2019/12/11 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にカレスさんが現れました。
カレス > 夜の街道。煌々ときらめく満月がもうじき天頂に差し掛かろうという頃。
見通しのよい平原にはピュウピュウと寒風が吹きすさび、しっかり防寒しなければたちまち凍えてしまう気温である。
寒さもあるが、すでにかなり遅い時間である。街道を往く者の姿はほとんど見受けられない。

そんな閑散とした通りを、ゴロゴロと車輪を鳴らして南下する存在が1つ。
丈の長いワンピースを着た妙齢の女性。農作業用の荷車を一人で牽いているのだ。

「ふぅ……。ふぅ……。………」

荷車の上には色とりどりの花が載せられ、風に揺られている。
根についた土ごと直接載せているため、なかなかの大荷物である。
それを牽きながら王都に向けて脚を進める女性は、呼吸こそ荒いものの、疲労の色はあまり濃くない。
そして、帰路を焦るような様子もない。マイペースな徒歩の速度で、がらがら、ごろごろ。

とても、女性1人が出歩く時間ではなかろうに。一応荷車には農具も積んであるが、他に武器になるものも帯びていない。
この女性はこんな時間までひとりで農作業をしていたのか? ――その通りである。
日が暮れるまで王都で花屋を切り盛りし、夜になれば畑に向かう。それがカレスの日課なのである。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にガルルさんが現れました。
ガルル > 背負い籠に冬にしか取れない薬草をいっぱいに入れた少年。
夜道をトコトコ歩く。
体も小さく歩幅も小さいながらも、意外と速い速度で歩けるのは種族としてだけではなく、鍛えられている為。

キャップの下でも敏感な耳は前方の方から聞こえる荒い息と、土くれの道をガラゴロと転がる車輪の音。
鼻で感じるのは王都で嗅いだことのある花の匂いと、女性の匂い。

こんな時間に? 等と考えながら基本善人の少年は女性でこんな時間の荷車引きは大変だろうと、さらにペースを速め追い始める。

闇の奥次第に近づいて見えるのは、荷車を引く女性の後ろ姿。

大人だったら警戒されるかもとか考えながらも、なんと声を掛ければいいか相手の荷車まで3m程まで近づいてから悩み始める。

「─、─。 むぅ…」

背負い籠の紐を握りながら意を決して素直が一番と、相手に向けて声をかける。

「お姉さん、夜も遅いし大変そうですけどお手伝い要りますか?」

寒風の中交じったのは何処か明るい少年の声だった。

カレス > 「…………あら?」

すでに冬本番に差し掛かりつつある今、虫の声もほとんど聞こえない。
風の音だけが駆け抜ける静謐な街道、後ろから早足で追いかけてくる気配があることには早い段階で気づいていた。
駆け寄ってくるわけでもないから野盗の類ではない、とタカをくくり、気にしないでいたカレスだったが。
――話しかけられるとは思っていなかったようで、少し驚いた口調と身振りでそちらを振り返る。

「……ふふ、こんばんわ。ええ、もう真夜中になっちゃいましたね」

そして、にっこりと柔和な笑みをつくり、しとやかに首をかしげながらご挨拶。溌剌としてよく通る、明るい声だ。
ボンネット帽が月明かりを遮っているが、女の頬は運動によってやや赤らみ、汗も伝っているのが見えるだろう。
しかし呼吸はさほど荒くなっておらず、後ろを振り返りながらも歩みのペースは落とさない。

「お手伝いですか? フフッ、お気遣いありがとうございます♪
 ですが、お兄さんも結構な荷物背負ってらっしゃるじゃないですか。
 私もこの程度の作物は毎日運んでおりますから、大丈夫ですよ?」

手伝いを申し出られると、女はちょっぴり苦々しい笑みを向けつつ、申し訳無さそうな声で断りを入れる。
だが、その後すぐに何か思いついたように、赤い目を見開き、じっ……と少年の方を見つめた。

「……ああ、でも。一人で黙々と歩くのに飽きてきたころでした。
 お兄さん、お急ぎでなければ、少し私の話し相手になってくださいません? フフッ…♪」

ガルル > 驚いた口調で振り返る相手の前に立つのは少年の体からはみ出す大きな籠を背負う少年。
大きな瞳は空に浮かぶ付きの様な金色の瞳が相手を気遣う様に見つめている。

