2018/11/30 のログ
ルーシディータ > 最後の一音の余韻を惜しむように、けれど、そっと指で弦を抑えてその響きを区切る。
歌の残滓を押し出すように、吐息を一つ零せば、平素へと戻っていく表情。

己のお気に入りの旋律を奏でるのに夢中で、気づけば旅の人々も足を留めて形作られている、ささやかにして小さな人の輪。
それに今更気づいたことに恥じらうように、拍手へと頬を染めて、再び外套を持ち上げての淑女としての礼を返した。

「…お褒めにあずかり、光栄です。 ──…その、本来ならば謡う予定はなかったのですけれど…」

そう言いながら、再び少しだけ竪琴の弦を調整し、張りを緩める。
常に張りつめさせていると、音が変わるゆえだ。
ゆるゆると再びそれぞれの旅路へと戻っていく人々の流れを見ながらも、傍らへと近づいてくる青年を見上げ。

「いいえ。此方こそ、とても楽しく奏でさせて、いただきました。
わたしは…ルーシディータ。 ルーシディータ・アルタキアと申します。
いささか、長ったらしくはありますゆえ、お好きに、お呼びください…ませ。

──ルシアンさまは、旅のお方か…傭兵か、冒険者…で、おいででしょうか?」

どうやら己の歌と演奏は気に入ってもらえたようだ。
彼の表情からそう読み解くと、少女も安堵したように淡く微笑んだ。
そして、その装束からわずかに首を傾げ、淡い疑問を投げかけた。

ルシアン > 「ルーシディータ…だね。お近づきになれて嬉しい。
 急に無理な事を言っちゃったかもしれないけど…でもやっぱり、今の歌は素敵だったと思うよ」

歌う予定はなかった、と言われると若干苦笑いして。
運が良かった、と良い方にとらえて見たりもするのだけど。
少女の名前を繰り返してみて、演奏と歌の感想も告げて見たり。

「ん…そうだなぁ。山に狩りに入ったりしてるし…狩人だけど、冒険者も半分くらい?
 あと、旅人って言うのも半分は当たり。のんびり一人で色々見て回ってきて、今はこの辺りに居ついてるっていう所かな」

ふむ、と自分の装束を見て。薄汚れているし、少し失礼だったかも、なんて事も考える。
パンパンと軽く埃なんかをいまさらながら払ってみて。
少女の問いには、素直に答える。傭兵、以外は当たらずとも遠からず。

「ルーシディータ…君の方は、この辺りの街の人?それとも吟遊詩人さん?」

この少女への好奇心、なんてものが出てきてしまったのかもしれない。
これもまた、先ほどまでの歌の余韻が残っているのかもしれない。

ルーシディータ > 「ありがとうございます。
けれど、先ほども申しあげたとおり、歌を乞われるのは、楽師として何よりの誉れ。

……ぁ。
次の機会には…ぜひとも、おひねりを弾んでくださいませ、ね…?」

わずかに口調を砕けさせ、仄かに頬を上気させるのは、やはり楽師として褒められれば嬉しいこと。
やや戯れのような言葉を付け加えるも、ほんの少しだけ、本気の成分も混じっていただろうか。
それも、楽師としての小さめのプライドゆえ。

「──… それは。 …さまざまなことを、経験しておいでなの、ですね…」

どうやら、自分に人を見る目はまだまだ養われていないらしい。
あまり掠らなかった人間観察に、小さな小さな忍び笑いを漏らす。
旅の空なら、汚れるのは当然のこと。
埃っぽいなど、気にする様子はなく。

「外国のことや、旅のお話は疎いので……よろしければ、お話を聞かせてください、ませ。
わたしは……王都に店を構える──アルタキア商会にて、お世話になっております。 
そこで、修練を積んで… 楽師として、求められ、働くことも。

──…ぁ。 今は、ただの、自由時間、ですが」

ルシアン > 「観客としては、良い演奏を聞かせて貰ったら感謝をしないとね。
 こちらからお願いしたんだし、正直予想してたより、ずっと良かったんだから。
 …ふふ、その辺はしっかりしてるなぁ。一応手持ちはあるけど、僕だけの物でもないし…
 今日の所は、このくらいで?」

賞賛の言葉は、素直な気持ちから出るもの。にっこり笑いながらの感謝の言葉。
おひねり、と言われればそれは正当な対価であるわけで。
とは言え、狩りの収入は世話になっている所へ渡すものが大半。さてどうするか…と考える。

マントの中を探り、手渡したのは…まず、数枚の銅貨。手持ちの中で、気持ちの分。
一緒に渡すのは、深い青をした細長い、鳥の羽。質も良く、装飾に使おうと思えば十分に足りる様な品。

