2021/01/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にブレイドさんが現れました。
ブレイド > 夜の野営地。
焚き火に照らされた冒険者は傷を負っていた。

「ってー…」

正直油断していた。
肉の調達にと狩りをしていたのだが、思わぬ反撃を食らってしまったのだ。
イノシシの体当たり、牙がかすった程度ですんだが
直撃していればわりと洒落にならなかった。そいつには晩飯になってもらうことには成功したが。

傷ついたのは左腕。
水で洗ってポーションは…こんなところでつかうわけにもいくまい。

「ったく…なんか適当な薬草でもねぇかな…」

ブレイド > ほのかな焚き火の明かりに照らされる野営地には
それらしい薬草は生えていない。
まぁ、そう都合のいいものでもあるまい。
食える野草がそうそうそこらにないように、傷にきく薬草だって都合よく生えてるもんじゃないのだ。
普通に止血…でもいいのだが、牙の傷…となると薬を使っておきたいところ。

「…飯食っとけば治るってわけでもねえしなぁ…」

目の前にはイノシシ肉を使った野外料理。
いい匂いだし美味そうだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からブレイドさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシクラさんが現れました。
シクラ > 夕方の喜びヶ原街道、雲一つない空の上に灰色の煙が立ち上っていた。
草木がちぎられていて、辺りにはひしゃげた金具とバラバラに引き裂かれた木材、様々な形の木材だった
これ等は元々は馬車だったものだ、積み荷には油があったのか、ちらほらと火が上がり
残骸の先にはねじれ曲がった馬車と馬、そして人間だったものが環境を構築するあらゆる者と
混ざりあい、何とも表せない物体の山と化していた。

この瓦礫の山にまぎれて倒れている何人かの奴隷、息絶えている奴隷のそばを
地面のめり込む重い足音を響かせながら大柄な黒い生き物がしゃがみ込んで眺めている。

「………………?」

生き物の腕には奴隷の物と同じ高速具が付いていたが引きちぎられ、生き物の動きを制する
役割をはたしていない。自分と同じものが付けられている女性の死体を死体を静かに眺めていた。
生き物は自分の腕にある拘束具の残骸を簡単に砕くと、今度は死体に付けられている拘束具も
引きちぎっている。死体に拘束具が無くなったのを確認すると、しばらく待っていたが
動き出さなかった。

「っ?……………っ?」
拘束するものが無くなったが動きださない奴隷を不思議そうにずっと眺めている。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にフォティアさんが現れました。
フォティア > 小さく、ごとごとと低く揺れる音を響かせながら、街道を馬車が往く。
大きな馬車ではないのだが、その低い軋みは重量のある荷物を運んでいるのだと、見るものが見れば知れるだろう。
幌のかかった荷台は木の枠でしっかりと囲われて、中を伺うことはできないが子供の好きそうな装飾と色彩に彩られている。
王都から離れた村々の人々にも手が届くようにと、ささやかに厳選した絵本や物語を運ぶ『移動貸本屋』である。
ランタンで灯した御者台には黒いワンピースの娘が一人。深緑のショールにくるまり、自ら手綱を操ってできるだけ平坦な道を選んで進んでいたが、ふと、視線が往く道から逸れた。
焦げ臭い、薫が風に乗ってきた。それとともに、奇妙な鉄臭いような生臭さが漂う。

「────…何かあった…?」

呟きとともに、馬車を操る動きに僅かに躊躇が混じった。出来ればトラブルは避けたいところだ。
火の匂い、血の匂い。つまり、争いがあったのだろうか。
それに首を突っ込んで、こちらが巻き込まれるのは勘弁だ。
──が。
助けを求めている怪我人がいるかもしれない。
なにかあれば、すぐに馬に鞭を入れるつもりで、娘は匂いの強いほうへと慎重に馬車を進めることにした。

「………………あの…」

盗賊団や山賊が残っていれば、脱兎の予定だ。
近づけば煙を上げている様子が見える。剣劇の音などは聞こえない。
すべては終わったあとだろうかと、おそるおそると声をかけた。かけて、凄惨な光景に絶句する。
大きな姿が見える気がするが──