「うん。 こんな時間だから悪い人達も寝てるかもしれないけど、やっぱり危ないし。」

相手が警戒や敵意を前面に出してこなければ声をかけた方も小さくほっとして。
鼻を擽るのは土の匂いや花の匂いが混じる女性の柔らかい匂い。
少年はスピードを相手に合わせる様にトコトコ歩き。
相手が子供相手ではなくお兄さんと呼んでくれるとなんとなく大人になった気がして心がソワソワ。
もし尻尾が出ていれば、嬉しそうに揺れていただろう。

「ん。 ふふ。この位なら僕にとってもいつもの事ですし。 
何より鍛えられているのでこのぐらいへっちゃらなんです。」

苦々しい笑みを向けられれば鍛えているなんて言いながら胸を張る様子は背伸びをしたがる少年のもの。
でも無理に手伝うと言い張るのも逆に気を使わせてしまうし…等と頭の片隅で思考がぐるぐる。

迷路に嵌りかけた思考も相手の提案にあっさりと思考はそちらにずれて…。
赤い目を金色の瞳で見つめ返すとにっこりと穏やかな笑みを浮かべて、小さく頷いた。

「実は僕もちょっと一人で歩くの飽きてたから…
喜んでお姉さんのお話相手になるの。」

人を疑うことが少ない少年はニコニコと笑いながら、今日は自分で薬を作るために森にいった事、
薬草を紡間に兎を見つけて豪華なお昼ご飯にしたこと、自分が行商であっちこっちに行っていることを身振り手振りを大きく混ぜながら話し始めていく。

カレス > 「うん、ありがとう♪ 王都までもう然程も距離はないけど、付き合ってね?」

少年が誘いに乗ってくれるのを見て、カレスは満面の笑みで微笑む。
王都が近くなってきたのもあり、道幅はどんどん広くなっていく。横並びになり、歩調を合わせながら語らい歩く。
己の身の上や事情を語り始めるガルルの様子や話の内容に、カレスはニコニコと笑みを絶やさず、相槌を打ちながら耳を傾ける。
初見で、背の大荷物を背負いながらも早足で旅していた彼のことは見た目よりも年重だと思っていたカレスだったが。
……しかし、その饒舌さや身振り手振りの大仰さから、見た目どおりの幼さであることを察する。

「フフッ。ガルル君は、若いのに働き者なんですね。偉いですっ!
 ……と言っても私だって、キミくらいの頃にはもう、郊外の農地で毎日働きずくだったけどね。
 私は今は王都の、王城に近い商業地区で花屋をやってるんです。《睡蓮の谷間》っていう。
 こうして、自分の畑で育てた花を売り物にしてね。だから店を終えたら定期的に刈り入れに行ってるの。
 今はその帰りってわけです」

カレスも己の身の上を語る。昼間からずっと働き詰めであることを。
しかし語らう口調は楽しげで明るく、とても長時間労働の疲労は感じさせないだろう。
カレスは台車を牽きながら腰をひねって後ろを向き、今日の収穫物を一瞥する。
そして、ガルルの方を向き、うっとりと赤目を細めながら尋ねる。

「ガルル君は、お花は好き?」

ガルル > 身振り手振りであてに伝えたり時折無意味に胸を張ってみたりと忙しない少年は会話を楽しんでいるようで。

相手に褒められれば照れくさそうにはにかんだり、
同じぐらいの年から農地で働きずくと聞けば、素直に感心する様にキラキラとした目線を相手に向け。
相手が聞いたことのある花屋としれば、尊敬の眼できらきらと相手を見詰める。

「ふわっ 聞いたことありますー。
今度行商に行く時ようにいつか行こうと思ってたんですよー。
それで荷車一杯の花とかを運んでたんですね。
今日も一日お疲れ様でした」

相手の楽し気で明るい口調に少年も楽しくなってニコニコ。
お店の良いうわさ話やポプリ等乾燥した良い匂いのする花も需要がある事や、ちょっと贅沢にお花の香油とかを求める人もいる等と相手に告げ。


