、ひもじい思いをした相手に差し上げる方が余程良い。
じぃ、と観察していると、彼は少女の手ごと肉を喰らい、食んでいた。
とは言え、手のひらに感じるのは甘噛み程度。その上の干し肉だけが徐々に小さくなっていく。
手指に触れるぬらりとした粘膜。その感触はなんとも擽ったくて落ち着かなかった。
そして、肉が無くなるとようやく手のひらが解放される。唾液まみれなのは気にしないことにして。

「お楽しみ頂けたなら何よりです――他の食べ物、ですか?
 後は、そうですねぇ……チーズの類なら、カバンに入っていたかと。
 落ち着ける場所があれば、お料理なども出来るのですけれども」

問いに答えながら、肉球をふにふに。これは、なんとも良いものである。
猫や犬のそれも素晴らしいが、サイズが大きい分触り甲斐があるというもの。
ぷにぷに、ふにふに。毛皮のもふもふ感も楽しみながら、濡れていない方の手で背嚢を探る。
こっちの荷物は全て自分のものではない。大盤振る舞いしてしまえ、と引っ張り出して。
ごろりと大きなチーズの塊をも彼の目の前に。お望みならばいかようにでも、と言わんばかりに。

「――ちなみに、結構歩きますがこの先にはちゃんと街もありますよ。
 そこまで行けば、お酒でも果物でも好きなものが食べられるかもしれません」

食べ物もなくこの辺りを彷徨っていたというのであれば、土地勘もないのかもしれない。
そんな憶測から、お節介を焼いてみる。多少とは言え、良いことはしておくことに限るのだ。

凰魔 > この少女はなかなかに心優しい存在であるらしい。
その瞳の中には同情の心も見えている。であれば作戦成功といったところか。
内心で上手くいったことを非常に愉快に思いつつも、本気で感謝はしている。
少女らしい柔らかな臭いと味をその手から丹念に摂取して、英気も養い。
彼女は自身の両手を、どこか楽しそうに触ってくるのを感じてこちらから逆に押し付けてみる。

「チーズ!ほ、欲しい!一口だけでいい!ちゃんとお礼もするぞ!
今はとにかくタンパク質と味の濃いものが欲しい!い、命の恩人よ!感謝する!」

食らいつくように彼女の言葉を受け取り、出されたのは黄ばんだ塊。
しかもなかなかにボリュームのある。こんなものをもらってしまっていいのだろうか?
そう思って少女顔を見上げたら、貰ってもいいという顔をしていて。
ぱぁ、とさらに顔を輝かせてそのチーズを両手で掴み、かぶりつく。
今は小さな口故に一口は小さいが、胃袋も小さいからよく嚙まないといけない。
濃厚な乳の味が塩味を程よく薄くして、とてつもない満腹感へと変わっていく。
本来ならもっともっと食べたいところだが、ここまで施してもらってはさすがにというもの。
であれば、ひとまずその口周りにチーズの食べかすをつけながらも立ち上がって。

「うむ!感謝するぞ命の恩人よ!我の名前は凰魔という!
命の恩人であるそなたの名前をお聞かせ願いたい!」

と、自らの名前を明かせばいかにもな異国風の発音と名前だろう。
ただ、呼びやすい名前でもある、そんな彼女のお節介に素直に感謝を述べて。
しかし、と顔をどこか暗くさせる。

「街についても先立つものがない……。もし、命の恩人。
よければ仕事……は無理かもしれんまでも、眠ってもいい場所などは知らぬか?
あるいは、いい稼ぎ方など……い、いや!そこまで世話になるわけにもいかんか……。
そ、そうだ!それより何かお礼をしたいぞ!出来る事なら何でもしよう!」

彼女の厚意を感じて、お礼をしたいというが……。
その内心には、言葉以外の感情も含んでいた。長年の封印による抑制。
それは食欲を満たされれば、当然別の欲も疼き始めてしまうというもの。
もし少女がこの獣の背中を見れば、不自然に盛り上がっていっているのがわかるだろう。
その服の下で、獣の背中が開き……そこから、別の器官を今、出そうとして……。
もっとも、少女がすぐに離れたり、無防備が姿を見せない限りは理性を働かせるが。