シクラ > 「…………………………」
死体の近くに腰掛け、その姿を眺めている生き物。自分と同じく拘束具が無くなったのに動き出す様子が無い
その様を不思議そうにずっと眺めていた。すると遠くからゆっくりと馬車が近づいてくるのが生き物の
目にも入る。自分が乗っていた(積まれていた)馬車よりもずっとついている物が少ない。
あの馬車にも鉄の付いた人間が乗っているのだろうかと静かに眺めていたが
黒い服の娘が降りてきた。生き物はさらに待った、あくまで自分の積まれていた馬車には
人が一人見えれば、鎧を付けた人間が2,3人傍にいるからだ。

「………ーっ?」

降りてこない、娘が一人近づいてくるだけだ。自分が見た事が無い状況だ。
生き物は興味が出たのか呼びかけてくる娘の方に身を乗り出した。

「?…?…」

見ると何も付けていない、娘の身体をいくら見回しても金属は何もついていなかった。
生き物は粉々になった拘束具の一部を手に取ると、突き出すようにして娘に見せる

「…これは?」

フォティア > 恐る恐る馬車を近づけて、ようやくすべての惨劇は終わった後なのだと気づく。
酸鼻に表情を歪め、それでも慎重に馬車を寄せて、その大きな姿が武器を持っている様子がないこと、急に動き出さないことにそっと胸を撫で下ろす。
馬車を停め、革装丁の本を一冊胸に抱えて降りていくも、一瞬、躊躇ったのはそこに累々と転がるかつて生き物だった存在の残骸にだろう。
戸惑い、恐れて。そして、振り切って近づいていく。

「あの……どうしたのですか? 大丈夫? 他に、無事な人は……」

近づいて、ほんのわずかに躊躇したのは、今まで出会ったことがないほどに彼が巨躯だったからだろう。
唖然として。それから、それが失礼なことに思えたか、首を左右にぷるぷると振ってから。

「拘束具……」

見せられたものに、絶句を隠せない。
他にも手枷や足枷が落ちている。馬車の誂えは大きく損なわれていて判別できないが、それでも辛うじて奴隷商の馬車ではないかという推察はできた。
差し出されたそれを見つめて、その手首に傷がないかと確認するように見上げ。僅かに声が揺れる。
様子を見るに商人側というわけではなさそうだ。

「これで、戒められていた? 怪我はありませんか?」

シクラ > 「怪我……」
生き物は自分の周りを見回す、特に血が付いている訳でもない、ほんのわずかについているのは返り血だった
「……………ない」
「…みんな動いていない、取ったけど、動き出さない」

娘がふと見るのであれば奴隷を入れておく檻や鉄の扉、奴隷商の頭や警護の人間は
鎧ごと雑巾の様にねじられている。爆薬や武器などで破壊されたものではない
手形があり、全て素手で引きちぎられたものだった。そして目が良ければ手形は
目の前の生き物の手と同じぐらいだと悟る。

生き物は娘の方に近づくと両二の腕を掴み自分の身体の方に押し付ける。生き物の腕の力は物凄く
娘は簡単に持ち上がって宙を浮く、娘は寝室のシーツのように軽く扱われ
生き物は鎖骨当たりに顔面を埋める。匂いを嗅いでいるのかすーっと勢いよく息を吸い込んでいる

「ーーーーーっ……」
「……檻の中の、奴と違う匂いがする、馬車の奴の匂いがする」
奴隷ではなく商人の身分の身なりと雰囲気をしていると言いたいらしい、生き物は娘を抱き上げたまま
自らの堅い肉体に彼女の肢体を押し付けている。行動としては大型犬に近い雰囲気をしている。

フォティア > 「怪我……ない? よかった」

拘束具を掲げる手首のあたり、そっと触れるようにして擦過傷でもないかと、確認したが無傷のようだ。
そのことに安堵したように胸を撫で下ろして、僅かにぎこちない笑みを浮かべた。
淡い安堵感に、他に生存者は──と周囲を見回そうとして、強張った。
凄惨極まる光景は、街のごく普通の娘には、さすがに刺激が強い。思わず顔を逸らし。
しかし、遺体に残った痕跡が、強靭そうな手に残った血糊の跡が、言葉にならずとも状況を否応なく悟らせる。