「うちの子たちにお土産、のつもりだったけど…今日はこのくらいで、ね?」

他にも子供向けの物はいくつかある。少女には、このくらいなら失礼ではないだろうと。

「経験は…そうだね、そこそこの人よりは、いろんなものを見て来たかも。
 僕の話なんかで良ければ喜んで。海みたいに大きな湖や、霧に包まれた不思議な山に住む人とか。
 …アルタキア商会?ん…聞いた事、あるかも。王都のお店か。僕が世話になっているのも、王都の近くなんだ。
自由時間…お邪魔したわけでなかったなら、良いんだけど。僕としては運が良かったかな」

屈託ない調子で言葉を紡ぐ。この少女の楽師様相手に、言葉遣いなども砕けた調子になっていて。

ルーシディータ > まさか。今ここで、報酬を払おうとするとは思わなかったのだろう。
少し驚いたように、薄紫の瞳を見開き。 手を、制止のカタチへと。

「ぁ… いいえ。 今は、必要ありません。
先ほども、申しあげたとおり… 謡うつもりはなかったので、喉の調子を…整えていません、でした。
ゆえに、今の歌は──…わたしにとって、不完全なもの。

売り物にならぬものに、対価をいただくわけには…まいりません。

それならば、むしろ……本当に、整えた喉で奏でる歌と演奏に、報酬をくださいませ」

取り出される、様々な小さな素材。その一つ一つは、確かに心惹かれるもの。
それぞれに、想像力を掻き立てられる物語が眠っていそうで、無意識に唇が緩むというもの。

「──……わたしは、あまり遠出をしたことはありませんので、そういうお話を聞くのは、とても嬉しいの、です…。
……ご存じ、でしたか。 もしも、よろしければ…御贔屓に、お願い…いたします。
自由時間といっても、わたしの趣味も、こうして楽器に触れること、ですので…謡う機会が得られたことは、幸いです」

下手なセールストークを口にしつつ、ふと。
陽の傾きを見て、何かに気づいたのだろう。
一度だけささやかな邂逅を果たした彼を見上げ、会釈のような礼をむけて。

「──…それでは、わたしは、もう街に戻らねばなりませんので…失礼、いたします…。
ルシアンさまは…──」

王都を塒にしているのであれば、おそらくささやかに歩みを合わせようとするだろう。
分かれ道ならば、旅人同士の束の間の友誼らしく、小さく手を振って歩き出す。

大切そうに竪琴を抱き、微笑んでゆるゆると街道を王都方面へと──。

ルシアン > 「なるほどね…今のが不十分だって言うなら、それの対価を払うのも失礼か。
 分かった。それじゃあ、お代は次の時に。
 …どれだけ払えばいいか、困っちゃうくらいのを…期待してみたりもするけどね?」

少女の言葉には感心したように息を付く。この道に生きる者としての矜持のような気持ちに、感じ入って。
少し名残惜しげに、差し出したものはしまい込む。
代わりに、とちょっと冗談めかしてくすくすっと楽しげな言葉を。

「うん、お店の方にも今度寄らせてもらうよ。
 お話も、またできればその時に…

 うん、僕も途中までは一緒に行けるかな。
 良ければ、ご一緒させてもらっても?」

また会えることを願い、嬉しそうに笑って。
王都の方へと戻るなら、帰り道の方角は同じ。分かれ道までは、同行させてもらおうと。
きっと、のんびり、たわいのない話で…退屈する事なんかは無かったはず、で。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からルーシディータさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からルシアンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にゴブリンリベンジャーさんが現れました。
ゴブリンリベンジャー > 太陽のぬくもりどころか夜の闇に浮かぶ月の輝きすら避ける様にその身をぼろ切れと変わらぬローブで包み込み、その布に刻まれた魔力で己が気配を希薄にしながら、獲物を求めて只管に街道を彷徨う。

復讐者、世界に掃いて捨てるほど存在する矮小なモンスターであるゴブリンの中の一匹、冒険者たちに滅ぼされた星の数ほどある群れの中で生き残ったゴブリン。

腰にはゴブリンと呼ぶ存在には不釣合いな魔力を宿す折れた刃を携えて、濁りどろどろの眼を越えて瞼を上を走る刃物傷が醜悪な相貌をより醜悪なものへと変え、見るからに他のゴブリンより邪悪なそれは冒険者に復讐を果たす為、今もこうやって群れを作るための犠牲者を探している。

但し今だゴブリンは独りである。
群れて集い脅威となりそれを為す為にはまず母体となる健康的な女を必要となる。

己よりは力があってもいい、だが存在として強い者は手を出せない、だから冒険者、商人、いや人でありミレー族やエルフなどの亜人であれば重畳、そして無用心にも単独で行動をしている者であるとよし、出来ればである、出来れば……。

群れを作れるようになれば続くは小規模の村落への襲撃。
と、其処までは今はまだ夢物語、とにかく今は街道を灯りも無く歩き、馬車でも良い不意を打ち柔肉を手に入れよう。
フードから覗くガタガタの牙のそろう口元をニタァと歪め吊り上げ醜悪な笑みをつくり、辺りに気配がないか探りながら只管に歩く。