マツリカ > 自身もひもじい思いはしたことがある。空腹とは想像以上に辛いものだ。
飢える、渇く。その最果ては、辛さが眠りすら妨げてくるのである。
そこで目の前に差し出されたならば、それが乾ききったパンの一欠けでもありがたい。
身に沁みて分かるからこそ、少女は惜しむことなく鞄の中身を差し出すのだ。
無論、普段から手荒な扱いしかしない主人への反感というのも多分にあるのだが。
ぷに。押し付けられる肉球に頬を緩めつつ、チーズも丸々渡してしまおう。
食べれない訳では無いが、いつも主人はこんな良いものを、という実感を得たくないのだ。

「一口と言わず、全部食べてしまっていいですよ。私には無用なものですし。
 ふふん、一ついくらかなんて知りませんが、ざまぁみろってやつですから」

きっと、チーズも喜んで食べてくれる人のお腹を満たしたいはずだ。
仮に問われても賊に襲われてくれてやったとでも誤魔化せば、なんとでもなる。
何をどう報告しても、気に食わなくて難癖をつけてくるのだ。結果が一緒なら気にしない。
がつがつとチーズを頬張る彼を眺めながら、なんとなくいい事をした気分に浸って。
一心地ついたのか。自己紹介と誰何の問いも、チーズのかすが飾ればなんとも滑稽だ。

「凰魔さん、ですか。私はマツリカです。普段は学生をしてます」

聞き慣れない響きだが、覚えるにはちょうどよい。
同じく己の名を返すと、続く言葉には少しばかり悩んだ後に。

「先立つもの、ですか。それは残念ながら私も知りたい側ですねぇ。
 流石に学院の女子寮には連れていけませんし、お宿を取るにもお金がかかりますし。
 例えば冒険者になれば依頼の報酬で生活することも出来るかもしれませんが……。
 ――お礼、ですか?良いんですよ、気にしなくても。先立つものもないのでしょう?
 それに、これは私に不要な荷物なのですから、寧ろ軽くしてくれて助かりました。
 ……あぁ、街に着くまでご一緒してくれるなら、退屈しなくて済みそうなんですけど」

彼の言葉はありがたく受け取りながらも、それ以上は辞退する。
自らよりも困窮してるだろう相手からお礼を受け取るというのはなんとも収まりが悪い。
故に、少女は街までの道行を付き合ってもらう、という形でそれっぽく誤魔化してみる。

なお、目の前の彼の変化には、残念ながら少女は気づかない。
これがそれなりに経験を積んだ冒険者などであれば、目端も効いたのかもしれない。
しかし、少女は残念ながら多少切った張ったが出来るだけのただの平凡な学生だ。
これまでの会話ですっかり気を許している少女は、全くの無防備に見えることだろう。

凰魔 > 全部食べ切ったその顔をのまま、彼女へと礼を言った後。
ぴょこぴょこと左右に揺れる獣の尻尾が目につくだろうか。
それはまるで、猫じゃらしのように視線を時折向けてしまうだろう。
とはいえ、それほどまで興味を引くものではない……かもしれない。
だがこれのせいで背中の違和感に、逆に気付きづらくなってしまうという。
食欲によって回復したがゆえに、獣のその力もまた湧いてきて。

「マツリカか!学生の身でこのような施しをするとは、見上げた精神性だな!」

彼女の名前を聞いて、嬉しそうに笑顔を浮かべる。
その顔はとても無邪気で、悪だくみをする者の顔には見えない。
だからこそ、余計に彼女は気を許してしまったのだろう。

「お礼まで不要というのか!しかも、街まで……ということは案内までということだな?
なんという素晴らしい奉仕精神か!気に入った!我の家来……にするには些か微妙だな、戦えるわけでもなさそうだし。
ならば今後とも我に施しをする栄誉をやろう!代わりに永遠の快楽を約束する!」

そう彼が言うと同時に、マツリカの足元にピンク色の細長い血管のようなものが見えるだろう。
それがなにか、と思うと同時に血管の先には針が付いており、彼女の足首に突き刺さる。
痛みはない、だがそこから何か、液体のようなものが体に流れ始めていると感じれば。
だんだんと筋肉が動かせなくなってきて、体から力が抜けて行ってしまう。