「え? あ……何!?」

そう大柄とは言えない躰とはいえ、軽々と宙に浮いた。
何が起きたのかと狼狽える中、ショール越しに近づく顔の距離にさらに慌てる。
ふわりと薫るのは、客商売ゆえに身嗜みを整えるための甘い果物系の香り。林檎と柑橘を混ぜたような。

「あっ、や……こら、何を……」

まるで大型犬のような振舞いに、半ば条件反射的に叱るような声が漏れてしまったが、この体格差では抗う術もない。
身を捩るのが精々だ。
華奢な手をその分厚い肩において、少しでも距離を取ろうとしながらも、細い躰に意外と実りのある感触が対照的に伝わるくらいか。

「え……あ、あの。……でもわたしは、奴隷を扱うものじゃ…」

ちがうちがう、と首を横に振って奴隷商ではないと意思表示。視界の隅に映る様々な肉塊の様子を見るだけに、猶更必死に。

シクラ > 女性の柔らかい感触をより味わっているのか、ムニムニとその身体を押し付け続ける。
しかも果物に似た香りがしている。激しく体を動かした後、興奮状態も収まったのか
そういえば何も食べていないなという事を思い出していた。

「やわらかい」

生き物の大きな手が娘の乳尻などを触っている。娘の身体は持ち上がったままであり
体形は大きくないとはいえ、テーブルクロスでも持っているかのような軽々しさで娘を片手で持ち上げている。
暫く娘の雌らしさを原始的な美的感覚、つまり性的な部分に触れていたが。
ふと娘が持っている革装丁の本に生き物は目が留まる。

「…それ」
生き物は片手で、小さな岩の上でにそっと娘を降ろすとゴリゴリに堅そうな手で娘の持っている本を
指し示した。奴隷商の馬車に積み込まれていたぐらいなので本というものはそうそう記憶に残るほど
見た事が無いのかもしれないと、そう感じるかもしれない。

しかし生き物は首を傾げながら娘と本を交互に見ているとこんな事を言い出す
「どこかで見た事があるような気がする……この馬車の奴が…持っていたような気がする」

死んでいるのは奴隷商である、普通その辺の身分であれば装丁の金品宝石ぐらいにしか興味がない。
革装丁の地味な本に興味を示すとは思えなかった。

フォティア > 少女の立場からすれば、正直に言うと、ちょっと怖い。
周囲を見れば、自分など簡単に引き裂ける膂力を持っていることは一目瞭然。
というか、力が違い過ぎて逃げられない。
とはいえ、殺気は感じない。大きな獣、懐かれ──いや、少し違うだろう、興味津々に確かめられているような感覚だ。

「それは、貴方に比べれば……ねえ。 あの……まって、胸とか、匂いとか、恥ずかしいのでやめていただけると……ん…っ」

身嗜みに危機を使っているとはいえ、年頃の少女にとっては、なかなかの羞恥であることは間違いない。
悪意はなさそう。悪意はなさそう、と心で唱え、触れられる感覚に時折びくつきながらも、我慢をしつつ。

「え?」

ふと、自身が抱えているのは革表紙の一見何の変哲もない本だが、職業柄存在を示唆されれば興味をそそられないはずはなく。
一瞬だけ無邪気に瞳が輝いた。

「本? 馬車にあったの? ……………ええと、どのような?」

金ぴか装丁の本は高く売れるが、娘はどちらかというと中身のほうが重要。むしろ重い装飾の本は、寝ながら読むと、鼻先に何度も落としたことがあるので少し苦手なくらいだが。

「商人の本というなら、仕入れ台帳とかそういうもの……? どこに、あるの?」

ふと思いついたのはそれぐらいだが、もし万が一そういうものなら、警邏の手に渡る前に彼の名前があれば消しておいてあげるべきなのだろうか、とふと思いつく。

シクラ > 「こっちにある」
生き物は脚の先だけ力を込めると、周りの木々よりも高く飛び上がり奥にある馬車の残骸の近くに
着地する。そしてその間にも巨大な馬車の残骸が青い空の上で小さく舞っているのが見える。
鉄材が多く使われた頑丈な馬車が宙を舞っているのが見えるかもしれない。