「お花? 好きですよー 良い匂いもするし、蜜も美味しいのあるし、きれいに可愛いのとかもあるし。後おいしいお花もあるし。」

等と最後にちょびっと食い気が混じる辺りは成長期故か…。
相手がうっとりとした表情を向けて来れば見惚れてから、なんだか気恥ずかしくなり、
自身の白い肌をほんのり上気させてしまう。
気を少し反らそうと、少年もちらっと荷車の上で揺れている収穫物へと視線を向け、人より敏感な鼻でクンクンと匂いを楽しんでみて。

「ん…本当に良い匂い…
お姉さんの愛情いっぱいが伝わってくる気がするの。」

匂いを嗅ぐとほんわかとした表情で興味深そうに禁色の瞳に花を映してから、再び視線を相手に向けほんわかとした笑みを向けた。

カレス > 「お花好き? フフッ、それはよかったです!
 都会ではあんまり男の子に人気ないですからね、お花は。興味を持ってくれる子がいるだけでも、お姉さん嬉しい♪」

花問屋に来る客層のほとんどは女性である。
たまに男性もいるが、身内に頼まれての買い物か、貴族屋敷のステータスを保つための装飾としてがほとんど。
ガルルのように花そのものに興味を持ってくれる男性はなかなか稀有である。カレスは花のように喜びを表現した。

「そうですね。花にもいろいろあります。今日は収穫してないですけど、食べられる花……エディブルフラワーも。
 お店ではそういうのも扱ってますよ? もし気が向いたら食べにいらっしゃい。フフッ。
 ……ただ、さすがに個々の花の薬効とかまでは覚えきれてませんね。そういうのはガルル君のほうが詳しいかもしれませんね」

公園や住まいを彩るだけでなく、様々な活用法がある花。
カレス自身では花の食用加工や精油の抽出はやってないものの、そういう職人向けにも一定量を卸している。
薬草としての需要が高いなら、そういう品種を多く育てる判断もできるが、正直今はテキトーに手当たり次第育てている感じ。
いずれそういう販路も見つけなきゃなー……などと思案しながら歩き続ける。

「フフッ、いい香りでしょう? ええ、愛情注ぎまくりですから。ホントに………っと」

荷台の花の香りにぽわぽわと上気するガルルの様子にも、あまり気を配る様子もない。が。
ふと、カレスは脚を止めた。ぐっと荷台の取手に力を込めて、ブレーキを掛ける。
そして道の脇に目をやる。街道から20mほど離れた地点に、人1人は隠れられそうな大きな岩が転がっている。
岩の周囲には木々も下生えもなく、見通しはよい。

「……ガルル君、ちょっと待っててくれませんか?」

カレスはそれだけ告げると、荷台を離れ、その岩の方へと歩いていく。
ワンピースの長い裾を冬風にはためかせながら。その腰や背には武器の類は帯びていない。
止めたりしなければ、やがて岩の向こうの陰へと隠れてしまうだろう。何をしに行ったのだろうか?

ガルル > 相手が喜ぶと自分も嬉しい気持ちになる。
花の様にぱぁっと輝くような笑みに少年も満面の笑みの花を咲かせて、一緒に喜んで。

「ん。 食べに行くし、その時は僕の知ってるお花なら薬効も教えてあげる。」

お任せあれと、胸をはり、小さな手を握って拳を作ると、ジェスチャーでも表すように自分の胸をとんと叩いて。

「ん。 愛情いっぱい注がれるとお花もやっぱりうれしいと思うし。野性とはちょっと違った感じもするね。」

感じたことを呟きながら、荷台の取っ手のブレーキによってきしむ音。
こてんっと首をかしげながら少年は素直に置いての言葉に頷き…。

「ん。荷台の見張りはしておくから早く戻ってきてね?」

人通りが少ない夜とは言え、これだけ良い匂いがすれば動物たちも寄ってきて花を食べたり荒らしてしまうかもしれないと、岩陰へと隠れてしまう相手を見送り、自身も少しお休みする様に籠を地面に卸す。

キャップの中の耳はぴくぴくと忙しなく動き、少しでも情報を探ろうとする。
花の匂いのせいかそわそわ、何をしているのか気になるも我慢我慢と、自分に言い聞かせるもやっぱりそわそわ…
でも、約束もしたしと、覗きに行きたい気持ちを宥め、理性でもって押しとどめる。
待てと言われる犬のようにどこか落ち着きなく、周りを見たりちらちらと岩を見たり、やっぱり耳をヒクヒクさせるのであった。