「なに、安心するがよいぞ!こう見えても、下僕に対しては我は優しい故な!
……しかしそなた、相当なカラダをしておるのぅ。いったいどれほど弄ばれてきた?
まぁよい。食欲もましになったことだし、今度はそなたの体で精を養わせてもらうか」

そう言う獣の顔は変わらず無邪気で可愛いもの。
しかしその獣の背中からは、その体の中にあったとはとても思えないような。
不可思議な形をした触手が複数伸びてきており。
マツリカの体を、地面の中にゆっくりと、獣ごと飲み込んでいく。
目が覚めた時、彼女の瞳は土の中の広い空間で寝かされていることだろう……両手に肉の枷をつけて、吊られた姿で。

マツリカ > 曰く、人の目は現実を映しているようで、実際は見たいものしか見ていないという。
今の少女も正しくそうで、視界の中には彼の変化が見えているが、それに全く気づいていない。
寧ろ、ゆらゆら揺れる尻尾やらふわふわの毛皮やらを可愛いと愛でることに集中している。
彼の可愛らしさは、少女にとっていわゆる疑似餌だ。その内に悪意などないと思わせる囮。
とは言え、仮に少女がその魔手に堕ちた所で、失うものもない訳だが――。

「あぁ、いえ、そんな大層なものではなくて、こう、ある種嫌がらせみたいなものですし」

主人の財産を無駄遣いしてやった、という酷く地味で細やかな反抗である。
そんなことよりこの肉球だ。やわこくてクセになる弾力。非常に好みだ。
お礼と言われて肉球を欲することも悩んだのは、顔に出ていたかもしれないが秘密だ。
街への案内は、その間の話し相手が欲しいという打算もあってのことだったのだが、
流れてくる言葉の雰囲気が徐々に怪しくなっていく。永遠の快楽――等など。
もしかしなくても、これって――そう思った瞬間、足首に何かが刺さった。
痛みはない。ただ、とすん、という衝撃と違和感。そして、何かを注がれる感覚。
視界が揺れて、足の力が抜ける。かくん、膝から崩れ落ちて、表情がとろんと緩んで。

「ふぁ――ぇ、ぁ……にゃに、を――ぁ……」

ずにゅう。なにやら大きな肉色の触手が幾重も覆いかぶさるように降り注ぐ。
その中に包まれるようにして、少女の意識は零れ落ちるように堕ちていく。
どこか心地よい浮遊感。とぷん。水面に沈むような、そんな錯覚。

そうして、次に少女が目を覚ます頃には、すっかり俎上の鯉になっていた。
両手は肉の枷で頭上に纏められていて、さながら生贄にされる娘のようだ。
とは言え、あいにくと少女の肉体は伝承や儀式にある生娘等とは程遠い物となっているが。
ともあれ、未だに薬が残っているのか、頭はぼんやりしていて働かない。ただ、ふわふわしていた。

凰魔 > 目を覚ました彼女の瞳はまだ虚ろなものであった。
まぁ意識を失って、戻るまでの時間が短かったが故だろう。
ふわふわとしたそんな彼女の前には、あの獣の姿があった。

「起きたかマツリカよ。いきなりこんなマネをしてすまんなぁ。
本当ならもっといいやり方も昔は出来たのだが、許せ」

にこにこと、変わることのない笑顔を浮かべている奇怪な色をした獣の姿。
その黒白目の中の蒼い瞳が彼女の顔を映しており……その獣の背中には、針などがついた触手が複数。
さらに言えば、この土の中の空間だと思われていた部分はピンク色をしており。
脈動すらしていた。……ここは、凰魔の作るダンジョンの初期段階。
即ち、凰魔の体の中にいるような者であり、この壁はすべて、彼自身の肉で出来ていた。
不思議とその壁からは淡い光が放たれているがために、視界は悪くはない。
まぁ、吊られている彼女には見えたところでなんなのかは理解が及ばないだろうが。