娘の近くに落ちてきた馬車の中には娘が予想した通りの台帳が4冊転がっていた。
もしも娘が中を見てみるとそこには奴隷の名前が列挙しているが生き物の情報は載っていない。
4冊の内3冊は奴隷の名簿であったが生き物の名前は無かった。

最後の1冊を見るのであれば、そこには兵器と名前の伏せられた荷物の目録であり
生き物の名前はそっちにあった。【シクラ/帝国の遺跡で発見されたミレーの変異種】と表記されている。
何とあの生き物はミレーだという。確かに耳は大型のネコ科動物のようだったが
普通のミレーと違い人間の耳と同じ位置に付いている。

まとめると、奴隷というよりも秘密扱いで、兵器として、奴隷と一緒に運ばれていた
信じられない事にミレー、という事。そしてシクラという名前であるという事だった

フォティア > 自身よりも、己の馬車に繋いだ馬のほうが怯えそうな光景だと、娘は半ば現実逃避気味に考えていた。
鋼の欠片が飛んで地面に落ちるたびに、重々しい音を立てている様子を視界の端にぼんやりと捉える。
すん、と心を無にするようにして、散らばっていた台帳を拾い上げて中を確認する。
──……一冊、一冊丁寧に。
と、その前に。時間を持て余してしまうだろう彼に、自身の荷馬車に置いていたお弁当の籠を、「よければ」と示し、差し出しておく。
中身は、チーズとベーコン、そして酢漬け野菜を挟んだパンがいくつか。そして、林檎。これは移動図書館先で差し入れにもらたものだが。

丁寧に中身を確認し──明らかな奴隷台帳に、眉を寄せるしかない。
三冊には彼らしき記載はない、ゆえに少し悩んで元の場所に置いた。
最後の一冊。

「────……………ぇー」

小さな声で呻いた。もしかして自身は見てはならないものを見たのかもしれない。
というか、知らないほうがいいものではないだろうか。
ちら、と彼を見上げて、小さな声で囁きかけた。確かめるように。

「………シクラ、くん?」

様々な書物から知識を得た娘にも、見聞きしたことのない存在。
まあ、世界は広いからで誤魔化せるにも限度はあるが、それ以上細かいデータを見るのは彼に対して失礼にあたる気がして、文字を追うのを諦める。

「もう、キミを縛り付けようとするヒトは、いなくなったけれど……大丈夫? 住んでいた場所に、戻る?」

まるで小さな子供のようにも見える大きな佇まいに、僅かに首を傾げて問いかけた。

シクラ > 「ん?」
名前を呼ばれると生き物は口いっぱいにパンをつっこんだままチーズとベーコンを抱え頭にリンゴを載せて
重厚そうな鉄の箱を持って戻ってきた。娘の前に地面がめり込む程の重さの箱を置く

「見たのはそっちじゃない」

娘の持っていた革の本で覚えを感じたのは台帳の方ではないという。
生き物は分厚い金属を生のパイ生地みたいにひしゃげさせて開けると、娘の本ににた革の装丁の本が
何冊も出てきた。

娘がもしもその中から一冊手に取るのであれば装丁と紙質の古さがチグハグしている事に気づく
表の装丁は偽装で、娘が剥がしてみるのであればそれは禁制品の帝国の魔術所を王国の魔術書の形に
簡単に装丁しなおしたものだった。偽装の装丁を取り払うとあっという間に元の禁制品の魔術書に戻る。
この馬車の隊列は本来それが目的だった。目立たないように奴隷商の隊列に紛れて
帝国の禁制品を王国にもちこもうというハラだったのかもしれない。

「…同じだった?」
自分は合っていただろうかと娘の近くにしゃがみ込み赤い瞳で見つめている。

フォティア > 返事をした。
ということは、彼の名前に間違いないのだろうと状況証拠にて判断することになる。
が、彼から帰ってきた言葉には思いがけないものが付随していた。