「どれ、ではまずは服を脱がしてやろうか。案ずるな、傷つけはせんよ。
案ずるな。今はただ、我に身を任せればよい。……そなたが今までされてきたようにな?」

さらにぷすり、と彼女のうなじにまた針が突き刺さる。
それは彼女の血管に同化していき、抵抗を考えることもままならない彼女の意識を戻していく。
完全に戻ったとしても、両手をこうして拘束された挙句、首の針は彼女の首に完全に定着してしまった。
と、そこまで感じたところでこの空間にはどこか甘い空気が流れている。
吸えば吸うほど、彼女の体が火照っていくことになり。その衣類が透け始めていた。
ゆっくりと、足元に透けていく制服がたたまれた状態で現れ始めて。
その褐色の少女の身体がすべてその場にさらけ出されることとなる。

「これはまた……なんとも惨いものだな。ま、我もこれぐらいはするが。
どうだマツリカよ。そろそろ目が覚めたか?ん?」

にゅるり、とピンク色でほどほどに温かい触手が彼女の頬へとペタリと張り付いて、その顔を獣の方に向けさせる。

マツリカ > 肉色の空間の中、目の前には変わらず彼が居る。
先ほどと全く変わらない笑顔で、無数の触手を伴って少女を見ていた。
不思議ながら恐怖感はない。ただ、全てが夢と現の狭間にある。そんな状態。
許せ。そう言われた気もするが、心地よい気怠さが返事を許してくれなかった。

「――んひゅっ!?」

そんな少女の首元に、再び針が突き立つ。足元に刺されたものと同じく、痛みはない。
流し込まれる薬液は、先の真逆の効果を持つもの。意識が一気に鮮明化する。
触れる刺激が一気に増えて、目の前が一瞬チカチカと明滅して、そして――。

「っ……まるで見てきた様に言いますね……?」

状況を一気に飲み込み、理解する。その結果として、少女は抵抗を放棄した。
両手が使えず、この場は彼の領域。残念ながら状況は最初から絶望的である。
冒険者でもない一介の学生が切り抜けられる様な舞台ではないと判断した。
最初から勝ち目のない争いはしないに限る。身に沁みて理解した処世の術だ。
それに、過去の経験を鑑みれば、この程度の事はざらにあったと言うのもある。
慣れてしまえば恐れられない。故に、少女は酷く冷静に、しかし蕩かされていく。

「ん、これも凰魔さんの一部なんですかね。虐めたら噛みついちゃいますよ?
 ――とは言え、最初から私に手札はないですから、どうとでもなれ、ですが」

彼の目の前。服が脱げれば、一見すると華奢で繊細な少女の肢体が露わになる。
異質なのは、その腹部に刻まれた文様――魔に刻まれ、人に弄られた雌の証明だ。
少女を学び舎の『備品』たらしめている、決して消えることのない赤紫の刻印でもある。
彼の力量次第では、少女の過去も経験も性癖も読み取れるだろうし、弄れもするだろう。
それ以外にも各所が性に慣れていて、腹の中には本来の女性にはありえない臓器もある。
そんな少女だ。頬に触れてくる触手にすら、嫌がりもせずに頬を擦り寄せてみせた。

凰魔 > ゆっくりとだが確かにその瞳には彼女の意志が戻ってくる。
同時に、自身を見る目がはっきりとし始めてきたのがわかった。
分かってはいたが、体はかなりこういうことに慣れているのだろう。
しかし、見れば見るほどいいからだ……ではなくひどいからだをしている。
その腹に刻まれた赤紫の刻印の意味。理解が出来るがゆえに、悲惨な人生もまた歩んだのだろう。

「見てきた、というわけではないんだがな。見ればわかるよ。
その体の状態、そして血を吸えばな。……苦労してるなマツリカ。
では、今しばらくその苦悩を忘れさせてやろう」

頬を摺り寄せてきた彼女の頬を、触手は撫でるように張り付く。
首筋に張り付いている触手が、彼女の血管に向けて直接何かを流し込んでくる。
それは彼女の体をゆっくりと蝕む媚毒……などというものではない。
その流し込むモノの正体は、中毒症状すら起こしかねないほどの強い薬物。
だが劇的に体の状態を変えていくものではない、遅効性の中毒媚毒といったところ。
ゆっくりとこれから、時間をかけていくつもりであるがゆえに流し込むそれは。
本来はもっと効能が早いのだが力が落ちた凰魔にはそうならざるを得ないという事情もある。

「この触手も壁も、全部我の体ではあるぞ。ただ傷つけても、痛みは反映されぬのだがの。
それに、下手な真似をすればどんなことをしてしまうかもわからぬぞ?
こんな風に……」

ぐぱっ、と真ん中が花のように開いて小さな歯が無数に生えた触手が彼女の胸の両方へとかぶりつく。
痛みはないが、刺された感覚やその歯が突き立てられた感覚は走る。
同時に、火照り始めている彼女の体―――であると同時に、虐め切られている彼女の体は刺激を感じることになる。

マツリカ > 見れば分かる。その言葉に、少女は淡い苦笑で答えた。
彼がどれ程感情移入してくれても、その身に受けた絶望の全ては読み解けまい。
とは言え、理解を示してくれると言うならば、それは素直に受け入れることにする。
ただでさえ、少女の過去を全て明け透けに詳らかに出来る相手等殆ど居ないのだ。
首筋の触手が何かを再び流し込んでくる。先見の巫女の直感か、背筋がぞくりと震えた。
中毒性の部分が反応したのだろう。様々な媚薬を受けたが、一番辛いのはその類だった。
欲する衝動がふつふつと湧き上がり、理性が蕩けてしまう。薬のために何でも従ってしまう。
王国でも表向きにはご禁制になっているそれらと変わらない何か。そんな気配が伝わってくる。
しかし、首の触手を離す手段がない以上、この時点で手詰まりだ。どうしようもない。

「……私は、貴方とのんびり街道を歩くだけでも良かったんですけどねぇ。
 とは言え、これをお礼とするなら、凰魔さんにお任せしてしまいましょう。
 私以外の誰かを襲ってしまっては大変ですし、元気にしてしまった責任、です」

などと言いながらも、存外少女は乗り気である。こうなったら楽しむしかないという割り切りだ。
酸いも甘いも噛み分けてきたがゆえに、少女は現実的で打算的でもある。強か、と誤魔化したい所だ。
軽い言葉遊びの挑発に、返されるのは彼の異能めいた力。触手が開いて、胸を噛み潰す。
しかし、そこに痛みはない。ただ、無数の歯が突き立って刺された感覚だけが神経を駆ける。
奇妙な違和感と甘い痺れが同時に湧いた。かつて受けた、乳腺への凌辱を思い出す感覚だ。
あの時は実際の細い触手を胸の先端から差し込まれたが、それとは違う、逃げ場のない包囲。
甘い愉悦を送り込む下着を身に着けた、とでも言うべきか。それが、薄い胸元を覆って。

「っ――ん、ひっ♡ こ、れっ、変な、気分っ――んふっ、ぅ♡ ぁ――はっ♡
 痛く、ないのにっ、噛まれてっ――♡ 食べ、られてるの――んぁ、あぁあっ♡」

乳房を咀嚼される。噛まれて刺される。痛みだけを抜きに、そんな刺激だけを味わう。
ぶじゅ、ぶじゅり。股座から雌の蜜が塊のままに垂れ落ちて、太腿を妖しく濡らしていった。

凰魔 > 苦笑する彼女の顔は、どこか割り切ったもので。
自分にはすべてを図り切れぬほどの経験があることに察しが付く。
年齢こそ自分のほうがずっと上だが、その濃さは自身とはまた別のものなのだろう。
現に今、彼女は流し込まれている中毒媚毒にどこか知っているという風な反応を示していた。
まぁもっとも、彼女が欲しがってしまうのはこの媚毒の方ではないのだが。
それは硬化が出てからの話としよう。

「のんびりもいいのだが、我もずっとここ数世紀の間ご無沙汰でな。
食欲もだいぶマシニなれば、どうしてもそなたを前に我慢できなくなってしまった。
……そうか!責任と言ってくれるか!嬉しいな、我に向けて罵倒雑言を言わぬとは!」

きっとそれは彼女本来の性格と、これまで培った経験故に、なのだろうか。
打算が入っているとはいえ、普通はここまで冷静に頭を働かせることなどできはしない。
まして、首筋に自身以外の別の肉が血管ごと同化してしまっている状況では。

「ほうほう、マツリカは当然もう胸で感じることができるんだな?
ふぅむ。いろいろあったのは察せられるが、今はこの気持ちに蓋をしてこう言おうか。
マツリカは触手で胸を食べられて、マン汁を垂らすことが出来る変態なんだのぅ」