「ちがう? これじゃない?」

自分なら持ち上げるだけでも重労働そうな箱を簡単に拉げさせ、出てきたものに少女は目を丸くすることになる。
OH……魔導書。
心の中で、そう呟いて遠い目をした。
手に取る前から、写本師である娘にはそれがありありとわかる。何しろ、内密で扱ってきたことがあるのだから。
偽装を取り払うか否かは、しばし考えどころ。迂闊に広げるべきものではないし。
この手のものは、容易く処分も憚られる。

しゃがんで合う視線の位置に、なぜか心配げな色を赤い瞳に見た気がして、にこりと表情を笑みに緩め、翠の瞳に笑みを返す。

「うん。 同じ。 すごいねシクラくん。 それがわかるんだ」

何の変哲もない、己の革装丁の冊子。紙を綴った本というカテゴリでは確かに同じだが、それ以上にその中身を、正確に──様々な護身の呪文を刻んだ魔術書の亜種だと見抜かれたような気がする。
そしてふと気づいたように、己を指さし。

「フォティア。 ──フォティアというの。 この本を預かってもいい? それとも、キミが持っていく?」

シクラ > 「それはよかった」
笑顔を見せる娘に生き物はフンと息を一つ吐き目を細めて満足そうに貰った食べ物を食べきった。
自分は魔法の類には興味が無いので、必要なのであれば全部渡そうという気なのか
娘の方にさらに鉄の箱を足先でおしやった。足先で動かす重さではないが

「いらない…こっちの方がいい」
最後に残ったリンゴを頭にのせたまま立ち上がる。
特に決まった家も無いからなのか自然地帯、この街道の奥の山を眺めながら

「ホチア?」
「ふぉ………………フォテア」
発音はいまいちだが名前を理解したようで、かみしめるように一人で頷いている。

「もう離れる…フォテアも、それをもって離れるといい」

フォティア > 「……………いちお、うちの禁書庫に入れておくか…。中身を調べるのは、おいおいと…」

そう独り言ちて、何冊かの魔術書を抱えて、移動図書館の中の本へとさり気なく紛れ込ませた。
木を隠すなら森の中とはよく言ったもの、禁制のものを街に持ち込むも同然だが、放置も気が咎める。
彼の名が記載された台帳は容赦なく破り捨てた後に、まだ燻ぶる煙の中に投げこんでおいた。
きちんと燃え尽きるまでは目を離さない。

「ん。わかった。 あー……そうだ、もし、何か困ったことがあったら、頼ってきてね」

袖すり合うも他生の縁という言葉もある。懐から、街の貸本屋の位置と、移動図書館のルートを宣伝のために刺繍した小さな布地(紙よりも安価なのだ)を、少し迷って彼の小指に巻こうとする。嫌がらなければ、だが。

「これ、結構値打ちのあるものだから。キミが困った時の、借りにしておく」

先ほどの魔術書を仕舞った先を示して、むったくなく笑う。
まあ彼が困ることなど、そうそうあるまいという力強さだ。
文字も読めないかもしれないが、読んでくれる人と遭うかもしれない。
価格のあるものをちょっと火事場泥棒気味とはいえ示してくれたのだから、借りにしておこうと思う。

「ん、陽も暮れるしね。 じゃあね、シクラくん。気を付けて──」

もう、変な人に捕まらないで──と付け加えかけて、呑み込んだ。
えぐいものを世の中にリリースしてしまった気にもなったが、彼から邪な気配は感じないことではあるし。

そう己を納得させて、娘は再び王都へと帰還するために、馬車を走らせることにした。
夜の帳が落ちきる前に。

シクラ > 「………………………」
自分の場合眠らされていたらいつの間にか此処にいたという感じだったのだが
そうか、捕まっていたのか。そう思いながら何となく上の空を見た後、静かに頷いて
馬車が走り出す。何かがあった時には助けてくれるらしい。
貰ったリンゴを手に持ちながら小さくなっていく馬車を眺め終えると
反対側の森林地帯の方へを向かって瞬間移動の様に飛び上がる。

地面を叩く地響きのような音を数回繰り返し、あっという間に自然地帯の奥へと
生き物は消えていった

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からフォティアさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からシクラさんが去りました。