にこにこと、雌の蜜を溢れさせる秘部に目を向ければ。
また別の触手が、その部分へと近づき……花が開くとそこには目玉。
他に身気が付けば、多数の目玉の生えた触手が彼女を360度見つめていた。
強く突き刺さる視線は、自身のすべてを見られているとわかるだろう。
まるで博物館の置物を見に来るような視線であり、その眼はどれも「色」を持っていた。
流し込まれている毒が、視界を歪めてその触手らが人間の雄の姿のようにすら感じてくる。
衆人環境にさらされているとうな、そんな強い視線を全身に受けて。

「おっ、乳首がさらに固くなったな?もしやマツリカは人に見られて感じるのか?
ならかなりのド変態だのぅ。本当は自分の痴態を他人に見られるのが好きなのか。
それにこのおマンコも、汁がどろどろではないか。
マン汁垂らしてそんなに欲しがって……可愛いやつだなぁ?」

そう言うと同時に、胸に嚙みついている牙が柔らかくなっていく。
同時に、何かが乳首の先端に張り付いて、引っ張られるような感覚。
両胸が同時に、吸いだされていくような、そんな刺激が走り始めて。
同時に、乳輪を舌が這うような快感も彼女は感じ始める。

「薄い胸は大きい胸よりも神経が多く集まっている傾向が高いからななぁ。
どうだ?こうして胸全体を舐められつつ吸われると、なかなかいい心地であろう?
ま、もっとも我が許可しない限り、マツリカはイくことは許されんのだがな!」

と、軽い爆弾を投下しつつ胸のみを攻めて。全身には無数の男たちに見られるような視線だけを送り込む

マツリカ > 決定的な違いは、彼が男、或いは雄であるということだろう。
子を孕み、育み、産むことがない。それは、当たり前であり絶対的な差だ。
故に、どうしても彼には推し量るしかない部分があるはず。仕方ない部分でもある。
例えば、体内に得体の知れない物を孕まされ、この世に生み出す絶望はどうだろうか。
或いは、どうせ治せるからと子を孕む為の場所を玩具にされて、壊された悲哀はどうだろうか。
無論、その全てを分かってくれとは言わないし、背負ってくれとも思ってはいない。
ただ、普通の娘の様には振る舞えない。ただそれだけが、残念なだけである。

注がれた薬は未だに効果を発揮しないが、甘い空気は緩やかに少女を蝕んでいく。
仄かに感じるジクジクとした下腹部の疼き。最早慣れ親しんだ発情の兆しだ。
体が雄を、快楽を、凌辱を欲している。その気配を感じるだけで、理性が揺れる。
かつて性奴隷として四六時中責められた身だ。色欲の箍は完全に壊れている。
それを理性による抑圧や日常の過ごし方を工夫することによる放念で誤魔化しているに過ぎない。
故に、一度封印した筈の欲求を解放してしまえば、抑えなど効くはずもないのは道理だろう。
今はまだそこまででもないが、静かに少しずつ近づいてきているのは間違いない

「……凰魔さんは長生き、なんですねぇ――ん、ふっ♡ 世紀――百年の、単位、でしたか。
 ふ、ふふっ、だって、今更な話、ですもの。そう言う趣味、でもなければ、ねぇ――っ♡」

先程までの浮遊感や酩酊感とはまた異なる熱情。淫蕩な性がまろび出る。
生殺与奪を握られて、しかし今の少女は恐れ知らずだ。ある種の確信すらある。
これはお礼なのだ。だからきっと、殺しはするまい。酷い目に合うかは別として。
そう、この後聞かされる、普通の女の子なら傷ついて泣いてしまう筈の罵倒のように。

「っ――♡ だ、ってっ、気持ち、良くてっ――んぃ、ぁっ♡ ん、ぐぅっ♡
 見ちゃ、やっ、ぁ――はっ、ぅんっ♡ ん、ぃっ――ぅううぅううっ♡」

言葉の針が、視線の槍が、素肌に心に突き刺さる。それだけで少女の反応も一気に色めく。
理由や事情がどうあれ、苛烈な凌辱の全てを受け止めきれる少女に被虐性癖がない筈がない。
これまでの調教故か、少女は性に慣らされながら羞恥心を失っていない。見られれば、恥じる。
変態。そう呼ばれる度に腹の奥がきゅんと疼いて、蜜の飛沫をしとどに垂らして肉床を濡らす。
浅ましく発情した雌の様相が、徐々に隠せなくなってくる。そんな少女に、容赦などなかった。
胸を食む感触が、吸われるものに変わる。母乳を、或いは乳首を、同時に吸い出され、引っ張られて。
小さな肉の蕾が健気に伸びて、その先からは僅かに魔力を含んだ乳液が滲み出す。
肉体改造に加えて、妊娠と出産を経験した成れの果て。それが、白い雫として滴り落ちる。

「――ふ、ぃっ、ぅっ♡ いじ、わるぅっ♡ おな、かっ、切ないのにっ――ん、ひっ♡」

胸だけでも楽しめるし、他も使い込まれた雌。玩具としては極上の部類の雌奴隷。
そんな少女は、彼の責めに綻びながら、その肢体を揺らして愉悦を強請ることになる。

凰魔 > 雌、あるいは女とは、この獣にとっては理解が及ばない部分がある。
勿論、体のつくりが違うのもそうだが、凌辱される経験や女としての機能の差は大きいのだろう。
この獣も、自身が魔王であった頃には複数の女を孕ませ、それらを眷族にしてきた。
そして自身で出産をしたという経験は……まぁ、ともかく。
やはりそれでも、本質的に雄であり、そして喰らう側である以上はその気持ちを推し量ることは出来はしない。
今もまた、その雄の衝動を抑えきれずに数百年以上ぶりの宴なのであり、この欲望を止めることは出来ない。

「長生きなのは、どちらかというと長生き”させられた”が正しいのだがな?
まぁ我の話はよい。どうせもうそなたに覚えてられるような頭にはならないのだからな」

彼女の中にあるその被虐趣味、あるいは願望。それは先天的であれ後天的であれ。
当然この環境の中で楽しめるという異常性癖はそこから起因するのがすぐにわかった。
ならば存分に彼女を嬲らせてもらおう。そうすれば、自身の力もまた少しだが取り戻せる。
胸を弄んでいると、そこから溢れてくる白い雫。それを触手の舌は美味しそうに吸い出せば。
ちくり、とその先端に針がまた両方に突き刺される感覚が走った。
しかし生温い針は痛くはなく、その乳腺に合わせて少しずつ伸びていけば。
そこから直接、彼女の胸から溢れる母乳を吸い出していくのがわかるだろう。
そして、先ほどの媚毒がゆっくりと彼女の体を犯していく。
慣れ親しんだ彼女の発情は、いつものように快楽を走らせるのだが。
まるで何かこう、絶頂するための神経が圧迫されているような感覚。
快感を感じるがそれによって高められていくような感覚が走らなくなっていく。

「お腹が切ない?はて、いったい何のことを言っているかわからんなぁ、
ちゃんとどこが切ないか言ってもらわねば、我にはとんと理解出来ぬよ」

ぺろりと、チーズのかすがついた口周りを獣は舐める。
彼女の母乳を吸い出していけば、久しく味わっていなかった魔力を吸う感覚。
その母乳という水分も合わせてひどくこの乾いた体に染み込んでくる。
この甘い感覚に獣は酔いしれつつも、彼女の言葉に耳を傾ける、が。
しゅるりと、彼女の口に花開いた触手が張り付いて来る。
それは直接この空間の空気をさらに強くした、甘いガスを提供して。
言葉をしゃべろうとしても、まったく言葉にならない上に顔を動かしても全く外れそうにない。

「ほれ、ちゃんと言わないとその感覚は収まらないぞ?
どこが切ない?そこをどうしてほしい?恥じらうその姿も非常にそそるのぅ。
だが、言わなければその状態が続くだけだが……ふむ」

腕を組んで獣は考える、恥じらう彼女にはどうしたらその本音を引き出せるのかを。
一体何をすればいいのか。ここまで被虐されている身体では生半可な真似はできんだろうが。
そこまで考えたことで、一つ思いついたように触手が伸びてくる。
それは雌蜜を滴らせる秘部へと近づいていけば、そこに無数の花が咲く。
……無数の、小さな触手が生えた花であり―――すっぽりと、彼女の秘部で充血している陰核に吸いつく。
同時に、無数の柔らかい綿棒によって根元から先っぽまでずりゅずりゅと擦られる感覚。
吸われ、擦られ、その職種の中には媚毒が満たされており、一気にその陰核の感度が上がっていくだろう。
だがどれだけ感じても、上り詰めることはできない。永遠に続く山を無理やり登らされるような快感。
やめたいと思っても、その口からは喘ぎ声かくぐもった声しか出すことは許されず。

「クリトリスもかなり使い込まれてるなぁ。ここまでならクリオナホもよく感じるだろう。どうだ?我の特製触手オナホは?」

マツリカ > 凌辱者たる彼と被凌辱者たる少女。その構図はどこまで行っても変わることがない。
雄に虐げられることが日常となるまで犯されたのだ。魂にすら刻まれている。
それこそ、どれほど生きようが、生まれ変わろうが、忘れられない業。
それ以前に、様々な相手の玩具たる少女が死なせてもらえるかという問題もあるが。
いずれにせよ、今はもう食われるのみ。食料ではなく、今度は自らの心と体を。

「んふっ、ぅっ――♡ 覚え、ときますっ……意地、張るのは得意です、しっ♡
 ぃ、ひぃいっ♡ 胸っ、溶けちゃ――ぅ、ぃ、ぃぃぃいいぃいいっ……♡」

にじみ出る母乳。その正体は、少女の魔力そのものである。
魔の子を孕んだ折に施された肉体改造――より幼い自分をも母体に変えるもの。
先見の巫女であったからか、内に抱える魔力の量は人の身にしてはそれなりだ。
それを変換して絞り出した乳液は、魔物達の餌としては上質なものだったとか。
底なしではないためいずれ尽きるが、楽しんでいればその内再び溢れ出す甘露。
それが、乳腺にすら入り込んだ甘やかな針に吸い出され、彼に吸収されていく。
胸そのものを犯される。常人なら耐え難い筈の行為すら、少女にとっては快楽で。
じくじく、ずきずき。腹の奥、子宮が列状という名のとろ火で炙られる。
既に吐き出す蜜は白く濁っており、思考全てが子宮に奪われてしまった気すらする。
とは言え、人としての理性も強化されているのがこの少女。容易く理性を失えない。
葛藤し、羞恥し、その果てに折れる。そんな様を見たい者達が仕立てた完成品だ。
何を言っているかわからない。その言葉に、小さく意地悪、と返しながら。

「――ん、ぅっ……♡ だ、ってっ……し、きゅう、もっ、おしり、もっ♡
 弄って、欲しくてっ……うずうずしてっ、熱くてっ――ぁ、あ、ぁあぁっ♡」

欲求を吐露するが、それより先に彼は新たな玩具――陰核に目をつける。
腹の刻印を用いれば陰茎にも変えられる肉芽は、小指の先程に熟れていた。
そこに群がる無数の触手。内側にびっしりと染毛の様な肉襞を湛えた花が咲く。
その内側、ぬっとりと粘液に塗れて艶めく内側を見せつけて、期待させて、陰核を食む。
ぞりゅぞりゅぅ――無数の肉襞が綿棒の先の如くに優しく陰核を磨き、汚れを刮げる。
どれほど清潔にしていようと、一日冒険に出たその帰りだ。蒸れた滓などもあるだろう。
それら全てをしゃぶり取られる。ただそれだけで羞恥混じりの途方もない快楽が脳を灼いた。

「――ぃ、ぎっ♡ しょ、こっ♡ よわい、からっ、あ、あぁあっ――ひ、ぃっ♡
 と、けりゅっ♡ くりとりしゅっ♡ なくなっちゃう、から、ぁあぁあぁあっ――♡
 お、ねがぃっ♡ いかしぇてっ♡ し、きゅっ、でも、おしり、でも、いいから、あ、あぁあっ♡」

たまらず腰をくねらせ、淫らに跳ねさせながら懇願の言葉を口にする。
とは言え、少女の性癖の根幹――最たる弱点が尻穴であることも既に見抜かれているはず。
密かにひくひくと蠢いている尻肉の間の窄まり。それこそが、最も弄って欲しい場所である。
しかしそう告げないのは、なけなしの少女の羞恥心と矜持。言い換えれば、照れ隠しにほかならない。